園芸学研究
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1 巻, 3 号
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育種・遺伝資源
繁殖・育苗
  • 藤原 隆広, 吉岡 弘, 熊倉 裕史, 佐藤 文生, 井上 昭司
    2002 年1 巻3 号 p. 169-173
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    キャベツセル成型苗の育苗後期に,徒長抑制と順化を目的にNaCl処理を行う場合の処理濃度,処理開始時期および処理回数が苗質に及ぼす影響を調査した.
    1)NaCl濃度が高くなるほど,生育抑制効果は高く,NaCl濃度を1回処理で1.6%,5回処理で0.4%とすることで,草丈を対照区の80%程度に抑制することができた.2)5回処理区では,NaCl処理によって地上部の乾物率が高くなった.3)NaCl処理濃度が高くなるほど苗体内のNa含有率は増加した.4)NaCl処理による定植後の生育への影響は小さかった.5)苗の耐干性を評価するために断水処理を行った結果,苗の生存率は,NaCl処理によって大きく向上し,1回処理よりも5回処理で高かった.
    以上の結果,草丈20%減少を目的にNaCl処理を行う場合,液肥へのNaCl添加量は0.4%が好ましく,処理回数を1回とする場合は1.6%程度の濃度とすることで,0.4%を5回行った場合に準ずる苗質改善効果が得られることが明らかとなった.
  • 吉岡 宏, 佐藤 文生, 藤原 隆広, 福高 恭史, 藤井 泰志
    2002 年1 巻3 号 p. 175-178
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    生育の斉一なキャベツセル成型苗を低コストで省力的に大量育苗することを目的に,40枚の標準規格セルトレイのキャベツセル成型苗を,一度に育苗できるE & F(Ebb & Flow)灌水方式の育苗装置を開発した.同装置により,園試処方1/10濃度液を用い,1日に1回,10分間のE & F灌水を行うことにより慣行の手灌水による育苗法よりも苗の生育は劣るものの,苗生育が斉一で,機械定植適性の高いキャベツセル成型苗の生産が可能になった.また,同育苗システムの利用により,育苗に要する労働時間は慣行の手灌水によるセル成型苗育苗よりも半減した.
土壌管理・施肥・灌水
栽培管理・作型
  • 平間 信夫, 水澤 秀雅, 松浦 誠司
    2002 年1 巻3 号 p. 183-186
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    ハウス内の温度と湿度条件の違いがキュウリの生育に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,‘夏のかほり’を供試し,午前中を中心に昼の温度と湿度が25℃・40%と30℃・60%の処理区をもうけて半促成栽培を行った.さらに,摘心,摘心摘花およびつる下ろし処理の3整枝法を設けた.その結果,30℃・60%区では果実肥大が促進されたが,側枝の発生は抑制された.摘心栽培においては,25℃・40%区で果実肥大が抑制された結果として側枝の発生が促進され,高い上物率を維持しながら果実の最終収穫本数も増加した.なお,つる下ろし栽培においては,30℃・60%区で果実肥大が促進されたためその後の側枝の発生が抑えられたので,整枝作業を簡素化できることが示された.
  • 札埜 高志, 林 孝洋, 矢澤 進
    2002 年1 巻3 号 p. 187-190
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    シュッコンカスミソウについて,アレンジメントへの利用を前提とした切り花生産の可能性を検討した.
    1.栽植密度が‘ニューフェイス’の用途別(花束用,ホームユースフラワー用およびフラワーバスケット用)切り花本数に及ぼす影響について調査した.ホームユースフラワー用の切り花本数は,標準(4.4株/m2)の3倍区で標準区の2倍となった.フラワーバスケット用の切り花本数は,標準の4倍区で標準区の2.3倍となった.
    2.標準の4倍区における用途別切り花本数の品種間差異を調査した.シュート長や小花の着き方には品種間差異が認められ,品種によって適する用途は異なった.花束用およびホームユースフラワー用の切り花本数は‘ブリストル・フェアリー’で,フラワーバスケット用の切り花本数は‘ニューフェイス’および‘ブリストル・フェアリー’で多かった.
  • 佐々木 勝昭, 宇都宮 直樹
    2002 年1 巻3 号 p. 191-194
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    ハウス栽培されている10~12年生‘アーウィン’マンゴー樹において,果実の赤色発現に紫外線が必要であるかどうかを確かめるために,肥大生長期の果実に紫外線除去フィルムを被覆し,収穫後の着色に及ぼす影響を調査した.
    実験に用いられたフィルムは310~400 nm紫外光部をほとんど遮断し,220~300 nmおよび360~480 nmの光域においても透過量を著しく減少させた.しかしながら,同程度の可視光線量下では,このフィルムによる被覆は果実の着色にほとんど影響を及ぼさなかった.果実は照度が高くなると,紫外線量とは関係なく,果梗部の赤色発現が良好になり,果皮全体の色調が優れた.フィルムを被覆した果実では対照区に比べて果汁中の可溶性固形物含量が低下した.
    以上の結果から,ハウス栽培している‘アーウィン’マンゴー樹では,収穫後の果実における赤色発現には紫外線は必ずしも必要ではなく,強光が果実の赤色発現を促すことが示唆された.
  • 小林 尚司, 時枝 茂行
    2002 年1 巻3 号 p. 195-198
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    NFTにおいて,培養液の更新方法について,20日間隔でECを基準に水と肥料を補給する連続的使用区と20日間隔で全量を更新する全量更新区の違いが液組成,生育・収量に及ぼす影響を作型別にみた.
    いずれの作型においても,全量更新区に比べ連続的使用区ではCa,Mg濃度の緩やかな上昇,P濃度の低下,K濃度の果実生育期での低下などの現象が共通してみられた.
    果実収量は,半促成栽培では連続的使用区の方が全量更新区より優ったが,抑制栽培では連続的使用区でECが3.0 dS/m前後まで上昇したため全量更新区とは差がみられなかった.
    以上より,培養液を連続的に使用した場合,各要素の濃度の変動が今回の範囲内では,果実収量の減少はみられず,定期的な全量更新は不要と考えられた.
  • 吉田 裕一, 花岡 俊弘, 日高 啓
    2002 年1 巻3 号 p. 199-204
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    ピートモスとRW細粒綿を3:1に混合した培地を用いてイチゴ‘女峰’の養分吸収と生育,収量に及ぼす培養液組成の影響について検討した.CO2施用条件下ではNに対するP,Kの吸収比率が高まることから,標準培養液(N: 8.85,P: 0.85,K: 3.90,Ca: 2.05,Mg: 0.93 mM)にKH2PO4を添加したところ,P,Kの吸収量が増加し,葉身中P濃度は高くなった.しかし,K濃度にはほとんど変化がなかった.微量要素および標準培養液の約50%のCaとMgを含む複合液肥(N: 8.83,P: 0.94,K: 3.04,Ca: 0.89,Mg: 0.44 mM)では,CaとMgのみかけの吸収量はそれぞれ標準培養液の約50%となった.しかし,葉身中濃度には差が認められず,欠乏症状の発生もみられなかった.いずれの培養液を施用した場合でも生育,収量はほぼ同等であったことから,緩衝能の高いピートモスを主体とする培地でイチゴを栽培する場合には,必ずしも吸収に見合った組成の培養液を施用する必要はなく,簡便な処方の複合液肥が利用可能と考えられた.
  • 小泉 丈晴, 山崎 博子, 大和 陽一, 濱野 惠, 高橋 邦芳, 三浦 周行
    2002 年1 巻3 号 p. 205-208
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    アスパラガス促成栽培における若茎の生育に及ぼす品種,低温遭遇量,株養成年数および性別の影響を検討した.
    曲がり症は,低温遭遇にともない発生率が低下し,曲がり症を発生した若茎に立枯病の病徴である導管褐変がみられなかったことから,促成栽培における曲がり症は休眠覚醒が十分でないことにより発生すると推定された.2年生株の供試品種のいずれにおいても,販売可能若茎重および若茎収穫本数は低温遭遇量が多い区で増加した.‘バイトル’および‘ウェルカム’は,低温遭遇量が少なくても曲がり症発生率が低下し,販売可能若茎重および若茎収穫本数が増加し,‘グリーンタワー’および‘スーパーウェルカム’より休眠が浅いと考えられた.‘グリーンタワー’の1年生株の雄株および雌株並びに2年生株の雄株では,曲がり症発生率および販売可能若茎重から判断すると,伏せ込み開始時期は2年生株を用いた従来の栽培よりも約2週間の前進が可能であることが示された.
発育制御
  • 山崎 篤, 田中 和夫
    2002 年1 巻3 号 p. 209-212
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    ネギの抽台に及ぼす地温の影響を調べるため,地温制御装置を用い,低気温下における5~20℃の高地温処理および高気温下における5~15℃の低地温処理が,ネギ‘金長’,‘浅黄九条’および‘長悦’の生育および抽台に及ぼす影響について実験を行った.その結果,高地温は気温条件に関わらずネギの生育を促進した.また,低気温下における高地温は3品種の抽台を抑制し,高気温下における低地温は‘金長’および‘浅黄九条’の抽台を促進した.ネギの花芽分化には地温が大きく影響していることが明らかとなった.
総説
  • 安藤 敏夫
    2002 年1 巻3 号 p. 213-218
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    ペチュニア属遺伝資源の評価に関連する筆者らの研究経過を取りまとめた.広義のペチュニア属には,互いに交雑できない3群が存在し,その3群は種子表面形態・核DNA量などで識別できた.ウルグアイには花器構造の異なるP. axillarisの2亜種がすみわけており,中間型の分布する地域を特定し,園芸的に重要な形質をもつ群落を抽出した.野生種の花に新規物質11を含む,30種類のアントシアニンを確認し,遺伝資源としての可能性が議論された.ペチュニア属とカリブラコア属の全種に関して自家(不)和合性が調査され,自家和合種が降水量の少ない地域に分布する実体を示した.基本的に自家不和合であるP. axillarisの亜種axillarisには自家和合固体を希に交える群落があり,自家不和合性の崩壊現象を研究する素材として使われた.このほか園芸学と植物学の学際領域としての園芸遺伝資源学の研究領域を紹介した.
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