園芸学研究
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原著論文
繁殖・育苗
  • 馬場 隆士, 守谷 友紀, 花田 俊男, 岩波 宏
    2024 年 23 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    近年選抜された果実品質が優良なカラムナータイプ盛岡74号において,ジベレリン施用により育苗1年目に生育を促進した場合,翌年の苗の生育がどのような影響を受けるか解明することを目的とした.1年生苗の移植を行わなかった場合,育苗1年目のGAペーストの施用は,翌年の主幹延長枝の伸長量を減少させる一方,花芽形成を増加させた.この主幹延長枝の成長抑制は,翌年にもGAペーストを塗布することで克服された.しかし,2年連続で施用した苗と2年目にのみ施用した苗の間で樹高には差がなく,2年育苗では2年目のみ施用する方が実用的と考えられた.1年生苗を移植(定植)した場合でも,1年目のGAペーストあるいはジベレリン液剤の施用は,2年目の主幹延長枝の伸長量を低下させた.しかし,無施用の苗と比べると,施用した苗の方が2年目生育終了後の樹高が大きく,側枝や花芽も増加していた.接ぎ木当年にあたる1年目のジベレリン施用は,穂木乾物重を増加させる一方で根乾物重を低下させていたため,ジベレリンを施用しなかった苗では,根量が多いために移植による損傷を受け,翌年の生育抑制がおきやすいと推察された.これらの結果から,1年育苗でも,ジベレリンの施用による成長促進は,初期の樹冠拡大や着果部位の増大に対する有効性があると考えられた.

栽培管理・作型
  • 本間 優, 安 東赫, 東出 忠桐
    2024 年 23 巻 1 号 p. 7-20
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    パプリカ(Capsicum annuum)は,栽培期間中に着果率が大きい時期と小さい時期を繰り返す特性を持ち,着果率の増減に伴う収量の増減(フラッシュ)が発生する.フラッシュの発生には総乾物生産量と着果負担の多少,つまり両者のバランスが大きな影響を及ぼすことが確認されており,両者の比率であるソース・シンク比を用いることでフラッシュの発生を精度よく説明することができる.そこで,本試験では,1果重が異なる4種類のパプリカ品種(‘Artega’,‘Nagano’,‘Nesbitt’,‘Trirosso’)を対象として,250日間の長期養液栽培を実施し,ソース・シンク比と着果率および収量との間の関連を分析した.中~大果系品種は小果系品種に比べて着果率とソース・シンク比の変動が大きかった.そして,1果重の違いに起因する着果負担の多少が,振幅の大きさに影響を与えていると考えられた.また,開花後1週間のソース・シンク比と着果率との間の回帰曲線は統計的に有意であり(P < 0.001),品種ごとに異なる傾向を示した.以上から,1果重が異なるパプリカ品種では,品種ごとのソース・シンク比を求めることで,着果率や収量の変動の予察および制御を実現できる可能性が示唆された.

  • 佐藤 淳, 竹田 宏行, 中野 優
    2024 年 23 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    新潟県ではエダマメ需要が最も高まる7月中旬~8月下旬に県産エダマメを継続的に出荷するため,様々な品種が栽培されている.従来は白毛系品種から‘新潟茶豆’につなぐ作型が一般的であったが,より早期に茶豆品種を出荷したいとの要望に応えるため,早生の茶豆品種である‘新潟系14号’が育成された.本来は白毛品種が主となっている早生作型に対応した品種だが,幅広い作型に適用できれば,さらなる普及が期待される.本研究では,‘新潟系14号’において収量を確保できる作期幅を明らかにするため,標準作型(4月下旬播種)から7月下旬播種までの作型を設定し,収量性を評価した.7月下旬播種では4割ほどの収量にとどまったが,6月下旬以前の播種では標準作型と同等の収量が確保できた.また,すべての供試作型で草姿に差はみられず,同様の管理で栽培できることが明らかとなった.その際,開花後積算平均気温を説明変数とすることにより,すべての作型において莢厚の推移を精度良く推定できた.なお,主茎最上位節に着生する莢厚を測定することにより株全体の莢厚を推定できるため,圃場において短時間で作業性良く莢厚を調査することが可能である.併せて,年々増加する本品種の種子需要に対応するため,新潟県において良質な種子を得られる播種日を検討した.その結果,8月上中旬に播種すれば,整粒割合および発芽率が高くなることが示された.

  • 今 智穂美, 松田 正利, 谷川 法聖, 庭田 英子, 鎌田 直人
    2024 年 23 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    2011~2021年産にかけて青森県でニンニク‘福地ホワイト’を対象に透明マルチ栽培で試験を行った.平均の消雪日は3月7日,りん片分化期は4月19日,A品収量が最も高くなる収穫期は6月30日であった.りん片分化期は消雪日から約220°C・日の積算気温で到達し,収穫期はりん片分化期から約1010°C・日の積算気温で到達した.収穫期の予測に用いるため,消雪日もしくはりん片分化期から一定の積算気温で達する推定の収穫期と実測の収穫期の誤差を求め,RMSEが最も小さくなる積算気温を決定した.その結果,消雪日後積算気温1240°C・日以上に到達した月日を収穫期の推定値とすると,実測値とのRMSEは4.15日であった.また,りん片分化期後積算気温1010°C・日以上に到達した月日を収穫期の推定値とすると,実測値とのRMSEは4.00であった.さらに,栽培途中に収穫期を予測するため,積算気温を活用し気温の平年値と実測値から,予測値と実測値の誤差を算出した.その結果,消雪日以降平年値を用いると約7日,消雪日後90日以降平年値を用いると約4日,りん片分化期以降平年値を用いると約5日,りん片分化期後50日以降平年値を用いると約3日のRMSEで収穫期を予測できた.

  • 犬伏 加恵, 山内 雄太, 上田 浩史, 保富 正行, 二村 幹雄
    2024 年 23 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    白色スタンダードバラの主力品種‘アバランチェ’が高温期にオレンジ色を呈する現象に対し,発生条件の解明と対策の検討を行った.花色変化の原因となる色素はβ-カロテンであることを特定し,様々な条件で収穫および管理したバラの花弁のβ-カロテン含量を測定した.その結果,25°C 24時間の水あげでは変色しなかったが,3°C 24時間の水あげを行うとその後の25°Cでの観賞中にβ-カロテン含量が高まった.収穫直後に20°C 4時間以上の予措を行ってから3°Cの冷蔵庫に入れるとβ-カロテン含量は0.1 mg・100 gFW–1となり,見た目で変色を感じないレベルまで低下した.また,収穫時刻については,日の出後2時間および4時間に収穫した‘アバランチェ’はβ-カロテン含量が高く,日の出前2時間および日の出後10時間では低かった.さらに,生産現場での収穫および出荷を想定して,収穫時刻と冷蔵庫での水あげ時間の長さを変えて花色変化を調査した結果,16時頃収穫の場合にβ-カロテン含量が低くなるなど上述の結果を支持するものであった.栽培期間中の気温は,23°C一定以上でβ-カロテンが検出され,高い温度ほど含量が高くなった.以上から,栽培環境の制御による対策は現実的ではなく,収穫時刻の調整や収穫後の水あげ温度の変更による対策を推奨する.

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