園芸学研究
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22 巻, 4 号
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原著論文
土壌管理・施肥・灌水
  • 安見 明香里, 中川 ほのか, 吉田 裕一, 後藤 丹十郎, 北村 嘉邦, 安場 健一郎
    2023 年 22 巻 4 号 p. 259-266
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル フリー

    ポット栽培のキュウリを用い,植物体重量から日射量と果実の有無が蒸発散および植物自体の成長に伴って保持される水分に及ぼす影響を個体レベルで調査した.果実が5~12個着果した株を用いて,電子秤によるポット重の測定を3日間行い,蒸発散量を経時的に測定した.調査2日目に果実を除去し,果実の有無によって同一個体で蒸発散量および植物体の水分量に違いが生じるか調査した.植物体に保持される水の量は果実がほとんどで,夜間の吸水量の半分程度は果実に蓄積される水であった.キュウリ植物体の吸水量において果実肥大に伴う果実の吸水量の変動は,日中に比べて夜間の方が大きかった.日射量が多い時には果実がある場合の方が蒸発散量は多くなる傾向が見られた.また,平均日射量と葉面積当たりの蒸発散量は2次式で回帰でき,日射量の2乗の項の係数は負の値となった.

栽培管理・作型
  • 西畑 秀次, 浅井 雅美, 臼木 一英, 村上 賢治
    2023 年 22 巻 4 号 p. 267-275
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル フリー

    平地の同一場所で,同一年に同一品種を供してタマネギの秋播き栽培および春播き栽培を行い,りん茎肥大時から収穫時の生育の差異について比較し,りん茎重に影響する要因について検討した.春播き栽培は,秋播き栽培に比べて,りん茎肥大始期が1か月,収穫時期も18~27日遅れ,りん茎重が劣った.りん茎肥大開始時期については,生葉数4枚とその後の基準温度5°Cの有効積算温度(積算温度)が関連することが示唆された.主茎葉芽の分化は,積算温度と関係が認められた.最終的な主茎分化葉芽数は,春播きと秋播きで差がみられなかった.定植後に一定の積算温度を必要とする主茎葉分化停止の2週間後に倒伏期となることから,春播き栽培は,秋播き栽培に比べて積算温度が影響して収穫期が20日程度遅くなると考えられた.止葉の葉芽分化時期は,作型や生育量の影響を受けるが,止葉の出葉期は,作型にかかわらず5月下旬であることから,春播き栽培では,総出葉数が少なく,りん茎構成葉数も少なくなり,りん茎重に影響したと考えられた.従って,春播き栽培でのりん茎重の向上には,総出葉数を増やし,りん茎構成葉数を増やすことが重要であると示された.

  • 元木 悟, 加藤 綾夏, 岡田 和樹, 山下 紗佳, 田口 巧
    2023 年 22 巻 4 号 p. 277-286
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,消費者の嗜好に沿った太い若茎の増収と適切な畝の高さの検討を目的とし,採りっきり栽培において,畝の高さ,定植深さおよび萌芽前の培土の有無が若茎の生育および収量に及ぼす影響を検討した.その結果,定植深さおよび培土の有無は,アスパラガスの収量構成要素である1茎重および収穫本数に影響を及ぼした.太い若茎を増加させるには,深植えもしくは培土が有効である.1茎重に影響を与える要因は,定植深さと培土の有無で異なり,定植深さは,生育時の最大茎径に,培土の有無は,収穫時の鱗芽付近の環境条件に影響を与え,1茎重が増加した.培土の有無が収量に及ぼす影響は,定植深さにより異なり,浅植えに培土すると1茎重が増加し,可販率が高まったことから,収量の値が無培土に比べて高かった.萌芽前の畝に培土することにより,若茎の1茎重および収穫本数を制御できる.

  • 中村 剛, 八代 賢, 永吉 嘉文, 圖師 一文
    2023 年 22 巻 4 号 p. 287-294
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル フリー

    ルテインはホウレンソウに多く含まれる機能性成分の一つである.加工・業務用ホウレンソウにおけるルテイン含量の安定化・高含量化技術の基礎的知見を得るために,冬どりおよび春どり栽培において,品種,生育日数および間引きによる成長量の差異がルテイン含量に及ぼす影響および気象要因とルテイン含量との関係を検討した.冬どりおよび春どり栽培では生育に伴いルテイン含量が増加した.冬どり栽培では品種間差が認められ,さらに気象要因とルテイン含量は無相関であったが,低温が影響すると考えられる水分吸収阻害による水分濃縮効果がルテイン含量に影響を及ぼしている可能性があると推察された.春どり栽培では,間引きにより株重および葉身重が放任区に対して約2倍に増加したがルテイン含量への影響は認められなかった.また,気象要因とルテイン含量は,平均気温,最高気温および日照時間で有意な正の相関,降水量で有意な負の相関が認められた.生育を前半と後半に分けて草丈と株重量がルテイン含量に及ぼす影響を調べたところ,生育前半では有意な回帰直線が得られたが,生育後半では得られなかった.さらに,生育前半から後半にかけてルテイン含量が減少したことが認められ,ルテイン含量の減少には花芽分化・発達が関与していることが推察された.以上より,加工・業務用ホウレンソウのルテイン含量の変動要因として,品種,気象要因および花芽分化・発達が考えられた.

  • 中塚 貴司, 松島 千尋, 遠山 園華, 江藤 公亮, 梅田 さつき, 寺田 吉徳
    2023 年 22 巻 4 号 p. 295-302
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル フリー

    ガーベラは,春に苗を定植後2~3年は採花を続ける周年栽培が確立している.本研究では,夜間の異なる時間帯で赤色(R)または遠赤色(FR)光の照射が,ガーベラの栄養成長や切り花品質に及ぼす影響について調査した.ガーベラ品種‘サンディ’の1年株を供試した.日没後 + 暗期中断RまたはFR照射,終夜R照射区では,花茎長と切り花重が無照射区と比べて増加した.葉SPAD値は,R照射区では増加したが,一方FR照射区では有意に減少した.夜間の時間帯うち,暗期中断が花茎伸長に対して最も感受性が高かった.花茎長の伸長にともない,花茎重や頭状花序サイズの減少は見られなかった.7–8月のR光暗期中断照射では,花茎伸長効果が見られなかった.R光の15分(計75分)または30分(計150分)の間欠照明では,葉の伸長や立ち葉の形成が見られ,栄養成長を促進した.本研究では,R光による暗期中断照射は,ガーベラ株の栄養成長を促進し,切り花の花茎伸長や切り花重の増加を誘導していると推定した.R光暗期中断照射処理は,ガーベラの採花本数を減少させることなく,上位等級の切り花の占める割合が増加されることが期待できる.

収穫後の貯蔵流通
  • 柏本 知晟, 河井 崇, 大江 孝明, 土田 靖久, 矢野 親良, Muqadas Maqsood, 赤木 剛士, 福田 文夫, 久保 康隆 ...
    2023 年 22 巻 4 号 p. 303-311
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究では複数の台湾ウメと日本ウメについて収穫後果実の低温応答および1-MCP処理による品質保持効果の調査を行った.いずれの品種においても15°C貯蔵に比べ,2,5および8°C貯蔵のほうが果実軟化は遅延し,温度が低いほどその効果は高くなった.調査した品種の中では,低温障害の発生がなかった‘白王’と低温障害果発生率が非常に低かった台湾ウメの‘台湾’はそれぞれ2°Cでの長期貯蔵が可能であると考えられた.一方,2,5および8°C貯蔵でいずれも低温障害が多発した‘古城’は長期貯蔵向きではないと考えられた.その他の5品種(‘南高’,‘二青梅’,‘ST’,‘白粉梅’,‘85486’)については2°C貯蔵で低温障害が多発したため,5°Cまたは8°C貯蔵が適切であると判断された.また,台湾ウメの‘二青梅’および日本ウメの‘南高’への1-MCP処理により,両品種とも果実軟化,果皮色変化といった果実成熟形質およびエチレン生成の抑制効果が認められた.果皮色変化については15°Cおよび20°C貯蔵,果実軟化については15°C貯蔵で‘二青梅’の1-MCP処理による成熟抑制効果が高かった.一方で,両品種とも0°Cや5°Cのような低温貯蔵下における1-MCP処理は低温障害を誘発し,品質保持を逆に悪くした.以上の結果を総合すると,収穫期の遅い台湾ウメは日本ウメと同等以上の低温耐性をもち,適切な温度帯での1-MCP処理によりウメの収穫後果実の品質保持が期待できることが明らかとなった.

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