農作業研究
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43 巻, 1 号
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研究論文
  • 市ノ木山 浩道, 竹内 雅己
    2008 年43 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    収穫期に達した5.8aのミカン園を用いて,ウンシュウミカンの鳥害に対する牧羊犬(ボーダーコリー種)の防止効果について調査した.園の四周の一辺に張ったワイヤーに長さ1mの鎖で1匹の犬をつなぎ,犬がワイヤーに沿って自由に動き回ることができるようにした場合は,犬に近接したミカン樹列では鳥害が減少する傾向が見られたが,犬から離れた樹列においては鳥害は軽減されなかった.一方,同じミカン園の四周を金網塀で囲み,園内に1匹の犬を放任した場合は,犬は飛来した鳥を執拗に追跡して追い払い,その結果,園全体に亘って鳥害が軽減された.この方法による果実増収効果は1日当たり約17.5kg/aに相当した.これらのことから,ウンシュウミカンの鳥害防止に牧羊犬を活用する場合,犬をつなぎ止めずに園内に放任することが有効であることが示された.ミカン園の面積当たりの犬の最適頭数や,この鳥害防止法がミカン生産地域のすべてのミカン園に広がった場合の鳥害防止効果については,さらに研究が必要である.
  • 坂井 直樹, 根津 久美, 林 久喜
    2008 年43 巻1 号 p. 7-14
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    生態系の複雑化を想定した水田において,イネの共存作物として選んだ水面被覆植物の栽植密度を変化させた際の作物の応答を調べた.共存系の作物モデルにはホテイアオイ(Eichhornia crassipes)を供試した.イネの密度を22.2株/m2に統一し,ホテイアオイの密度を22.2,16.7,11.1,5.6,0株/m2とした区に加え,ホテイアオイのみを11.1株/m2で栽植した区の計6区を3反復の乱塊法で設けた.ホテイアオイ密度の増加に対してイネの生育量は減少したが,ホテイアオイの草高は増加した.また吸光係数が増加したことから,両作物間に光競合が生じたと考えられた.さらに,イネのLAIが減少したことで養分競合も生じたと考えられた.ホテイアオイ密度の増加に対して,m2当たり穂数や一穂頴花数が減少し,玄米収量は減少した.ホテイアオイ密度の増加に対して籾収量は減少したが,共存系全体のC・N固定量はホテイアオイの補償作用で増加した.イネの収量減少をある程度覚悟すると,水田生態系における環境保全効果を念頭に置いた新たな展開場面を考えていくことが可能となり,本研究ではそのために必要な知見の一部を得ることができた.
研究報文
  • 石川 一憲, 馬場 正
    2008 年43 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,無核化処理を行ったブドウ‘藤稔’の果実品質に及ぼす台木の影響について検討した.異なる4種の台木,‘テレキ5BB’,‘SO.4’,‘3309’,‘101-14’に接いで15年間火山灰土壌で生育させた‘藤稔’樹を用いて,ジベレリンないしストレプトマイシンで無核化処理を行った果実の肥大,品質について調査した.
    供試樹の中では, ‘テレキ5BB’ 台を用いた場合に果粒重,穂軸重が最も大きかった.果汁の糖度はストレプトマイシンとジベレリンで無核化処理を行った場合‘テレキ5BB’台と‘3309’台で,他の2種の台木よりも有意に高かった.
    これらの結果から, ‘藤稔 ’無核栽培においては, ‘テレキ5BB’ 台が好適な台木であると思われた.
  • 川崎 哲郎, 森重 陽子, 杉山 英冶, 木村 浩, 杉本 秀樹
    2008 年43 巻1 号 p. 21-27
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    水稲の普通期栽培において,条間を30cmとした場合の株間拡大が生育・収量に及ぼす影響を,移植時期別に検討し,育苗・苗運搬労力削減の可能性について検討した.その結果は以下のとおりである.
    1)いずれの品種,移植時期においても,株間の拡大によって1株当りの茎数は増大するが,単位面積当りの茎数は減少する傾向があった.
    2)株間の拡大によって単位面積当りの穂数は減少するが,穂長が大きくなり,1穂当りの籾数が増加する傾向があった.
    3)収量は,「こいごころ」は6月初め,中頃移植では各々株間18cm~45cm, 18cm~36cm, 「ひめのまい」における6月初め~末の移植は株間18cm~36cm,「ヒノヒカリ」は6月初め,中頃移植では株間18cm~36cmの範囲で大差なかった.
    4)これらの結果から,「こいごころ」,「ヒノヒカリ」を6月初め~中頃,「ひめのまい」を6月初め~末の間に移植する普通期栽培では,苗箱使用量を50%以下に削減でき,育苗・苗運搬作業を大幅に軽減できるものと考えられた.
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