農作業研究
Online ISSN : 1883-2261
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54 巻, 4 号
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総説
  • 深見 公一郎
    2019 年54 巻4 号 p. 201-208
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    九州の二毛作地域で実施可能な水稲乾田直播栽培技術の確立を目標に,鎮圧ローラを使用した乾田直播圃場の漏水防止技術,ローラ鎮圧を伴う乾田直播栽培体系,漏水防止機能と湿害回避機能を有する畝立て直播機の開発に取り組んだ.その結果,灰色低地土圃場において,開発した3点リンク直装式鎮圧ローラは,塑性限界以上の高水分条件で効果的に漏水を防止できた.また,麦作後の乾田直播では,振動ローラによる鎮圧作業で漏水が防止され安定した栽培が可能になった.さらに,開発した畝立て直播機は,高水分条件でも所要動力は相対的に小さく,現地検証試験において省力・低コスト効果があること等が示された.

研究論文
  • 谷尾 昌彦, 渡邊 和洋, 中園 江, 内野 彰, 水本 晃那
    2019 年54 巻4 号 p. 209-223
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    日本において小麦の収量を高めることは重要である.そこで,東海地域における高収量の生産体系を開発するため,高窒素施肥条件において,麦踏み,植物調節剤エテホン及び葉殺菌剤メトコナゾールが早播の秋播性小麦「さとのそら」の農業特性及び原粒品質に及ぼす効果を2年(2017-2018年)解析した.秋播性小麦を早播することによって,早春の凍霜害と梅雨の穂発芽被害を回避できた.麦踏み(小穂分化期)は稈長にほとんど影響なく,エテホン(出穂始期)は短稈化によって,倒伏を軽減し,麦踏みとエテホンの組合せは倒伏軽減効果が最も高かった.メトコナゾール(止葉マイナス2葉期と止葉期)は葉の病気を軽減した.麦踏みの収量への効果は試験年(土壌水分条件)によって異なった.エテホンとメトコナゾールは,倒伏と病気の程度が小さかったため,収量に影響はなかった.麦踏み,エテホン及びメトコナゾールを組合わせた生産体系は,高い収量を示し(2017年:750 gm–2,2018年:676 gm–2),その原粒品質は麺用品質基準を概ね満たした.また,高い収量と品質は大規模試験でも実証された.これらの結果から,東海地域において,早播の秋播性小麦における集約的生産体系は収量及び品質が高いと考えられた.

研究報文
  • ~栃木県の黒ボク土地域における有機育苗技術の事例~
    平井 英明, 朝妻 英治, 星野 幸一, 田中 治夫, 高橋 行継
    2019 年54 巻4 号 p. 225-235
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    プール育苗条件下における菜種油粕・魚粉と床土原土との混和後静置期間が土壌の無機態窒素量,苗の窒素含有量,および水稲の有機苗の生育に及ぼす影響を,2013年,2014年の2か年にわたり検討した.その結果,菜種油粕・魚粉の床土原土への混和後静置期間が4週間まで長くなればなるほど,土壌中の無機態窒素量や水稲苗の窒素含有量の値が増大し,無機態窒素量は,水稲苗の草丈,窒素含有量,生育むらと有意(P<0.05)な正の相関関係を示した.水稲苗の窒素含有量の値は,水稲苗の草丈,乾物重,生育むらの値と有意(P<0.05)な正の相関関係を示した.すべての水稲苗の葉齢は,中苗の基準を満たした.播種4週前混和後静置した培土で育成した水稲苗は,生育むらの発生が懸念されたが,有機中苗の草丈の基準14 cm以上を満たす可能性が指摘された.また,菜種油粕・魚粉を播種当日に混和した培土で育成した水稲苗は,稚苗の草丈の基準12 cmに達しないものの,生育むらの程度は小さかった.機械による早期移植を前提とした場合,播種1週間前に混和後静置した培土は,葉齢は中苗の基準を,草丈は稚苗の基準12 cmを満たすとともに,生育むらの程度が小さく,最適な有機苗と考えられた.

  • 水上 智道, 吉田 隆延, 加藤 仁, 竹内 博昭, 関 正裕, 宮原 佳彦
    2019 年54 巻4 号 p. 237-247
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    乗用管理機搭載型ブームスプレーヤの3つの要素技術(HPS,ロールダンパ,高剛性スライドブーム)からなるブーム変位低減装置を開発し,乗用管理機搭載型ブームスプレーヤに搭載した.2つの試験(ブーム制振効果試験,付着試験)を行い,以下の結果を得た.ブーム制振効果試験において,開発機は対照機(高剛性スライドブームのみ搭載)に対して,ブームの垂直変位が全振幅において約63%低減した.付着試験において,開発機は対照機の通常作業の約2倍(1.0 m/s)の高速作業を行った場合でも,付着程度は概ね同等であった.このことから,3つの要素技術からなるブーム変位低減装置を用いることで,ブームの垂直変位が低減し,付着程度を維持したと考えられる.このことから,開発機の高速走行による実作業への適応性が明らかとなった.

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