園芸学研究
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15 巻, 4 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 鶴田 燃海, 向井 譲
    2016 年 15 巻 4 号 p. 341-345
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    自家和合性は育種や遺伝学において重要な形質の一つである.本研究は自家不和合のサクラの品種ソメイヨシノにおける自家不和合性の打破を目的に,蕾受粉,柱頭切除および温湯浸漬処理を試みると同時に,それぞれの受粉処理における花粉管伸長を調べた.柱頭切除処理ではわずかな花粉しか受粉せず,花粉管もほとんど伸長していなかった.また,蕾受粉および40°Cの温湯浸漬処理における自家花粉の花粉管は,柱頭からおよそ4 mmの花柱の中央部において伸長を停止していた.これは対照区における花粉管伸長と変わらない(P > 0.05).一方,45°C, 50°Cの温湯に浸漬することにより,有意に自家花粉の伸長が促進されることが示された(それぞれ平均6.9 mmおよび8.6 mm,P < 0.001).特に50°Cの浸漬処理では多くの花柱において,花柱基部までの花粉管の到達が観察され,自家花粉の伸長阻害を打破することができた.ただし,高温にさらした花は受粉後数週間以内にすべて壊死してしまい,自殖種子は得られなかった.

  • 澤田 倫平, 平野 智也, 飯牟禮 和彦, 阿部 知子, 尾崎 行生
    2016 年 15 巻 4 号 p. 347-353
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    レタスプロトプラストへのイオンビーム照射により,ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)遺伝子の変異を誘導し,加工用途に向く低褐変レタス個体作出を試みた.まず,再分化個体を効率的に誘導できるプロトプラスト培養濃度を検討した結果,熊本県主要栽培品種のひとつである‘ラウンド’において,プロトプラスト濃度が0.65 × 104 mL–1から0.73 × 104 mL–1で,コロニー誘導培地1枚から得られるシュート形成コロニー数が多くなることがわかった.次に,プロトプラストへの12C6+イオンビーム照射を行い,照射線量とコロニー形成率の関係を調査したところ,イオンビーム照射線量が高くなるに従ってコロニー形成率は直線的に低下し,半致死線量は約3.3 Gyであった.イオンビーム照射した869個のカルス塊のPPO遺伝子の変異をTILLING法により調査したところ,2個のカルスにおいて変異が生じていると推察された.変異が認められたカルスから誘導された再分化個体のPPO酵素活性を予備的に評価したところ,2個のうち照射線量2 Gyのプロトプラスト由来のカルスから誘導された再分化個体においてPPO酵素活性の低下が認められた.そして,そのM2集団をTILLING法とPPO酵素活性で評価したところ,PPO遺伝子のPCR増幅産物のCel Iによる消化が認められずPPO活性が野生型と比較して明らかに低い個体が認められた.

  • 長澤 正士, 原 加寿子, 柴田 雄喜, 菅原 哲平, 小野 早人
    2016 年 15 巻 4 号 p. 355-361
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    秋田県果樹試験場天王分場で1991~1998年に交雑された正逆交雑を区別した24家系の各6つの子(合計144の子)の成熟期を解析した.子については2006~2009年の4年間の内,いずれか1年の収穫日を評価データとした.それらのデータは,場内で栽培している17品種(各1樹)の6年間のデータを用いて年次補正し,解析に供した.その結果,平均親値をX,子の家系平均値をYFとすると有意な回帰式(YF = 0.8072X + 0.8899)が得られ,子の家系平均値は,ほぼ平均親値で説明できた.この回帰式と平均親値から得られる予測値と実測値を比較したところ,ほぼ一致し,育種計画を立案するうえで有効と考えられた.

    次に,親の値から子の家系平均値をこの回帰式で予測し,それを平均値として子の遺伝子型値が家系内遺伝分散と回帰では説明できない分散の和で正規分布するモデルにより早生の子の出現率を推定した.天王分場で植栽されているニホンナシのうち,最も平均親値が小さくなる家系の組合せから(平均親値スコア2.7),8月中旬および下旬より早く成熟する子がそれぞれ約7%,46%出現すると推定された.

    本検討の結果から‘幸水’ より成熟期が早い子を育成するためには,①成熟期の平均親値がなるべく小さくかつ近交係数が小さい親の組合せを選択する短期的視点と②交雑すると子の成熟期が早くなる性質に着目し,育成・選抜を短縮する手段を講じながら,世代を経ながら漸進的に改良を進めるという長期的視点の双方が必要と考えられた.

繁殖・育苗
  • 黒木 克翁, 竹村 圭弘, 丸森 啓紀, 寺谷 直子, 松本 辰也, 田村 文男
    2016 年 15 巻 4 号 p. 363-369
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    ‘おさ二十世紀’の後代である自家和合性ニホンナシ品種‘秋栄’,‘秋甘泉’,‘夏そよか’および‘新美月’の自家結実性を3年間にわたり受粉4週後および16週後に調査した.その結果,受粉4週後の自家結実率は品種間で大きく異なり,‘秋栄’ と ‘夏そよか’ で低かった.特に, ‘夏そよか’は著しく低かった.また,受粉4週後から16週後まで‘秋栄’および‘夏そよか’の結実率はさらに低下した.品種間の相互受粉による結実率は雌蕊側品種の自家結実性と同様の傾向を示した.自家結実性の差の原因を明らかにするために,受粉72時間後の花柱組織の形態観察を行った.‘秋栄’および‘夏そよか’の花柱中心部の細胞の配列が崩壊し,空洞化が観察され崩壊程度3であった.このことから,‘秋栄’および‘夏そよか’に関しては花柱誘導組織の崩壊の速さに起因する受精能力保持期間の短さが自家結実率の低さの一因となっているのではないかと考えられた.

  • 水島 智史
    2016 年 15 巻 4 号 p. 371-376
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    ウワバミソウを用いて,水挿し時の培養液濃度と挿し穂の発根および生育の関係を調査した.挿し穂の発根率の推移は,水挿し時に0.1~0.25単位の培養液を用いても0単位と比較して同等であった.0.1単位の培養液で水挿しして育成した挿し芽苗は,0単位と比較して,定植時の地上部が大きく,定植後の生育も優れた.0.25単位の培養液に水挿しして育成した挿し芽苗は,定植時の根量が減少した.成長解析の結果,0.1単位の培養液に水挿しした挿し芽苗の育苗中の相対成長率は,0単位と比較して高かった.相対成長率の違いはほぼ純同化率の違いに連動していた.

  • 福島 啓吾, 梶原 真二, 石倉 聡, 勝谷 範敏, 今村 仁, 後藤 丹十郎
    2016 年 15 巻 4 号 p. 377-382
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    高温期に育苗する暖地の晩秋~早春出荷作型において吸水種子湿潤低温処理によるトルコギキョウの切り花生産を可能にするため,ロゼット性の異なる品種への吸水種子湿潤低温処理の効果を再検証するとともに,処理後の育苗中の昼夜温が生育に及ぼす影響を調査した.吸水種子湿潤低温処理は,品種固有のロゼット性に関わらず抽苔率,発蕾率および開花率を高めた.また,吸水種子湿潤低温処理終了後の育苗夜温が28°Cおよび31°Cの場合,ロゼット性に関わらず抽苔率および開花率が低下したが,22°Cおよび25°Cでは抽苔率,発蕾率および開花率が高く,育苗夜温が低いほど,生育が促進されるとともに切り花長が大きくなった.さらに,育苗昼温が30°Cおよび40°Cでは,抽苔率,発蕾率および開花率に影響しないが,育苗昼温が低いほど生育が促進された.

栽培管理・作型
  • 本庄 求, 武田 悟, 吉田 康徳, 金田 吉弘
    2016 年 15 巻 4 号 p. 383-391
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    寒冷地での無加温ハウス育苗によるネギの8月どり作型において,重量の大きい規格のネギを収穫することを目的として,窒素施肥量と連結紙筒の1穴当たり株数の違いが生育,窒素吸収量および収量に及ぼす影響を検討した.窒素施肥量の違いについては,標準区(2.9 kg・a–1,秋田県の標準の施肥量),多肥区(3.5 kg・a–1,標準区の20%増肥),少肥区(2.3 kg・a–1,標準区の20%減肥)の3区とした.その結果,生育途中には多肥区の地上部重,葉鞘径および草丈がやや大きい時期があったが,少肥区でも生育に十分な窒素施肥量であったことから,収穫期には窒素施肥量の影響は認められなくなり,いずれの処理区でも生育や収量に大きな差がみられなかった.連結紙筒の1穴当たり株数の違いでは,1本区,2本区および1.5本区(1本と2本の交互)の間に定植後の生育や収量に差が認められた.1穴当たり株数が1本,1本と2本の交互および2本と増加するほど,定植後の生育の抑制が大きくなり,1株当たりの窒素吸収量が減少し,1株当たりの地上部重が減少した.一方,面積当たりの収量は,1穴当たり株数が多いほど増加した.調製重は栽植密度(株・m–2)と負の相関が認められ,反対に,1株当たりの占有面積(cm2/株)とは正の相関が認められた.調製重と栽植密度との関係は二次式でよく適合し,調製重と1株当たりの占有面積との関係は一次式でよく適合した.

  • 栂野 康行, 内田 吉紀, 安田 雄冶, 倉橋 孝夫, 松本 敏一
    2016 年 15 巻 4 号 p. 393-399
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    早期加温栽培‘デラウェア’(1月加温開始)の燃油消費量を削減するため,隔日で加温機の設定温度を慣行温度基準(慣行区)より5°C低くする隔日変温管理が生育と果実品質に及ぼす影響について調査した.

    夜間のみを5°C低下させる夜間隔日処理は,慣行区と比較して生育期(果粒軟化開始期,成熟期),葉色,果粒肥大および果実品質にほとんど影響を及ぼさなかった.また,その時の加温期間中のA重油削減率は8%程度であった.一方,昼間と夜間を5°C低くする昼夜隔日処理では,生育期と葉色に慣行区と有意な差はなかったが,果径が処理14日後から成熟期まで慣行区より小さく推移した.また,昼夜隔日区の果房重と果粒重は,慣行区より劣った.

    以上のことより,現地へ隔日変温管理を導入する場合,結実判明期から加温終了時までの期間,夜間の設定温度を5°C低くする方式がよいと考えられた.

  • 森永 邦久, 古賀 健一郎, 伊賀 悠人, 遠藤 直人, 藤井 雄一郎, 横井 秀輔, 星 典宏, 福田 文夫, 薬師寺 博
    2016 年 15 巻 4 号 p. 401-407
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    葉面に貼付けることによって,葉からの蒸散作用による水分との反応によるシート表示面の色の変化(青から薄桃色)から樹体の水分状態を判断ができる ‘水分ストレス表示シート’ について,落葉果樹のモモ,ブドウおよびニホンナシ,ならびに常緑果樹のウンシュウミカンにおける水分状態の評価を試み,供試したそれぞれの樹種においては貼付けから色変化完了までの時間により水分状態をおおよそ判断できると考えられた.

    すなわち,ブドウ,モモ,ニホンナシにおいて,十分な水分状態での‘水分ストレス表示シート’の色変化完了時間は100~110秒以下であり,十分な水分状態から蒸散速度が50~60%減少する水分ストレス状態では約200秒であった.一方,ウンシュウミカンではそれぞれ約130秒以下,ならびに230秒であったことから,これらの樹種においては貼付けから色変化完了までに要する時間を計測することにより水分状態の簡易な判断が可能であると考えられる.モモにおいて実際の圃場条件で用いて検証した結果,蒸散速度で示した樹体の水分状態の評価結果と一致することが示された.実際の計測では十分な蒸散を行いうる日射量など一定の条件下での測定を行うことが必要である.

  • 阿久津 雅子, 伊是名 純二, 髙倉 直
    2016 年 15 巻 4 号 p. 409-415
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    LEDのFR光源を用いたEOD-FR処理と栽培時期がアブラナ属植物の生育および形質に及ぼす影響をコマツナ,チンゲンサイ,シマナおよびレッドマスタードを用いて,沖縄県における栽培適期(冬期),栽培不適期(盛夏期)および中間期(春期)について調査した.どの品目も栽培時期に関わらず,弱照射区が対照区に比べて,総新鮮葉重および葉面積が増加する傾向にあった.コマツナに関しては,栽培適期においては,弱照射区で初期生育は促進されたが,その後の生育は栽培適期および中間期では有意差が見られなかった.また,栽培適期および中間期に比べ,著しく生育が低下する生育不適期には強照射で生育が対照区の2倍以上に増加した.レッドマスタードに関しては,コマツナ同様,栽培不適期ではEOD-FR処理を行うと対照区よりも生育は多少増加したが,他の時期に関してはEOD-FR処理により総新鮮葉重および葉面積に関して有意差が出るほど増加することもなかった.また,シマナとチンゲンサイはEOD-FR処理により,茎の伸長が認められた.シマナに関しては,FR光放射照度が強いほど茎がより伸長し,抽苔する株も多いことがわかった.

発育制御
  • 白山 竜次, 郡山 啓作, 木戸 君枝
    2016 年 15 巻 4 号 p. 417-424
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    短日植物の暗期中断において,R光の効果はFR光により打ち消されるため,FR光を含まない光源が暗期中断の効果が高いとされている.本研究では,キクの暗期中断におけるR光およびR + FR光の暗期中断時間が花芽分化抑制に及ぼす影響について,夏秋ギク ‘岩の白扇’,秋ギク ‘神馬’ を用いて試験を行った.両品種ともに短い暗期中断時間では,R光に対するFR光の打ち消し作用が発現して,R光に対してR + FR光は花芽分化抑制効果が低下したが,暗期中断時間が長くなるにつれてR光に対するFR光の打ち消し作用が低下した.‘岩の白扇’ では暗期中断2時間以上でR光とR + FR光の効果が逆転し,R光よりもR + FR光の花芽分化抑制効果が高くなった.‘神馬’では暗期中断45分以上でR光とR + FR光の効果が同等となった.以上の結果からR光とR + FR光の花芽分化抑制効果は,照射する時間の長さにより変化することが明らかになった.キク92品種・系統を用いて,暗期中断10時間処理におけるR光およびR + FR光の効果の差異を比較したところ,品種・系統の平均値では,R + FR光がR光に対してわずかに花芽分化抑制効果が高くなる程度であり,キクの電照栽培にはR光が適していると考えられた.

  • 松田 大, 榊原 俊雄, 桂 圭佑, 小枝 壮太
    2016 年 15 巻 4 号 p. 425-431
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    アンスリウムの植物体はファイトマーの積み重ねによって構成されており,葉が展開するごとにその葉腋に花序が着生する.本研究ではアンスリウム ‘Tropical’ を供試し,葉の出る間隔(出葉間隔)および葉が出てからその葉腋に着生する花序の収穫段階までの発達に要する日数(花序発達日数)を約2年間調査した.調査より,出葉間隔および花序発達日数は周期的な変動を示すことが明らかになった.また,出葉間隔および花序発達日数は気温と強い負の相関関係を示すことが明らかになった.そこで,発育指数(DVI) と発育速度(DVR)を用いた手法により,気温から出葉間隔と花序発達日数を推定するモデルの構築を試みたところ,気温のみから高い精度で出葉間隔と花序発達日数を推定することが可能になった.また,両モデルにおけるDVRと気温との関係からアンスリウムの生育適温は25°C以上であることが示唆された.さらに,開発された2つのモデルを用いることで切り花の収穫本数を気温のみから高い精度で予測することが可能となったことから,本モデルは冬期のハウス加温温度を決める際の一つの手がかりになると考えられる.

  • 柚木 秀雄, 東 暁史, 吉岡 正明, 薬師寺 博
    2016 年 15 巻 4 号 p. 433-438
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    ブドウ‘安芸クイーン’への環状はく皮処理が,果皮色ならびにアントシアニン合成関連遺伝子群の発現量に及ぼす影響を調査した.着色開始期(満開35日後)における主枝への環状はく皮処理により,果皮色が対照(無処理)区と比較して著しく向上した.また,環状はく皮処理により,主に7月中下旬~8月上旬におけるアントシアニン合成関連遺伝子群の発現量が対照区と比較して有意に増加し,成熟期間を通した累積発現量も増加した.また,アントシアニン含量と多くのアントシアニン合成関連遺伝子群の累積発現量との間に正の相関が認められた.以上のとおり,環状はく皮処理によって成熟期における果皮のアントシアニン合成関連遺伝子群の累積発現量が増加し,これによりアントシアニン合成が促進することが明らかとなった.また,多くの関連遺伝子の発現量が増加しはじめる着色開始期の環状はく皮処理が‘安芸クイーン’の着色向上に有効であることが示された.

収穫後の貯蔵・流通
  • 大江 孝明, 竹中 正好, 根来 圭一, 北村 祐人, 松川 哲也, 三谷 隆彦, 赤木 知裕, 古屋 挙幸, 岡室 美絵子, 土田 靖久
    2016 年 15 巻 4 号 p. 439-444
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    果実の追熟条件の違いが,ウメ ‘露茜’ 果実のアントシアニンの蓄積や果実成分含量に及ぼす影響について調査した.エチレンを添加して20°Cで追熟した場合,果皮を含む果肉のアントシアニン含量は,追熟後4日頃より急増した.エチレンを添加して同じ期間追熟した場合,アントシアニン含量は20°Cおよび25°Cが15°Cおよび30°Cに比べて高かった.エチレンを添加すると追熟中にアントシアニン組成が変化した.赤く色づき始める前に収穫された果実では追熟後の赤色着色が不十分であり,適熟で収穫した果実ではそれより前に収穫した果実に比べて,追熟後のアントシアニン含量が低かった.追熟により果実全体が着色した果実では,大きさの違いはアントシアニン含量に影響しなかった.アントシアニン以外の果実成分については,リンゴ酸が追熟前後ともに,採取日が遅くなるほど高くなった.また,ポリフェノール含量は,追熟により高くなった.結論として, ‘露茜’ 果実の収穫時期や追熟温度により追熟後のアントシアニン含量が大きく変わることが確認された.アントシアニン含量を効率よく高めるためには,果実全体が色づく適熟期よりもやや未熟な,果実表面の3~5割着色した果実を収穫して,エチレンを添加し,20°Cで4日程度追熟させるのが適当と考えられた.

  • 渡邉 祐輔, 宮島 利功, 中野 優, 市村 一雄
    2016 年 15 巻 4 号 p. 445-452
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

    チューリップ切り花では,花茎の伸長と葉の黄化が観賞価値を低下させる.そこで,異なる濃度のエテホン,6-ベンジルアミノプリン (BA) およびジベレリン (GA3) を用いた前処理が,チューリップ‘クリスマスドリーム’ 切り花の品質保持に及ぼす影響を調査した.25, 50および100 mg・L–1のエテホン処理により花茎の伸長は抑制されたが,花の品質保持期間は約2日間短くなった.5, 25および125 mg・L–1のBA処理は葉の黄化を抑制したが,花の品質保持には効果がなかった.GA3処理は葉の黄化抑制にわずかな効果しかみられず,花の品質保持にも効果がなかった.そこで,50 mg・L–1エテホンと25 mg・L–1 BAを組み合わせた前処理を行ったところ,花茎の伸長と葉の黄化が同時に抑制された.他のチューリップ切り花7品種においても,同様の結果が得られた.以上の結果から,エテホンとBAを組み合わせた前処理がチューリップ切り花の花茎伸長および葉の黄化の抑制に有効であると結論した.

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