本研究の目的は、45度ファウラー位の姿勢をとる過程で、足元にずり落ちようとする力が、臀部の褥創の発生に影響するか検討することである。方法として、健康な男女4人の臀部にかかる、水平に向かう力(以下水平力)と、垂直に向かう力(以下垂直力)のそれぞれの荷重(Kg)をフォースセンサによって測定した。ファウラー位の体位として、膝を挙げない場合と、ずり落ち防止のために膝をあげた場合の二通りを測定した。
結果として、膝を挙げた場合も挙げない場合も、ベッド角が上昇すると、水平力・垂直力の荷重は上昇してゆき、その後急激に荷重が減り、値が安定した。水平力を示す軌線は、上昇した後、急激に下降する鋭角の波を示した。この波は、静止摩擦力から解放され、体がずれた様子をあらわしていると考えられた。
膝を挙げた場合と、挙げない場合の水平力の比較では、膝を挙げないで頭部を挙上すると、ずり落ちようとする力が大きい。ずり落ち防止のために膝を挙げると水平力は減るが、その反面、垂直力が増加することが示唆された。
以上のことから褥創発生危険度が高い人は、ファウラー位をとらない方がよい。やむおえない場合は、ベッドなどに背部が触れながら上体を挙上させるのではなく、看護者2名によって上体を挙上させた上で、個人の体形に合わせたバックレストの形を工夫したほうがよい。
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