木材学会誌
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60 巻, 2 号
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総説
  • 現象と定義
    中田 了五
    2014 年 60 巻 2 号 p. 63-79
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    日本を代表する林業樹種であるスギとトドマツでは,心材に水分が集積する現象であるwetwood(高含水率心材・水食い材)がしばしば出現することが木材利用上の欠点となっている。Wetwoodは上記2樹種に特有なものではなく多くの樹種に認められ,wetwoodの出現する頻度は種または属の特徴とできる。本稿では,wetwoodとはどのような現象で,いかに定義するべきかについて議論する。また,wetwoodの記述に必要であり,手法が容易であるにも関わらず実はあまりよく調べられていない重要な木材の性質である木材の生材含水率についてやや詳細に述べる。
カテゴリーI
  • 分位等価な変換による非正規確率楕円
    園田 里見, 藤田 和彦, 飯島 泰男
    2014 年 60 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    ヤング率と曲げ強度といった構造材の強度特性間の確率論的な関係を利用すると,しばしば有益な結果がもたらされる。例えば,機械等級区分法の導入により合理的な基準強度の設定が実現された。実大材の強度特性間の2変量非正規分布データを解析するには,統計的で視覚的な表現方法が必要となる。確率楕円は指定された内包確率で2変量分布を描画する方法であるが,非正規分布には適さない。そこで,本報では非正規周辺分布を持つ歪んだ確率楕円の描画方法について報告する。この方法は,周辺分布に基づく等確率変換によって,通常の確率楕円を分位等価な非正規確率楕円に変換する。実大材の曲げ試験の蓄積データ群を用いた数値実験により検証したところ,楕円の内包確率の正確さ,無相関化変換された偏角に対する確率の均質性,およびデータ群間の比較性について,良好な性能を示すことが確認された。
  • 確率密度が一定な非正規確率楕円
    園田 里見, 藤田 和彦, 飯島 泰男
    2014 年 60 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    本報では一定の確率密度をもった非正規確率楕円(dNNE)の描画方法を報告する。dNNEは,換言すれば,内包確率が指定された確率密度等高線である。本研究の目的は,実大材のヤング率と強度といった2変量非正規分布に従うデータのモデル化および可視化の技術を開発することにある。2変量分布の確率密度等高線とその内包確率について数理的な検討を行い,dNNEを描画するための数値計算法を得た。この方法には,閉曲線に内包されるデータの確率を評価する手法を導入した。本法の妥当性を検証するため,実大材の曲げ強度試験の蓄積データ群を用いて数値実験を行ったところ,確率密度等高線としての適性,内包確率の妥当性,および2変量データの可視化について良好な結果が確認された。
  • 齋藤 健志, 山田 肇, 栗本 康司
    2014 年 60 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,メカノケミカル法を用いた木粉のベンジル化を行い,試薬量と処理時間を変化させてベンジル化の進行を検証した。スギ心材木粉,40%水酸化ナトリウム水溶液,及び塩化ベンジルを振動試料粉砕機の金属容器に量り取り,常温下で最大180分間メカノケミカル処理を行った。木粉のマーセル化前処理は行わなかった。メカノケミカル処理反応後の木粉から重量増加率(WPG)を求めた。ベンジル化木粉のWPGには試薬の添加量とメカノケミカル処理時間が影響し,木粉/水酸化ナトリウム水溶液/塩化ベンジルが5.0/7.5/14.0(重量比)の配合で180分間処理した時,WPG68.8%の最大値が得られた。FT-IRスペクトル分析の結果,WPGの上昇に伴って水酸基(3450cm-1)がベンジル基(699cm-1,740cm-1)に置換される割合が増加し,メカノケミカル処理による木粉のベンジル化の進行が確認された。
カテゴリーII
  • 材せいと材幅の影響
    長尾 博文, 井道 裕史, 加藤 英雄, 三浦 祥子, 下田 優子
    2014 年 60 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    製材の強度に寸法効果が存在することは国際的にも知られているが,我が国の軸組構法の構造部材として使用される構造用製材の規格に寸法調整係数は採用されていない。そこで,スギ製材の曲げ強度に対する寸法効果を明らかにするため,丸太からサイドマッチング及びエンドマッチングによって試験体を採取し,曲げ強度に及ぼす材せい及び材幅の影響について検討した。材せいの影響は,材幅を140mmに一定として材せいを300mm,170mm,105mmの3種類について,材幅の影響は材せいを150mmに一定として材幅を150mm,105mmの2種類について,それぞれ標準試験条件によって曲げ試験を実施した。その結果,曲げ強度の平均値は材せいの減少にしたがって増加する傾向が認められ,寸法調整係数を算出するための寸法効果パラメータとして0.25~0.35の値が得られた。一方,曲げ強度に及ぼす材幅の影響は認められなかった。
  • 末吉 修三, 宇京 斉一郎, 森川 岳, 町田 初男, 小黒 正次
    2014 年 60 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    木製遮音壁を長期にわたって維持管理するためには,腐朽による防音性能の低下を推定する必要がある。既設の木製遮音壁と同一仕様の試験体をファンガスセラー試験により促進劣化させ,小型の無響箱を用いて音響透過損失を簡易測定することによって,木製遮音壁の寿命推定を試みた。無処理試験体の音響透過損失は,促進劣化開始後24ケ月経過時点ですべて高速道路遮音壁設計要領の基準を下回った。防腐処理試験体の音響透過損失は,42ケ月経過した時点で,ほとんど同要領の基準以上であった。ファンガスセラー試験における木材の劣化速度は屋外の6倍程度と考えられることから,防腐処理した木製遮音壁の防音性能に関する耐用年数は,少なくとも20年と推定できた。
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