AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
2 巻, J2 号
選択された号の論文の106件中51~100を表示しています
  • 党 紀, 水元 大雅, 全 邦釘, 刘 佳明, 藤嶋 斗南
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 447-456
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    本研究では,人手不足やコストが懸念されている橋梁点検業務に, UAV画像から物体検出のための深層学習の手法の一つである YOLOを用いて,同一画像から複数の損傷を同時に検出方法を検討する.深層学習を用いる事で,作業のプログラム化による作業時間の短縮と損傷の診断に客観的要素を加えることによる見落とし,ミスの抑制を行う事ができる.既往の研究として田畑らが行った CNNを用いた検証では, UAVで撮影した画像の損傷認識では,損傷部分を大まかに認識できていたものの,学習させていなかった背景部分を損傷と誤認識してしまっていたことによるものであった.また UAV動画の診断では検出時間が大きくかかってしまい,実用には向かないものとなってしまった.これらの問題に対し背景の誤検出に強く,検出を高速で行う事ができる YOLOモデルを用いて検証を行う.

  • 久國 陽介, 釘宮 哲也, 清水 暁央, 渡部 一雄, 伊佐 政晃, 茂呂 拓実
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 457-465
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    社会インフラの老朽化から,効率的な維持管理技術が求められている.本研究では,維持管理に重要な橋梁の状態を推定するため,デジタルツインモデルの構築と適用を目指す.既設の長大鋼斜張橋全体を対象に,精緻に再現した大規模有限要素モデルを構築し,死荷重およびプレストレスによって各部材に生じる応力の再現を試みた.さらに対象橋梁の主桁形状,ケーブル張力および残留応力の測定を行い,設計想定の変形状態と実際の変形状態の差分から,実橋梁の状態再現における課題を考察した.また,健全性の評価を見据えて,大規模モデルを用いた耐荷力解析を実施した.非線形性を考慮した 2億自由度規模の橋梁全体の解析が可能であることを示した.また,精緻なモデリングによって局所から広域への降伏領域の拡大状況を把握できることを示した.

  • 中畑 和之, 都築 幸乃, 牧田 陽行, 林 恭平, 丸山 泰蔵
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 466-474
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    アレイ探触子を用いて接触媒質を介して被検体中へ伝搬する超音波による内部映像化を検討する.ここでは,アレイ映像化手法である全波形サンプリング処理(FSAP)方式を用いて,第 1 ステップで接触媒質と被検体の界面の形状を推定する.第 2ステップで,推定した界面における屈折を考慮して各アレイ素子から内部までの超音波伝搬経路を計算し,超音波の往復伝搬時間に相当する振幅を合成することで被検体内部の映像を得る.本研究では,敵対的生成ネットワークを用いた機械学習法である pix2pixを用いて界面の不完全部分を補間し,FSAP方式による欠陥再構成を高精度化することを試みた. pix2pixで学習モデルを作成するために,波動伝搬シミュレーションを用いて大量の学習用データを作成した.実際の鋼製パイプに作成した人工欠陥に対して本手法を実施した結果,学習モデルを用いて界面補間を行うことで被検体の欠陥イメージングの精度が大幅に向上することを示した.

  • 山本 浩司, 新宮 圭一, 森脇 亮, 羽藤 英二
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 475-484
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    1995年の阪神淡路大震災以降,各地に頻発する活断層型地震災害,2011年の東日本大震災がもたらした巨大津波等による未曾有の大災害は,壊滅したまちを復興し生活を再建することの難しさを露わにした.そのため,次期の南海トラフ地震等の巨大自然災害のリスクに対しては防災から復興までに備える「事前復興」の取り組みが必要とされている.事前復興として前もって総合的に施策を講じる事項は多岐にわたるが,それらは俯瞰的に地域の課題を紐解き,戦略的に対処法を捻出するために,多種多量の情報(基礎データ)を必要とする.そのための情報基盤(情報システム等)を備えることも事前復興の一部となる.本研究は,そのような観点から事前復興の基盤となる情報プラットフォームの構築と活用に取り組んだ.

  • 田村 誠一, 嶌田 壮志, 中村 秀明
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 485-494
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    PCグラウトの充填状況を評価する方法として,弾性波を利用するインパクトエコー法がある.インパクトエコー法で得られる反射弾性波は複雑であり,その周波数スペクトルのみからグラウトの充填判定を行うのは困難な場合が多い.そのため,独自の周波数応答解析を行い,その結果を2次元カラーマップ(コンタ図)として可視化するSIBIE法が提案されている.このSIBIE法によりグラウトの充填判定がより行いやすくなったが,それでも充填判定には経験と技術を要する.

    そこで本研究では,SIBIE法により作成されたコンタ図に対して,深層学習(Deep Learning)を適用し,技術者の充填判定を支援する手法について検討を行った.さらに,判断根拠を理解するため,Grad-CAM等を用いて判断根拠の可視化を行った.

  • 藤井 純一郎, 吉田 龍人, 天方 匡純
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 495-502
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    都市河川の多くは高度経済成長期に整備されたコンクリート護岸が張り巡らされており,経年劣化に伴い河川点検の重要性が増している.都市河川を管理する地方自治体では,これまで目視により点検を行ってきたが,不具合箇所の増加と熟練技術者の不足により,様々な課題が顕在化している.本研究では横浜市を例に,地方自治体における現状の河川点検の課題を抽出し,課題解決に資する河川管理 DXを提案した.河川管理 DXはデジタルツインを前提として, AIと人による点検を組み合わせたワークフローと,それを実現するためのアプリケーションからなる.本稿では提案した河川管理 DXを横浜市河川の一部区間で試行して得られた知見と今後の展望について述べる.

  • 西内 裕晶, 松田 紗奈, 板垣 伸政
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 503-509
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,2020年4月に新型コロナウィルスの感染拡大により発出された緊急事態宣言が高知都市圏における公共交通利用者に与えた影響をマクロ的,ミクロ的に把握する.具体的には,ICカードデータを活用することで,マクロ的分析としてゾーン間OD利用者数の変化を,ミクロ的分析として利用者の利用頻度の変化について,いずれも生存時間分析により把握するものである.その結果,緊急事態宣言発令後のゾーン間OD利用者数の変化には地域特性が存在することや,高頻度利用者のトリップ数の変化にはその行動特性が関係することを把握できた.したがって,提案した方法により ICカードデータを活用することで,緊急事態宣言等が発出された際もしくは宣言解除後に利用促進策を促すべき公共交通利用者を把握することができる可能性を示すことができた.

  • 小久保 豪和, 黒岩 剛史, 谷口 健太, 嶋津 将徳, 金井 洸, 古木 宏和
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 510-516
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    画像変換における敵対的生成ネットワーク(GAN)の1つpix2pixは,2つの画像から画像間の特徴を学習することができ,様々な分野で作業効率化等に向けた研究が進められている.土地区画整理事業に着目すると,検討に時間を有する換地設計などで GANの活用が考えられる.そこで本研究の目的は,換地設計における基本的な設計条件等についてpix2pixの学習状況を確認し,換地設計の作業効率化にむけたpix2pixの活用可能性を検証することである.本研究では学習結果を確認しやすいように,直角や平行を基本とした画地の教師データを準備した.次にpix2pixに教師データを学習させ,その後学習済みpix2pixをテストデータで評価した.その結果pix2pixの変換画像には,一定の設計条件を満たした画地線が確認でき,換地設計における形式知を画像から学習できる可能性が示唆された.

  • 蓑田 玲緒奈, 猪村 元, 榎谷 祐輝, 田中 大介, 石川 幸宏, 今泉 直也, 小西 真治, 石川 雄章
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 517-527
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,高精細なカメラ撮影画像を用いた土木構造物の損傷の発見や記録,画像診断等の活用に対する期待が高まっている.しかし,このような高精細画像の活用のためには,画像と構造物上の位置を対応付けて管理し,さらに,変状/損傷記録と構造諸元や周辺の地質等の関連情報を参照可能なように適切に管理することが重要である.本論文では,トンネル構造物を対象として位置に基づいた多種多様なデータの統一的な管理と活用を実現するための重畳表示・管理システム,および, 1)シームレスに異種データを重ね合わせ表示するための重畳表示ユーザインタフェース, 2)各種関連情報の重畳表示・管理のためのデータ形式, 3)関連データの管理のためのデータベースの各構成要素について提案する.

  • 中村 朋佳, 上田 弥来, 吉田 郁政, 中瀬 仁
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 528-538
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究ではDEMを用いたカーリングストーンの軌道予測を行うためのモデルの提案,および実測に基づくモデルパラメータの同定を行った.ストーン前後で生じる摩擦に差があると仮定し, 5つの係数をもつモデルを提案した.ストーンを投てきしている動画から画像解析を行うことで時系列データを取得,解析で推定した軌道との残差二乗和が最小となるようにパラメータの同定を行った.その結果実測データとほぼ一致したストーン軌道を再現することができた. 88ケースのデータに対してパラメータ同定を行い,得られたパラメータのばらつきがヘッセ行列及び Particle Filterを用いた感度解析とおおよそ整合することを示した.さらに,同定したパラメータをもとに狙った座標にストーンを置くための初速度と射出角度を対象に検討し,2つのパラメータの感度を定量的に示した.

  • 佐藤 公紀, 紺野 康二, 高野 淳, 長田 隆信
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 539-544
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    高齢化した膨大な社会インフラの確実な維持管理への要求に対し,生産年齢人口の減少に伴う技術者不足が大きな社会問題となっている.このため,道路の維持管理においても ICT,IoT,AI等の技術を積極的に活用し,生産性の向上を図る必要がある.本稿では,首都高速道路の巡回点検において,手作業に頼っていた従来手法の課題を解決するため, 2017年よりフルハイビジョンのカメラ点検システムを導入しており,その概要および活用事例について述べる.加えて,巡回点検の更なる高度化・効率化を目指し,取得映像から路面損傷を自動検知する AI技術を開発しており,これら技術の試行内容と将来展望について述べる.

  • 泉 翔太, 全 邦釘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 545-555
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物の高齢化により,損傷が顕在化しており,問題となっている.特に劣化の速度に影響を与える重要な指標であるひび割れは点検・評価・記録に膨大な時間と労力がかかるため,機械学習手法などを用いた自動検出手法の開発が国内外でなされてきた.しかしながら,撮影画像からひび割れをピクセルレベルで自動検出するためには,同じくピクセルレベルでひび割れを判別した教師画像が大量に必要であり,作成コストが非常に高かった.これらを作成するのは容易ではなく,画像解析手法の現場導入に際する障壁となっていた.そこで本研究では,Attention機構を利用することで,教師データ作成コストを下げながら,ひび割れをピクセルレベルで検出する手法を開発した.また,撮影画像を用いて精度評価を行い,既往の検出手法と同程度の精度であることを確認した.

  • 平岡 伸隆, 吉川 直孝, 伊藤 和也
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 556-567
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    土砂崩壊災害の防止のためのソフト対策として,斜面の動態観測データから崩壊の予兆を検知し,それに基づいた監視システムの運用が有効である.この監視システムにおいて大きな課題となるのは,計測データから得られた情報がどのようになった時に,退避のための警報を発するかである.本研究では,遠心場での斜面崩壊実験で計測した斜面表層ひずみの時系列データから,深層学習の手法の一つであるLSTMを用いてデータの予測を行い,その予測値と計測値の残差によって,斜面の異常を検知する手法について検証した.その結果,設置した8基の表層ひずみ計の異常検知数の時系列推移から崩壊前に斜面の異常が検知できることが確認された.また,時系列データを定常化するために表層ひずみ速度を用いた場合においても,同様に崩壊前に斜面の異常検知が行えることを確認した.

  • 平田 憲嵩, 中村 和樹, 和泉 勇治, 子田 康弘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 568-577
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    建設後 50年を超えた橋梁は年々増加傾向にあり,点検技術者の減少や維持・管理費に占める点検費用の割合が多いことから,定期点検の効率化や新技術の導入が喫緊の課題である.近年,土木分野においても,機械学習の 1つであるディープニューラルネットワーク(DNN)を適用することは,点検効率化を実現する有効な手法として考えられる.本研究では,機械学習として DNNを適用したコンクリート橋の変状検出器となる学習モデルを構築する.学習モデルは福島県が実施した道路橋点検結果の状況写真をトレーニングデータとし,構築される学習モデルは交差検定法によりコンクリート部材の変状の検出精度を評価した.本研究で構築した学習モデルの分類結果から,総合精度は 56%〜62%となった.また,トレーニングデータ数の増加に伴う各クラスの分類精度が高くなる傾向が見られた.

  • 笛田 泰成, 伊藤 真一, 酒匂 一成, 小泉 圭吾, 小田 和広
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 578-588
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    豪雨時の斜面崩壊の発生には,土中の水分状態が大きく影響する.筆者らはこれまでに,体積含水率の現地計測データの再現に対するリカレントニューラルネットワーク(RNN)の適用性について検証してきた.既往の研究では,RNNによって構築された回帰モデルを用いることで,学習時よりも強い降雨時の現地計測データを再現できることを明らかにしたが,回帰モデルを構築する際の入力データの与え方,モデルを構築するための機械学習のアルゴリズムに関する検討が不十分であった.本研究では,それらを変更した回帰モデルをそれぞれ構築し,適切な回帰モデルの構築方法について考察した.その結果,入力データとしては実効雨量,機械学習のアルゴリズムとしてはRNNを用いることで,土質の異なる斜面においても十分な精度で体積含水率を再現できることがわかった.

  • 橋本 岳, 橋本 智洋, 武井 祐馬, 山本 耀平, 山本 茂広, 中嶋 規人, 井澤 大介, 高野 隼行, 阿部 雅人, 杉崎 光一, 全 ...
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 589-597
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    日本全体で老朽化するコンクリート構造物のひび割れを目視で抜き出す作業をサポートするシステムについて,画像処理的な観点からの研究を行っている。このサポートシステムの条件としては見落としを防止することが重要である。そこで,セマンティックセグメンテーションの有力な手法であるDeepLab v3+に画像処理を組み合わせることで,ひび割れの検出率を向上させることを試みた。具体的に,ボックスカルバートの床版をUAV搭載カメラで撮影した画像を対象として検討を行った結果,画像処理として,アノテーションの膨張および明るさ調整が有効であることを見出した。

  • 鳥屋部 佳苗, 加村 晃良, 風間 基樹
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 598-608
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    地震動の加速度記録のみから液状化の程度を評価する深層学習技術を対象として,その妥当性を検討した.東北地方太平洋沖地震における関東地方140地点の強震観測データを事例として,実際に液状化被害が確認された地点との比較評価を実施した.液状化の程度は「液状化度(DDL)」と定義し,地盤中の過剰間隙水圧比の上昇度合いを深層学習の正解ラベルとして,0~4の5段階に分けて評価した.その結果,DDL=0~2(低い水圧比と判定)は87地点,DDL=3,4(高い水圧比と判定)は53地点となった.これらを東北地方太平洋沖地震の液状化履歴地図と比較したところ,DDL=3以上と判定した結果の約8%が地表で観測された液状化観測地点と一致し,DDL=2以下の地点の約91%で非液状化地点と一致した.

  • 南 貴大, 福岡 知隆, 小澤 幸雄, 藤生 慎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 609-616
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の老朽化が進んでいる中,定期的に近接目視における外観検査を行っている.コンクリート床版の外観検査では,床版ひびわれ・遊離石灰・鉄筋露出・うきなどの項目を目視・打音で把握し,健全性・対策区分を評価している.損傷の状態が著しいものに関しては内部の劣化状況を把握する詳細点検が実施されるが,外観検査での内部劣化の的中率は高いといえるものではない.本研究では,点検の高度化を図るために,定期点検に記録されている損傷状態とマイクロ波で観測可能な鉄筋腐食や滞水などの内部劣化の関係性を明らかにすることを目的とする. 定期点検で記録されている損傷図からコンクリート床版の各損傷の特徴量を画像処理によって取得し,ランダムフォレストを用いて,内部劣化の有無を判定するモデルを構築した.

  • 富澤 幸久, 吉田 郁政, 大竹 雄
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 617-625
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    地盤構造物の安全管理を行う上で,地盤物性値の空間分布を正確に推定することが重要であるが,観測点は限定的であり,得られている情報を全て有効に活用して合理的に推定することが好ましい.推定対象の物性値と相関の高い他の計測データを考慮することでより正確な推定が可能となる.本研究では,複数の確率場を重ねあわせた Gaussian Process Regressionによる空間分布推定手法を拡張し,ランダム成分については複数の計測データの相関を考慮する手法を提案する.実測の3種類の計測データを対象に,注目する物性値の空間分布についてトレンド成分とランダム成分への分離を行い,ランダム成分に対して複数種類の物性の相関を考慮する場合としない場合の比較を行った.複数の計測データの相関を考慮することで,推定の不確定性の減少,より精度の高い推定が可能となった.

  • 安田 悠哉, 村上 智久真, 大畑 卓也, 早坂 太一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 626-631
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    日本の橋梁は老朽化が進み,その多くの橋梁を管理している市区町村の役場では土木技術者が不足している.そのため,橋梁の劣化を簡易に把握できる点検手法が求められている.本稿では,土木分野に精通していない職員でも簡単に取扱うことができるように,ドローンなどに搭載されたディジタルカメラで撮影された橋梁の拡大写真をアップロードすることにより,損傷度合をディープラーニングにより推論した結果が自動的に出力される手法を試みた.その結果,現地でスマートフォンやタブレット端末から写真をアップロードし,瞬時に橋梁損傷度の結果が出力されるため,土木分野の専門知識がなくても橋梁の劣化診断が可能となった.

  • 山根 達郎, 渡部 達也, 全 邦釘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 632-641
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁撮影画像には損傷以外にも損傷が発生している部材名称など,様々な情報が含まれている.本研究では,多様な損傷や部材が写っている画像を基に,損傷状況を説明する文章を自動生成するDeep Learningモデルの構築を行った.さらに,Deep LearningモデルにAttention 機構を導入することで文章生成の精度向上を図るとともに,Deep Learningモデルが文章を生成する際に,入力画像のどの部分に着目して出力したのかという判断根拠を表す可視化画像の生成を行った.Attention機構を用いたモデルは,Attention機構を用いていないモデルと比較して高い精度で文章を生成できることが示された.また,文章生成時に,損傷の発生箇所や各部材に着目して単語を出力していることが示された.さらに,損傷発生部材のみならず周囲の部材に着目して出力するなど,人間に近い判断基準によって判断を下していることが示唆された.

  • 浦田 渡, 南 貴大, 藤生 慎, 福岡 知隆, 髙山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 642-648
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    高度経済成長期に多く建設された橋梁の高齢化が急速に進んでいる.国土交通省は橋梁に対する予防保全的な維持管理を重要視し,全ての橋梁に対して定期点検を義務付けている.現在実施されている点検手法である近接目視点検は予算・人員の問題により効率化が見込めないことから,その代替手法となる様々なシステムが研究されているが,本研究グループでは,超高解像度のカメラを用いることで視覚的に現在の点検と遜色ない環境を構築し,人が画像上でひび割れの診断を行う「画像目視診断システム」を提案している.これまで本研究では橋梁点検の経験年数が画像目視点検におけるひび割れ検出に与える影響についての評価を行った.今回は被験者のひび割れ検出結果データを経験年数とひび割れ診断の所要時間でクラスター分析から分類し,各クラスターが適合率,再現率,F値に与える影響の評価を行った.

  • 五十嵐 浩司, 阿部 和久, 山下 将一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 649-660
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    構造物の老朽化進行に伴い,維持管理施策の計画や実施方法の検討および研究がなされている.コンクリート橋では,その将来予測の技術開発・設計支援ツール開発が求められており,橋梁の付着塩分量測定技術の検討が必要とされている.これまでに,既存橋梁の付着塩分量の測定技術による解析データを利用し,機械学習による付着塩分量推定の評価モデルの構築を試みた.本論文では,当該研究を基に,機械学習のアンサンブル学習に属する4種類のアルゴリズムを対象にして,最適な評価モデルの選定の目的で,説明変数,機械学習用データの取り扱い方法等についての検討を実施した.また,本研究で得た塩分量推定パラメータを使用し付着塩分量推定を試み,本簡易推定法の妥当性についても検証した.

  • 川西 弘一, 髙畑 東志明, 林 詳悟, 橋本 和明
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 661-670
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    排水性舗装は,劣化初期では路面変状が現れ難く,路面に変状が確認されると,比較的短期間でポットホールなどの路面損傷へと進展する.3年ごとに実施する路面性状調査では,発生予測は不可能であり,劣化進行に影響する要因も明らかではなかった.著者らはこの課題に対して,解析の自動化により高頻度測定を可能とした簡易路面調査技術を開発し,路面の局所的な沈下量と舗装の表面凹凸によりポットホールの発生リスクを評価する新たな手法を提案した.本研究では,定期測定した高頻度の測定データから発生予測手法について検討し,これまで未解明であったポットホール発生に影響する要因を特定した.また,測定データとピンポイント気象情報を用いて将来予測を行い,効果的な補修時期について提案した.

  • 吉田 純司, 竹谷 晃一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 671-680
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    我が国の道路網は90%以上を地方公共団体が維持管理しているが,そのための費用は1990年代半ばをピークに減少傾向にあり,今後は合理的かつ効率的な維持管理方法の開発が課題となっている.本研究では,特に予算が限られている地方公共団体での実用化を目指して,道路路面の画像計測ユニットを開発し,撮影した画像から路面の健全度を評価するシステムの構築を目的とする.まず,画像計測ユニットの開発では,価格と使用性を重視したユニットを開発する.次いで,撮影した路面画像中の全画素を路面,路面外,マンホール,ジョイントの 4種に領域分割するニューラルネットワーク(NN)を構築し,さらに路面を格子状に分割して,ブロックごとに単一ひび割れ,面ひび割れ,ひび割れ無しに分類するNNを構築する.最後に,分類結果から路面の健全度を求め,それを地図上にカラーマップで表示するシステムを開発する.

  • 坪田 隆宏, 楊 宇, 吉井 稔雄
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 681-686
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,高速道路のトンネル灯具取付部材の画像を入力とし,ボルト・ナット部の腐食状況に着目した劣化診断結果を出力する深層学習モデルを構築する. YOLOv3のアルゴリズムに対して,データ拡張とアンカーボックスの最適化により,本研究で対象とする灯具取付部材の劣化判定に適したモデルを構築した.その結果,333枚という極めて少ないデータセットによる学習であったにも関わらず,データ拡張やアンカーボックスの最適化を組み合わせることにより,構築したモデルの灯具取付部材に対する劣化度の診断精度は80%以上に達することが分かった.今後はより多様な設置条件下での画像サンプルを拡充することにより,モデルの精度向上を目指したい.

  • 池内 三津喜, 宮崎 祐丞, 松田 篤史, 兒玉 庸平
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 687-690
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    冬季の北陸新幹線においては,車両台車部への着雪対策として雪落とし作業を実施している.雪落とし作業の要否は事前の降雪予報と社員の経験に基づいて判断するが,作業時に着雪状況を確認すると想定より着雪が少ない状況が散見されていた.一方で,気象情報と着雪には相関があることも確かであり,気象情報と列車走行データからAIを活用した高精度な着雪量推定モデルが作成できないか検討した.推定モデル作成にあたってはオープンイノベーション形式のコンペティションを開催し,コンペにおける上位複数モデルを組み合わせた雪落とし作業の要否判断支援ツールの導入を検討した.本稿では,解決策の着想から実務実装までの取組みを紹介する.

  • 夏堀 格, 岩谷 祐太, 石田 雅博, 松本 直士
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 691-699
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    道路橋の舗装と床版上面の境界部に滞水が生じることで,土砂化や凍害, ASRの発生と進行のリスクが高まる.予防保全の観点から,床版に対して悪影響を及ぼす水を早期に発見することが望ましいが,舗装と床版上面の境界部に生じた滞水は目視で確認することができない.本研究では非破壊検査技術の一つである電磁波レーダ調査と AI技術を組み合わせることで,電磁波レーダ調査で取得した波形データから舗装と床版上面の境界部に生じた滞水を推定する AIを構築し,その推定精度について検証を行った.

  • 山本 佳士, 光谷 和剛, 園田 潤, 木本 智幸
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 700-711
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,著者らが提案している,敵対的生成ネットワーク(GAN)を利用したレーダ画像からのコンクリート内部ひび割れの推定・可視化手法において,効率的にデータを取得可能なシミュレーションの有効利用に向けた基礎的な検討を行ったものである.具体的には,GANの応用技術の一種であるpix2pixを用いて,実験レーダ画像から疑似シミュレーションレーダ画像に変換するモデルを追加することで,実験結果とシミュレーション結果に一部乖離があったとしても,シミュレーションデータを学習データとして利用可能な手法を提案した.検証の結果,提案手法は,実験データのみを用いる従来手法と比較して,反射波が小さくなる欠陥が薄いケースで推定精度が向上すること等が分かった.

  • 須崎 光祐, 萩原 直明, 杉浦 功真, 橋本 岳, 阿部 雅人, 杉崎 光一, 山本 茂広
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 712-720
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年の日本では,インフラ設備の老朽化が深刻な問題となってきている.橋梁の劣化もその一つである.この問題を解決するために,たわみ計測により橋梁の劣化検知を行う研究が精力的に行われている.我々はその中でも画像を用いてのたわみ計測手法に取り組んでおり,本論文では,人工マーカーレス,遠距離から非接触,高精度計測の3つを可能にすることを目的とした.本論文では,所属研究室の萩原が行った先行研究(建物内での精度検証実験)を参考にして実際の橋梁を撮影した応用的研究を行った.

  • 竹谷 晃一, 佐々木 栄一, 范 書舒, 伊藤 裕一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 721-732
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    打音検査の定量化や自動化に向けた研究が進む一方で,検査員による従来型の検査を代替または補助するには欠陥の深さ方向に対する感度や検査時間,導入コストに課題があるといえる.本研究では比較的深い欠陥に対する検出感度の向上に加えて,その検出結果が影響する範囲を推定することで打音検査の効率化を目指す.はじめに,マイクロフォンの音圧波形の時間・周波数解析と複数の特徴選択手法から影響度の高い特徴量を選定した.そのうえで,畳込層と全結合層からなるニューラルネットワークを用いて欠陥検出とその影響範囲の推定を行った.空隙を埋設したコンクリート試験体による検証の結果,深さ8cmまでの空隙欠陥が検知可能であり,影響範囲の推定によって結果を効率的にマッピングできることを示した.

  • 飯高 優翔, 江本 久雄, 馬場 那仰
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 733-740
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,高度経済成長期に集中して建設された社会資本は,建設後50年を経過する割合が急激に増加する.その社会資本の中でも道路橋は,約6割を占めることから日々の点検作業が急務になっている.これにより,道路法施行規則が改正され,5年に1回の頻度で近接目視点検が義務付けられたが,構造物内部の損傷が確認できないため,非破壊検査が同時に行われている.非破壊検査の中でも打音検査は,安価かつ容易に実施できる手法であるため,一般的に良く実施されている.しかし,打音検査は点検者の聴覚に基づく手法であるため,点検結果にばらつきが生じてしまう課題がある.

    本研究では,打音検査を客観的に判定し,打音検査における健全と欠陥の正確な識別方法の検討を目的に,機械学習を使用し,コンピュータによる打音検査の識別を試みた.

  • 柿市 拓巳, 前田 晃佑, 山崎 文敬, 阿部 翔太朗, 髙木 寛之, 南園 直弥
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 741-748
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    コンクリート製剛性防護柵の出来形計測とコンクリート初期点検を同時に実施する測定ロボットの開発を実施した.出来形計測はリニアワイヤエンコーダを用いた出来形計測システムを開発し,従来手法と比較して,平均誤差3mm以内で計測可能であることを確認した.ひび割れ調査は汎用のコンクリートひび割れ検出AIシステムを用いることとし,壁高欄両面の画像を撮影するシステムを開発した.開発したシステムによりひび割れ検出を実施した結果,目視で確認した位置と同一箇所に同サイズのひび割れを確認することができた.本ロボットを用いることで施工管理に要する時間が従来手法と比較して50%程度の効率化に繋がることを確認した.

  • 中野 隆, 柿市 拓巳, 前田 晃佑, 新井 進太郎, 角木 啓太, 中川 大海, 田村 浩一郎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 749-756
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁工事における鉄筋コンクリート構造物の配筋検査は,従来はテープメジャーにより間隔を計測し,目視により本数の確認を行ってきた.本研究では画像認識AI技術を用いて従来の非効率な配筋検査を自動化・高度化することを目指す.今回新たに開発した自動配筋検査AIシステムは,UAVまたは計測台車を用いて撮影したデジタルカメラの撮影画像を元に配筋検査を自動で実施するものである.AIアルゴリズムはディープラーニングによる物体検出を核としており,鉄筋同士が交差する交点の特徴を学習させることにより鉄筋の配置を認識させる.本システムを用いて実際の橋梁工事にて実証試験を行い,鉄筋間隔を精度良く計測し,鉄筋本数の計数を自動化できることを確認した.

  • 宇野 昌利, 仲条 仁, 今井 龍一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 757-764
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国の建設業を取り巻く環境は,ITの進歩により劇的に変化しつつある.その変化の中心は,ディープラーニングなどの人工知能技術の進展によるところが大きい.一方,建設業でよく利用されるコンクリート工事の流れは,①コンクリートプラントで製造,②フレッシュコンクリートをアジテータ車を利用して現場に搬入,③型枠内にコンクリートを打込む,④バイブレーターによる締固め,⑤表面の仕上げ,⑥コンクリート面の養生,これら作業は30年以上前からほとんど変わっていない.

    本システムは,コンクリート工事の締固めに着目し,締固め箇所を定量的に把握することで,従来の作業員の経験による個人のノウハウを利用した定性的な管理から,動画像を活用してAI分析した定量的な管理に移行することで,確実な締固め管理が可能となることを確認した.

  • 大木 奎一, 照屋 光輝, 井上 麻子, 高田 佳則
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 765-770
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    土木-橋梁分野では,国交省が推進しているBIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)によって3次元モデルの工事活用が一般化され,3次元モデルを利用した生産性向上に期待が寄せられている.本論文では,3次元モデルの持つ視認性の高さとVR(Virtual Reality)で作成された空間の再現性に目を向け,鋼橋における溶接の施工性の事前評価にVRコンテンツが有効であるかモニターテストを実施した.コンテンツの作成には,BIM/CIMで使用される3次元モデルを使用し,作業姿勢を仮想空間上のアバターに反映するためにVRトラッカーは,HTC VIVE Tracker 2018を使用した.モニターテストの実施により溶接の施工性の事前評価におけるVRの有効性が確認され,機能の改良点が明らかになった.

  • 大屋 誠, 諏訪 太紀, 河原 達哉, 武邊 勝道, 広瀬 望
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 771-776
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    鋼構造物の維持管理において,塗装の劣化や異常さびが確認された場合には腐食原因を排除することが望ましいが,原因の排除が難しい場合には,塗替え塗装や補修塗装が行われる.鋼構造物の塗替えや補修時の塗膜の寿命をより長くするためには素地調整が重要である.補修塗装現場では,ブラスト工法による素地調整程度 1種を原則とした下地処理が実施され,鋼板面の適切な除錆度の判定が必要である.しかしながら,除錆度を目視で判定することは難しく,定量的な判定を支援するシステムの開発が求まられている.そこで本研究では,腐食した耐候性鋼材(さび度 D)の素地調整時の除錆度の程度を,深層学習を用いて判定が可能か検討を試みた.検討の結果,提案する除錆度の判定を支援するシステムは,実務での使用の可能性を示すことができた.

  • 畑本 浩伸, 青木 宏一, 飛鳥馬 翼, 北原 成郎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 777-784
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    山岳トンネル工事では掘削時に切羽の状態,風化変質,割目状態,湧水量等の観察を行い,地山を評価し,その結果を支保選定等に用いている.切羽観察時には現場技術者が評価を実施しているが,経験の少ない技術者が評価を行う際の支援の観点から,人間以外の客観的な診断システムの構築が期待される.本稿では,掘削中の各トンネルにおける切羽写真の画像を,新規で構築した切羽画像AI(Artificial Intelligence)診断システムに学習・診断させ,観察項目毎に判定正答率を評価した結果を示す.

  • 寺本 昌太, 小林 泰三
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 785-791
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    振動ローラを用いて土の締固めを行う際,転圧によって地盤の剛性が増大すると転圧輪の振動挙動に変化が生じることが知られている.本研究では,振動ローラの転圧輪の振動挙動を数値シミュレーションによって再現し,それを畳み込みニューラルネットワーク(CNN)によって学習し,施工中の転圧輪の加速度応答計測から地盤の剛性を予測する手法を提案した.シミュレーションによって作成した加速度データによる交差検証と締固め現場で得られた実計測データによる検証を行った結果,推定値と正解値には正の相関性が確認でき,深層学習による地盤の剛性評価手法の実現可能性を示すことができた.

  • 田村 晃一郎, 原田 隆郎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 792-800
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    耐候性鋼材の点検方法は目視による5段階の外観評価が一般的であるが,点検者によって判定が異なる可能性があることから定量的な評価手法が求められている.そこで,ディープラーニングを用いたさびの自動判定評価手法が提案されているが,アノテーションされたさび画像が不足しているという課題がある.本研究では,敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いてディープラーニングによって使用できるさび画像を生成することを目的とし,教師データとして使用するさび画像枚数とGANから生成されるさび生成画像を比較することで,GANによるさび画像生成の可能性について検討した.その結果,評点3のさび画像が4枚以上で構成されているデータセットから生成されたさび画像は,専門家による外観評価でも概ね評点3と判定され,画像としての多様性もあることを確認した.

  • 髙橋 晋平, 中村 和樹, 和泉 勇治, 子田 康弘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 801-812
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の老朽化による点検対象の増加および少子高齢化による点検技術者の減少が懸念されることから,点検作業の省人化を実現する新たな技術の導入が喫緊の課題である.近年,土木分野においても,機械学習として畳み込みニューラルネットワークを適用する手法が有効性の高い点検手法として注目され,既往の研究において,福島県が実施した道路橋点検結果の状況写真をトレーニングデータとする建設事務所単位の鋼橋の腐食検出器となる学習モデルを構築し,実用上の分類精度を有することが報告されている.このことから,本研究では既往の研究による各地区のトレーニングデータを統合して拡充した2地区統合の学習モデルを構築することによって分類精度向上の可能性を調査した.その結果,トレーニングデータを約2倍増加することにより,腐食の分類精度の約8%の向上に寄与することが判明した.

  • 蓮池 里菜, 木下 幸治
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 813-820
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    鋼材の腐食部外観は曝露環境ならびに鋼材種類により異なる.本研究では,耐候性鋼材を対象に腐食環境を変化させた促進試験で得られた腐食部画像を基に,機械学習による健全度判定を試みた.具体的には,各塩化物環境下で得られた画像の外観評点と,劣化程度の指標とした質量増加量,さび厚との関係を整理した上で,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により腐食部画像の分類器を作成した.その結果,質量増加量,さび厚と外観評点間の相関が低いこと,および,各塩化物環境で得られた腐食画像ごとに作成したCNN分類器では,環境により精度が異なることを示した.また,全ての環境で得られた画像を用いたCNN分類器では精度が低い結果となったものの,各評点ごとの分類結果では高い精度で分類可能な評点も存在したことから,改善が見込まれる.

  • 田中 成典, 山本 雄平, 今井 龍一, 神谷 大介, 中原 匡哉, 中畑 光貴
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 821-832
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    昨今,深層学習を用いて物体の詳細な部位を識別して,姿勢や行動を推定する研究が盛んである.例えば,車両の部位を識別することで,逆走や改造車両を検出できる.本研究では,それらの用途の中でも深層学習の導入が特に注目されている交通量調査への適用を試みる.当該調査では,作業の省力化や効率化を目的として,動画像から車種ごとの通過台数を計数する技術開発が推進されているが,既存技術には,形状の似た車両の車種分類に失敗する課題がある.その対応策として,調査員が着目する部位の形状を考慮して分類することが考えられる.そこで,本研究では,深層学習を用いた車両部位識別技術を開発する.加えて,再学習のコストを軽減するため,教師データの自動生成技術も検討する.そして,実証実験を通じて,それらの技術が有用であることを明らかにした.

  • 河本 麻実, 藤生 慎, 髙山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 833-840
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    北陸地方から東京への交通手段はこれまで航空が中心であったが, 2015年3月14日に北陸新幹線が金沢開業を迎えたことで,交通手段の選択肢が増加した.航空需要が減ると減便,撤退する可能性がある.新幹線の開業時には機材の小型化,運賃引き下げを行い,開業 1年後,減便されたものの,中型機材の導入による総座席数の維持,運航時間の工夫などの利便性向上策を打ち出した.これらに対し,小松空港にて配布した航空利用者対象のアンケート調査を行い,機材特性を考慮した航空サービスに関する利用者特性の分析を行う.

  • 玉森 祐矢, 藤生 慎, 高山 純一, 西野 辰哉, 寒河江 雅彦, 柳原 清子, 平子 紘平
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 841-847
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    日本の少子高齢化は世界に類を見ない速度で進展しており,我が国の医療費は増加の一途をたどっている.このような状況が続けば,日本の医療保険制度の維持ができなくなる.また,日本では生活習慣病の急増を受け,「第4次国民健康づくり対策」が策定されている.現在,高血圧症や糖尿病といった生活習慣病が増加しており,そのような生活習慣病を早期発見する機会である特定健康診査受診率が伸び悩んでいることが課題となっている.

    そこで,本研究では,国保データベース(KDB)を用いて,まず,生活習慣病と健診回数の関係を示し,健診の効果を示唆する.また,生活環境との関連を調べるため,地域の現況や特性を考慮した分析を行い,健康課題・健診率の地域差を明らかにし,地域別の健康課題や健康な地域の特性について把握する.

  • 大西 宏樹, 藤生 慎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 848-855
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,石川県内で発生した歩行者事故を対象とし,子供の歩行中事故要因を把握するため,交通事故統計データを利用した分析を試みた.要因把握に際しては歩行者と運転者それぞれに着目し,歩行者の年齢区分毎に法令違反と人的要因を分析した.歩行者に着目した結果,小学生以下は飛出し違反を占める割合が高く,未就学児は保護者等の不注意,小学生は安全不確認を占める割合が高いことが明らかとなった.また,運転者に着目した結果,相手歩行者が小学生以下の場合は安全運転義務違反(安全速度)と誤判断(予測不適)を占める割合が高く,歩行者が交通ルールを守ると思い込んだ等が主な要因であることが明らかとなった.

  • 古木 宏和, 荒木 光一, 野村 卓也
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 856-862
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,土木分野の判読技術を対象としたセマンティック・セグメンテーションにおいて,少量の事象で精度を向上させるためのアノテーション方法を検討する.判読対象は枯死木判読とする.検討するアノテーション方法は,枯死木のみをアノテーションする方法と,枯死木だけでなく誤抽出しやすい人工構造物等もアノテーションする方法とした.この2つのアノテーション方法を比較した結果,抽出精度は後者の方が高く,誤判読しやすい対象物もアノテーションすることで抽出精度が向上することを示した.枯死木判読の観点からすると,この抽出精度の向上により,技術者の省力化や気づきを与えることも分かった.

  • 村上 徹明, 藤生 慎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 863-871
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では想定を超える大雨などの影響により,全国各地で河川の氾濫や低地の浸水,人的被害が多く発生している.人的被害の主な原因に,住民の逃げ遅れが挙げられる.これを防ぐために,住民の避難の判断材料となる避難情報をよりわかりやすくし,適切な避難行動に繋げることが重要である.そこで,災害時に自治体が発表する避難情報は,令和3年5月20日から「避難勧告」が廃止され,「避難指示」に一本化された.本研究では,水害を模した映像を使ったアンケートを用いて,どのタイミングでどの防災行動をとるのか,のような紙による調査では集めることのできない,住民の連続的な意思決定プロセスを明らかにする.本アンケートを通して,回答者の避難行動のタイミングから,住民の避難に至るまでの判断の遅さ,防災意識の低さを示すことができた.

  • 坂口 大珠, 石田 桂, 横尾 和樹, 永里 赳義, 木山 真人, 尼崎 太樹
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 872-882
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,アンサンブル学習の中でも2層構造のスタッキングを用いて相互比較を行い河川流量推定におけるアンサンブル学習の有用性の検討を行った.第一層では入力データを降水量,気温とし弱学習器に複数の深層学習手法(MLP,CNN,LSTM)を用いて複数のハイパーパラメータの組み合わせで複数回学習を行い日平均河川流量を出力とした.第二層では第一層で出力した推定流量を入力としXGBoostを用いて入力データの様々な組み合わせを行い流量推定を行い比較検討を行った.結果として,各学習手法でアンサンブル学習によって流量推定の精度の向上する可能性が示された.LSTMを用いた場合ハイパーパラメータ次第では複数回の学習した結果を用いてアンサンブル学習を行えば精度が向上する可能性が示された.その中でも最も高い精度はNSE=0.733を確認した.

  • 横尾 和樹, 石田 桂, 永里 赳義, 坂口 大珠, 木山 真人, 尼崎 太樹
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 883-892
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では深層学習のうちLSTMに注目し,入力変数に対する感度解析を行った.対象事例として,寒冷地における降雨流出解析を取り扱い,降雨や蒸発散だけでなく気温・日射量などの各入力変数が流出流量の推定精度に与える影響を調査し,物理的関係性を考慮した議論を展開した.結果より,物理的に関係性が高い変数を入力として用いた場合に必ずしも精度の向上が図れるわけでないことが示された.近年深層学習手法による学習結果に対する物理的観点からの解釈が求められている.しかしながら,深層学習手法において物理的観点からの解釈を行う場合,少なくとも本研究のように入力変数と推定精度の関係性を明らかにしたうえで解釈を行わなければ,見当違いな解釈が得られる可能性がある.

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