MTはCd暴露に対して防御作用を有すると考えられている。本研究では,シクロヘキシミド(Cy)によりMT合成を抑制された場合,Cd暴露によって血清中酵素活性,肝,腎中Cd,Zn,Cu濃度ならびに肝,腎上清中の3金属の結合蛋白組成に如何なる影響を及ぼすかについて雌雄のマウスを用いて実験を行い,以下の結果を得た。
1) Cy,Cdの同時投与により肝中MT濃度は,Cd単独投与群に比べて,雄30%,雌で19%に減少し,腎では雄で55%,雌で64%に減少した。
2) Cy,Cdの同時投与により肝Cd濃度は,Cd単独投与群に比べて雌雄共に約85%に減少し,腎Cd濃度は雄で124%,雌で112%に増加した。
3) 肝,腎中Zn,Cu濃度に対して,MT合成抑制による影響は認められなかった。
4) 肝上清の蛋白結合Cdの組成は,Cd投与によりMT画分に雄75%,雌82%存在したが,Cy,Cdの同時投与により,雄45%,雌28%に減少し,高分子量画分のCd割合が増加した。腎のホモゲナイズ上清では,Cd投与群においても大部分が高分子量蛋白に結合していたため,MT合成抑制によるMT画分のCdの減少は著変を示さなかった。
5) 肝,腎上清の蛋白結合Znは,対照群,Cd投与群共に,すべてMTより高分子量蛋白に結合して存在しているため,MT合成抑制による影響は認められなかった。
6) 肝,腎上清の蛋白結合Cuは,対照群,Cd投与群に共に大部分のCuがMTより高分子量蛋白に結合して存在しているため,MT合成抑制による著変は認められなかった。
7) Cd暴露に対するMT合成抑制による血清酵素活性(GOT,GPT,Al-P,LAP)および血清Cu濃度への影響は明らかでなかった。
以上より,Cd暴露時にMT合成が抑制された場合,肝中CdはMT以外の蛋白に結合する割合が多くなると共に,腎へのCd移行が促進され腎中Cd濃度が高くなることが示唆された。
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