日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
4 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
第9回日本創傷・オストミー・失禁ケア研究会教育講演
  • 木之下 隆士, 白井 文哉
    2000 年 4 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
    ジャーナル 認証あり

     粘着テープの起源は、紀元前2000年頃の膏薬まで遡れるが、ずっと時代が下って18世紀に発明された生ゴム、樹脂類を主成分とするゴム系粘着剤は、その後発展し改良を加えられ現在に至っている。しかし、初期には粘着力を付与するため、多くの物質が加えられており、それらに起因するテープの皮膚かぶれが問題として指摘されていた。この解決策として、生ゴムに替わり合成ゴムを用いたり、より安全な樹脂や副原料を用いる等の努力がなされてきた。一方、化学合成により得られるアクリル系粘着剤は、それ自体で十分な粘着性を有するものを作ることができる。そのため、副原料の種類が少なく、粘着剤の材料に起因するかぶれは比較的少ない。今では、医療用粘着剤の主流となっている。さらに、テープかぶれを引き起こす主要因である透湿性についても、ゴム系粘着剤に較べ、透湿牲の遥かに高いものを得ることが可能であり、この面からも、医療用粘着剤として多用されている。
     ビニールテープは、大半が工業用途として開発されており、種類も多く、多種多様な材料が用いられている。主要添加剤の一つは安全性の点で疑問をもたれている。また、一般にビニールテープは透湿性がほとんどなく、むれてかぶれることがある。
     テープかぶれの主要因の一つである角質損傷は、テープの接着力が皮膚表層の角質層間強度より強すぎるために引き起こされる。この剥離による刺激は、多くの患者にとって痛みを伴うものであり、QOLの観点からも良い解決法が望まれていた。近年、凹凸のある皮膚にも馴染みやすく、密着性を高めた油性ゲル粘着剤が開発された。これを用いたテープ(優肌絆®)の剥離時の角質損傷が大幅に減少し、従来品と比較した結果、皮膚かぶれも大幅に低減することが確認されている。

総説
  • 山名 敏子, 高松 真樹子, 山田 加代子, 秋山 太, 後藤 礼, 佐武 利彦
    2000 年 4 巻 2 号 p. 9-13
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
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     当センターは1994年5月に地域中核病院として川口市が2つの病院を統合させ新にオープンした経過があるが、1994年8月より、外科・泌尿器科、形成外科医師とETナースらが褥瘡ケア専門チームの設立需要に対応すべく、ストーマ外来に褥瘡外来を併設して活動してきた。1996年度からは褥瘡外来は形成外科が担当することとなり、現在までに当センター及び川口市や近隣市町村を含んだ病院・医院にて入院加療中または在宅の褥瘡患者、のベ1000人以上のケア援助を行ってきた。開設にあたっては看護婦の業務分担を明確にしながら、医師側と常に協力しあい、積極的に院内教育や地域連携区域の院外教育も行ってきた。しかし、介護力不足による褥瘡悪化や家族の負担問題など外来治療の限界を感じる場合もある。そこで当センター褥瘡外来の活動と在宅患者の実情及び今後の課題について述べる。

  • -医療機関からの訪問看護の立場から-
    押川 真喜子
    2000 年 4 巻 2 号 p. 14-16
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
    ジャーナル 認証あり
原著
  • 前川 厚子, 古澤 恭子, 伊藤 美智子, 積 美保子, 吉田 和枝, 安藤 詳子, 吉田 久美子, 渡邉 憲子
    2000 年 4 巻 2 号 p. 17-21
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的はPIL-Aテストを用いたストーマ保有者の “生きがい” 得点を明らかにし、継続的なケアを提供するための基礎資料を得ることである。自記式調査票を用いて、消化管と尿路ストーマを持つ人々(研究同意者)の “生きがい” を調査した。
     対象は112(男性68、女性44)人で、平均年齢は62.9(SD 13.6、幅29~90)歳であった。ストーマ手術後の経過年数は平均6.7年であり、ストーマ自己管理成績は良好であった。PIL-A得点は平均104.6(SD19.4、幅47~139)点で、中程度の適応度を示した。疾患別得点では、直腸・結腸がん群の平均値が107.7(SD 18.2)点で、膀胱・前立腺がん群の平均値が99.3(SD 11.9)点、子宮がん群の平均値が99.3(SD 23.4)点であった。また、クローン病群の平均値は89.2(SD 24.0)点、救命処置群の平均値は88.7(SD 5.9)点と低い適応度を示した。
     症状コントロールが可能な中高年のストーマ保有者ではPIL-A得点が高く、中程度から高程度の適応度を示すが、若年者では適応度が低い傾向を示す。つまり年齢、症状コントロール、現在の健康観により “生きがい” は左右される。従い、専門職による術前からの継続した身体的ケアとともに心理面のサポートが “生きがい” 促進には不可欠と考える。

  • -術後1ヶ月以内のびらんとETナースの介入-
    松原 康美, 大谷 剛正
    2000 年 4 巻 2 号 p. 22-28
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
    ジャーナル フリー

     近年、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colites;UC)における手術療法は、根治性と社会復帰の両面から積極的に選択できるようになってきた。しかし、分割手術症例では、一時的にイレオストミーを保有することになり、消化酵素の活性が高い水様性の便が多量に排泄されるためストーマ周囲の皮膚障害を生じやすい。また、術前に大量ステロイド投与症例が多く、いったん皮膚障害を生じると悪化しやすく、治癒しにくいため、皮膚障害の予防は重要な課題といえる。そこで、UCによりイレオストミー造設術を施行した148例を対象とし、術後1ヶ月以内のストーマ周囲皮膚障害として、発生頻度の高い「びらん」に着目し、どのような発生要因が関連しているかを検討した。
     術後1ヶ月以内のびらんの発生率は48%であった。これらのびらんの有無について、対象側の因子として、①年齢、②性別、③UCの重症度、④手術緊急性、⑤ステロイド使用量、⑥ストーマのタイプ、⑦便の量をあげた。また、看護ケアに関わる因子として、⑧ETナース介入の有無をあげ、8項目について検討した。結果、術後1ヶ月以内のびらんは、UC重症度(χ2値=12.9637、p=0.0015)、手術緊急性(χ2値=10.0910、p=0.0014)、手術前日のステロイド投与量(χ2値=15.6488、p=0.0000)、ストーマのタイプ(χ2値=10.7867、p=0.0010)、術後 1週間及び2週間目の便の量(χ2値=7.5813、p=0.0059)との間に統計学的に有意な関連性が認められた。さらに、重症例および緊急手術症例に関しては、ETナースの介入とびらん発生とは関連する傾向(χ2値=3.4687、p=0.062)がみられた。したがって、これらのハイリスク群を術前より把握し、専門的な技術と知識をもったETナースがケアにかかわることが重要といえる。

  • 渡辺 光子, 高橋 文子, 南雑 タミ
    2000 年 4 巻 2 号 p. 29-34
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
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     褥瘡に用いるドレッシング材の減圧効果を明らかにするため、9通りのドレッシング材を貼付した仙骨部の体圧を、2種のマットレス上で、内圧・外圧ともに測定した。対象は、32歳~66歳の健康者30名で、測定には簡易型体圧測定器を使用した。ドレッシング材は、➀四つ折りガーゼ5枚②同10枚③同20枚④二つ折りガーゼ20枚⑤ハイドロコロイドドレッシング材⑥ポリウレタンフォームドレッシング材⑦⑧⑨。①、⑤、⑥にそれぞれ生理食塩水10㎖を含ませたもの、とした。その結果、減圧マットレス(マキシフロート®)使用時は、9条件すべてにおいてドレッシング材を貼付したほうが、何もあてない状態よりも体圧は有意に上昇した。また、標準マットレス使用時には、4つ折ガーゼ20枚の条件のみで、体圧が有意に上昇した。以上より、減圧マットレス使用時においては、体圧を減少させる目的でドレッシング材を使用することは効果的でなく、かえってマットレスの持つ減圧効果を妨げる要因となることが示唆された。

  • 古川 久美子, 前川 厚子, 作間 久美, 佐奈 明彦, 江上 直美, 吉田 和枝, 後藤 美和子, 近藤 貴代, 松原 明美, 神谷 紀子 ...
    2000 年 4 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
    ジャーナル 認証あり

     非粘着式装具を使用しているオストメイトの現況とストーマケア課題を明らかにすることを目的に東海地区JAET会員が協力し、独自に作成した調査票を用い面接を実施した。
     結果:対象は18(男性8、女性10)人、ストーマ手術後の経過年数は平均19.4(幅5~35)年であった。消化管ストーマ保有者が16人、尿路ストーマ保有者が2人であった。非粘着式装具の種類は消化管では京大式が4人、松本式が3人、石田式が3人、自家製が2人、ラコロ・タオル・ちり紙・ガーゼドーナツが各1人で、尿路ストーマではVPIウロストミーシステムが2人であった。対象の88.9%が漏れ、かぶれ、臭いの三大愁訴を認識しており、77.8%に皮膚障害が認められ、ストーマケア不足が推察された。非粘着式装具の再購入が困難になっている現状を情報提供し、代替案として粘着式装具の選択・指導とスキンケア教育を行うことが課題である。

  • 菅野 直子, 岩永 智恵子, スズキ さおり, 川上 淑恵, 朝子 ひろ子, 近藤 美穂, 山形 由美子
    2000 年 4 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/02/13
    ジャーナル フリー

     在宅療養における褥瘡ケアは介護者の協力が必須である。介護者が褥瘡について十分な正しい知識を習得することは、予防や治療を行う上で重要である。介護者に対して褥瘡の正しい基本的知識を普及することを目的とし、メディアを使用した視聴覚教育方法による集団教育を行い、アンケート調査によりその効果を検討した。対象は当院で訪問看護を受けている要介護者の介護者8名。教育内容は褥瘡の発生機序、予防に重点をおき、I~Ⅱ度の浅い褥瘡のケア方法、褥瘡に関連した物品の紹介とその使用方法などで基本的な知識の習得を目的とした。高齢者や非医療者にもわかりやすくするために、実際の症例のスライドやオリジナルのモデルを使用した講義と、ケア方法のデモンストレーションなどを中心に教育を実施し、最後には学習のフィードバックを行った。この集団教育直後と2ヶ月後に、介護者に対して集団教育後の褥瘡の理解度、介護者の意識、介護の実践での変化及び要介護者の状況などについてアンケート調査を行った。結果その理解度は高く、治療効果として87%の要介護者に予防、治癒、改善がみられた。介護者に対し集団教育をする事は在宅における要介護者の褥瘡予防、改善に有効であった。

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