農作業研究
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57 巻, 4 号
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研究論文
  • 川原田 直也, 田畑 茂樹, 内山 裕介
    2022 年 57 巻 4 号 p. 201-214
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    水稲–小麦–大豆の2年3作で輪作される水田転換畑において,小麦および大豆の低収要因とされる作土下層の土壌の緻密化,作土層の排水性の不良を改善することを目的として,2年3作輪作体系下でのチゼルプラウによる合理的かつ効果的な耕深および深耕の頻度を検討した.その結果,水稲収穫後(小麦前)にチゼルプラウを用いて深耕すると,緻密化した作土下層の土壌物理性が改善し,小麦および大豆の生育期間を通じて作土層の排水性が改善すること,チゼルプラウで深耕する際の最適な耕深としては,作土層の排水性,播種時の作業精度,深耕に伴う作業性の低下およびその他のリスクも加味し,22 cm程度が望ましいこと,また,作土下層の土壌物理性の改善効果は,小麦および大豆の両作前での深耕と,小麦前のみに深耕した場合で同等であり,いずれの場合にも,大豆翌年の代かき移植水稲栽培により,次作小麦への深耕の効果はほとんど得られないことが明らかとなった.これらのことから,水稲–小麦–大豆の2年3作で輪作される水田転換畑において,小麦および大豆の低収要因としての作土下層の土壌の緻密化,作土層の排水性の不良を改善するためには,水稲収穫後(小麦前)にチゼルプラウを用いて22 cm程度の耕深で深耕し,その改善効果を小麦および大豆の両作で享受することが合理的かつ効果的であると考えられた.

  • 川原田 直也, 田畑 茂樹, 内山 裕介
    2022 年 57 巻 4 号 p. 215-230
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    小麦および大豆の低収要因とされる作土下層の土壌の緻密化,作土層の排水性の不良を改善可能なチゼルプラウによる深耕を含む播種作業体系(深耕→砕土→播種:以下,チゼル深耕体系)と慣行のロータリによる浅耕を含む播種作業体系(浅耕→播種:以下,ロータリ耕体系)を水稲–小麦–大豆の2年3作で輪作される水田転換畑の小麦作において,計9ほ場で比較検討した.その結果,チゼル深耕体系では播種関連作業時の土壌含水比が低下し,砕土率が向上するとともに,作土下層の孔隙率,気相率,有効水分,飽和透水係数が高まり,その改善効果は小麦の収穫時まで確認された.さらに,作土下層の土壌物理性の改善により,小麦生育期間中の作土層の滞水時間が減少し,排水性が改善した.また,チゼル深耕体系では,播種後の砕土率,作土下層の土壌物理性,作土層の排水性が総合的に改善されることにより,苗立ちが向上し,4葉期,幼穂形成期,止葉抽出始期の茎数および生育指標値が高まった.その結果,チゼル深耕体系では主に穂数が向上することで収量が12-13%高まった.ただし,本暗きょが未整備で作土下層以深の透水性が不良かつ,深耕後にまとまった降雨が観測される場合には,播種関連作業の遅延を招く可能性があることから,チゼル深耕体系の生産現場への安定的な導入のためには,必要に応じ,本暗きょ等の排水技術と組み合わせることが有効であると考えられた.

研究報文
  • -OR手法としての混合整数非線形計画法の応用-
    平泉 光一
    2022 年 57 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    農業は,自然環境から影響を受けやすく,収量や労働時間等の農業生産指標に異常値が出やすい.さらに,それらの指標の分布が対称になるとは限らない.農業生産管理では,本来の値と呼べる標準値として,最頻値を把握することが望ましい.しかし,ヒストグラムを作成して計算される通常の最頻値計算法には深刻な問題があることが先行研究で指摘されている.通常の最頻値は「端点」の決め方次第で変動し,一意的でない.ヒストグラムを用いない最頻値計算法としてコア中央値等があるものの,これらにも問題点がある.そこで,ヒストグラムを用いない最頻値計算法として,鍾形頻度最頻値を推定する方法を新たに考案した.本論文では,数理計画法の枠組みのもとで,2次関数が含まれる頻度関数を最大化する問題として,鍾形頻度最頻値を推定するための混合整数非線形計画モデルを構築した.さらに,考案した方法を各種のデータへ実際に適用し,適用にあたって考慮すべき条件について考察した.

  • 深見 公一郎, 高橋 仁康, 中野 恵子, 岡崎 泰裕, 松尾 直樹, 西村 修, 淺野 和人, 関 英一
    2022 年 57 巻 4 号 p. 239-251
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    開発機はトラクタの後方に装着し,畝成形補助部でタイヤ跡を均し,畝成形部で表面が硬い台形断面状の播種畝を成形して圃場の漏水防止を図り,直播作業部,種子繰出部および覆土鎮圧部で畝の天面に播種することで,生育初期の降雨・滞水による湿害回避を図る構造とした.また,本機は,水稲以外に大豆や麦類播種にも対応し,作業幅:210 cm,条間:30 cm,条数:7,適用トラクタ出力は40~60 PS(29.4~44.1 kW)とした.現地試験の結果,灰色低地土圃場(熊本県玉名市)において,播種2週間前から前日までに214 mmの降雨があり,土の付着が顕著となる塑性限界:32%より10%高い水分条件(含水比:42%,液性指数:0.4)でも播種作業が可能であった.開発機の作業能率は,圃場面積60~72 a,作業速度3.5 km/hにおいて12 min/10aとなった.2015~2021年度における畝立て直播試験と降雨量の関係から作業可能降水量を播種当日:7 mm,前日:29 mm,前々日:48 mm以下と定義すると,各作目の播種適期における作業可能日数は,10年(2012~2021年)平均で水稲:24日,大豆:22日,小麦・大麦:26日と推定された.また,畝立て直播機の作業能率に基づいた各作目の作業可能面積は水稲:67 ha,大豆:61 ha,小麦・大麦:73 haと算出された.さらに,経営耕地面積50 ha(土地利用率:200%,転作率:40%)において,畝立て直播機を汎用利用した場合の水稲の60 kg当たりの費用合計は,九州の慣行体系に比べ39%低減すると推定された.

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