都市計画論文集
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51 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の149件中101~149を表示しています
  • 鈴木 勉, 三浦 英俊
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 909-914
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,一様な人口分布と稠密な格子状交通網および放射環状交通網を持つ都市において,典型的な経路に対する流動量密度分布および交差密度分布を求めることを目的としている.格子状交通網では,内回り経路と外回り経路の混合型を考え,外回りへの誘導することが移動距離の増加を伴わずに交差によるロスを減少させることができることを明らかにした.放射環状交通網では,放射・内部環状・外部環状・外周・Kahlsruheの5経路について比較し,放射・外周・Kahlsruhe経路は放射方向の負荷が大きくなること,内部環状・外部環状経路は環状方向の負荷が大きくなること,交差密度は,Kahlsruhe経路では中心部ほど高く,内部環状では中間部,外部環状ではさらにその外側において高くなること,交差総量は,Kahlsruhe経路では約24%となり,平均距離が最短であるが,逆に交差によるロスが内部環状などよりも大きくなることを明らかにした.
  • 栗田 治
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 915-922
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    この研究は同一平面上にある二つの領域間の直線距離の積率を取り扱うものである.まずそれぞれの領域にある点同士の距離を,領域の重心間の距離の逆数によって展開する方法を示す.その展開式のN乗をそれぞれの領域の直積上で積分することにより,N次積率を計算し,近似公式を作成する.本論文では数値積分によって厳密値を求めることによって,近似精度を詳細に評価する.
  • 山田 育穂, 岡部 篤行
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 923-928
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    空間自己相関は,地域の空間的な近接性と属性的な類似性との関連を示す概念であり,都市空間で発生する事象の空間分布やその背景にあるプロセスを理解するうえで,重要な役割を担っている.MoranのI統計量は,地区データの空間自己相関を扱う際に最も広く用いられている手法のひとつであるが,その潜在的な問題については一般にあまり認識されていない. MoranのI統計量による検定がその分布の漸近的な正規性を仮定して構築されているのに対し,通常のデータでI統計量の正規性が達成される可能性は低い.従って,I統計量の正規性を仮定した仮説検定では結果に偏りが生じる恐れがあり,またこの問題を避けて用いられるシミュレーションによる検定方法であっても,結果にはシミュレーションに特有のばらつきが生じる.そこで,本研究ではMoranのI統計量の確率分布の裾野に着目した大規模シミュレーションを通じて,仮説検定で用いられる棄却限界値の推定式を構築する.達成の難しいI統計量の正規性や都度のシミュレーションに依らない平易な推定式を提供することで,検定結果の安定と信頼性の向上に資することを目的とする.
  • 貞広 幸雄
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 929-936
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    比較と分類は,複数の点分布間の関係を分析する際の有用な基礎的手段である.本論文では,複数の点分布を比較,分類する新たな手法を提案する.空間データの誤差に対する頑健性を担保するために,ここでは点分布を連続分布に変換して用いる.得られた連続分布に基づき,分析の空間尺度の関数としての分布間類似度指標と,尺度に依存しない単一の非類似度指標を提案する.後者を距離行列として用いると,点分布の分類が可能となる.提案した手法の有効性を検証するために,ブリズベンにおけるスマートカード利用者の行動履歴データに適用したところ,手法が適切に類似性を評価し,また,通常の視覚的分析や既存手法では検出し難い空間パターンを抽出できることが確認された.
  • 千葉県君津市を対象として
    安田 知理, 秋田 典子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 937-943
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では今回は都市計画区域外の開発実態を明らかにするために、首都圏近郊整備地帯のうちスプロールが進展している既成市街地が含まれていない千葉県内で、線引きにより制度上は開発の立地コントロールがされている12市町の中で都市計画区域外の面積が最大の千葉県君津市をケーススタディとして抽出して研究を行った。統計資料による文献調査、現地調査と住宅地図・GISデータを用いての空間分析、住民へのアンケート調査を行い、(1)人口動態の分析、(2)公共施設、交通の整備状況の分析、(3)住宅が増加している立地の分析、(4)アンケート調査による転入者の特性分析を行い、都市計画区域外において住宅開発が行われているエリアとその住宅立地の特性、開発に伴う人の移動と時間の経過による開発された住宅の変化を明らかにした。
  • 浜松市を対象として
    浅野 純一郎, 上田 政道
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 944-951
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、南海トラフ巨大地震の津波浸水想定区域に市街化調整区域が広く重複し、かつ津波防災地域づくり推進計画でも先行する浜松市を対象とし、東日本大震災前後の開発動向を比較分析しながら、開発許可制度の運用による津波危険区域からの移転誘導の可能性と課題を考察することを目的とする。開発許可及び建築許可データ、現地調査、居住者アンケート調査を行い、(1)海側の市街地縁辺集落を中心に、東日本大震災後に開発や建築行為が減少したこと、(2)またそこで開発が行われる場合も浸水想定深や嵩上げが考慮されていること、(3)開発許可制度としての対応は、危険区域における居住制限(規制強化)ではなく、むしろ避難や回避を目的とした調整区域の技術基準の緩和(高さ制限)や用途緩和(津波避難ビルの許可)が行われていること等を明らかにした。
  • 飛び市街化区域と調整区域内の住宅団地に着目して
    松本 卓也, 松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 952-959
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は地方都市で、開発後30年以上を経過した飛び市街化区域と市街化調整区域の住宅団地を対象に、住宅団地が抱える課題を明らかにし、今後の住宅団地のあり方を探ることが目的である。 住宅団地が開発された当初、家族世帯が多くを占めたが、子どもが親元を離れ、世帯人員が減少し、人口が減少した。現在は高齢化が進み、10~20年後には人口が急減し、空き家の急増が予想される。住宅団地内の商業・医療施設の有無など、日常生活の利便性に関わらず、住民の居住継続意向は強い。 利便性が高い住宅団地は、住民の満足度が高く、自治体は地域の拠点として人口集約する方針である。日常生活は自家用車に依存するため、利便性が低い住宅団地では代替の交通手段が必要である。住民の満足度は低く、自治体もこのような住宅団地を積極的に存続させる意向がない。住民を救済しつつ、今後は撤退を検討すべきである。
  • 多摩ニュータウン近隣センターの機能変化と利用実態に着目して
    田島 靖崇, 後藤 春彦, 山村 崇
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 960-965
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    初期に開発された日本のニュータウンは現在、人口減少や施設の老朽化などの問題を抱えている。とりわけ、これらのニュータウンの商業施設として計画された「近隣センター」は苦境に立たされている。そこで、周辺エリアを含めて、商業環境の変化を丁寧に読み解き、生活拠点としての近隣センターの役割を再定位することは重要であると考えられる。 本研究では、以下の3点を明らかにした。1)ニュータウン内部に加えて、隣接地域を含めた商業施設立地から、当初近隣センターが担っていた商業機能の一部が外部に移っていること。2)近隣センターの機能変化として、小売店舗数が減少し、新たにNPOや福祉が新規参入している傾向があり、近隣センターによって、機能変化の程度に差があること。3)住民は距離的近接性を重視して近隣センターやコンビニを選んでおり、こうした実態は近距離施設の重要性を指摘していること。
  • 東京都心および近郊の異なる地域におけるアンケート調査に基づく比較研究
    末澤 貴大, 荒井 智暁, 岸本 達也, 山田 崇史, 伊藤 駿太
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 966-971
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都心と郊外では、成り立ちの背景が異なる多様な居住地が存在し、土地利用や建物形態に変化がある地域が存在する。また、まちづくりの主導者である行政と、実際の居住者とでは、街に対する知覚・認識が一致していない可能性がある。住環境を、住み良いか否かという視点で捉え、住民が街の住環境をどのように感じているか検証を試みている研究は数多くあるが、異なる特徴を持つ地域間での住環境の評価を比較検証している研究は数少ない。本研究は、アンケート調査によって、東京都心部とその近郊における集合住宅と戸建て住宅の実際の居住者による住環境評価を調べ、比較することにより、居住地による住環境の違いを明らかにし、居住者の生の声を検証するものである。
  • 長曽我部 まどか, 小川 宏樹
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 972-978
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,和歌山市郊外の賃貸共同住宅世帯に対しアンケート調査を行い,居住者の住宅ニーズを明らかにした上で,中心市街地の周辺施設環境と共同住宅の評価を行った.共同住宅を評価するために,各種統計情報から詳細地区の空き家率の推計方法を開発した.調査結果より,転居先として,居住地周辺と一戸建てのニーズが高いことが明らかになった.一方で,中心市街地における共同住宅は,地区によっては空き家率が高い,かつ回答者の周辺施設に対するニーズを満たすことから,郊外の賃貸住宅居住者の受け皿として活用できる可能性が示唆された.また,地区毎の空き家率に違いがあることから,中心市街地の共同住宅に対しては,地区の特性に応じた対策が必要であることも示唆された.
  • オストラヴァ市Ostrava-Jih地区を事例として
    田中 由乃, 神吉 紀世子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 979-986
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    チェコ共和国オストラヴァ市は、社会主義時代に工業都市として開発が進んだが、近年は産業の空洞化等による人口減少に直面している。本研究では、オストラヴァ市内の社会主義時代の住宅開発地の一つであるOstrava-Jih地区を対象に、アーカイブ資料分析、現地踏査、行政関係者と地区住民へのインタビュー調査を行い、多様な社会層の市民の生活の場となっている社会主義時代の住宅開発地の現状と、そこに暮らす住民の評価を明らかにした。住民インタビューの結果から、現在のOstrava-Jih地区に共通して自然の豊かさと住宅地内の商業施設や公共施設へのアクセス性の良さが評価されていたことが分かった。その一方で民主化以降の変化として、開発時期の早かった地域の高齢化、住宅所有者の変化、商業施設の開発による利便性の改善や遊具付き公園の増加、政策による住宅の高級化やそれに伴う低所得者層の転居、居住者の自主的な公共空間改善の取り組みなど局地的な差異が生じることによって、現在のOstrava-Jih地区内部の実情は複雑化していることが明らかになった。
  • 開発の特徴と町内会の体制に着目して
    劉 冬晴, 後藤 春彦, 馬場 健誠
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 987-993
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    1990年代後半から、急速な高層マンション建設により都心回帰が起こり、東京の都心部における新規住民流入が著しい。既存住民と新規住民の地域交流における問題は数多く指摘されており、近年は地縁の希薄化などにより町内会の重要性が再認識され始めている。このような背景を踏まえ、人口流入の多い高層マンション集積地において、町内会における新規住民と既存住民の関係性や交流に着目する必要性がある。本研究では、東京23区の主な高層マンション集積地に着目してその特徴を整理し、各町内会が運営する地域活動と既存住民と新規住民の交流の実態を把握する。また、既存住民と新規住民の活発な交流が多数行われている町内会を選定し、コミュニティ構築を促す取組みと体制を明らかにする。以上の2点から、高層マンション集積地における開発と町内会体制の関係性を整理することにより、今後の町内会運営への示唆とする。
  • アーティスト・リロケーション・プログラムの事例から
    内田 奈芳美, 敷田 麻実
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 994-1000
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、「官製」ジェントリフィケーションと定義したケンタッキー州パデューカ市のアーティスト・リロケーション・プログラムを研究対象としてジェントリフィケーションの実態とそのジレンマを分析するため、分析軸1:不動産価格の高騰、分析軸2:「文化的な消費地」化という二つの分析軸を設定し、実態を明らかにした。「官製」ジェントリフィケーションとして、本地域では新規住民・用途の流入、それにともなう不動産価格の上昇、アートという用途の集積という意味で仕掛けた側である行政としての目的は果たされていたが、消費地としての難しさと、アートをビジネスとして見た際の、認識の差などから、主体間での意見の違いが見られた。しかし、調査の結果、アート・コミュニティが、アート・ビジネスを地域で支えるほどまでには至らなかったとしても、集積のメリットを感じられる地域の魅力をつくりだしていると認識していることは明らかとなった。
  • 詳細実態調査と所有者・住民意向調査に基づく今後の維持保全方策の検討
    石山 慧, 樋口 秀, 中出 文平, 松川 寿也
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1001-1007
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は新潟県長岡市の旧長岡地域に残る、公有地上に立地するという独特の特徴を有する雁木および雁木通りの現状と雁木通りに係わる人々の雁木通りに対する意向を明らかにし、雁木通りの今後のあり方を検討することを目的とする。雁木通りと人々への調査の結果、長岡のまちなかには1503棟、総延長10,959mの雁木が存在した。また、雁木が設置された通り(雁木通り)は201本で、そのうち84本は設置率や連続性が高く、残すべき通りである。しかし、全体としては、雁木の老朽化や低未利用地による雁木の断続の問題を確認した。今後は、雁木通りを限定しながらも、存続を図ることが必要と考える。そのためには、長岡市民が雁木通りを長岡の財産と認識することが重要である。
  • 大邱「北城路近代建築物リノベーション事業」を事例に
    鄭 一止
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1008-1015
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    1997年、ソウルの旧朝鮮総督府が撤去されたことは記憶に新しい。象徴的な植民地遺産を壊すことで「歴史の清算」が試みられた(白、2012)。この事件以来、近代建築に対する保全の声は徐々に大きくなり、ソウル駅の保存・活用や旧大法院のリノベーション・活用など近代建築を積極的に地域空間資源として活用する事例が増えてきた。しかし、日式建築の専門家の不足、植民地遺産の保全に対する一部市民の反対の声など、韓国ならではの状況の中、単発事業に留まっている。また、「無国籍性」とも言われる韓国のハイブリッドな近代都市景観の重層性について考慮した観点も欠けている。そこで本稿では建築設計をはじめ、建築史、生活史の専門家たちによって構成された専門家チームによりまちづくりの支援と審査を行っている大邱市「北城路近代建築物リノベーション事業」を対象に韓国の近代都市景観の再生手法について考察を行う。事業の背景と特徴について概観した後、事業の各段階における協議内容とその論点について分析する。最後に、近代都市景観の再生手法について考察を行う。
  • 地方自治体の取り組みと市民ニーズの比較
    高瀬 唯, 古谷 勝則
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1016-1023
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    生物の生息環境の基盤となったり,人間にとって快適な都市空間の基盤となる緑地を保全し,その質を高めることは社会的に重要なことである。本研究の目的は,「地方自治体による緑地保全活動に関する市民参加促進の取り組みと市民ニーズとの間にギャップが存在する」という仮説を検証しながら,地方自治体による緑地保全活動に関する市民参加促進の取り組みの現状と課題を明らかにすることである。緑の基本計画を策定している日本全国の地方自治体を対象に,郵送調査を行った。433の市区町村から回答を得た。調査の結果,活動団体および保全活動に関心を持つ市民に対する施策は充実しているものの,保全活動への関心がない市民に対する施策は非常に少なかった。施策のうち,活動費用や活動意義に関する施策が多くの自治体で実施されていた。一方,「活動場所が遠い,交通の便が悪そう」と多くの市民が意識しているにも関わらず,その課題に対する施策を行っている自治体は少なかった。
  • 個人活動と集団活動の違いに着目して
    浜田 麻里奈, 飯田 晶子, 横張 真
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1024-1029
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、個人活動と集団活動という農の活動の形態に違いに着目し、高齢者の身体的・精神的・社会的健康の維持に影響を与える農の活動の具体的内容を明らかにすることを目的とする。その結果、以下の結論を得た。(1)農の活動を含め社会活動を数多く行う活動的な高齢者は、一般的な高齢者と比較して健康状態を維持している者の割合が高い。(2)農の活動は、その他の社会活動と比較して、高齢者の身体的・精神的・社会的健康の改善または維持に対して、より大きな効果がある。(3)個人活動型では、主に『運動の習慣化』、『育てて食べる喜び』、『農作業を目的とした外出』といった野菜の栽培を通じた農の活動が、それぞれ身体的・精神的・社会的健康の維持に影響を与えている。一方、集団活動型では、それらに加えて、『栽培技術向上の喜び』や、『仲間と交流する喜び』、『仲間との交流を目的とする外出』といった仲間との交流を通じた農の活動が、それぞれ精神的・社会的健康の維持に影響を与えている。今後、農の活動を通じて高齢者の健康維持を図っていく上では、個人活動のみの促進を行うだけではなく、集団活動を付加することで、より大きな効果が期待できると考えられる。
  • 東京郊外を対象として
    長瀬 健介, 中井 検裕, 沼田 麻美子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1030-1037
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東京では駅を中心に作られた街が多く、異なる路線の複数駅が近距離に位置する地域では各駅が相互に影響しながら街の発展に貢献してきた。複数駅に挟まれた地域では都市整備のあり方として駅間を一体的に見た発展の可能性が考えられる。東京都郊外地域において駅間の距離が1km以内で住宅地を挟んでいるものを除く67ペアを商業地の連続性により分類し、駅のペアの特徴についての分析、街の歴史的発展過程や自治体による複数駅を一体的に見た施策の調査を行った。その結果、駅間が連続的に発展している地区の多くは両駅の規模の差が小さく、戦前に開業していたことがわかった。一方、同様の条件のペアで駅間が発展していないものもあり、そのような地域では一体的に見た拠点整備が望まれる。
  • 寝屋川市萱島東地区における調査と分析
    芳原 拓実, 田中 貴宏, 稲地 秀介
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1038-1045
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の多くの木造密集市街地は、主に防災上の観点から、街路拡幅等を含む市街地再編が求められている。しかしその一方で、木造密集市街地の街路が、日常的なコミュニケーションの場になっていること、安心感や親近感などを得られる場となっていることなどが指摘されており、市街地再編の際にはそのような良さも活かす必要があると考えられる。そこで本研究では、そのような市街地再編の際に参考となる街路空間設計指針作成を最終目的とし、その第一歩として、大阪府寝屋川市萱島東地区を対象に現在の木造密集市街地における街路の行動者量とその物理的環境との関連を明らかにすることを目的とした。また、街路の行動者量が人々の印象評価に及ぼす影響についてもあわせて分析を行った。その結果、行動者量は位相構造、街路幅員、土地利用による影響を一定程度受けており、またその行動者量は住民の街路に対する印象評価にも影響を及ぼしていること等が示唆された。
  • 宮川 雅史, 姥浦 道生, 贄田 純平
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1046-1053
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    大震災からの復興プロセスにおいては、被災や移転等の影響を受け、都市空間形態の変容が生じる。本研究は東日本大震災の被災地における地理的条件と都市計画法による規制の指定状況の異なる4市町村を対象に農地転用申請の実態及びそれにより形成されている都市空間の実態を明らかにすることを目的としている。各市町では震災後に農地転用申請は住宅への転用を中心に急増していた。これらは線引き都市では市街化区域内の農地を中心に転用することで埋め込み型の開発がされていたが、非線引き都市では市街地周辺部の農地を転用し都市空間の拡大が発生していることが明らかになった。このような無秩序な開発を防ぐため、平時より土地利用規制を強めていく必要があると考えられる。
  • 避難指示解除準備区域に指定された南相馬市小高区の第2次・第3次産業を対象として
    李 美沙, 窪田 亜矢
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1054-1061
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東日本大震災によって原発複合災害を経験した福島県南相馬市小高区において、震災前に第二次・第三次産業を営んでいた事業所のうち、相双地域で事業を再開している方々を対象とした聞取り調査をもとに、生業再生への示唆を得ることを目的とした研究である。結果として、復興事業や除染作業が進行中である状況下において、7つの諸要素((1)場所、(2)設備、(3)材料、(4)技術、(5)人、(6)需要、(7)事業者間ネットワーク)がいかに事業再開に寄与したか、あるいは、支障となっていたのかを明らかにしている。また、個々の事業所の実態把握を通じて、避難指示解除準備時期における地域の生業がいかなる状況にあるのかを類型化すると、1)震災後の特殊な需要に対応している、2)事業主の意思によって再開するか否か、いつ再開するかを比較的自由に決めている、3)事業主の意思によらず、震災前からの社会的環境から再開を決めている、といった3つの場合があることが分かった。
  • ドイツ,旧グライフスヴァルト原発の事例研究
    乾 康代, 齊藤 充弘, 中田 潤
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1062-1069
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国で今後増える原発立地地域における廃炉後の地域再生の課題を明らかにするために,ドイツのグライフスヴァルト原発の廃炉会社EWN社と地元自治体の地域再生の取り組みの成果をまとめた。1)利用できる原発施設と跡地は出来るだけ利用することを目標に,地元3自治体はEWN社と共同で,跡地の地区詳細計画を策定した。2)この計画に沿い,地元自治体は工業港を建設,跡地の一部を工場団地にし企業誘致をしている。3)原子炉解体と再利用整備,放射性廃棄物中間貯蔵施設,インフラ整備は,州政府,連邦政府およびEUの支援と財政措置によって実現された。4)一方で,敷地内の中間貯蔵施設では他原発の廃棄物受け入れがすすみ,地域の将来に不安の波紋を投げかける施設となっている。わが国を振り返ると,東海村の将来計画には,跡地利用計画と廃棄物貯蔵をどう位置づけるのかの記述はない。計画にこれらをどう位置づけるのか議論の積み重ねが求められる。
  • 個別企業と地域の分析を通じて
    福田 崚, 城所 哲夫, 瀬田 史彦, 佐藤 遼
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1070-1077
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東京一極集中を緩和・解消すべく企業を地方に移転する必要性が指摘されているが、産業活動の面から見れば東京に立地するメリットは大きく、その実現は容易ではない。既往研究では地方移転を惹起する様々なファクターが指摘されているが、定性的な分析に留まっており、また空間的な示唆に乏しい。本研究では、評価のために企業移転を用い、ルーチン的な観点から「非合理な」企業を抽出した上で、(1)ネットワーク(地域にの多様なリンク)(2)立地環境(魅力的な地域資源、それに敏感な主体)(3)中心市街地(集積による密度の高さと多様性)の三つのアプローチから定量的にこれらの移転を説明することを試みた。上の結果、「非合理な」企業は高度人材を志向して移転しており、それらの企業はイノベーションに重きを置いていることが多いことが明らかになった。また地域レベルで見ても、三つのアプローチいずれも流入企業を惹きつける誘因たりうることが示されたが、その中でも地域内のネットワーク構造が大きく影響していることが示唆された。
  • ノルドライン・ヴェストファーレン州のREGIONALE(レギオナーレ)に注目して
    太田 尚孝, 有田 智一, 服部 敦
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1078-1085
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、ドイツにおける時限型・プロジェクト型・非法定型の地域開発手法であるNRW州のREGIONALEの仕組みと実態を明らかにすることである。文献調査とインタビュー調査等に基づき、明らかになった点は以下のとおりである。1)REGIONALEとIBAエムシャーパークとの共通点・相違点はIBAエムシャーパークの遺産とNRW州政府の戦略的思考の結果といえること、2)REGIONALEは法定計画の補完的役割を担っており、実践面の成果をみるとアイデアから具体的計画づくりへの橋渡し役ともいえること、3)REGIONALEは透明性のある認定基準やカテゴリー化を基盤にプロジェクト認定から実現に至るまでエージェンシーのサポート体制が行われていること、4)先進的試みであったとしても中長期的な継続性の難しさや、民間企業との連携、評価手法等の課題も実態として見受けられること、である。
  • 山形県鶴岡市銀座八街区に着目して
    前田 直哉, 菅野 圭祐, 佐藤 滋
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1086-1092
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    山形県鶴岡市の中心市街地における、権利界を超えた土地利用が見られる「曖昧な空間」に着目し、現地調査、ヒアリング調査及び歴史的背景との関連性を考察し、藩政期から近現代に至る土地所有の変遷及び共同利用の実態を以下のように明らかにした。第一に、鶴岡市銀座八街区の伝統的都市空間には「曖昧な空間」が数多く存在し、その大半が藩政期の大店の大地主や寺社を起源とした共同所有及び共同借地であった。第二に、共同借地や共同私有地のような空間には、「会」の結成や「責任者」を伴う管理がなされるものがあり、明確な管理体制のもとで管理されている。それ以外の空間に関しては、一般的な公共空間として不特定多数による土地利用が行われている。第三に、藩政期より行われてきた大地主や寺社を起源とする市民同士の多様な主体に対する土地の取引が現代まで継承されている。
  • 横須賀市谷戸地域におけるケーススタディ
    吉武 俊一郎, 高見沢 実, 中名生 知之
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1093-1100
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    都市縮減時代における計画的な市街地縮減について、横須賀市谷戸地域での調査研究を行った。計画開発された住宅地とは異なる、都市基盤水準や建物、居住者に多様性のある、高度成長期以前からの市街地の縮減の方向性の中での豊かな市街地再生を目的とする。特に空き家増加が進んでいる2地域において全区画の目視調査を行い、空き家・空き地発生・消滅と各区画の属性をクロスすることで、空き地空き家が発生しやすい区画の属性とその数を抽出し、谷戸地域における市街地縮減の将来像を検討した。さらに居住者アンケートを行ううことで、居住者の観点からの入居・退去・生活問題を把握した。谷戸地域には都市基盤整備状況や、アクセス利便性などで、縮減の動態が異なってくる。空き地・空き家が半分以上になると考えらえる非市街地化指向地域、安定的な市街地運営を進める地域、緩やかな低密度化を進める地域といったメリハリのある計画的縮減について検討した。
  • 水野 彩加, 氏原 岳人, 阿部 宏史
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1101-1108
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    人口減少下では、都市スポンジ化(都市内部でスポンジ状に空き家や空き地が多数発生する現象)に対応しつつ、都市自体をコンパクトに再編することが求められている。本報告では、まず1)全国810の自治体(政令市、市、特別区)を対象としたアンケート調査(536自治体の回答)を実施し、わが国の空き家及び空き地対策の現状ならびにコンパクトシティとの連携実態を把握した。その結果、わが国の自治体はコンパクトシティ政策や都市スポンジ化に対する問題意識はあるものの、それら双方を両輪として具体的に解決するための方法論は確立できていないことが分かった。その現状をふまえて、2)空き家及び空き地状況に配慮したコンパクトシティ政策との連携手法を独自に提案した。本手法は、コンパクトシティ政策を住宅地レベルから検討するとともに、膨大に発生する空き家及び空き地に対して実際の都市構造の中で優先順位をつけながら対応できる点に特長がある。
  • 河内 健, 赤星 健太郎, 内田 智昭, 坂井 猛, 吉武 哲信, 大森 洋子, 辰巳 浩, 谷口 守, 出口 敦
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1109-1116
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    人口減少に伴い、公共交通サービスや都市機能の維持が困難になる。解決策として、集約型都市構造の実現が挙げられるが、都市の骨格となる公共交通軸の妥当な設定方法については、研究されていない。本研究では、”居住及び都市機能をどこに集約するか”という都市計画の長期的視点により公共交通軸を設定し、その妥当性を検証した。その結果、(1)公共交通軸と重なるバス路線の延長比率は高く、(2)公共交通軸沿線の方がバス路線沿線と比較して都市機能が集積している事が示された。(3)バス事業者、国及び市町村との意見交換を行った結果、設定の考え方について理解が得られた。以上より、本研究が提示する公共交通軸の設定は妥当である事が明らかとなった。
  • 東京スカイツリー開発以前の世代がもつ下町像に着目して
    上井 萌衣, 後藤 春彦, 吉江 俊
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1117-1122
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東京「下町」は、近年東京スカイツリーの開業を契機に観光地化し、多くの観光客を誘致している。加えて、現在下町は、人的・物的双方の観点から、これまでにない都市更新の時期を迎えている。これらの要因から歴史の中で育まれてきた下町像をいかに受け継いでいくかという問題が生じており、今後さらに観光地化していくであろう東京スカイツリー周辺地域でこれまで脈々と共有されてきた下町像を、それが伝承されてきた人間関係のあり方とともに記録し、地域の共有財として継承する必要性を再認識することは、地域の将来像の構築を考える上で重要である。本研究では、東京スカイツリーの建設により近年下町観光地として注目される墨田区の東京スカイツリー周辺地域を対象として、具体的には以下の2点を明らかにする。 1)伝承集団の分類と伝承行動の実態(3章) 2)地域の記憶にみる下町像の世代間差異および語られる下町像と伝承集団の関係(4章)以上より、生活者のもつ地域の記憶と伝承行為からTS開発以前より共有される下町像を捉えた。
  • 塚本 悠生, 十代田 朗, 津々見 崇
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1123-1130
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、江戸時代以前に命名された江戸墨引内の186の坂を対象とし、(1)江戸時代の切絵図等において名称が記載されている坂にはどのようなものがあり、また周辺の状況はいかなるものであったのか、(2)前述の坂の名称は、近代以降現代まで継承され続けているのか、を明らかにした上で、(3)現代まで名称が継承されている坂にはどのような空間的特徴や経緯があるのかを考察している。その結果、(1)幕末江戸では少なくとも186の坂が地図に表記されていること、(2)近代の旧東京15区内には174の坂で名称が継承されていたが、近代後期にはその数は少なくなっていったこと、(3)都区部では1972年以降、行政によって坂の名称や歴史を地域住民に伝える目的で標柱設置事業が行われ、それ以降、多くの名称が地図に表記されていること、(4)現在も坂の名称は消失しているが、明治から戦前、現代かけて消失する数は少なくなったこと、(5)武家を由来とした坂の名称は継承されやすく、一方で地名から名づけられた坂の名称は継承され難いと言えること、(6)坂の交通路としての格は、坂の名称の継承に対して強い影響を与えないこと、が分かった。
  • 秋本 福雄
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1131-1136
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    大正8年、旧都市計画法は公布された。渡辺俊一、大方潤一郎は、ドイツ、イギリス、アメリカの近代都市計画法制を参照した法案起草者の池田宏は土地利用計画の確立をめざしたが、土地利用計画と地域制の概念上の区別が不明確であったため、土地利用計画は制度化されなかった、と述べている。本論文はこの仮説を検証し、(1)土地利用計画は、民間の土地の利用に関する長期的、概括的(従って法的に非拘束)な計画と定義されること。(2) 1910年代のドイツ、イギリス、アメリカの都市計画法制には土地利用計画はなかったこと。(3)池田宏には土地利用計画の観念はなかったこと。(4)池田宏は、アメリカの都市計画家の考えを採用し、土地利用計画ではなく、地域制を導入することを提案し、旧法で実現したこと。(5)彼は、外国の総合的都市計画の理念と、東京市区改正条例の精神を結合することにより、旧都市計画法を世界に類例のない計画法としたことを明らかにしている。
  • 五島 寧
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1137-1144
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    通説では,満州国の都邑計画法は,1968年の都市計画法全面改正を先取りし,1970年の建築基準法第五次改正を越えていたと説明されていますが,その根拠は法律の規定が似ているということです。本研究では,満州国都邑計画法の建築物の用途規制,形態規制および緑地区域について都市計画法や建築基準法と比較分析を通して,制度が継承されているのか考察しました。用途規制は細分化されていますが,満州国に多い新規市街地の統制に適していて,内地や朝鮮・台湾のような既成市街地へは適用しにくく,建築基準法とは異なる方向へ進化していました。また,緑地区域は制度化されたという点で画期的でしたが,要するに土地利用の規制のみに頼った制度の一つでした。1968年の都市計画法の市街化調整区域は,規制のみによる制度の弱点を踏まえて,人口圧力の吸収を考慮していましたので趣旨が異なります。法文上にも思想の違いが顕れていていました。
  • 浦山 益郎, 中島 有紀子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1145-1151
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    旧都市計画法制定前から存在する古集落には,耕地整理や区画整理されても狭小な幅員の道路や複雑な形状の道路網が維持されたものがある。本研究は,戦前名古屋の郊外地域を対象に,確定図等をもとに幅員や道路網などの実態から,古集落の道路計画の特徴を把握することを目的とするものである。以下のことが明らかになった。耕地整理では古集落内には狭小な道路が多かったが,区画整理では古集落内でも1933年内務次官通牒の土地区画整理設計標準を満たす幅員で計画されるようになった。道路網は大きくグリッド型と有機型に分けられるが,耕地整理でも区画整理でも地区全体と同じグリッドパターンが一律に古集落に適用されたわけではなく,従前の集落形態に対応した道路網が選択された。また道路の幅員が拡大されても既存道路の踏襲率が高いことが,有機型古集落特有の道路基盤が維持される要因となっていた。さらに,有機型古集落の道路設計の事例分析から,古集落外の道路と古集落内の既存道路を結びつけるように道路が新設され道路網が計画されていることのほか,社寺や既存道路に配慮して集落構造を維持するあるいは再編する意図が窺える道路計画があることがわかった。
  • 大屋霊城の役割とその計画思想の反映
    八尾 修司, 山口 敬太, 川崎 雅史
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1152-1159
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,総合大阪都市計画(1928)における公園系統計画の成立過程について,関与した主体の動向に着目し明らかにするものである.大阪市区改正設計(1919)の認可後,大阪府都市計画課により,さまざまな種類の公園を公園道路により連絡させる公園系統計画が,都市計画放射路線とあわせて考案された.これは,大阪府兼都市計画大阪地方委員会技師であった大屋霊城が,公園道路のネットワーク機能の重要性に着目し,郊外の大公園と都市中心部を大道路により結ぶ「放射分散式公園系統」という考えを反映したものであった.ここで考案された公園計画案は,関東大震災後,避難路としての機能を付加した道路公園の整備という拡張点がみられたが,財政状況から多くが成案には至らなかった.第二次市域拡張(1925)後には,府が大公園の開設,市が主に市内小公園の経営にあたるという「府市共同」の体制がとられ,市域拡張部分の公園計画は大阪府都市計画課案が引き継がれることで,総合大阪都市計画公園計画として成立した.
  • 戦前の景勝地における都市計画の展開
    西川 亮, 中島 直人, 窪田 亜矢, 西村 幸夫
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1160-1167
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は昭和前期に雲仙で都市計画家によって策定された国際公園計画に着目した。本研究は、次の点で特異的である。すなわち、造園家ではなく都市計画技師によって景勝地の計画が策定されたこと、日本最初の国立公園である雲仙で都市計画法及び市街地建築物法が適用されたこと、そして計画の実現が図られたことである。本研究では、計画の詳細や市街地建築物法及び都市計画法の効果、都市計画技師の谷口氏の役割について考察を行った。計画は道路や広場整備、ゾーニング、施設計画等を含む総合的な計画で当時の都市計画技術が応用されていた。また、1940年東京オリンピックや国立公園整備といった要因もあり、市街地建築物法及び都市計画法によって街路や広場、街並みの整備が実現した。都市計画技師の谷口は計画策定に留まらず法の適用や都市計画決定、都市計画実現に至るまで関わり、計画者及び計画推進者としての役割を果たした。
  • 「緑のふるさと協力隊」を21年間継続する上野村での相互支援に着目して
    藤井 真麻, 後藤 春彦, 野田 満, 森田 椋也, 山崎 義人
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1168-1173
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    1990年代から都市居住者が過疎山間地域に移り住む流れが生まれている一方、過疎山間地域では担い手不足や生産能力の低下等の問題が深刻化している。これまでその改善に向けた様々な人的支援の取り組みがなされてきた。しかし、受け入れ自治体側は、外部人材の任期中の短絡的な成果ばかりを評価する傾向があり、任期後の外部人材との関係維持や協力・協働の方法の模索がなされないまま事業の取り組みを中断してしまうことが多い。今後、都市-過疎山間地域間の人の移動が現在よりさらに一般的になっていく時代を迎えるにあたり、人的支援の取り組みの長期継続により構築された地域内での多様な社会関係の実態を把握することが重要である。そこで、本研究では隊員と受け入れ主体の社会関係の中でも、より親密な関係であると考えられる、相互支援の関係構築に着目し、「緑のふるさと協力隊」事業に長期的に取り組んでいる群馬県上野村において、(1)隊員側からみる相互支援の関係の成り立ち(2)受け入れ主体側からみる受け入れ体制の実態を明らかにする。以上を踏まえ、より早期に隊員と受け入れ主体の相互支援の関係を成り立たせるための受け入れ体制を提言する。
  • 利根川決壊地を対象に
    亀井 優樹, 秋田 典子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1174-1181
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    1947年、カスリーン台風により利根川の栗橋上流地点で堤防が決壊し、戦後最大の洪水となった。本研究ではカスリーン台風水害地において、どのように住まい復興が行われたかを明らかにすることを目的としている。本研究を通じて、カスリーン台風当時、住宅や建築に関する事業は戦災復興院が一元的に管轄しており、罹災者収容のための水害バラックが、戦災復興院の所管の下、埼玉県によって建設が行われたことが明らかとなった。水害バラックは当初から罹災者に移築・払下げを行うことが考えられており、災害公営住宅を建てるというプロセスを経ずに復興が行われた。またいち早く罹災者に住まいを供給するために、十分に水が引いていない中、多くの水害バラックが利根川堤防上に建設された。水害バラックでの生活の質は決して良いものとは言えなかったが、罹災者への移築・払い下げ後、恒久住宅として使用され続けたことなどから、戦後の資金や資材、法制度が不十分な中で、水害バラックは罹災者への住まい供給において、大きな役割を果たしていた。
  • 河西 奈緒, 土肥 真人
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1182-1188
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    2012年夏季五輪・パラ五輪が開催された英国ロンドンでは、「2012年までにラフスリーピング(RS)を終わらせる」という公的目標が掲げられ、多様なレベル・分野の行政体や民間支援団体が構成するLondon Delivery Board(LDB)が中心となってRS政策が展開された。LDBによる政策デザインにはRS生活者の包括的データベースCHAINが活用され、特定のグループに対象を絞った様々な支援策が短期間で生み出された。本論はこうした科学的データを根拠に展開されてきたロンドンのRS政策の変遷を明らかにすると共に、これらの取り組みが五輪を契機にしたものであったという観点から、現在まで遺るレガシーと新たに生まれた課題を、地域における実態から考察した。現在のロンドンにおける新規層への対策はLDBによる政策展開の一つの到達点と見ることができる一方で、支援システムの精度を上げそのシステムに全員をのせようとする取り組みが、逆に移民制度や都市空間制度上の抜け穴を鮮明にする結果となっていた。
  • 大都市周縁部の歴史的空間における製造業の維持の実現
    諸隈 紅花, 窪田 亜矢
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1189-1196
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文はニューヨーク市ブルックリン区のウオーターフロント沿いの、歴史的な造船所のブルックリン・ネイビーヤード(BNY)を取りあげ、歴史的工場群を店舗・住宅等の別の用途に転換することで場所を再生するのではなく、歴史的環境において当初の製造という機能を活かして市営の工業団地として再生する、従来の歴史的港湾の再開発とは異なるタイプの保全型再開発が実現した背景、実態の把握、再生の方法、歴史的環境保全と製造業維持という二つの政策の相関関係を明らかにする。研究の手法は文献調査、2回の現地調査、及び関係者へのインタビューを用いる。BNYが製造業の場として再生された背景には当初からの周囲のコミュニティへの雇用の場としての位置づけ、グローバル経済下における都市構造の変化による中小製造業の工業空間への需要の高まりと「製造業の維持」を推進する民間の団体の存在があった。運営をまかされたNPOは市からの資金援助が少ないなかで補助金や公的資金等の様々な資金源を活用して、再開発を実現した。歴史的環境保全と製造業の維持政策には明確な接点はないが、BNYにおいては両者が一定のメリットを享受することで均衡を保っている。
  • ストリート空間の総合的マネジメントに向けた基礎的調査
    相津 七海, 志摩 憲寿
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1197-1204
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東南アジア諸都市のストリート空間のマネジメントにおいては、「屋台・露店vs合理的な空間マネジメント」という対立の構図ではなく、それらが共存した「総合的マネジメント」がとりわけ強く求められる。本研究は、インドネシア・ジョグジャカルタのマリオボロ通りを事例として、屋台商の置かれた制度的枠組みや社会関係に着目しつつ、屋台業を通じたストリート空間の利活用を明らかにすることを目的とするものであり、また、ストリート空間の総合的マネジメントに向けた基礎的調査として、その成果を報じるものである。本研究を通じて、制度的枠組みと重層的な社会関係の中で、屋台商が屋台業を営み、ストリート空間を利活用する姿が明らかになり、また、屋台商によって創出されるストリート空間の賑わいについても考察した。
  • 岩手三陸沿岸地域の観光地を対象として
    佐藤 史弥, 南 正昭
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1205-1212
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    観光客は観光地の地理的情報を詳細に把握していない場合が多い。観光客が津波などの災害にあった場合、地理的情報の取得度の不足から、浸水域内から早く脱出しかつ、脱出先から避難所に行くことは困難であると考えられる。本研究では、みちのく潮風トレイルで設定されている観光地点を対象とした。浸水域外の観光地点、浸水域内の観光地点で避難経路をネットワーク分析によって算出した。算出した避難経路から観光客の迷い行動を考慮した避難経路の選択について分析を行った。その結果、浸水域外の観光地点では津波が浸水した場合に孤立する観光地点と、浸水域を迂回なければならない観光地点を明らかにした。また浸水域内にある観光地点では、避難中に観光客が迷ってしまい、浸水域内から早く脱出ができない可能性のある観光地点、浸水域内から脱出できても、津波が浸水した場合に孤立してしまい指定避難所に2次避難できない観光地点を定量的に明らかにした。これらの結果から各観光地点で観光客が円滑に避難するために有効な対策を検討した。
  • 清田 勝, 石橋 幸治, 猪八重 拓郎, 木梨 真知子, 林田 行雄
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1213-1219
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、これまで罰則のないパーキングパーミット(PP)制度では健常者の不正駐車を排除するのは難しいと思われてきたが、心理的バリアという新しい概念を導入することによって罰則のないPP制度でも健常者の不正駐車を十分防止できる可能性があることを示したものである。身障者用駐車施設の区分の仕方や設置場所、デザイン等の改善によって発生する不正駐車に対する心理的抵抗感を総合化したものを心理的バリアと定義し、計測方法について検討を行った。また、健常者の不正駐車を防止するためには、個人に基本的に備わっている罪悪感や羞恥心等で表現される心理量(モラル)と心理的バリアの総和が、健常者の身障者用のスペースに駐車したいという欲求を超えたときに、健常者は不正駐車を断念するという不正駐車に関する発生メカニズムを示すとともに、不正駐車を防止するためには心理的バリアをできるだけ高くすることが必要であることを示した。さらに、従来の身障者用駐車施設の設計コンセプトに健常者の不正駐車を防止する対策を組み込んだ新しい身障者用駐車施設の設計コンセプトを構築し、本コンセプトに基づいた身障者用駐車場案(一例)を提案した。
  • 丹羽 由佳理, 高橋 真有, 伊藤 香織
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1220-1225
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、地下鉄駅内外の空間バリアがベビーカー利用者の駅アクセスに与える影響を明らかにすることである。GISのネットワーク分析から、ベビーカー歩行と一般歩行の5分到達圏を比較した結果、ベビーカー歩行の到達圏は狭く、到達圏の形状は出入口条件や周囲の道路状況によって異なることが分かった。実際にベビーカーを利用しているユーザーにアンケート調査を行った結果、回答者の80%以上は駅へのアクセスが不便になったと感じており、「EVはあるが設置位置が悪い」という理由が最多であった。アンケート回答者の自宅から地下鉄駅への最短ルートを探索した結果、歩行ルートが変わらない(15.6%)、駅にEV出入口が無いため最寄り駅ではない別の駅へ歩行ルートが変わる(6.3%)、駅にEVはあるがEV出入口の位置によって最寄り駅ではない別の駅へ歩行ルートが変わる(3.9%)、駅にEVはあるが、EV出入口までの遠回りルートが加わるなど歩行ルートが少しだけ変更する(74.2%)の4つに分類できた。駅へのアクセスが「とても不便になった」と回答した人は、ベビーカー歩行と一般歩行の歩行時間差が大きいという傾向が見られた。
  • 橋本 成仁, 海野 遥香
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1226-1233
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,全死亡事故件数の減少率と比べ,生活道路における死亡事故件数の推移が緩やかであり,生活道路内における死亡事故の割合が高くなっていることがわかる.このような現状から,面的な30km/h規制や,カラー舗装,ハンプなどの生活道路の安全対策の研究は進んでおり,標準化が進んでいる.しかし,生活道路内の速度規制や安全対策がドライバーのストレスにどのように影響するのかを研究したものは見受けられない.そこで本研究では,生活道路内を走行することが,ドライバーにどのような影響を与えるのかについて検討する.手法としては,自動車走行実験を行い,運転時の心拍,映像,運転に関するアンケート調査より,生活道路内運転時のストレスについて検討をする.
  • 丸の内仲通りでの可動椅子設置の社会実験を事例として
    三友 奈々, 岸井 隆幸
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1234-1240
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、広場的利用を促進するのに有効な手段であると一般的に言われている可動椅子・可動テーブルを歩行者天国の車道部に置いた場合、「実際にどのように使われるのか」について検証し、その有効性を確認することである。本研究では、社会実験の一環として東京都千代田区丸の内仲通りの車道部に歩行者の滞留の場を設け、平日及び休日のそれぞれ各1日における歩行者の属性、滞留時間、行為について観察調査を行う。調査の結果、以下が確認された。(1)平日と休日で差がある利用者、行為に柔軟に対応できている。(2)可動性は、需要と配置されたファニチュアの数の齟齬を解決する手段として機能している。(3)可動椅子は、ベビーカーなどを利用する家族にも柔軟に対応できている。以上、人数によらず、また多様な滞留者に対応できる公共的空間の滞留の場に可動椅子・可動テーブルが適していることが確認された。特に今回のように道路空間の車道部の場合、緊急時の通行等の妨げにもならないよう、手軽に持ち上げることができるファニチュアによって広場空間として滞留の場を設けることが重要であり、本研究でその有効性を確認することができた。
  • 水戸市のバス路線網再編計画に対する調査事例
    福田 有希, 金 利昭
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1241-1248
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    従来,バスなどの公共交通機関の利用意向調査として用いられてきたアンケートやグループインタビュー(GI)には,実際に利用するか否かではなく建前の意見が抽出されてしまうといった課題がある.デプス・インタビュー(DI)は1対1の対話を通して深層心理を追求できる調査手法である.本研究の目的は同一人物にアンケート,GI,DIの3調査を実施し,それぞれの利点・欠点を比較することでDIの有用性を明らかにすることである.本研究で得られた知見は次の3点である.(1)本音の利用意向はDIに表明される可能性が高いこと,(2)DIは被験者が周囲を気にせずに自分の意見を伝えられることや疑問を納得ゆくまで質問できるといった利点があり,アンケートやGIにおけるデメリットを補完する役割として有効であること,(3)DIを実施する際には,被験者の不安や緊張を取り除き,本音の発言が出しやすくなる工夫としてGIを事前に行うことが重要であることが明らかとなった.
  • 岡村 篤, 橋本 成仁, 松村 博文
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1249-1256
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    日常生活行動により密着した地域生活交通として,乗合バス事業が多くの中山間集落で行われている.しかしながら,利用者が十分に確保できていないために減便・廃止となる事例がしばしばみられる.そこで本研究では,中山間集落のバスに対する現在のバス利用並びに将来のバス利用意向の実態把握と影響する要因を明らかにした.さらに,それらを踏まえ,現在のバス利用と将来のバス利用意向を一体的に扱い,両者に至るまでの意識構造を定量的に明らかにした.その結果,現在のバス利用については自動車の有無が,将来のバス利用意向については年齢構成が大きく影響していることが示唆された.また,バスに関する乗りやすさや利用しやすさに関する評価及び希望するサービス内容に対する意識は,現在のバス利用及び将来のバス利用意向に寄与することが示唆された.併せて,自動車の運転や家族等による送迎が難しくなるといった問題が起こった際は,通院・買物の便利さが低下するとともにバスに対する必要性が大きくなり,現在のバス利用や将来のバス利用意向に関する意識が向上することが示唆された.
  • ノッティンガムを事例として
    ペリー 史子, 塚本 直幸, 波床 正敏
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1257-1264
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    環境と人に優しい次世代型公共交通としてLRTの導入が世界的に進み、関連する研究も増加してきている。しかしながら、都市計画や総合交通計画の中でのLRTの位置づけや導入プロセス、導入諸都市での経験に基づく日本でのLRT導入要件に関わる研究は進んでいるとは言い難い。そこで、本研究では、導入実現にいたるプロセスを探ることとした。2004年に都心と北部を繋ぐトラム、Nottingham Express Transit (NET)の運行を開始したイギリス、ノッティンガムを対象とし、現地実態調査・トラムプロジェクト担当者へのインタビュー等に基づいて、トラム導入の背景やトラムプロジェクトの目的、プロジェクトの組織構成や進め方、財源、整備効果、合意形成課題,地域交通計画の中での位置づけ等に関する考察を進めた。そして、NETプロジェクトは単にトラム導入ではなく都市将来像実現のための交通計画の一端を担う立場にあること、導入にあたってはPFI方式を採用したこと、組織構成や財源等の具体的な内容を明らかにすることができた。また、フランスの導入事例との比較から、双方に共通する取り組みや考え方を明らかにすることができた。
  • 伊勢 昇, 湊 絵美, 櫻井 祥之
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 1265-1270
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の我が国における公共交通の衰退、少子高齢化、核家族化、商業施設の撤退等の様々な社会情勢の変化に起因して、買い物弱者問題が地方都市を中心に大きな課題となっている。それゆえ、これまでに、買い物弱者人口推計や買い物支援サービスに対する需要量推計等、学術・実務の両面から様々なアプローチがなされてきた。しかしながら、そのほとんどが買い物支援ニーズへの対応を目的としたものであり、買い物支援サービスの導入によって生じ得る副次的影響について取り扱った研究はあまり見られない。そこで、本研究では、買い物支援サービスの導入によって生じ得るネガティブな副次的影響の1つとして考えられる「都市中心部への外出頻度の低下」に着目し、1)各種買い物支援サービス導入状況別に都市中心部への外出頻度モデルを構築することで、各種買い物支援サービス導入状況別の都市中心部への外出頻度の規定要因とその影響度を明らかにすることを主たる目的としつつ、併せて、2)構築したモデルを用いて各種買い物支援サービス導入による都市中心部への外出頻度の低下の可能性を定量的に推計する。
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