日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
8 巻, 2 号
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原著
  • 吉川 由利子, 日比野 夕美江, 前川 厚子, 竹井 留美, 繁澤 弘子
    2004 年 8 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/02/13
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     本研究の目的は、2型糖尿病患者のうち糖尿病性下腿潰瘍を有する患者の創傷進行状況が感情負担度に及ぼす影響を検証することである。対象は、2型糖尿病患者で糖尿病性下腿潰瘍を有する患者(1群)と足趾、下腿切断患者(2群)を合わせたケース群と性、年齢(±5歳)が一致した糖尿病足創傷がない患者(3群)のコントロール群とする。方法は、診療録からの情報収集、足病変に関する31項目の質問紙およびPAID(糖尿病問題領域質問表)を用いた面接調査を行う。対象者は70(男性47、女性23)名で平均年齢は64.0±6.5歳であった。PAID合計点数の平均値は、1群43.6点、2群47.1点、3群50.4点であった。1群、2群、3群ともに平均値が最も高かったのは、合併症に対する不安や困難感に関する項目であった。そして、糖尿病性下腿潰瘍患者の合併症への対処の困難感、足趾、下腿切断患者の生きることへの不安感情、足創傷のない患者への治療や糖尿病に対する感情、食事や糖尿病管理に関する感情への精神的援助や外来での支援体制の必要性が示された。

  • 竹井 留美, 前川 厚子, 井口 弘子, 神里 みどり, 吉川 由利子, 安藤 詳子, 渡邉 憲子, 作間 久美, 平井 孝, 中里 博昭
    2004 年 8 巻 2 号 p. 9-13
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/02/13
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    【目的】東海大震災が警告される中で、当該地区で活動するKオストミークラブ会員における災害対策の準備状況について明らかにする。
    【対象と方法】Kオストミークラブ会員302名を対象とし、無記名自記式調査法を用い、郵送法によりデータを収集した。倫理的配慮は倫理審査を経た後、研究趣旨と守秘義務を文書で説明し、同意を得た上で調査を実地した。災害対策準備に関する項目を抽出し内容分析した。
    【結果】対象者は211名、回収率は69.9%であった。平均年齢は68.5(SD11.2、幅34~91)歳、ストーマ手術後平均経過年数は12.7(SD10.1、幅0.4~66.8)年であった。災害に対して準備をしているのは150名(71.1%)、ストーマ装具と必要物品、装具商品名、緊急連絡先・病院・身体障害者手帳番号のメモを準備しているのは43名(20.4%)、灌注排便法のみ実地しているのは16名であることが明らかとなった。また、災害対策についての自由記載内容は《非常持ち出し袋の準備》《2週間以上の装具の備蓄》《分散保管》《寝室に保管》の4つのカテゴリーに分類した。
    【まとめ】ストーマ保有者個々が認識すべき災害への準備を促すことが重要である。さらに、医療機関から遠ざかったストーマ保有者には、Kオストミークラブを通じた継続教育の働きかけとネットワークの強化が必要といえる。

  • 井口 弘子, 前川 厚子, 安藤 詳子, 神里 みどり, 渡邉 憲子, 竹井 留美, 作間 久美, 平井 孝, 中里 博昭
    2004 年 8 巻 2 号 p. 14-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/02/13
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    【目的】長期生存ストーマ保有者の人生の満足度を経年的に明らかにし、また、人生の満足度に関連すると予測される要因を探索する。
    【対象と方法】Kオストミークラブ会員を対象とし、縦断的(1期:1995年、2期:2001年、3期:2003年)に調査を実施し、3期間において回答のあった78名を抽出し人生の満足度(尺度0~10段階)の変化を比較した。また、人生の満足度に影響を与えると予測される要因と人生の満足度の比較検討も同時に実施した。データはコード化し無記名自己記入式調査法を用い郵送法にて収集した。
    【結果】人生の満足度の経年的変化は、1期7.8(SD1.96)点、2期6.8(SD2.1)点、3期6.7(SD2.1)点であった。1期に比べ、2期・3期は人生の満足度は有意に低下していた(p<0.05)。人生の満足度に影響を与える大きな要因は本調査において明らかにならなかった。
    【まとめ】人生の満足度は経年的に低下傾向にあることが明らかになった。長期生存するストーマ保有者は、加齢という複雑な要因が加わることにより関連要因を特定することは困難であることが明らかとなった。

  • 藤井 優子, 前川 厚子, 吉川 由利子, 繁澤 弘子, 竹井 留美, 井上 豊子, 安藤 一也
    2004 年 8 巻 2 号 p. 19-28
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/02/13
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    【目的】尿失禁を有する痴呆性高齢者を対象に、診断機器を用い排尿状況について評価し、エビデンスに基づいた尿失禁マネジメントを検討する。
    【方法】おむつ感知センサー、Bladder Scanなどを用いて排尿調査を行い、認知機能にはHDS-R、痴呆の行動心理学的症候(BPSD)はDBDを測定用具として用いた。尿失禁と身体機能、痴呆症状などの項目と関連分析をし、AHRQの尿失禁ガイドライン(1996年)に従い評価する。
    【結果】1)対象者は36名で、重度痴呆と複数の行動障害を伴っていた。2)「機能性尿失禁」は89.1%であり、夜間頻尿や多尿も有していた。3)尿失禁と重回帰係数が高かった項目は、「障害自立度」(β=.585)、次に「痴呆自立度」(β=.298)であった。
    【結論】1)現行で用いられている「障害自立度」と「痴呆自立度」は、排尿管理方法を決定するうえで、優れた指標となり得る。2)「時間排尿誘導」は痴呆性高齢者の排尿ケアに適しているので、個別計画に活用することが望まれる。

研究報告
  • 樋口 友紀, 佐々木 俊治, 高村 由美子, 中道 裕美子, 永江 聡枝, 堀江 佳名, 丸谷 彰代, 山口 桂, 真田 弘美, 紺家 千津 ...
    2004 年 8 巻 2 号 p. 29-35
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/02/13
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     高齢者の医療用粘着テープ(以下、テープ)貼付による皮膚障害の実態把握を目的として研究を行った。対象は500床の療養型医療施設に入院し、テープを貼付中で研究参加の同意が得られた65歳以上の患者56名である。方法は、皮膚障害の有症率と皮膚局所状態を調査し、高齢者のテープ貼付による皮膚障害の特徴を抽出した。その結果、皮膚障害の有症率は33.9%であった。皮膚障害は貼付目的別では、褥瘡保護、胃瘻部、擦過傷保護に多く、貼付部位別では腹部、臀部、下腿部に多かった。皮膚障害の種類は接触皮膚炎が77.3%と最も多く、次いで外傷、感染であった。皮膚障害の有無で対象の背景、テープの種類、貼付目的、貼付部位、清潔状況、皮膚の生理的所見を比較したが、どの項目においても有意な差はなかった。以上より、テープ貼付による療養型医療施設の高齢者の皮膚障害は高率で発生し、接触皮膚炎の所見でかつ褥瘡保護部と胃瘻部、擦過傷保護部に多いことが特徴である。

  • 太田垣 美保, 山下 美緒, 染谷 淑子, 溝口 直子, 高橋 まなみ, 森谷 美智子, 松井 典子
    2004 年 8 巻 2 号 p. 36-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/02/13
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     臨床現場で人工肛門(以下ストーマ)造設患者に対し、行われている性指導の実態について、看護師の資格・ストーマケア経験年数との関連に注目して検討した。ストーマ造設患者に関わった経験がある創傷・オストミー・失禁看護認定看護師(Wound Ostomy Continence Certified Expert Nurse: 以下WOCN)117名および一般看護師26名を対象に自記式質問紙を郵送し、協力の得られた87名(一般看護師26名とWOCN61名)を分析対象とした。一般看護師で2名(7.7%)、WOCNで45名(73.8%)に性指導の経験があった。指導を行っていない理由を、WOCNは「患者が希望しない」「時間に余裕がない」、一般看護師では「患者が希望しない」「患者が生殖年齢でない」などを挙げていた。とくに一般看護師やストーマケア経験の少ないWOCNに性をタブー視する傾向が強く、また患者から性に関する質問・要望が少ないため、性指導については他職種の連携が必要であると推測された。

症例報告
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