日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
27 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 木下 由里惠, 渡辺 萌, 竹原 君江
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 4 号 p. 572-580
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー
     爪切りは、合併症のある糖尿病患者にとって皮膚損傷のリスクを伴うセルフケアである。そのため、爪やすりの使用を推奨している。爪やすりにはおもにガラス製と金属製があり、臨床ではガラス製を患者に勧めることが多いがエビデンスはない。そこで、本研究ではガラス製と金属製の爪やすりによる爪への影響を調べることを目的とした。
     成人の健常ボランティア6名を対象に準実験研究を行った。爪やすりは、ガラス製2本(①、②)と金属製2本(③、④)を使用した。調査項目は、爪やすりの形状、やすり部分の表面拡大画像、爪の削り跡:一定の力で30 往復し削った面の顕微鏡画像、削る能力:爪1 mm を削るのに必要な回数とした。やすり部分と爪の削り跡の画像は質的に評価した。
     形状は、ガラス製は厚みがありしなることはなかったが、金属製は薄く鋭かった。やすり部分は④のみ「均一」であった。爪の削り跡は、①と②と③が「線」、④は「点」であった。削る能力は、①が36-54回、②が62-70回、③が29-38回、④が38-50回であった。本調査実施による爪・周囲皮膚への損傷はなかった。
     爪の削り跡は、ガラス製と金属製で違いはないことが初めて示された。また、削る能力はどちらが高いとは本研究の結果からは結論付けられなかった。ただし、金属製はその形状から皮膚を損傷するリスクがあるため、使用時に注意が必要である。
  • 新田 汐里
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 4 号 p. 581-589
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー
     目的:ドライスキンは、皮膚バリア機能が低下し炎症性皮膚疾患を発症するリスクがある。ドライスキンの評価は、看護師の経験や知識に左右され、質の保たれたケアを提供するためには客観的な評価指標が求められるが、先行研究では高齢者の前腕での調査に留まっている。この研究では、皮膚表面形態のデジタル画像解析を用いて、成人の前腕と下腿における皮膚の乾燥の程度を反映する定量的指標を検討した。
     方法:東京の1 施設で横断研究を実施し(2014 年6 月から2015 年3 月)、基本情報は質問紙にて取得した。前腕および下腿の皮膚の乾燥状態を静電容量で評価し、皮膚の表面形態はデジタル画像解析で測定した。静電容量と皮膚表面形態の相関をSpearmanの順位相関係数を用いて解析した。
     結果:成人11人の左右の前腕および下腿それぞれ22部位を調査対象とした。前腕と比較し、下腿の皮溝の間隔は広く、平行度は低かった。下腿の皮溝の平行度の値は、先行研究で報告された高齢者の前腕における値に近かった。皮溝の平行度は、下肢の静電容量と負の相関があった(rho = -0.48、p = 0.025)。前腕ではいずれにも相関関係が認められなかった。
     結論:デジタル画像解析による皮膚表面形態の評価が、成人の下腿のドライスキンの有効な評価指標であることが示唆され、スキンケアが必要なドライスキンをもつ患者の同定に寄与することが期待される。
  • 内藤 亜由美, 大桑 麻由美
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 4 号 p. 590-604
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー
    【目的】表層切開創手術部位感染(SSI)のアセスメントのために術創を開放して皮下の状態を確認することは患者に大きな苦痛を与える。本研究の目的は、サーモグラフィを用いた表層切開創SSI の非侵襲的アセスメントの可能性を検討することである。
    【方法】1 施設の消化器外科で腹部手術を待機手術で受けた患者に対し、前向き縦断的観察研究を行った。撮影したサーモグラフィ分析エリア内の高温域と低温域の分布を確認し、最高温度と創上の最低温度の差(ΔT)を求めた。
    【結果】分析対象者46 名のサーモグラフィ295 枚を分析した。表層切開創SSI が発生した患者は3 名であった。術創上に特徴的な低温域(Spot 状と鎖状)を示した者が8 名であった。Spot 状の低温域の者で、分析エリア内の最高温度と最低温度の差であるΔ T が1℃以上ある場合、後に同部位から排膿を認め表層切開創SSI と診断した。鎖状の低温域には表層切開創SSIの発生は認めなかった。
    【考察・結論】分析エリア内の最高温度と最低温度の差であるΔ T が1℃以上ある場合は、表層切開創SSI を早期に発見できる可能性があり、サーモグラフィが腹部消化器外科手術後の表層切開創SSI の早期発見に使用できる可能性が示唆された。
実践報告
査読者一覧
feedback
Top