農作業研究
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55 巻, 2 号
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研究論文
  • 松尾 健太郎, 山本 岳彦, 山崎 篤
    2020 年 55 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    畝の上の溝に播種する方法(溝畝播種法とする)が東北地域のタマネギ春まき作型の直播栽培に与える影響を調査した.畝の上に幅が12 cm,深さが6 cmの溝の底に播種した溝畝区および溝がない平畝に播種した平畝区を設定し,3品種を栽培した.種子付近の地温と土壌の体積含水率は,溝畝区と平畝区を比較した場合,溝畝区の最低地温が高く,最高地温が低くなり,体積含水率が高く維持された.その結果,出芽率や播種後62日の草丈は3品種ともに溝畝区が高くなった.茎葉の倒伏が50%以上を超えた日は,溝畝区と平畝区とも‘もみじ3号’,‘マルソー’,‘オホーツク222’の順で早かった.また,‘もみじ3号’では,溝畝区が平畝区よりも8日間早く倒伏した.‘マルソー’,‘オホーツク222’の溝畝区と平畝区の倒伏日はほぼ同等であった.‘もみじ3号’の鱗茎重は,溝畝区が68.4 gで平畝区が50.5 gと差が小さかった.‘マルソー’,‘オホーツク222’の溝畝区の鱗茎重は103.5 g,118.5 gで平畝区の1.6~1.8倍であった.鱗茎の外観については平畝区と比較して溝畝区が若干縦長になる傾向があったが,縦横比は1.0未満で外観に問題はないと考えられた.以上から東北地域のタマネギ春まき作型での直播栽培において,溝畝播種法は,出芽と生育を促進させ,早生品種では倒伏時期を早め,晩生品種では収量を増加させる効果があると考えられた.

研究報文
  • 孫 雯莉, 奥野 林太郎, 高橋 高橋
    2020 年 55 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,広島県東広島市の集落営農法人が実施する防除作業を調査し,マルチコプタと従来のブームスプレーヤによる防除作業を比較して,中山間地域におけるマルチコプタの活用効果を明らかにした.具体的には,圃場面積による作業能率の変化を解明した.これとともに,マルチコプタでの資材の補給や圃場間移動などを含む作業全体の時間の計測結果から防除作業の流れ図を作成し,実際にブームスプレーヤで作業した圃場群を対象に,マルチコプタで作業した場合の時間を推定して比較した.その結果,マルチコプタによる防除ではブームスプレーヤと比較して圃場作業量が約3倍大きかった.そして,ブームスプレーヤと比べ,マルチコプタの1 haあたり圃場作業時間は圃場面積による影響が比較的小さかった.同一圃場群を対象とした比較では,マルチコプタによる作業時間はブームスプレーヤより55%短縮できると推定された.マルチコプタによる防除はブームスプレーヤに比べて単に作業能率が高いだけでなく,小面積の圃場でも作業能率の低下抑制が見込める点において,中山間地域に適していると考えられる.

  • 平泉 光一
    2020 年 55 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    作業時間の代表値として平均値が用いられることが多い.しかしながら,異常値に近い時間値が何個か含まれた場合,平均値が,本来の値より大きくなったり,小さくなったりするという問題点が指摘されている.農作業では,生産過程が自然環境の影響から人為的に統制しがたい条件に規定され,作業時間に異常値が出現しやすく,しかも片側に裾が厚い分布になりやすいとみなされる.農業では,本来の時間値と呼べる典型値となる作業時間を把握することが望ましいケースが少なくない.そこで,本稿では,農作業時間の代表値の一つとして最頻値を用いる選択肢を考えた.とはいえ,既往の最頻値計算法には問題点も多い.通例,最頻値はヒストグラムを作成したうえで最大度数の階級の階級値として求められる.しかし,通例の方法で求めた最頻値は,階級幅を一定にしても「端点」の決め方次第で不定になって一意性が保証されないという問題点が既存研究で指摘されている.ヒストグラムを使わない最頻値計算法として,ミーンシフト法や近似L0ノルム推定法があるが,問題点もある.そこでコア中央値という最頻値の一種となる代表値を新たに考案した.コア中央値は表計算ソフトウェアのワークシートを利用して計算ができ,その計算手順を示した.そのうえで,実際の農作業のデータを使ってその適用を試み,適用にあたって考慮すべき条件について考察した.

解説
  • 松尾 健太郎
    2020 年 55 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    Bluetooth 機能付きの計測器や,外部出力を持った計測器にBluetoothアダプタを取り付けて利用することで,スマートフォンやタブレットPCなどの携帯端末の表計算ソフトに計測データを簡単に送ることができる.そこで,これらを使って簡単に一人で計測できる器具を作製した.圃場における草丈や播種深さなどを測定する場合には,Bluetooth機能付きレーザー距離計を一脚に固定した鉛直方向の距離を測定する器具と携帯端末を使用する.この器具は,誤差範囲2 mm程度で高さの測定が可能であった.また,収穫物の重さや幅を測定する場合は,固定された板とスライドする板で対象物を挟みレーザー距離計で幅を測定する器具とBluetoothアダプタを接続した電子天秤および携帯端末を使用した.カンショの塊根の重さと幅を計測する作業を慣行の電子天秤と定規を使って計測し野帳に記入する方法で行った場合の作業時間と比較して,この測定方法の作業時間は58%短かった.

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