日本小児循環器学会雑誌
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最新号
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巻頭言
Review
  • 武田 充人
    2024 年 40 巻 4 号 p. 225-233
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    二次性心筋症は鑑別疾患が重要であり,小児では代謝性疾患や神経筋疾患に合併することが多い.発症年齢は原因によっても異なり,鑑別において重要である.本総説では小児から成人移行期に発症する代表的な二次性心筋症であるFabry病,Pompe病,Danon病,ミトコンドリア心筋症,RAS/MAPK症候群,Duchenne/Becker型筋ジストロフィー症合併心筋症の発症機序および診断法について,および二次性心筋症の鑑別における心筋生検の役割について解説する.

  • 山岸 敬幸
    2024 年 40 巻 4 号 p. 234-242
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    Noonan症候群(Noonan syndrome: NS)は,特徴的顔貌,心疾患,低身長を特徴とする常染色体顕性(優性)遺伝形式の先天性異常症候群で,1963年にJacqueline Noonan博士によって報告された.多彩な全身症状に対して,包括的な診療が必要となる.近年,NSと臨床的に類似点が多いCostello 症候群(Costello syndrome: CS),心臓・顔・皮膚(cardio-facio-cutaneous: CFC)症候群などが,遺伝子解析によりNSと共通のRAS/MAPK細胞内シグナル伝達系の分子の異常により発症することが解明され,これらの症候群を含むNSの類縁疾患がRAS/MAPK症候群または“RASopathies”と総称されるようになった.本稿では,小児循環器専門医が知っておくべきNoonan・RAS/MAPK症候群の基本知識を紹介する.

  • 神谷 千津子
    2024 年 40 巻 4 号 p. 243-249
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    長期予後の向上を背景に,先天性心疾患を持つ女性の多くが生殖年齢に達し,妊娠を希望するようになった.そのなかには,チアノーゼ性心疾患に対する修復術後や姑息術後の女性も含まれる.周産期の母体循環動態の変化は大きく,心不全や不整脈などの心血管合併症リスクが増大するが,チアノーゼ性心疾患術後の女性では,その傾向が顕著である.チアノーゼ性心疾患術後の女性においては,原疾患や手術術式,遺残病変や併存症の有無など,その病態が多岐にわたる.妊娠分娩時の母児リスクを軽減するためには,個々の病態に応じたテーラーメードな周産期医療が必要である.さらに,女性を取り巻くライフスタイルの変化から,妊婦の高齢化が進み,産科合併症のリスクにもより多くの配慮が必要である.ハイリスク例においては,プレコンセプションカウンセリングの実施と,専門的チーム医療による周産期管理が必須である.

  • 加地 剛
    2024 年 40 巻 4 号 p. 250-259
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    胎児における心機能評価は超音波検査により行われる.その評価は,成人・小児領域で用いられる評価法に加え,静脈管や臍帯動脈の血流評価など胎児特有の評価法が用いられる.最近はこれらの評価項目を統合してスコア化したCardiovascular Profile Score (CVPS)が用いられることも多い.胎児における心機能評価の目的は,主に児の重症度評価や娩出時期の決定である.また近年,胎児発育不全や糖代謝異常合併妊娠は,胎児期から軽度の胎児心機能の変化を起こすことがわかってきており,胎児心機能評価は将来的な疾患発症(Developmental Origins of Health and Disease: DOHaD)の観点からも注目されている.

  • 白神 一博, 石川 友一
    2024 年 40 巻 4 号 p. 260-271
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー
    電子付録

    心臓MRI cardiovascular magnetic resonance imaging(CMR)で基本的な心機能・血行動態評価を行う際の最大の特徴は,非造影・無被爆・無侵襲である.経時的に繰り返しの撮影が可能であり,成長に伴いエコーでの観察が難しくなっていく小児循環器領域にとても適した検査と言える.CMRでは様々な撮影法・評価法を組み合わせて行うが,そのうちのシネMRI画像を用いた心機能評価について,シネMRI撮影の方法から撮影後の解析・読影の方法までを,基本的な事項からまだ研究レベルである発展的な内容まで含めて述べる.CMRの中でも基本となるシーケンスを用いて撮影するシネMRIでは,心室壁の動きを解析することによる心機能解析だけでなく,心外の大血管を含めた解剖学的形態の情報や血流など,多くの心血管機能に関する情報を得られる.一方で,CMRは長い撮影時間を要するという改善すべき点も抱えている.撮影時間を短くするための技術革新もみられており,それらについても解説する.

症例報告
  • 小野 奈津子, 住友 直文, 福島 裕之, 古道 一樹, 山岸 敬幸
    2024 年 40 巻 4 号 p. 272-276
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy: HCM) において,心室中隔壁中部の肥大による心室中部閉塞(mid ventricular obstruction: MVO)が心臓突然死のリスクとして指摘されている.小児ではMVOの報告は稀であり,その臨床像は不明で,管理方法も定まっていない.また,MVOに対する運動負荷心エコー図の報告は少なく,その意義は明らかでない.今回,運動負荷心エコー図によりMVOと診断した無症候性の小児HCM症例を経験した.症例は15歳男児.安静時心エコー図で心室中隔中部に進行性の心筋肥大があり,運動負荷心エコー図で同部位に高度の圧較差を認めたため,β遮断薬を導入し,運動を制限した.運動負荷心エコー図は,小児の無症候性HCMの管理において,有意なMVOを早期に検出するために有用である.

  • 林田 由伽, 森 雅啓, 高橋 邦彦, 藤﨑 拓也, 松尾 久実代, 浅田 大, 石井 陽一郎, 青木 寿明, 藤澤 佑太, 萱谷 太
    2024 年 40 巻 4 号 p. 279-286
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    慢性心不全における緩和ケアの重要性は認識されつつあるが,小児領域での報告は少ない.今回Integrated Palliative care Outcome Scale(IPOS)の使用が,小児慢性心不全の緩和ケア評価ツールとして有用であった症例を報告する.症例は右室型単心室の診断で生後9か月にグレン術が施行された8歳女児.心不全増悪のため入院し,加療開始後も症状の改善が乏しく,緩和ケアの介入を開始した.IPOSは身体的・心理的・精神的項目の中で患児・両親・スタッフ間で評価が分かれる質問項目を認めた.特に身体的疼痛は,スタッフのつけた点数は患児と比較し高値であった.本症例を通して,IPOSを用いた緩和ケアの評価は,患者自身の評価を解釈するうえで患者の背景や性格を考慮する必要があるものの,患者やその親が必要としている事柄を医療スタッフが理解するうえで有用であった.小児心不全の緩和ケアにおいて,患者に病状を伝え,意思決定を支援することは重要であり,IPOSはその補助となる可能性がある.

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