胎児における心機能評価は超音波検査により行われる.その評価は,成人・小児領域で用いられる評価法に加え,静脈管や臍帯動脈の血流評価など胎児特有の評価法が用いられる.最近はこれらの評価項目を統合してスコア化したCardiovascular Profile Score (CVPS)が用いられることも多い.胎児における心機能評価の目的は,主に児の重症度評価や娩出時期の決定である.また近年,胎児発育不全や糖代謝異常合併妊娠は,胎児期から軽度の胎児心機能の変化を起こすことがわかってきており,胎児心機能評価は将来的な疾患発症(Developmental Origins of Health and Disease: DOHaD)の観点からも注目されている.
心臓MRI cardiovascular magnetic resonance imaging(CMR)で基本的な心機能・血行動態評価を行う際の最大の特徴は,非造影・無被爆・無侵襲である.経時的に繰り返しの撮影が可能であり,成長に伴いエコーでの観察が難しくなっていく小児循環器領域にとても適した検査と言える.CMRでは様々な撮影法・評価法を組み合わせて行うが,そのうちのシネMRI画像を用いた心機能評価について,シネMRI撮影の方法から撮影後の解析・読影の方法までを,基本的な事項からまだ研究レベルである発展的な内容まで含めて述べる.CMRの中でも基本となるシーケンスを用いて撮影するシネMRIでは,心室壁の動きを解析することによる心機能解析だけでなく,心外の大血管を含めた解剖学的形態の情報や血流など,多くの心血管機能に関する情報を得られる.一方で,CMRは長い撮影時間を要するという改善すべき点も抱えている.撮影時間を短くするための技術革新もみられており,それらについても解説する.
慢性心不全における緩和ケアの重要性は認識されつつあるが,小児領域での報告は少ない.今回Integrated Palliative care Outcome Scale(IPOS)の使用が,小児慢性心不全の緩和ケア評価ツールとして有用であった症例を報告する.症例は右室型単心室の診断で生後9か月にグレン術が施行された8歳女児.心不全増悪のため入院し,加療開始後も症状の改善が乏しく,緩和ケアの介入を開始した.IPOSは身体的・心理的・精神的項目の中で患児・両親・スタッフ間で評価が分かれる質問項目を認めた.特に身体的疼痛は,スタッフのつけた点数は患児と比較し高値であった.本症例を通して,IPOSを用いた緩和ケアの評価は,患者自身の評価を解釈するうえで患者の背景や性格を考慮する必要があるものの,患者やその親が必要としている事柄を医療スタッフが理解するうえで有用であった.小児心不全の緩和ケアにおいて,患者に病状を伝え,意思決定を支援することは重要であり,IPOSはその補助となる可能性がある.