養分循環の推進による環境負荷の少ない輪作体系の確立を目的として,数種緑肥作物を土壌にすき込んだ場合のみかけの窒素無機化率と後作物に対する可給性について,ポット試験により検討した.
4種類の緑肥作物(ヘアリーベッチ : HV, ヒマワリ : SF, クロタラリア : CR, 陸稲 : UP)の細断物をそれぞれ窒素量が一定(200kgNha
-1)になるように土壌に混合してポットに詰めた.SFは子実成熟前に収穫されたものであった。これら4試験区に加え,同窒素量の化学肥料区(F)および窒素無添加区(対照区,C)を設けた.ビニールハウス内で,資材混合2週間後にコマツナを播種し,75日間栽培した.途中で間引きを含め5回サンプリングを行い,乾物重と窒素含有率を測定した.
コマツナの乾物重および窒素含有率はF区>HV区SF区>C区>UR区となり,UR区は対照区より劣った.混合資材由来窒素の吸収量はF区で最大となり,HV区とSF区がこれに続き,UR区は計算上マイナスになった.差引法によって求めた残渣の窒素無機化率はHV区とSF区でCR区,UR区よりも有意に高かった.土壌中の無機態窒素もHV区とSF区が明らかにCR区,UR区より高かった.
以上の結果から,後作物への窒素供給すなわち後作物の窒素要求との同期性という点においては,供試したカバークロップのなかではヘアリーベッチと子実成熟前のヒマワリが最も望ましい性質を持つと考えられた.
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