普通ソバ種子に過酸化カルシウム剤を粉衣し,過湿条件下での出芽に及ぼす影響と粉衣した種子の機械播種適性を調査した.過酸化カルシウム剤の被覆量は玄ソバの種子重に対して0.5,1,1.5,2倍量とし,播種日から1~5日間の湛水処理を行う試験と,湛水開始を播種直後と播種1~4日後としそれぞれ24時間の湛水処理を行う試験を実施した.ソバ種子重に対して1.5倍,2倍量被覆では,無被覆よりも出芽率が高くなり,特に4,5日間湛水における出芽率は無被覆の2倍以上となった. また,1.5倍,2倍量被覆では過湿条件下においても出芽することが明らかとなり,出芽遅延による減収を抑制できる可能性が考えられた.一方で,0.5倍被覆は無被覆と比較して有意に出芽率が低下した.4種類の播種用機械での播種を想定し機械から種子を落下させたところ,どの機械でも2倍量被覆が過酸化カルシウム剤の剥離が最も少なかった.したがって,ソバ種子に過酸化カルシウム剤を用いる場合は,2倍量被覆での利用が最も実用的であると考えられた.
本研究の目的は,サトイモを掘取分離機で掘り取った後,畝上に分散したサトイモの拾上作業,親イモからの子イモ等の分離作業,分離したイモの収容作業を省力化することである.また,収容にはフレキシブルコンテナバッグの利用を前提に,土塊の混入率を5%以下にすることを目標とした.そこで,市販の歩行型タマネギピッカーをベースに,拾上部,コンベヤ搬送部,回転搬送部で構成するサトイモ拾上機(以下,拾上機)を試作した.ベース機における主な改造点は,サトイモを拾い上げるバーコンベヤの変更,回転搬送部にサトイモを供給するための平ベルトコンベヤの追加であり,さらに,機体の後部には円筒状の篩とスクリュー羽根を用いた回転搬送部を設けた.これらの改造により,拾上部で拾った土付きのサトイモは,回転搬送部を通過中に土塊が除去される.その後,出口のシュートから搬出されたサトイモは,拾上機の後方を走行する運搬車に積載したフレキシブルコンテナバッグに収容される.拾上機の運転者1人,サトイモの分離作業を行う補助者1人,運搬車の運転者1人の機械収穫体系を構築し,ほ場試験を行った結果,作業速度0.05 m/sのときに収穫成功率は95.2%で,土塊混入率は7.2%,損傷率は3.1%であった.また,収穫物の積み下ろしとほ場内運搬を含めた機械収穫体系の作業能率は19.5人・h/10aで,慣行体系の約3倍であった.
薬用シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)は多くの漢方処方に用いられ生薬原料として重要である.ここでは,薬用シャクヤクの栽培において,中耕と草生管理の差異が収量及びペオニフロリン含有率に及ぼす影響を検討した.実験は,つくば牡丹園薬草研究所内薬用植物園で2014年より実施した.その結果, 2014年8月において中耕は草生管理に比べて圃場の雑草量は大きく減少した.ペオニフロリン含有率については,管理法による差異は認められなかったが,根乾物重と地上部乾物重(r=0.911),ペオニフロリン成分含有率と雑草乾物重(r=0.864)とは有意な関係が認められた.これに対し,同年11月の収穫では,ペオニフロリン含有率及び収量のいずれも草生管理区が高い値になった.さらに,2017年においては,10月のペオニフロリン含有率は草生管理区が高く,根乾物重は中耕区が高い結果となった.2014年と同様に薬用シャクヤクの根のペオニフロリン含有率と雑草乾物重(r=0.998)において有意な関係が認められた.これらの結果から,薬用シャクヤク栽培において中耕作業および草生管理は薬用シャクヤクの生育に影響を与え,草生管理によって,薬用シャクヤクと雑草が競合することでペオニフロリン含有率が増加する傾向が認められた.
農業技術体系データベースを用いた営農計画支援システムFAPS-DB(Farming-systems Analysis and Planning Support Database)が運用されている.その運用試験の経験をふまえ,まず,データベースに登録する技術体系データの作成方法を紹介した.次に,FAPS-DBを効果的に利用するためには,登録されるデータの拡充,及びその基礎となる農作業関連データが重要であることを指摘した.さらに,農業生産管理ソフトウェアとのデータ連携による技術体系データの作成方法について,現状を紹介し,今後の研究課題を展望した.