都市計画論文集
Online ISSN : 2185-0593
Print ISSN : 0916-0647
ISSN-L : 0916-0647
57 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の131件中101~131を表示しています
  • JR柏駅前ハウディモールにおける実態調査を通じて
    井桁 由貴, 野上 昌孝, 出口 敦
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1273-1280
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    一時的な歩行者天国は、高密度な都心部を自動車指向の空間から歩行者指向の空間に転換するための有効な手法の一つである。本研究では、千葉県柏市の柏駅東口に位置するメインストリートの一つであるハウディモールにおける実態調査を通じて、歩行者が車道空間をどのように歩いているかを、1) ポイント型流動人口データ、2) ビデオ調査、3)LiDARによる人流計測、4)歩行者アンケートの4つの手法から分析した。 その結果、歩行者天国化された車道空間における歩行者の動きの変化と、歩行者が歩く場所を選択する要素が明らかになった。

  • 長谷川 大輔, 嚴 先鏞, 西堀 泰英
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1281-1287
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    CCOVID-19の世界的流行による移動需要の減少は,公共交通機関の財政悪化をもたらした.それによって,運行頻度や路線の縮小などのサービスレベルの低下が生じている.本研究では,住民の生活サービスを支える商業地区における,コロナ禍前後における公共交通のアクセシビリティの変化を明らかにし,流動人口の変化との関係を分析した.その結果,1.アクセシビリティの変化を到達圏面積と移動時間の変化によって定量的に把握し,大都市よりも地方都市の低下が顕著であること.2.時刻表の編成によって,運行頻度が減少してもアクセス性が低下しない地域があること.3.アクセシビリティの低下が顕著なのは,大都市では近隣商業集積地のみであるのに対し,地方都市では中心市街地と近隣商業地域の両方であることを示した.

  • 大江 広高, 桑野 将司, 細江 美欧, 森山 卓, 南野 友香
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1288-1294
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    検索者の移動需要が蓄積される経路検索サービスは,対象とする検索範囲と交通機関によって,全国版と地方版に分類できる.全国版と地方版の経路検索サービスでは利用者層が異なると考えられるが,両サービスの特性は明らかでない.本研究では,全国版経路検索サービス「NAVITIME」と地方版経路検索サービス「バスネット」の検索履歴データを用いて,全国版と地方版の経路検索サービスにおける利用特性の比較を行った.分析では,データ間の相関関係を考慮できる2変量状態空間モデルを適用し,両データに含まれる変動成分の比較を行った.分析の結果,全国版と地方版の平均的な利用特性は類似しているが,検索件数が多い曜日や突発的に変動する日の特性は異なることを明らかにした.

  • オレゴン州ポートランドにおけるNeighborhood Greenwaysを対象として
    近藤 紀章, 田中 勝也
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1295-1300
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、コロナ禍を契機に生活道路空間を再配置するために施策介入した事例として、アメリカ・オレゴン州ポートランド市のNeighborhood Greenways(NG)を対象として、交通静穏化と身体活動の促進に及ぼす因果効果を、統計的にランダム化に近似した状況を作り出すことができる傾向スコアマッチングと重み付けによるIPW法を用いることで推計した。 この結果、分析方法にかかわらず、NGの導入によって、身体活動のなかでも散歩頻度が高まる効果が示された。一方で、交通静穏化に関する効果は、ポートランド都市圏のUGBに居住する住民に対して、NGの導入は、交通量の減少効果が感じられるものの、自転車の走行環境が安全でないと感じる効果が示された。一方で、NGが導入された地域に居住する住民に対して、車の速度が速いと感じる効果が示された。

  • 潜在クラスモデルによる選好の多様性の把握
    礎 有希, 河口 洋一, 渡辺 公次郎, 庄子 康, 佐藤 雄大, 寺山 元
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1301-1308
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    エコツーリズムは、北海道知床地域において持続可能性を高める手段の1つになり得る。そのためには、観光客数を維持し、彼らの満足する体験を提供することが必要である。本論文の目的は、潜在クラスモデルを用いて知床のエコツーリズムに対する潜在需要を明らかにし、セグメント間の差異が生じる要因を考察することである。Webアンケートの結果、回答者を選好の異なる2つのセグメントに分けることができた。この違いを生じた主な要因は、訪問経験、年齢、性別だと考えられる。さらに、知床への旅行に興味を示した回答者の約6割が40代以上の男性であり、女性や若年層の観光客誘致が、今後の持続可能なエコツーリズムのための重要な課題であることが分かった。

  • 兵庫県姫路市を対象とした市街地のスポンジ化に関する基礎的研究
    五十石 俊祐, 太田 尚孝
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1309-1316
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    人口減少に伴い、全国的に市街地のスポンジ化が進んでいる。地区ごとに居住世帯や住宅の状況は異なることから、有効なスポンジ化対策やスポンジ化が顕在化するタイミングは地区ごとに異なると予想される。限られた予算やマンパワーの中で戦略的にスポンジ化に対応するためには、どの時期にどのような特徴の地区でスポンジ化が顕在化するのかを把握する必要がある。そこで、本研究では、地方都市における地区ごとのスポンジ化の進み方の特徴を把握することを目的に、各種統計データから姫路市内の小地域集計区の類型化を行った。その結果、姫路市の小地域集計区は12タイプに分類できると算出された。次に、将来人口推計結果から地区ごとにスポンジ化が顕在化する時期を特定し、その結果を地区のタイプごとに整理した。その結果、スポンジ化の進み方は4パターンに分類できると分かった。また、商業・工業的性格の強い地区は居住用途に特化した地区とはスポンジ化の進み方が異なると分かった。加えて、空き家化した住宅の継承や再流通が進みやすい特徴を有する地区ではスポンジ化の進み方が緩やかな傾向にあると把握できた。

  • 京都府舞鶴市を対象として
    吉田 隼斗, 岡井 有佳
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1317-1324
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文の目的は、コンパクトシティ形成を目指す京都府舞鶴市における逆線引きの実施のプロセスとその課題を明らかにするものである。舞鶴市では、現行の土地利用や人口変化率、新築件数、宅地開発割合といった数値を、独自の区域区分運用基準として設定することで、逆線引き候補地を選定した。住民説明会成においては、逆線引きにより市街化調整区域に編入された場合の税負担の減額や農業支援を受けられるといったメリットについて丁寧に時間をかけて行うことで合意形成を図った。また、用途地域の見直しによるダウンゾーニングの実施や、立地適正化計画の策定が逆線引き実施の効果を補完している。都市計画制度の総合的な運用が都市のコンパクト化に寄与している。

  • 用途地域と誘導区域の空間的関係を中心に
    尹 莊植
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1325-1332
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、立地適正化計画の誘導区域と用途地域の空間的関係の把握と、立地適正化計画策定後における用途地域見直しの内容と立地の分析から、立地適正化計画と土地利用規制の連携可能性について考察することを目的とする。結果として、誘導区域と用途地域の空間的関係については、都市機能誘導区域内に都市機能の立地誘導が難しい用途地域が2割程度含まれていること、両誘導区域を限定的に設定した都市は、商業系用途地域を中心に設定していることが確認できた。また、立地適正化計画策定後の用途地域を見直した都市は、全体の11.8%に留まるものの、その9割が誘導区域を限定的に設定した都市の事例であった。さらに、見直しは誘導区域内で84.8%がみられ、その誘導区域内の見直しは、住環境形成及び生活サービス機能と都市機能の立地誘導を目的に用途制限と形態制限を緩和していること、またそのような傾向は誘導区域内外でも同じくみられることを明らかにした。

  • 20年間の活動と住民評価の変化を通じて
    齊藤 広子
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1333-1339
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    戸建て住宅やマンション、賃貸住宅等を含む住宅地において、住環境マネジメントのために法的根拠がない管理組織が存在するケースがある。そこで、横浜市のY住宅地を対象に法的根拠がない場合の管理組織の課題と住民の評価を、開発事業者および管理組織への聞き取り調査、住民へのアンケート調査等から明らかにした。結果、法的根拠がないことから組織の加入率が低下する、経営の自立が困難、不動産が所有できない等がある。しかし、開発事業者の支援と住民の継続的な活動で組織加入率および組織の肯定的な評価は約7割となっている。今後、地域での住環境マネジメントを促進するには、管理組織に全員参加を促し、民主的な運営ができるための新たな法制度が必要である。

  • ニュージャージー州のラドバーン住宅地を事例として
    松林 優奈, 齊藤 広子
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1340-1346
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    民主的な住宅地のマネジメントは日本や米国で必要とされ、取り組まれている。民主的な住宅地のマネジメントとは、住宅所有者が平等に、会議に参加し、方針を決定し、理事を選出し、理事に立候補し、情報を得る権利を持つことである。この権利住宅所有者全員が持つ住宅地のマネジメントを実現するためには、行政や住宅所有者団体に変革が求められている。本研究では、ニュージャージー州が制定した州法と行政規則を理解することで、住宅地における真の民主的なマネジメントについて整理・検討する。さらに、ラドバーン住宅地の運営に焦点を当て、これらの法律が住宅地にどのような影響を及ぼしているかを考察する。

  • 岩手県奥州市・栃木県栃木市・静岡県沼津市の助成制度に着目して
    板橋 奈央, 藤井 さやか, 島田 由美子
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1347-1354
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、地方都市の提案型助成制度による市民活動育成機能を明らかにするため、実績資料調査と制度担当課及び提案団体への紙面調査・ヒアリング調査を実施し、制度の助成実績と運用実態、および事業内容や提案団体の育成実態を分析した上で、地方都市における市民参加のまちづくり促進の一助となるような制度のあり方を検討した。その結果、助成実績からは、1コース1回のみの利用が多いことが明らかになった一方、段階を意識した細かいコースが設定されている栃木市制度は、コースを跨いで複数回利用する団体や事業が多く、持続的・発展的な活動を促す育成機能を持っていることが分かった。また制度の段階ごとに見た育成機能の分析からは、事業や団体の育成には、どの段階においても「アドバイス」「協議」「連携」など、対話が重要であることが示され、奥州市制度の「提案のテーブル」のような対話の場の有効性が示唆された。

  • 萌芽期における導入事例の比較から
    輿石 彩花, 後藤 智香子, 新 雄太, 矢吹 剣一, 吉村 有司, 小泉 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1355-1362
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    コミュニケイティブプランニングの普及に従い、都市計画やまちづくりにおいて住民参加の重要性が高まっている。本研究では、2020年にバルセロナから日本に導入された住民参加のためのオンラインプラットフォーム「Decidim」に着目し、3つの先進的な事例からDecidimの日本での活用実態を明らかにする。導入者へのインタビューやDecidim上のコメントの分析から、Decidimの利用における効果や課題を明らかにした。日本では、様々な目的や方法でDecidmが導入され、参加の間口を広げることに寄与していた。一方で、行政や住民による受け入れ体制やDecidimの「使い方」、カスタマイズ方法に課題があることが明らかになった。日本におけるDecidimは、熟議のためのツールではなく、共感のためのツールであると言える。

  • 神戸市「まちなか防災空地事業」を対象として
    勝 美由乃, 嘉名 光市
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1363-1368
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    この研究は、立地や空間的な特性から、防災空地の性能と分布の傾向を把握し、それぞれの運営実態を明らかにすることで、地域特性に合わせた空間マネジメント手法を推進するための示唆を得ることを目的としている。研究対象は、神戸市「まちなか防災空地事業」における整備事例である。調査の結果、多様な使われ方とそれに応じた多様な空間マネジメント手法が存在し、整備のきっかけや自主施工、管理会、地域住民以外の主体の運営参加の有無等に差が生じていることが明らかとなった。

  • 東京都区部の全地下駅を事例に
    村上 清徳, 中村 英夫, 大沢 昌玄
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1369-1376
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、東京都区部の地下駅全216駅の出入口を調査し、駅の出入口を持つビルについて詳細な分析を行った。その結果、(1)近年は私有地や鉄道敷地内に出入口が設置される傾向があること、(2)ビルに設置された駅の出入口の69.5%が都心4区にあること、(3)2010年代以降、ビルと駅出入口のつながりが「複雑」なパターンが増加していることが明らかになった。また、(4)1990年代以降、都市開発システムを利用したビル建設において、エレベーターの設置、共用廊下、地下鉄コンコースの拡張など、駅の出入口設備の整備が行われていることがわかった。

  • 適材適所の空き家対策支援ツールの開発を目指して
    水澤 克哉, 宮本 慧, 田村 将太, 田中 貴宏
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1377-1384
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、人口減少とそれに伴う空き家の増加が問題となっており、空き家発生を未然に防ぐ取組が必要とされている。本研究では、今後のまちづくりの中で、エリアの問題として空き家対策の必要性を踏まえ、「どのようなエリアでどのような建物が空き家化しやすいか」を空間的に把握可能な「空き家対策支援ツール」の開発を目的とし、機械学習の解釈手法を用いて発生要因の分析手法を提案した。その結果、道路等の建物周辺のインフラ環境や、建物の性能等が空き家発生に大きく影響することが明らかとなり、特に自家用車で通行可能な中幅員道路とのアクセスが悪い場所の建物や、戦後から高度成長期の建物で空き家が発生しやすいことが明らかとなった。また、各地区別に発生要因の影響度の大小を比較した結果、各地区の特性によって空き家の発生要因が異なり、影響度も異なることが明らかとなった。

  • 福島県小高・浪江・富岡における実態比較から
    植田 啓太, 永野 正義, 中島 直人, 宮城 俊作, 窪田 亜矢
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1385-1392
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    福島県浜通りの原発被災地域では、地震・津波による家屋への被害に加えて、人が居住しなくなった家屋の荒廃も進んだ。公費等による建物解体が行われた結果、原発被災地域のまちなかには大量の空き地が発生した。住民の帰還や移住者の流入が進みつつあるものの、建物の再建状況および空き地の変容という地域ごとに起こっている被災後の空間変容は、地域ごとに異なっている。本研究では、南相馬市小高区・浪江町・富岡町のまちなかにおいて、①被災前までの社会的・空間的変容、②被災後の人口変化や再建・解体による空間的変容、③解体後の空き地として残存している土地の変容、④空き地と周辺の建物との関係、についてそれぞれ調査を行った。その結果、被災後の居住人口の違い、居住者特性の違いとそれに伴う再建建物類型の違い、そして再建建物に応じた空き地活用の違いがまちなかの空間変容の違いに影響を与えていることが明らかになった。原発被災後のまちなかにおいて、空き地活用の促進をするためには、地域特性や周辺で起こっている活動を把握した上で、ひとつひとつの場所に適合する活用のあり方を検討する視点が要求される。

  • 福岡市の大規模埋立地を事例として
    中本 拓也, 黒瀬 武史
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1393-1400
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は埋立地に立地する戸建住宅開発における建築制限の特徴とその設定背景を明らかにし、開発プロセスにおける課題を明らかにすることである。一般に低層住居専用地域は、厳しい建築制限を設けることで住環境の保全に努めるべきであるが、福岡市における埋立地の戸建住宅地の用途地域は緩く、地区計画や建築協定等の他の規制を併用することで制限を厳しくしている(上乗せ規制)。その理由は、埋立地開発は長期事業であり、需要変化や社会情勢への対応がもとめられるにも関わらず、各種法令の観点より計画の修正が困難であり、変化を許容する形での事業推進がなされたからである。またその背景には開発事業者と規制立案者が同一であるという開発形態上の要因も考えられる。

  • 坂本 淳
    原稿種別: 論説・報告
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1401-1408
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年から始まったCOVID-19による感染拡大は,新しい働き方や旅のスタイルを再考する契機となった.そこで本研究では,テレワークやワーケーション事業を計画している全国の自治体(市町村)を対象としてアンケート調査を行い,感染拡大から2年経過時における整備・推進実態の把握を試みた.その結果,自治体のテレワーク環境は整備されたものの,テレワーク率は低調であることがわかった.また,多様な形態でテレワークを取り入れている自治体では,テレワークの推進を前向きに検討する傾向が明らかとなった.さらにワーケーションについては,普及に向けた取り組みを実施している自治体ほど,施設整備に積極的であることが確認できた.

  • 石巻市中心部の仮設商業テナントを事例として
    苅谷 智大, 井澤 亨, 佐々木 悠, 姥浦 道生
    原稿種別: 論説・報告
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1409-1416
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、宮城県石巻市中心市街地において震災後に整備された2つの仮設商店街であるふれあい商店街と復興マルシェ、さらに復興マルシェから派生した暫定活用事業(コモン)について、それらの整備プロセスや運営体制について調査を行ったうえで、それぞれで実施された集客企画に着目し分析を行うことで、一連の暫定活用事業に至った要因と課題を明らかにすることを目的とする。調査分析の結果、①石巻市中心市街地の仮設商店街は、事業者再建を重視するタイプとエリアの賑わいづくりを重視するタイプの2つのタイプがあった。 ②賑わいづくりを重視するタイプでは、まちづくり会社によって周辺の低未利用地の暫定活用と周辺のまちづくりへと展開していった。 ③その要因としては、外部に開かれた運営体制とエリアビジョンが考えられることが明らかとなった。

  • 木村 祐輔, 松行 美帆子, 田中 伸治, 有吉 亮
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1417-1424
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、超高層マンションの管理組合による防災対策の現状を明らかにし、周辺地区の防災力への影響を明らかにすることと、防災対策が進んでいる/進んでいない超高層マンションの特徴を把握することを目的としている。首都圏、近畿圏における2009年以降に建設された分譲の超高層マンションの管理組合へのアンケート調査を行った結果、約4割の管理組合が防災マニュアルを持っておらず、食料・飲料水を備蓄している管理組合はそれぞれ約3割、5割であり、発災時に周辺地区の災害対応のキャパシティに大きく負荷がかかることが予測されることが明らかになった。さらに、全般的に、管理組合の防災対策には首都圏と近畿圏で差があること、マンションの規模によっても差があること、建設年が新しい超高層マンションは防災への対応が進んでいない傾向があること等が明らかとなった。

  • 和歌山県田辺市の事前復興計画策定に向けた検討を踏まえて
    小倉 華子, 牧 紀男, 平田 隆行, 宮定 章, 今野 亨
    原稿種別: 論説・報告
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1425-1430
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    南海トラフ地震が発生した場合に復興まちづくりを早期かつ的確に行うため,「防災・減災対策」と並行して,事前に被災後の復興まちづくりを考えながら準備しておく「復興事前準備」の取組を進めておくことが重要である。また,復興事前準備の取組において,行政職員がそれぞれの立場で求められる知識・実行力を身につけること,計画策定,意思決定を円滑かつ効果的に進めるためのプロセスを構築することが必要である。 本研究では,被災後の早期の復興まちづくりを進めていく上で,中心的な役割を果たす行政職員の立場に焦点をあて,職員ワークショップの成果と振り返りの結果から,事前復興計画の策定プロセスの中で得られた行政職員の認識変化の様子を分析した。以上より,実効性の高い事前復興計画の策定および災害復興に関する行政職員の知識・実行力の向上を同時に達成するためのプロセス,手法およびその効果について論じた。

  • 上杉 昌也, 森山 聡之, 小山 和孝, 和田 亨, 新山 悠紀, 石本 俊亮
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1431-1438
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,平常時から利用できるスマートフォン向け防災ゲームアプリ「防災Go!」を開発し,防災まちづくりに資する効果や課題を検証するものである.本アプリは,ゲーミフィケーションを導入することで,住民が日常生活を通じてコミュニティに親しみ,災害が発生する前に避難できるように動機づけることを意図している.利用者にはスマートフォンを通じて地域のハザードマップが提供され,実際に危険箇所や避難所などに足を運ぶことでポイントを獲得できる.熊本県緑川流域周辺の住民を対象とした検証実験では,さまざまな世代の利用者が地域の災害危険リスクを探究し,理解する動機づけとなることが示された.これらの知見は,コミュニティベースの災害リスク管理に貢献できると期待できる.

  • 令和元年台風19号水害 神奈川県川崎市の住宅の修繕を事例として
    石川 永子, 石田 雅美, 薬袋 奈美子, 中林 一樹
    原稿種別: 論説・報告
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1439-1446
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、利便性の高い浸水想定区域の人口が増加し、内水氾濫等の都市型水害が頻発し、多数の家屋が床上浸水以上の被害をうけている。本研究では、2019年台風19号の多摩川流域を事例とし、住宅被害と復旧における被災世帯の経済的な負担と課題について分析した。結論として、以下のことがわかった。①被災家屋の修理費用は被害区分と明確に関係していない、②水災補償の支給額と住宅の修理費用の関係についていくつかに分類できるが、一部は社会経済的に脆弱な層もある、③応急修理の開始時期が遅いのは建築業者の都合だけでなく、被災世帯が水害補償の払戻金額が決まるのを待っていた面もある、④自治体独自の支援金は借家世帯の受給率が相対的に低い、⑤仮住まいは、行政が用意した公営住宅の立地や申請条件や時期が合わず、自ら住宅を借りた世帯が一定数いる、⑥水害後に転入した世帯の大半は、集合住宅の1階を賃借し、被災した地域であることを知っている。 また、住居内垂直避難が不可の集合住宅の1階に居住する世帯の一部が水害時に自宅に留まっていた。以上から、水害補償の加入の推進と共に、公的な支援制度の運用面や都市計画的な予防的な方策の検討が望まれる。

  • 蜂須 康介, 雨宮 護, 樋野 公宏
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1447-1452
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、東京都内の公園で発生した子どもや女性に対する脅威事案の実態を把握し、その要因を接道性の面から明らかにすることを目的としている。クロス集計とロジスティック回帰分析の結果、以下のことが明らかになった。1)公園における脅威事案の発生形態、発生時刻及び発生月は、他の公共空間におけるそれとは異なり、特に13歳未満に対する事案が異なること、2)公園の接道性が高いと、特に住宅地において脅威事案の発生確率が高くなること。これらの結果から、公園における脅威事案に効果的に対処するためには、公園の特性を考慮しつつ、立地環境に応じた対応をとることが必要であることが明らかになった。

  • 佐野 雅人, 嚴 先鏞, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1453-1460
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,日本全国の自治体を対象として,自治体の境界を越えた施設の越境利用による移動距離の越境有効度を分析するとともに,自治体内の施設数や分布との関係を調べ,自治体間の依存関係を分析し,越境有効度の大きい相手先の分布から全国自治体を分類することを目的とする.その結果,第一に,最近隣施設を利用した場合,約10%の人口が越境利用の場合の利用距離が短く,越境が優位な場所では3割程度の越境有効度が確認できること,第二に,施設が充実していない自治体ほど越境有効度が大きいが,施設が充実していても人口と施設配置の乖離などの原因により越境有効度が大きい自治体も存在すること,第三に,越境施設利用の面において他自治体に依存する自治体・依存される自治体は全国に分布しており,地方部では越境方向がある程度絞られる一方,大都市周辺においては越境先が分散していて,より多くの自治体との関係の考慮が必要であることが明らかとなった.これより,今後の計画策定時に考慮すべき規模と相手先を把握することが可能となる.

  • 武藤 夏陽, 佐々木 邦明
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1461-1467
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    スマートフォンの普及に伴い,携帯端末を活用したビッグデータを用いた分析が数多く行われ,任意の地点に安価で設置することのできるWi-Fiパケットセンサを利用した人流の把握事例が増加している.また,その他の様々なモバイルビッグデータを比較・融合した研究も数多く行われている.本研究では,2018年より継続的に設置されている甲府駅周辺のWi-Fiパケットセンサのデータをもとに,プレイベートWi-Fiアドレスの識別方法を構築した上で,モバイル空間統計や歩行者交通量調査と融合することで,市街地における外出人口や経路交通量,及びゾーン間移動量の算出手法を構築した.また,算出された各データを比較することにより,分析結果の妥当性の確認を行った.

  • 井澤 佳織, 渡部 宇子, 本間 裕大
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1468-1475
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,歴史的建築物の保存において意思決定者と外部意見との利害対立構造に着目し,意思決定者への交渉の余地を分析する.具体的には,外部意見である日本建築学会の保存要望書が建築物所有者の意思決定に与える影響をコンフリクト解析によって分析する.本研究の主な成果はとして,全くの決裂に帰するかと思われたが交渉の余地があり,均衡解の分布によってコンフリクト状況の可視化に成功した.

  • 住みここち調査データを用いた回帰分析およびパス解析
    宗 健
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1476-1483
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、住民の住み続けたいという気持ちの構造を、住みここち調査データを使って明らかにすることを目的としている。分析結果は以下のようなものである。地域の居住満足度、建物への満足度は住み続けたいと思う気持ちを高める。年齢の上昇、地元出身であることは住み続けたいと思う気持ちを高める。住み続けたい気持ちと地域への愛着、貢献したい気持ちは相互に関係している。また、60歳以上のケース、地元出身である場合は、構造が異なる。

  • 田宮 圭祐, 川辺 怜, 鈴木 勉, 大澤 義明
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1484-1490
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    これまでの広域行政では,連携相手として地理的隣接や県内を前提に置くことが多かった.一方で,デジタル化が進み,このような地理的制約が弱くなる.本研究の目的は,市区町村隣接関係の変化という観点から平成の大合併を検証し,遠隔型連携の有効性を明らかにすることにある.具体的に,次の三点を実施する.第一に,平成の大合併により失われた旧自治体の隣接関係,広域連携により生じた空間的齟齬を定量化する.第二に,平成の大合併にて越境合併のハードルが高かったこと,合併後の越境連携事業の展開の困難さを数値化する.最後に,地続きや県域限定の前提と比べて,遠隔型連携が,組む相手の選択肢の豊富さなどで優れることを組み合わせ論に基づいて計量化する.<br />外部性や移動抵抗を考えると,広域連携では,地理的に一体性を有する地面でつながる隣接が本質である.そこで本研究では地理的隣接性の影響を抽出する.そのため,人口規模や面積,人流や物流の流動性,通勤・通学などを考慮しない.広域連携では施策内容を想定せず,また市町村合併でも編入と新設とを区別せず,自治体の組み合わせのみに注目する.

  • オンラインシフトのパターン分析を通じて
    小松﨑 諒子, 石橋 澄子, 宗 健, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1491-1497
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年より若年層の外出率は低下する傾向にあったが、COVID-19による大規模なオンラインシフトは、この傾向をさらに進展させたと考えられる。しかし一方で、若年層の間でも職業や価値観などによってオンラインシフトの実態は様々であるといえ、その多様性を踏まえた住環境整備が必要とされるであろう。そこで本研究では、独自にアンケート調査を実施し、若年層を仕事と私事のオンラインシフトのパターンによって分類することで、オンラインシフトと価値観や住環境への評価との関係を分析した。分析の結果、世帯構成によってオンラインシフトのパターンが異なっており、若年層においても活動場所や住環境の評価に大きな格差が存在することが明らかになった。

  • COVID-19緊急事態宣言を自然実験として活用した実証分析
    山根 万由子, 雨宮 護, 大山 智也, 島田 貴仁
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 57 巻 3 号 p. 1498-1503
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    人の存在量と犯罪との間の因果関係を明らかにすることは,データの限界と因果推論の困難さからこれまで困難とされてきた.これに対して本研究は,COVID-19緊急事態宣言を自然実験として用いることで,人の存在量と犯罪との間の因果関係を明らかにした.具体的には,粗暴犯,出店荒し,住宅侵入窃盗を対象に,固定効果モデルを用いたポアソン回帰分析と操作変数法を組み合わせたモデルで分析を行った.分析の結果,人の存在量が犯罪に及ぼす影響は,犯罪種別,および地区の土地利用パターンにより異なることが明らかになった.住宅地域では人の存在量の増加は,粗暴犯と出店荒し減らす一方で,住商混在地域の粗暴犯,出店荒し,住宅侵入窃盗,商業地域の粗暴犯においては,人の存在量の増加は犯罪を増やす効果を持っていた.また,昼の時間帯における人の存在量と,夜の時間帯における人の存在量とでは,犯罪に及ぼす影響の違いが確認されなかった.本研究は,操作変数法を用いて人の存在量と犯罪との間の因果関係を検討した点において新規性を持つものである.

feedback
Top