農作業研究
Online ISSN : 1883-2261
Print ISSN : 0389-1763
ISSN-L : 0389-1763
58 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
研究論文
  • 川原田 直也, 田畑 茂樹, 水谷 嘉之
    2023 年 58 巻 2 号 p. 49-58
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

    水稲-小麦-大豆の 2 年 3 作ほ場において,小麦作前にチゼルプラウを用い深耕(耕深:20 cm)する作業体系(深耕→小麦→浅耕→大豆→浅耕→水稲:チゼル深耕体系)と慣行のロータリで浅耕(耕深:10 cm)する作業体系(浅耕→小麦→浅耕→大豆→浅耕→水稲)における小麦作前の耕起処理が,水稲作前の土壌化学性,移植時の土壌硬度,移植に係る作業速度と作業精度,生育期間中の減水深,収量,玄米品質等に及ぼす影響を検討した.その結果,チゼル深耕体系では,移植時の地表下11–20 cmの土壌硬度値は低くなり,田植え機の車輪は深く沈み,滑り率が高まった結果,同様の機械設定で比較すると作業速度は低下した.また,チゼル深耕体系では耕起床の凹凸により走行性はやや低下するが,オペレータのハンドル操作により調整可能な範囲内であり,移植精度は同等であった.生育期間中の減水深は作土下層以深が透水を制限する層となり,慣行体系と同等であった.チゼル深耕体系では,小麦作前の深耕により,T–C,T–N,可給態Nの低い作土下層が作土層に混入し,一部でわら重の低下が確認されたものの,収量,玄米品質等への影響は認められなかった.以上のことから,小麦作前のチゼルプラウによる深耕では,移植に係る実用作業上の影響は小さく,移植精度,減水深,収量,玄米品質等への影響は認められないことから,慣行体系と同等の栽培管理で対応できるものと考えられた.

研究報文
  • 川原田 直也, 田畑 茂樹, 内山 裕介
    2023 年 58 巻 2 号 p. 59-71
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

    水稲-小麦-大豆の 2 年 3 作で輪作される本暗きょが未整備の水田転換畑において,前作小麦前にチゼルプラウを用い深耕する作業体系(深耕→砕土→小麦播種→浅耕→大豆播種:チゼル深耕体系)と慣行の作業体系(浅耕→小麦播種→浅耕→大豆播種:ロータリ耕体系)の小麦作前の耕起処理が,大豆作における播種関連作業時の作業速度,土壌含水比,砕土率,大豆生育期間中の土壌物理性および排水性,大豆の生育と収量に及ぼす影響を検討した.その結果,チゼル深耕体系では,浅耕時の土壌含水比が低下するとともに,作業速度,砕土率が向上し,播種時の砕土率もわずかではあるものの改善した.また,同体系では,作土下層の孔隙率,気相率,有効水分,飽和透水係数が高まり,その効果は大豆収穫時まで確認された.さらに,作土下層の土壌物理性の改善により,大豆生育期間中の作土層の滞水時間が減少し,排水性が改善した.その結果,チゼル深耕体系下の大豆では地上部乾物重が増加するとともに,分枝数,総莢数,稔実莢数が増加することで,子実重および精子実重が11–13%高まった.ただし,作土下層以深の透水性が不良で大豆播種前にまとまった降雨が断続的に観測される場合には,チゼル深耕体系であっても播種作業が遅延し,大豆の減収を招くことから,本体系を生産現場へ安定的,効果的に導入するためには,作土下層の滞水をほ場外に排水可能な技術と組み合わせることが望ましいと考えられた.

  • 出口 律子, 辻 博之, 村上 則幸
    2023 年 58 巻 2 号 p. 73-81
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

    近年取得が容易になったNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指数)について,光源を有する携帯型NDVIセンサ値(H-NDVI)とマルチスペクトルカメラおよびスペクトル日照センサを搭載しているドローンの画像から計算されるNDVI値(D-NDVI)を比較し,D-NDVIから換算したH-NDVIの二乗平均平方根誤差(RMSE),および,想定される誤差と生育診断に使用されるNDVIの範囲から両者の換算の必要性を明らかにした.また,太陽光の条件の差がD-NDVIに与える影響を調べた.バレイショ(Solanum tuberosum L.)の「コナヒメ」と「とうや」2品種の畑ほ場の調査区を対象にD-NDVIH-NDVIを測定したところ,有意差は認められず,決定係数0.98以上,傾きは0.976から0.994,切片0.005から0.017の回帰式が得られた.この2つの回帰式は統計的に併合可能で,RMSEは0.036と充分小さかった.この併合した回帰式を用いてD-NDVIからH-NDVIへの換算(換算H-NDVI)を行ったところ,D-NDVIと換算H-NDVIそれぞれとH-NDVIの差の間に有意差は認められず,D-NDVIは回帰式による換算を行う必要はないと判断された.また,D-NDVIの測定値への直射日光の影響について,時間当たりの日照時間および日射量について異なる条件間で比較を行ったところ,これらの条件にかかわらず安定した測定値の取得が可能であることがわかった.

資料
  • 輪作体系への暖地型飼料作物パリセードグラス導入による有害線虫抑制の実証
    安達 克樹, 立石 靖, 上杉 謙太, 鈴木 崇之, 石井 孝典, 杉本 光穂, 新美 洋, 大嶺 政朗, 森江 昌史, 鎌田 えりか, 深 ...
    2023 年 58 巻 2 号 p. 83-91
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

    九州南部地域の畑圃場において,耕畜連携の試みとして,線虫抑制性を持つ暖地型飼料作物パリセードグラスを導入した畑輪作体系「パリセードグラス―冷凍加工用ホウレンソウ―焼酎原料用サツマイモ―加工・業務用キャベツ」の試験を実施した.輪作試験の間に,パリセードグラス栽培においては,施肥と条間の条件,播種と中耕除草管理の方法,並びに,栽培期間に修正を加え,飼料の硝酸態窒素濃度を改善し,適切な栽培体系を明らかにした.線虫に感受性の焼酎原料用サツマイモ品種「コガネセンガン」の栽培後には,ネコブセンチュウ密度(以下,線虫密度)は高くなったが,翌年の夏作パリセードグラスの栽培により線虫密度は低い値に抑制され,この輪作体系へのパリセードグラス導入により植物寄生性の線虫密度が抑制されることが実証された.

feedback
Top