キク(
Dendranthema grandiflora(Ramat.)Kitamura)‘神馬’のシュートセグメントを用い,湯あげや生け水への界面活性剤の添加による水あげについて,生け水の物理的特性との関係を検討した.相対湿度を100%近くとし温度を0~40℃にかえて水あげを行ったところ,高温ほど新鮮重の回復が早くなった.水あげ開始6時間目の新鮮重(y)と生け水の動粘度(x)との関係は有意に直線回帰(y = −3.86x + 103.10,R
2 = 0.92**)され,同時刻までの吸水量(y)とは反比例の関係〔y = 10.36x/(−0.28 + x),R
2 = 0.94**〕にあった.これらの実験結果から,切り花による吸水は部分的にはハーゲン・ポワズイユの法則から説明することができ,湯あげによる吸水促進効果は水の動粘度の低下が通導抵抗の低下をもたらしていることに起因していることが示された.生け水へポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテルや「新グラミン」のような界面活性剤を添加したところ,低温下でも新鮮重の回復が速やかとなった.これらの界面活性剤を添加した生け水の表面張力は脱塩水の半分近くにまで大きく低下し,このことが導管内へ入った水のマトリックポテンシャルの上昇を介して水あげを促進しているのではないかと考えられた.
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