近年、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colites;UC)における手術療法は、根治性と社会復帰の両面から積極的に選択できるようになってきた。しかし、分割手術症例では、一時的にイレオストミーを保有することになり、消化酵素の活性が高い水様性の便が多量に排泄されるためストーマ周囲の皮膚障害を生じやすい。また、術前に大量ステロイド投与症例が多く、いったん皮膚障害を生じると悪化しやすく、治癒しにくいため、皮膚障害の予防は重要な課題といえる。そこで、UCによりイレオストミー造設術を施行した148例を対象とし、術後1ヶ月以内のストーマ周囲皮膚障害として、発生頻度の高い「びらん」に着目し、どのような発生要因が関連しているかを検討した。
術後1ヶ月以内のびらんの発生率は48%であった。これらのびらんの有無について、対象側の因子として、①年齢、②性別、③UCの重症度、④手術緊急性、⑤ステロイド使用量、⑥ストーマのタイプ、⑦便の量をあげた。また、看護ケアに関わる因子として、⑧ETナース介入の有無をあげ、8項目について検討した。結果、術後1ヶ月以内のびらんは、UC重症度(χ2値=12.9637、p=0.0015)、手術緊急性(χ2値=10.0910、p=0.0014)、手術前日のステロイド投与量(χ2値=15.6488、p=0.0000)、ストーマのタイプ(χ2値=10.7867、p=0.0010)、術後 1週間及び2週間目の便の量(χ2値=7.5813、p=0.0059)との間に統計学的に有意な関連性が認められた。さらに、重症例および緊急手術症例に関しては、ETナースの介入とびらん発生とは関連する傾向(χ2値=3.4687、p=0.062)がみられた。したがって、これらのハイリスク群を術前より把握し、専門的な技術と知識をもったETナースがケアにかかわることが重要といえる。
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