目的:精神疾患を有する患者における褥瘡発生の問題解決には、褥瘡の特徴を理解し、発生要因を検討することが重要である。本研究では、精神疾患を有する患者の褥瘡の実態を調査するとともに、質的スケッチ技法により、褥瘡の形態とその発生状況の関係を検討した。方法:まず後ろ向き研究として褥瘡回診のデータから精神疾患を有する患者とその他の患者の比較(研究1)を行い、精神疾患を有する患者の褥瘡の形態的特徴と褥瘡発生状況を質的記述的に分析(研究2)した。結果:対象は精神疾患を有する患者15 名、その他の患者262 名であった。精神疾患を有する患者は、その他の患者と比較し、年齢が低く、歩行可能であった。さらに褥瘡の保有個数が多く、院外発生が有意に多かった。また座位で発生する褥瘡がみられなかった。精神疾患を有する患者の褥瘡に特有な形態的特徴として、形は<雲状形>と<シャープ形>、色は<まだら>のカテゴリーが抽出された。褥瘡発生状況における褥瘡部位へかかる外力は<小刻みに動く>、<大きく動く>、<まったく動かない>、<自傷行為>、発生要因は、<精神科治療薬の過剰投与>、<過量服薬>、<身体拘束>、<循環不全>があげられた。結論:精神疾患を有する患者は自立度が高く、比較的若年であるにもかかわらず、褥瘡が多発していた。発生状況としては、動きや自傷行為による外力と、精神科治療薬の服用量や身体拘束といったケアによる要因が関係していた。
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