日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
20 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
会長講演
25周年企画特別講演
特別教育講演
  • 坂上 貴之
    2017 年 20 巻 4 号 p. 375-382
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     ほかの実験系の心理学とは異なる、独特な心や行動についての哲学や研究法を発展させてきた学問体系である行動分析学は、環境(刺激)と個体の行動(反応)の機能に注目した随伴性についての実験科学である。本稿では、この行動分析学の基本的な3つの考え方、すなわち、刺激と反応の機能への注目、自発する反応としてのオペラント行動の発見、随伴性に基づくABC分析という分析枠、を解説した。そして具体例として体重減量プログラムをとりあげ、これら3つの考え方がどのように適用されるかを見ていくことで、行動分析学の医療場面への応用可能性を示した。

  • 鎌倉 やよい
    2017 年 20 巻 4 号 p. 383-389
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     看護学が実践の科学として、研究成果を実践に還元するには、看護診断学に対応する方法論としての看護ケアプログラムを開発し、標準化することが必要である。看護ケアプログラムには、身体に介入する技術と行動に介入する技術が含まれる。後者は、患者が自ら必要なケアを実施できることを目指すものであり、セルフマネジメントできるようにする技術である。
     これらの方法論のエビデンスを明示するために、ランダム化比較試験とは方向を異にした実験研究として、シングルケース研究法を活用できる。この研究法は、実験デザインを有し、3項強化随伴性に基づき行動を観察し、行動の前または後の環境をアレンジする介入条件を独立変数とし、行動データを従属変数として測定する方法である。
     具体例に基づき、患者行動のABC分析、独立変数と従属変数の決定、実験デザイン、従属変数の測定、効果の判定について詳述した。

教育講演
シンポジウム 1 超必須!スキン‐テア(皮膚裂傷)の理解と実践~必ずわかる60分!
シンポジウム 2 ABCD-Stoma®の更なる活用を目指して
原著
  • 武 亜希子, 堤 由美子
    2017 年 20 巻 4 号 p. 410-419
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     大腸癌患者のストーマ保有による喪失体験の意味探究がどのように行われているかを明らかにした。永久的ストーマ保有者6名に半構造的面接によるデータ収集後、グラウンデッド・セオリー・アプローチの戈木の分析手法を参考に分析した。
     その結果、喪失体験プロセスを説明する17個のカテゴリが抽出された。また、そのプロセスは質的に異なる『価値の崩壊期』と『意味の暗中模索期』という2つの時期を経ていた。そして、その経過の仕方には、【同病者との悩み共有】【悲しみ抱え込み】【現実的課題への専心】の3タイプが確認された。『価値の崩壊期』では、3タイプともに悲しみの棚上げが認められた。続く『意味の暗中模索期』では、【同病者との悩み共有】タイプは〔ストーマ保有の現実への悲しみ〕を通して≪ストーマ造設の意味探索≫を行うと精神状態が不安定になっていたが、≪同病者との悩みの共有≫によってそれを和らげていた。【悲しみ抱え込み】タイプは〔ストーマ保有の現実への悲しみ〕を一人で対処するために≪ストーマと共存する努力≫を行っていたが、悲しみが持続し、意味の探索は認められなかった。【現実的課題への専心】タイプは〔ストーマ保有の現実への悲しみ〕よりも≪ストーマと共存する努力≫に専心し、意味探索は認めなかった。
     以上から、『意味の暗中模索期』の〔ストーマ保有の現実への悲しみ〕の体験の仕方と対処の仕方を見極めた長期的支援の必要性が示唆された。

  • 藪中 幸一, 四谷 淳子, 仲上 豪二朗, 真田 弘美
    2017 年 20 巻 4 号 p. 420-425
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     目的:排尿障害の看護ケアにおいて、残尿量の測定が重要な指標となる。本研究では、デスクトップ型超音波装置、携帯型超音波装置、携帯型膀胱容量測定装置の膀胱内尿量を計測し、排尿量との誤差率を比較検討した。
     方法:成人13名のボランティアを対象とした。使用した機器は、Viamo(Vi: TOSHIBA社製)、Vscan(Vs: GE社製)、SONIMAGEP3(P3: KONIKA社製)、Bladder Scan BVI6100(BVI: SYMEX社製)を使用した。
     調査手順は、Vi、Vs、P3、BVI の順に膀胱内尿量の測定を行った。超音波画像は、短軸像と長軸像を撮影し、ViとVs においては、横断面で膀胱の左右径、縦断面で膀胱の前後径、上下径を計測し、a × b × c / 2(ml)として容量を算出した。P3においては、膀胱容積モードにて算出し、横断像と縦断像での平均値を用いた。測定後,排尿量を測定した。
     結果:排尿量236.8 ± 125.9 であり、各装置による膀胱内尿量と高い相関(r=0.84-0.96)を示した。排尿量に対する誤差率(%)は,P3 が最も低く20.3 ± 16.6 であり、BVI は32.3 ± 27.4(P3 vs BVI : p =.34)、Vi は50.5 ± 13.3(P3 vs Vi : p =.003)、Vs は55.1± 14.7(P3 vs Vs : p < .001)であった。
     結論:P3は尿量測定において誤差が少なく良好な精度を示した。

  • 大江 真琴, 濱谷 雅子, 野口 博史, 大場 美穂, 竹原 君江, 大橋 優美子, 植木 浩二郎, 門脇 孝, 森 武俊, 真田 弘美
    2017 年 20 巻 4 号 p. 426-433
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     【目的】糖尿病患者は、足部に胼胝が発生し、炎症を伴って潰瘍化することが知られている。胼胝の要因は足底圧との関係が考えられるが、炎症を伴う胼胝と足底圧の関係をみた報告はない。本研究の目的は、糖尿病患者における足部胼胝保有の要因および炎症の要因を足底圧に関する因子を中心に明らかにすることである。
     【方法】2009年12月から2010年11月の大学病院糖尿病足外来受診者のうち足部胼胝保有者を対象に、胼胝部の炎症(サーモグラフィ上、周囲皮膚にくらべて胼胝部の皮膚温が相対的に上昇)、知覚神経障害、静止時足底圧のデータを診療記録から得た。
     【結果】胼胝保有者は52名(38.8%)であり、平均年齢68.4 ± 9.3歳、罹病期間16.9 ± 10.6年であった。胼胝の部位は計149個中、第1趾が最も多く30個、ついで第1中足骨25個であった。前足部静止足底最大圧に関しては、前足部胼胝保有者(2.59 ± 1.25 kg/cm2)が非保有者(1.57 ± 0.90 kg/cm2)と比較して有意に大きかった(p<0.001)。胼胝部に炎症を伴っていた者は5名(3.7%)であり、全員知覚神経障害を合併していた。そのうち前足部静止足底最大圧を測定していた者は3名であり、それぞれ2.12、2.85、4.52 kg/cm2 であった。前足部炎症無の胼胝保有者の前足部静止足底最大圧の平均は2.57± 1.18 kg/cm2 であった。
     【考察・結論】糖尿病患者における胼胝保有の要因として前足部静止足底最大圧が関連していること、炎症を伴う胼胝を有する者は全員知覚神経障害を合併していることが明らかとなった。炎症を伴う胼胝を有する糖尿病患者の静止足底最大圧は、炎症を伴わない胼胝を有する糖尿病患者にくらべて大きい傾向にはなかった。この結果は、胼胝が炎症を伴い潰瘍化する過程には、足底圧以外の要因が影響している可能性を示している。

症例報告
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