農作業研究
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48 巻, 4 号
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研究論文
  • 田坂 幸平, 和田 節, 遊佐 陽一, 吉田 和弘, 安東 敏弘, 土屋 史紀, 深見 公一郎, 佐々木 豊
    2013 年 48 巻 4 号 p. 133-141
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル フリー
    開発したスクミリンゴガイ用忌避材の産卵抑制効果と,産卵抑制による水路内の貝密度低減効果の検証を行うため,佐賀県上峰町の水路で実証試験を行った.忌避材の産卵抑制効果は極めて高く,塗布面では 3年間効果が持続した.しかし,水路の水位の変動に対応した産卵抑制を行うためには,忌避材を水面の直上に帯状に塗布するのではなく,壁面に幅広く面状に塗布する必要があった.また,数十 m 規模の忌避材塗布では産卵抑制による貝密度の変化を確認することはできなかった.忌避材の貝密度低減効果を検証するためには,貝の移動の範囲を考慮した数 km 規模の実証試験が必要であると考えられた.
  • 小泉 明嗣, 深山 陽子
    2013 年 48 巻 4 号 p. 143-148
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル フリー
    農作業における精神的負荷評価指標として,精神的負荷により変動が生じる唾液中生化学物質が利用可能か検討した.対象とする農作業はコマツナ収穫・結束作業とした.120分間の作業中に唾液を採取し,唾液中生化学物質としてα-アミラーゼ,DHEA, コルチゾールおよび SIgA を定量分析した.作業に伴い生じる変動を解析したところ,α-アミラーゼ活性が作業に伴って有意に増加し,農作業の精神的負荷評価において有効な指標になる可能性が示唆された.
  • 松尾 健太郎, 屋代 幹雄
    2013 年 48 巻 4 号 p. 149-156
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル フリー
    間引き作業の簡略化を目的に,正確な播種間隔で播種することができる二段ベルト精密播種機を開発した.開発機の特徴は,重なった2本のベルトが同期して動き,上ベルトの小さな穴で種子を1つずつ取出し,上下のベルトが接している間に下ベルトの大きな穴に種子を渡し,低い位置で種子を放出することである.これにより種子の落下位置が安定し落下距離が短くなる.定置試験においてコート種子のニンジンの播種では,作業速度 0.56 m/s でも播種間隔の四分位範囲は 8.4 mm と対照の播種機(真空播種機とベルトアップダウン式播種機)の2分の1以下であり,最大頻度割合(播種間隔の誤差の許容範囲を 20 mm として,この範囲でもっとも度数が高くなる時の割合)は94%,欠粒率および2粒播き率も0%と,正確な播種が可能であった.また,形が不均一な裸種子のホウレンソウやダイコンの播種では,欠粒率が真空播種機よりも同等かやや高くなった.しかし,作業速度 0.56 m/s でも四分位範囲は 8.6 mm・12.6 mm, 最大頻度割合は87%・76%と,真空播種機の 29.4 mm・22.1 mm および 40%・50%よりも正確な間隔で播種が可能であった.また,圃場試験の二段ベルト精密播種機の四分位範囲および最大頻度割合は,定置試験の場合よりも低下したが,対照の播種機よりも播種精度は高かった.
研究報文
  • 片平 光彦, 伊藤 晶
    2013 年 48 巻 4 号 p. 157-164
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル フリー
    秋田県由利本荘地域の在来作物であるカナカブは,主に焼畑で栽培されており,生産量を増加するため作業の省力軽労化が望まれている.本報では,粗耕起に歩行管理機を用いた新作業技術を提案し,その効果を生産現地で実証した.試験ほ場は,標高差が 10 m, 平均斜度が 14.0° であった.作業能率は,鍬を用いた慣行区が47 h/10a, 歩行管理機を用いた機械化区が 6 h/10a となり,省力化率が87%であった.生育と収量は,機械化区が慣行区と比較して発芽本数は 36本/m2 増加したが,栽植密度の増加から一本当たりの根重が低下して収量が28%,可販化率が37%減少した.使用した歩行管理機の作業特性は,走行部がクローラ式の管理機2とホイール式の管理機1と比較し,管理機 2が車輪の接地面長さが長く重量転移が少ないため,重心が安定して 30° 以内までの傾斜地で作業可能であることが示唆された.労働負担は,機械化区の作業負担度が慣行区から 92%削減され,平地での作業以上に労働負担の軽減効果が大きかった.作業姿勢は機械化区で改善が不要とされる AC1 が 100%の発生率となり,慣行区で改善が必要と判定された作業姿勢が全て解消された.実証した新作業技術について生産者は,平地での歩行管理機と同様に使用可能で作業が楽になると評価したが,作業の安全性を考慮して新作業技術と慣行作業技術を併用した作業法の提案が必要である.
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