肩関節
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41 巻, 2 号
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解剖
  • 三宅 智, 玉井 幹人, 竹内 裕介, 伊崎 輝昌, 柴田 陽三, 櫻井 真, 山本 卓明
    2017 年 41 巻 2 号 p. 355-357
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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    【はじめに】本研究の目的は,烏口肩峰靭帯(以下,CA)の肩峰下面の厚みを調査し,腱板断裂との関連について検討することである.
    【対象と方法】対象は,鏡視下腱板修復術と肩峰下除圧術を施行された腱板完全断裂128肩である.術前MRIにおけるCAの肩峰下面の厚みを,肩峰前方1/3(A),中央1/3(M),後方1/3(P)の3ヵ所で計測した.棘上筋腱単独断裂群(S群:77肩),棘上筋腱+棘下筋腱断裂群(SI群:51肩)の各値を比較検討した.
    【結果】AおよびMにおいてS群はSI群よりも有意に高値を示した(p<0.001).Pにおいて2群間で有意差はなかったが(p=0.08),S群のほうが大きい傾向であった.
    【まとめ】CAの肩峰下面の厚みを術前にMRI評価することは,切除範囲を決める上で有用であると考えた.
生化学
  • 喜馬 崇至, 森原 徹, 加太 佑吉, 祐成 毅, 古川 龍平, 木田 圭重, 藤原 浩芳, 久保 俊一
    2017 年 41 巻 2 号 p. 358-363
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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    【目的】様々な成長因子を含むplatelet rich plasma(PRP)は,腱骨接合部治癒促進を期待され,臨床でも腱板修復術との併用が試みられている.しかし,効果は一定ではなく,PRPの局所濃度の維持が困難であることがその一因である.本研究の目的は,ゼラチンハイドロゲルシート(GHS)でPRPの成長因子を徐放させ,腱板修復促進効果を検討することである.
    【方法】12週齢雄性SDラットの腱板修復モデルを作成し,その修復部にphosphate buffered saline(PBS),PRPを注入した群(PBS群およびPRP群),PBS, PRPを含浸させたGHSを留置した群(PBS-GHS群,PRP-GHS群)を作製した.術後4, 8週でHEおよびsafranin O染色を行い,tendon-to-bone maturing scoreで評価した.また,術後4,8週の腱骨接合部の破断強度を測定した.
    【結果】tendon-to-bone maturing scoreおよび破断強度は,全群で経時的に改善したが,術後8週のPRP-GHS群で他群よりも高かった.
    【考察】GHSによるPRPの成長因子徐放で腱板修復が促進された.
    【結論】GHSとPRPの併用は修復腱板の治癒を促進する可能性がある.
機能
  • 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 森原 徹
    2017 年 41 巻 2 号 p. 364-368
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     自動介助は自動運動獲得の前段階として重要である.しかし,自動介助と他動間に筋活動の相違がないとの報告もある.そこで上肢介助量と肩関節外転時の肩関節周囲筋の関連性について筋電図学的に検討した.健常者6名.測定筋は僧帽筋,前鋸筋,菱形筋,三角筋,棘下筋とした.上肢介助量はケーブルマシンを用い,介助量を1~5kgとした.分散分析後にTukeyの多重比較検定を用いた.僧帽筋では各介助量間に有意差はなかった.三角筋では介助1kgの場合,介助3kg,4kgと比較して有意に増加した.前鋸筋では介助1kgが3kgと比較して有意に増加した.棘下筋と菱形筋では介助5kgが1kg,2kg,3kgと比較して有意に増加した.軽微な上肢介助では三角筋,前鋸筋の筋活動が高かった.介助が増大すると,三角筋は抑制され拮抗筋である棘下筋,菱形筋の筋活動が増大した.上肢介助量に配慮する必要があると考えた.
診察 • 診断
  • 森原 徹, 木田 圭重, 古川 龍平, 祐成 毅, 加太 佑吉, 琴浦 義浩, 松井 知之, 瀬尾 和弥, 平本 真知子, 東 善一, 藤原 ...
    2017 年 41 巻 2 号 p. 369-371
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     投球時に肩肘痛を認め,投球ができなくなり病院に受診する野球選手は絶えない.どのようなサインや所見が,現在の投球時の肩肘痛と関連しているかはあきらかではない.本研究では,事前アンケートをもちいて現在の肩痛と肩関連ストレステスト,現在の肘痛と肘関連ストレステストとの関連性を検討した.対象はメディカルチェックに参加した高校野球選手1073名であった.Neer,Hawkinsテスト,HERT陽性選手に対する肩痛のオッズ比は8.3(95%CI: 4.8-14.1),5.5 (3.47-8.6),11.2 (7.46-16.9)であった.肘外反ストレステスト,肘過伸展ストレステストに対する肘痛のオッズ比は6.7 (4.66-9.74),9.5 (6.0-14.9)であった.
     高校生野球選手に生じる肩肘痛によって投球が不能になることがある.本研究では,特にHERT,過伸展ストレステストが現在の肩肘痛である危険性が高かった.
  • 藤井 康成, 泉 俊彦, 東郷 泰久, 小倉 雅, 栫 博則
    2017 年 41 巻 2 号 p. 372-374
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     肩関節後方不安定性の有無でjerk test時の肩甲骨の動きの差を検討した.対象はjerk testにて明らかに関節窩から骨頭が(亜)脱臼を呈した49肩(後方群)と不安定性を認めなかった66肩(健常群)であった.
     jerk test時の肩甲骨の評価法は,検者の一側の手を検査側の肩甲骨後面に充てがい,他側で後方にストレスを加えながら水平内転した際に肩甲骨の外転運動が起こるか否かを評価した(scapula mobility jerk test:SMJT).上腕骨頭の後方へ(亜)脱臼を認め,その際肩甲骨の外転運動を認めない場合を陽性,肩甲骨が外転し後方不安定性を認めない場合を陰性と評価した.
     後方群におけるSMJTは全例陽性で,健常群は63肩(95.5%)が陰性であった(p<0.05).
     肩関節後方不安定性を有する症例は,肩水平内転に連動した肩甲骨の外転運動が生じず,肩甲骨の運動性低下の存在が窺われた.
  • 尼子 雅敏, 伊藤 雄也, 津田 悦史, 平原 康文, 伊佐治 雅, 山田 真央
    2017 年 41 巻 2 号 p. 375-379
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     肩関節手術前後の肩関節機能をShoulder 36 ver.1.3(Sh36)を用いて評価し,その有用性について検討した.肩関節鏡視下手術を行った170例を対象とした.腱板損傷は58例,不安定症は112例で,術前と術後3,6,9,12,18,24か月に,Sh36,DASH,及びJOA scoreを採取し,Sh36の各項目との相関を検討した.腱板損傷はSh36が24か月まで改善傾向を示した.Sh36はDASHと有意な負の相関を,JOA scoreと正の相関を示した(p<0.001).不安定症では,Sh36の経時的変化が小さく,DASHとは有意な強い負の相関を示した(p<0.001)が,JOAとの相関は弱かった.Sh36は腱板損傷に対して術後の改善状況を的確に捉えていたが,不安定症においては経時的変化が捉えづらく,Sh36の改良が必要である.
  • 菊川 憲志, 井手 淳二
    2017 年 41 巻 2 号 p. 380-383
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     実際の臨床の場において,小円筋を簡便に評価する方法は少ない.Walchらは肩外旋筋の評価としてhornblower's sign,dropping signの有効性を報告した.本研究の目的は,後上方腱板断裂肩における小円筋の評価法として,hornblower's sign,dropping signの有効性を検討することである.対象は棘下筋萎縮を伴う後上方型腱板断裂と診断された36肩(男性24肩,女性12肩,平均年齢71.5歳(56-82歳))である.先行研究に基づきMRI斜位矢状断像を用いて,36肩すべて棘下筋萎縮を確認し,小円筋肥大群(A群,18肩),小円筋正常群(B群,10肩),小円筋機能不全(筋萎縮・腱断裂・高度脂肪変性)群(C群,8肩)に分類した.各群に対してhornblower's sign,dropping signを施行し,その陽性率を検討した.Hornblower's signはA群1肩(5.6%),B群4肩(40%),C群8肩(100%),dropping signはA群0肩(0%),B群5肩(50%),C群8肩(100%)で陽性であった.棘下筋萎縮を伴う後上方腱板断裂肩において,hornblower's sign,dropping signは残存する小円筋の評価に有効であった.
検査
  • 後藤 英之, 杉本 勝正, 土屋 篤志, 吉田 雅人, 武長 徹也, 竹内 聡志, 鷹羽 慶之, 大塚 隆信
    2017 年 41 巻 2 号 p. 384-388
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     超音波剪断波エラストグラフィ(Shear-wave elastography: SWE)によって腱板修復部および正常部の組織弾性を比較検討した.対象は鏡視下腱板修復術を行った群(修復群)18例18肩,平均年齢68.7歳と,腱板断裂のない群(対照群)10例10肩,平均年齢63.8歳で,SWEにはAplioTM 500(東芝メディカル),LOGIQTM E9(GEヘルスケア),Aixplorer®(Super Sonic Imagine)を用い,棘上筋腱の長軸像(LA)と短軸像(SA)で評価した.各群の弾性値の平均は対照群でLAが104±49.2(SD) キロパスカル(kPa),SAが88.8±43.5 kPa,修復群でSAが57.8±40.5kPa,LAが48.4±32.6kPaであり,修復群で有意に低値を示した.また修復群では術後撮像時期と弾性値の間に相関はなかったが(r = -0.0207),年齢と弾性値の間に負の相関(r = - 0.535)を認めた.
  • 梶田 幸宏, 岩堀 裕介, 村松 由崇, 斉藤 豊
    2017 年 41 巻 2 号 p. 389-392
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     エコーを用いて,腱板断裂患者,凍結肩患者,反復性肩関節脱臼患者,健常人の第5頸椎(以下C5)神経根の断面積を比較検討した.対象は腱板断裂患者36例,凍結肩患者16例,反復性肩関節脱臼患者10例と,健常人100人とした.エコーを用いて頚椎横突起レベルのC5神経根の断面積を算出し,各疾患の患健側,健常人の間で比較した.腱板断裂では患側は7.8mm2±2.7mm2,健側は7.9mm2±3.0mm2,凍結肩では患側は8.7mm2±2.7mm2,健側は8.3mm2±2.4mm2,反復性肩関節脱臼では患側は6.6mm2±2.3mm2,健側は6.2mm2±2.1mm2,健常人では7.0mm2±1.9mm2であった.全群において両側間で有意差がなかった.健常人に比べ腱板断裂,凍結肩では,患健側とも有意に肥大を認めた.腱板断裂患者と凍結肩患者ではC5神経根は患側・健側ともに健常人と比較して肥大していた.肩関節由来の痛みにC5の肥大が関与することが示唆された.
  • 今村 塁, 廣瀬 聰明, 道家 孝幸, 芝山 雄二, 杉 憲, 水島 衣美
    2017 年 41 巻 2 号 p. 393-396
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     本研究の目的は,予後予測の指標として用いられる棘上筋の脂肪浸潤と筋萎縮を,それぞれfat fraction(ff)と棘上窩占拠率(占拠率)で客観的に評価し,その関連を検討することである.対象は,腱板非断裂群34肩と断裂群96肩の計126例130肩であった.脂肪浸潤の評価は,Dixon法を撮像し,肩甲棘が肩甲体部につくスライスにて計測した.占拠率は,Zanettiらの報告に準じ,T2強調像で計測した.Ffと占拠率との関連を断裂の有無および性別で検討し,非断裂群では相関を認めず,断裂群で中等度の負の相関(r=-0.46,p<0.01)を認めた.また,断裂群の女性でr=-0.58(p<0.01)と中等度の負の相関を認めた.修復術適応の決定や保存治療で経過を見る場合,定期的な画像検査による観察を考慮し,男性では筋萎縮のみ進行する症例が存在することに留意する必要があると考える.
  • 竹島 稔, 森原 徹, 古川 龍平, 祐成 毅, 藤原 浩芳, 久保 俊一
    2017 年 41 巻 2 号 p. 397-402
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
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     肩関節内の上腕二頭筋腱長頭(long head of biceps tendon;LHBT)は位相の変化とpulley形成により,従来のMRIでは評価困難であった.本研究ではLHBTの走行に垂直な断面を設定したbiceps-radialMRIによるLHBT 病変評価法の有用性を検討した.肩関節鏡視下手術を施行した57例57肩を対象に,術前MRI所見と術中関節鏡所見でpulleyおよびLHBT病変を評価し,感度,特異度を検討した.pulley病変は感度100%,特異度90.9%であり,LHBT病変は腱症で感度100%,特異度88.9%,不安定症で感度95.6%,特異度91.4%であった.本研究で,biceps-radialMRIはpulleyおよびLHBTが良好に描出できたため,従来の方法に比べて正確性が高まり,術前画像診断に有効と考えた.
脱臼
  • 吉武 新悟, 中溝 寛之
    2017 年 41 巻 2 号 p. 403-405
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     脱臼・亜脱臼の自覚がない外傷性肩前方不安定症(以下前方不安定症)の術前の臨床症状,理学所見,術前3DCTによる骨形態,術中鏡視所見,術後成績として日本肩関節学会肩関節不安定症評価法(以下JSS-SIS)について検討した.対象は鏡視下Bankart修復術を施行し術後1年以上経過観察できた前方不安定症患者のうち,受傷時に脱臼・亜脱臼の自覚がなかった14名14肩である.内訳は男9肩,女5肩、平均年齢16.6(14~21)歳,平均観察期間は13.6(12~24)ヵ月であった.術前主訴は全例肩運動時痛であった.またanterior apprehension testで疼痛が誘発されrelocation testでその疼痛が軽減した.関節窩骨欠損率は平均2.6%,Hill-Sachs内側縁は腱板付着部から平均5.5mmであり,脱臼・亜脱臼の自覚がない前方不安定症患者の骨欠損は小さい傾向にあった.鏡視では全例で関節唇の損傷を認めた.JSS-SISは術後有意に改善した.不安定感がなくともrelocation testで疼痛が軽減する場合には前方不安定症の存在に留意して検査を行うべきである.
  • 廣瀨 毅人, 中川 滋人
    2017 年 41 巻 2 号 p. 406-410
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は外傷性前方不安定肩における関節症性変化をCTで評価し,その発生頻度と特徴を明らかにすることである.手術歴の無い外傷性不安定肩261例306肩に対しCT検査を行った.冠状断・水平断・斜位矢状断・3DCTで肩甲骨関節窩と上腕骨頭の骨棘を評価した.また,骨棘形成に影響すると考えられる各種因子を検討した.全306肩中93肩(30.4%)に骨棘形成を認めた.片側罹患216肩に限ると,関節窩骨棘は健側37肩に対し患側59肩に認めた.また上腕骨頭では健側12肩に対し患側35肩に骨棘を認めた.骨棘有り群は無し群と比較し関節窩と上腕骨頭のいずれであっても,放置期間が長く,脱臼回数が多く,関節窩骨欠損率が高く,初回受傷時およびCT検査時年齢も高い傾向があり,両群間で統計学的有意差を認めた.外傷性前方不安定肩のCT評価で約30%に骨棘形成を認めた.放置期間,脱臼・亜脱臼回数,関節窩骨欠損率は骨棘形成と有意に関連する因子と考えられた.
  • 中溝 寛之
    2017 年 41 巻 2 号 p. 411-414
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     外傷後に発症した肩後方不安定症の臨床症状や術中所見について検討した.対象は外傷後に発症した肩後方不安定症に対して関節鏡手術を施行し,術後1年以上経過観察できた23例24肩で内訳は男性16例17肩,女性7例7肩であり平均年齢20.2(15~43)歳,観察期間は19.0(12~44)ヵ月であった.手術は21肩に後方Bankart修復術を,3肩に関節包縫縮術を施行した.検討項目は術前の臨床症状,理学所見,鏡視所見による損傷形態,JSS-SISによる術前後の評価である.17肩は挙上時痛が主体で,後方Load & shift test,Kim testで疼痛を伴うものが18肩であった.鏡視所見は,18肩は後下方から後上方関節唇の剥離,2肩はSLAPを合併し4肩は関節唇損傷なしであった.JSS-SISは術前62.3点から術後90.1点に有意に改善した(p < 0.05).関節包縫縮術の2肩に術後再発を認めた.外傷後の肩後方不安定症では疼痛が主症状であり後方Lord & shift testやKim testで疼痛を訴える場合には後方Bankart損傷を疑うべきであると考えられた.
  • 大見 博子, 内山 善康, 繁田 明義, 新福 栄治, 橋本 紘行, 笠間 啓樹, 今井 洸, 渡辺 雅彦
    2017 年 41 巻 2 号 p. 415-419
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     Rockwood分類Type 5と診断された新鮮肩鎖関節脱臼に対し,烏口鎖骨靱帯の再建としてメタルスーチャーアンカーを用いたPhemister変法(four in one procedure:肩鎖関節脱臼の整復と内固定,上肩鎖関節包靱帯の修復,僧帽筋-三角筋膜の重畳縫合を併行)の術後成績を検討した.術後1年以上経過観察し得た34例34肩,手術時平均年齢38.1±13.4(SD)歳を対象とした.最終経過観察時の単純レントゲンにおける再(亜)脱臼は4例(11.8%),肩鎖関節の関節症性変化と烏口鎖骨靱帯の骨化は各10例(29.1%)であった.最終経過観察時の日本肩関節学会肩鎖関節機能評価法の平均は94.6±6.5(SD)点,Constantスコアの平均は92.1±5.1(SD)点であった.新鮮肩鎖関節脱臼に対する本術式は,鎖骨遠位や肩鎖関節周囲の正しい解剖学的知識と理解のもとで損傷した組織のすべてを安全且つ確実に再建出来るため,安定した術後成績が得られる有用な術式である.
  • 尾﨑 律郎, 水野 直子
    2017 年 41 巻 2 号 p. 420-424
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     Dog Bone ButtonTMを用いて鏡視下烏口鎖骨靭帯再建術を施行した4肩について,術後の整復状態および骨孔面積の変化を調査した.整復状態は単純X線肩鎖関節正面像で烏口鎖骨間距離を計測し,術直後に対する変化率が10%未満をexcellent,10-25%をgood,25%-50%をfair,50%以上をpoorとした.骨孔面積はCTで計測し,術後4週に対する術後5か月,術後1年時の拡大率を求めた.整復状態は,術後4週でexcellent 3肩,good 1肩,術後5か月でexcellent 2肩,good 1肩,fair 1肩,術後1年でexcellent 2肩,fair 1肩,poor 1肩であった.また,全例に骨孔拡大を認め,平均骨孔拡大率は術後5か月時,鎖骨で167.8%,烏口突起で33.7%,術後1年時は鎖骨で164.7%,烏口突起で32.9%であり,術後5か月と1年の間に有意差はなかった.
  • 高瀬 勝己, 田村 圭, 山本 謙吾
    2017 年 41 巻 2 号 p. 425-429
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩鎖関節脱臼のRockwood分類type Ⅴに対し手術治療を行ってきた.術式は,2008年までは烏口肩峰靱帯を再建靱帯としたCadenat変法(C法),以降は鏡視下烏口鎖骨靱帯再建術(A法)を施行している.今回,術後1年以上の経過観察が可能であった両者の治療成績を比較した.対象は受傷から3週以内の新鮮例とした.A法は23例,男性20例・女性3例,手術時平均年齢39.7歳,平均待機期間12.8日,術後平均経過期間33ヵ月であった.一方,C法は68例,男性61例・女性7例,手術時年齢35.2歳,待機期間14.9日,経過期間37ヵ月であった.最終診察時の単純X線評価では,A群は整復位17例,亜脱臼位4例,脱臼位2例で肩鎖関節の変形性関節症(OA)性変化は1例のみであったに対し,C群は整復位50例,亜脱臼位18例,OA性変化は9例であった.整復状況では明らかな有意差はなかったがA群では有意にOA性変化の発生頻度が少なかった.
  • 田中 誠人, 林田 賢治
    2017 年 41 巻 2 号 p. 430-433
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩関節前方不安定症に対してLatarjet法を施行した35例37肩において,烏口突起の大きさの術前評価と術後の実測値について検討した.術前と術後1日にCT撮影を行い,三次元画像解析システムVINCENTを用いて,烏口突起肘部から先端までの長さ,烏口突起の頭尾側長(術後は前後長)を高さ,内外側を幅として測定した.スクリュー刺入部位を想定して,高さと幅は烏口突起の近位部と遠位部で測定した.
     術前評価での烏口突起の長さ,近位高さ,遠位高さ,近位幅,遠位幅は平均で22.8(19.7-27.2)mm,10.5mm,9.0mm,13.8mm,13.1mmであった.術後はそれぞれ21.6(17.0-25.7)mm,7.9mm,7.4mm,13.6mm,12.8mmであり,高さのみ有意に減少した.Latarjet法では,接触面の骨皮質を削り,海綿骨を露出するため,高さが減少したと考えられた.手術で実際に切離できた長さは烏口突起先端から肘部までの距離と有意差がなく,術前計測は肘部までが現実的と考えられた.
  • 加藤 基樹, 舟﨑 裕記, 吉田 衛, 戸野塚 久紘, 加藤 壮紀, 丸毛 啓史
    2017 年 41 巻 2 号 p. 434-437
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     反復性肩関節前方脱臼に対して同一の術者,術式,後療法で行ったModified inferior capsular shift法(以下,MICS法)17例(追跡率47%,手術時平均年齢30歳)の術後10年以上(平均12年6か月)の成績を調査した.16例がレクリエーションレベルのスポーツ活動を行っていた.手術は30°~40°外旋肢位で関節包の縫縮を行い,後療法は,術後5週から装具を除去し,外旋運動を開始し,コンタクトスポーツへの復帰は術後6か月とした.術後の再脱臼,亜脱臼の有無,肩関節機能,スポーツへの復帰状況を調査し,本法の有用性につき検討した.術後の再発は10代の柔道選手の1例に認め,元のレベルへのスポーツ復帰率は94%であった.大きな関節窩骨欠損,Carter徴候3/5以上の全身関節弛緩性をもつ症例に術後の再発はなかった.30°~40°外旋肢位で関節包の縫縮を行うMICS法は,可動域制限が少なく,比較的安定した長期術後成績が得られていた.
  • 鈴木 一秀, 永井 英
    2017 年 41 巻 2 号 p. 438-441
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     ハイリスク例の外傷性肩関節不安定症に対する鏡視下Bankart&Bristow法の術中・術後早期合併症を検討し,その対策につき考察する事を目的とした.100例103肩(平均年齢19.1才)を対象とした.検討項目は術中の手術器具などのトラブル,術後早期合併症(感染,神経麻痺,肺梗塞,DVT,CRPS)の内容と頻度である.手術器具の破損やDVT,肺梗塞,CRPSなどは無かったが,筋皮神経麻痺を3例に,表層感染や術後血腫をそれぞれ1例に認めた.烏口突起の固定に使用したスクリューがバックアウトし偽関節に至った症例を2例,骨癒合不全を3例に認めた.筋皮神経麻痺は鏡視で確認しているため直接の神経損傷の可能性は低く牽引力によると考えられた.スクリューのバックアウトは2例共100kg以上の体重であり,体格によりガイドピンの刺入方向に関与するPMポータルの位置やスクリュー長に再考を要すると考えられた.
  • 須川 敬, 松浦 健司, 中井 秀和
    2017 年 41 巻 2 号 p. 442-446
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     我々はBankart修復術(以下ABR)後平均24.1ヶ月の経過観察中,約44%の症例で運動再開時までの術後早期に関節窩横径が減少し,関節窩関節面上に刺入したアンカーの骨孔前方で関節窩面の骨が減少(以下骨減少)したことを報告した.本研究ではそのため骨減少とアンカー挿入角度等の関連を検討した.平成22年以降ABR施行し,術翌日と運動再開時(術後平均5.7ヶ月)にCTを撮影し得た45例に使用したアンカー233本のうち,関節窩面上に刺入したアンカー99本を検討した.CT横断像で関節窩面とアンカー孔のなす角度を計測した.運動再開時CT横断像で骨孔前方に関節窩面と同じ高さの骨を認めるものを維持群,認めないものを減少群とした.維持群59本(平均24.6歳),減少群40本(平均21.6歳)であった.アンカー挿入角度は両群で有意差なく,アンカー種類,アンカー挿入高位により骨減少の発生頻度は差がなかった.運動競技者で有意に減少群が多かった.
  • 古屋 貫治, 西中 直也, 上原 大志, 鈴木 昌, 筒井 廣明
    2017 年 41 巻 2 号 p. 447-450
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
    【目的と方法】てんかん発作に起因する肩関節脱臼は術後再脱臼が多い.今回,当院で過去5年間に手術加療を行った肩関節脱臼のうち,てんかん発作に起因した5肩の臨床成績を検討し報告する.
    【結果】初回脱臼は21.4±7.1歳,手術施行時は24.0±8.6歳,術式は鏡視下Bankart修復術1肩,鏡視下Bankart修復術+Remplissage1肩,鏡視下Bankart & Bristow法3肩で,JSS instability scoreは52.0±2.1点から80.4±14.0点と有意に改善していた(p=0.0079).てんかん発作の内服コントロールは2例で良好,2例で不良だった.3例で再脱臼はなかったが,コントロール不良の1例は術後経過中に発作があり,鏡視下Bankart & Bristow術後の骨癒合は得られていたにも関わらずスクリューの彎曲を認めた.その後は再脱臼なく日常生活に支障はないが発作時の再脱臼が危惧される.
    【結論】てんかん発作に起因する反復性肩関節脱臼は,内服コントロール不良例ではBankart & Bristow法などの追加処理による強固な制動が必要であり,発作のコントロールも必要不可欠である.
骨折
  • 内山 善康, 今井 洸, 繁田 明義, 新福 栄治, 笠間 啓樹, 大見 博子, 橋本 紘行, 渡辺 雅彦
    2017 年 41 巻 2 号 p. 451-454
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折における人工骨頭置換手術は結節の骨癒合不全に伴う腱板機能不全により,満足のいく結果が得られていない.その原因として結節縫合法の違いが影響しているものと考えられる.そこで結節縫合群(S群)とケーブル締結群(C群)の術後臨床成績とレントゲン所見を比較検討した.上腕骨近位端骨折に人工骨頭置換術を行い,術後1年以上経過観察し得た35例35肩を対象とした.受傷時年齢は平均72.9歳(49-86歳)で術後経過観察期間は平均15ヵ月(12-20ヵ月),S群が16例16肩,C群が19例19肩であった.臨床評価はJOAスコアとConstantスコアで評価し,単純レントゲン所見で結節の解剖学的骨癒合の位置を検討した.術後平均JOA / ConstantスコアともにS群(71.4±8.25/59.6±9.7)はC群(78.9±4.9/68.2±10.3)より低かった(p<0.01).また結節の解剖学的骨癒合はS群で63%,C群95%にみられ,C群で融合率が高かった(p<0.02).人工骨頭置換術における結節ケーブル締結法は縫合法に比べ,結節の良好な解剖学的骨癒合により良好な臨床成績が期待できる.
  • 原田 洋平, 横矢 晋, 白石 勝範, 根木 宏, 松下 亮介, 望月 由
    2017 年 41 巻 2 号 p. 455-458
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折(AO分類11-C)に対する骨接合の術後成績と骨頭壊死の危険因子を検討した.上腕骨近位端骨折(AO分類11-C)に対してプレートを用いて骨接合を行った8例8肩を対象とし,術後合併症の有無と,最終観察時(骨頭壊死症例は再手術時前)の可動域とJOA scoreを評価した.また骨頭壊死の危険因子として術前のX線およびCTで骨折形態を評価した.全例で骨癒合は得られ,2例で骨頭壊死を認めた.術後肩関節可動域,JOA scoreは,骨頭壊死例で劣っていた.骨頭壊死症例は,術後骨頭壊死の危険因子として,medial calcar lengthが0mm,four fragment骨折,大小結節の転位を認めていた.骨頭壊死に対しては人工骨頭もしくは人工肩関節置換術を行うことで臨床症状の改善を得た.AO 分類11-Cに対する骨接合術は有用と考えるが,骨頭壊死の危険因子の評価と術後慎重な経過観察が必要と考える.
  • 秋本 浩二, 西須 孝, 柿崎 潤, 及川 泰宏, 落合 信靖, 藤田 耕司, 森石 丈二, 三笠 元彦
    2017 年 41 巻 2 号 p. 459-463
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
    【目的】当科における小児上腕骨近位端骨折の治療成績を調査し,予後を明らかにすることである.
    【対象・方法】1992年10月から2015年4月までに治療を行った18例に対し,骨折型,転位の程度,治療,後遺症について調査を行った.
    【結果】骨折型は,骨幹端骨折が7例,骨端線損傷が11例(Salter-Harris分類I型2例,II型9例)であった.転位の程度は骨端線損傷ではNeer-Horwitz分類III,IV度が10例であった.治療は手術が3例,保存治療が15例であった.後遺症は,骨頭の内外反変形8例,上腕骨短縮5例であった.受傷時年齢が11歳以上でNeer-Horwitz分類III,IV度の症例では67%に内外反変形を認めた.上腕骨短縮例は全例骨端線損傷であり,その80%に 遠位骨片による成長軟骨板の貫通所見(Perforation signと定義した)が認められた.
    【結論】小児上腕骨近位端骨折において,11歳以上で転位の大きい症例では上腕骨頭の内外反変形の残存,Perforation sign陽性例では骨端線早期閉鎖による上腕骨短縮のリスクが高い.
  • 濵 峻平, 平川 義弘, 間中 智哉, 市川 耕一, 松田 淑伸, 清水 勇人, 伊藤 陽一, 中村 博亮
    2017 年 41 巻 2 号 p. 464-467
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は陳旧性上腕骨大結節骨折に対して,鏡視下骨接合術(Arthroscopic reduction and internal fixation, 以下ARIF)を施行した症例の術後1年以上経過した治療成績を検討することである.対象は陳旧性上腕骨大結節骨折に対してARIFを施行した8例8肩(男4例,女4例)で,平均年齢は62.1歳(50歳-72歳),術後平均観察期間は4.8年(1年-10年)であった.手術は大結節骨片を骨欠損部に適合するように形態をトリミングした後,整復操作し,5例はdouble row法,3例は骨孔法で行った.術前および最終診察時の肩関節自動可動域,日本整形外科学会肩関節治療成績判定基準(JOAスコア)について調査した.全例術後1年で骨癒合し,可動域・JOAスコアも有意に改善を認め,陳旧性上腕骨大結節骨折に対するARIFは低侵襲で有効な術式であった.
筋腱疾患
  • 松浦 健司, 須川 敬, 中井 秀和
    2017 年 41 巻 2 号 p. 468-472
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板小中断裂例に対する鏡視下Surface-holding法(SH法)とSuture-bridge法(SB法)の成績を比較した.
     棘上筋~棘下筋腱断裂で大結節付着部前後径20mm未満,退縮が上腕骨骨頭頂点を超えない小・中断裂95肩をSH法54肩,SB法41肩に分け,手術時間,術前と術後最終観察時のJOA score,術後1年以降に行ったMRIで再断裂の有無を評価した.
     手術時間はSH法平均3時間30±49分,SB法3時間16±37分と差はなかった.術後JOA scoreは術前に比し両法ともに有意に改善した(SH法;66.1±11.4点→88.3±7.0点,SB法;69.1±11.7点→91.8±7.3点).菅谷分類type Ⅳ以上を再断裂とするとSH法は0例,0%,それに対してSB法は4例,9.8%と有意に高かった(p=0.019).
     鏡視下SH法はSB法に比べ腱板小・中断裂に対して再断裂が少ない有用な腱板修復方法であると考えられた.
  • 小林 博一
    2017 年 41 巻 2 号 p. 473-476
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂症例を肩関節評価法およびshoulder 36を用いて比較検討したので報告する. 対象は腱板断裂の診断で加療した125例139肩で,保存治療群(保存群)と手術治療群(手術群)の2群に分類し調査した.調査項目は①病歴,②肩関節可動域,③Shoulder 36,JOA scoreおよびUCLA scoreを用い,2群間で比較した.
     病歴は,手術群が保存群より年齢は有意に若く,外傷歴は多く,経過観察期間は短かった.最終診察時では,肩関節可動域は,C7 thumb distance以外の方向で手術群が有意に大きかった. Shoulder 36では,すべてのドメインで手術群が有意に点数が高かった.腱板断裂治療で,保存群および手術群ともにShoulder 36で,比較的点数が良く,QOL評価としても有用であると思われた.
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦
    2017 年 41 巻 2 号 p. 477-479
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     今回我々は,肩腱板断裂患者の術前と術後早期におけるShoulder36(Sh36)と臨床評価を調査し,Sh36の有用性を検討した.対象は腱板修復術を施行した124例124肩である.術前と術後3ヵ月,6ヵ月においてJOAスコアとUCLA score,Sh36について調査し,各時期におけるJOAスコアとSh36の間,UCLA scoreとSh36の間で相関を調べた.次に各スコアについて術前と術後3ヵ月,6ヵ月の間で有意差検定を行った.Sh36のすべてのドメインは,術前,術後3ヵ月,6ヵ月の時期においてJOAスコア,UCLA scoreとも有意な相関を認めた.JOAスコア,UCLA scoreは術後3カ月以降に有意な改善を認めていたが,Sh36の日常生活動作とスポーツ能力は術後6ヵ月で有意に改善していた.この結果から,Sh36は腱板修復術後のより詳細な評価に有用であると思われた.
  • 花井 洋人, 田中 誠人, 林田 賢治
    2017 年 41 巻 2 号 p. 480-483
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板断裂に対する鏡視下腱板修復術(ARCR)では,術後に肩の夜間痛が持続する症例を経験する.術後にNSAIDsとトラマドール・アセトアミノフェン合剤(TA合剤)を併用することで,夜間痛が抑制されたので報告する.ARCR施行例に対し,アンケートで得られた夜間痛に対するVAS(P-VAS)を用いて術後14日間の推移を評価した.術翌日のP-VASが53.1mm未満(L群)と53.1mm以上(H群)に分類し,NSAIDsのみを使用する群(N群)と術翌日からTA合剤1錠を眠前に併用する群(T群)とで鎮痛効果を比較した.P-VASが53.1mm未満の症例はN群57肩(NL群),T群13肩(TL群)で,夜間痛は自然軽快する傾向にあった.53.1mm以上はN群37肩(NH群),T群23肩(TH群)で,TH群は術後10~12日目でNH群と比較してP-VASが有意に抑制された.経過中に疼痛が再燃した症例はTH群で有意に少なかった.術翌日の夜間痛が強い場合にTA合剤を併用することで,遷延する夜間痛を減弱できた.
  • 村田 亮, 黒田 重史, 荻野 修平, 石井 壮郎, 三笠 元彦, 石毛 徳之
    2017 年 41 巻 2 号 p. 484-486
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂に対する鏡視下骨孔腱板修復術(Arthroscopic Transosseous Suture:ATOS)について,平均1年以上経過観察が可能であった575症例の臨床成績を調査,検討した.JOAスコア(X線/安定性を除いた80点満点)は術前平均49.9点から術後平均73.0点に有意に改善した.菅谷分類によるType4,5を再断裂とすると全体の再断裂率は5.7%(33/575例)であった.小断裂では再断裂を認めず(0/61例),中断裂の再断裂率は2.7%(10/374例),大断裂および広範囲断裂では16.4%(23/140例)であった.再断裂例の術後平均JOAスコアは61.7点であり他と比較して有意に低かった.ATOSの術後臨床成績は再断裂率を含めて良好と考えられ,臨床症状を有する腱板断裂に対しては断裂径を問わず選択できる術式と考えられた.
  • 檜森 興, 田中 稔, 佐藤 克巳, 井樋 栄二
    2017 年 41 巻 2 号 p. 487-490
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は夜間痛による睡眠障害の腱板修復術後の経過を明らかにすることである.
     対象は夜間痛を伴う腱板断裂に対し鏡視下腱板修復術を施行した患者43例43肩である.
     検討項目はアテネ睡眠尺度(以下AIS)の各項目(寝つき,中途覚醒,早期起床,総睡眠時間, 睡眠の質,日中の気分,日中の活動性,日中の眠気),及び合計点,総睡眠時間,中途覚醒回数,及び疼痛(VASで評価)である.各項目を術前,術後2週,1,2,3,6,12カ月の時点で評価した.
     術前と比べ術後12カ月の時点でAISの合計点が5.7/3.0点(術前/術後),VASが50/12mm,中途覚醒の回数が1.6/0.6回と有意に改善していた.AISの各項目では中途覚醒,総睡眠時間,睡眠の質,日中の眠気で有意に改善していた.睡眠障害の遷延患者では再断裂の割合が有意に高かった.
  • 中原 信一, 衛藤 正雄
    2017 年 41 巻 2 号 p. 491-493
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     JOAスコアと患者立脚型評価法であるShoulder36(Sh36)を用いて,肩腱板断裂鏡視下手術の治療成績の比較,検討を行った.一次修復を行い,術前および術後1年にMRIを撮影し評価を行えた65肩(男性48肩,女性17肩)を対象とし,修復群59肩と再断裂群6肩とに分けた.手術時平均年齢は63.2歳/63.7歳(修復群/再断裂群)で,断裂サイズは修復群のみ不全断裂19肩と小断裂1肩で,中断裂は24肩/1肩で大断裂は13肩/3肩であり,広範囲断裂は2肩/2肩であった.共通項目である疼痛,可動域,筋力,ADLについて調査を行った.
     修復群では術前後の両評価法すべてにおいて有意に改善し,再断裂群ではJOAスコアの総点と疼痛のみで有意に改善した.両評価法の術前後については両群間に有意差はなかった.
     再断裂群ではJOAスコアで改善が得られた項目があったが,Sh36では有意な改善はなかった.再断裂患者では術後に改善していない可能性があり,Sh36を用いた評価の必要性が示唆された.
  • 鶴田 大作, 鈴木 朱美, 結城 一声, 丸山 真博, 高木 理彰
    2017 年 41 巻 2 号 p. 494-496
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板断裂は中高年の有痛性肩関節疾患とされるが,有痛性となるメカニズムについては未だ明らかではない.今回,肩腱板断裂手術症例の術前の臨床像について,当院での手術症例を対象として検討した.手術症例108肩よりShoulder 36の疼痛ドメインにより抽出した2.5以下の強群(26肩),3.5以上の弱群(29肩)の計55肩を対象とし,年齢,性別,罹病期間,外傷歴,断裂の大きさ,肩甲下筋腱断裂の有無,および麻酔下徒手検査(EUA)での関節可動域について,2群間で比較・検討した.年齢,断裂の大きさ,肩甲下筋腱断裂の有無,およびEUAでの屈曲,下垂位・外転位外旋では有意差はなかった.性別,罹病期間,外傷歴,EUAでの外転位内旋で両群間に有意差を認め,疼痛強群で女性が多く,罹病期間が長く,外傷ありが少なく,内旋可動域が大きかった.本研究では手術例のみを対象としており,バイアスがかかっている可能性があり,限界である.
  • 新谷 尚子, 吉村 英哉, 柳澤 克昭, 安 宰成, 望月 智之
    2017 年 41 巻 2 号 p. 497-499
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,弱オピオイド服用が腱板修復術後経過に与える影響について前向き試験を行った.腱板一次修復を行った症例について,ランダムにトラマドール/アセトアミノフェン(TRAM/APAP)服用群(以下TRAM群),コントロール群に割り付け,TRAM群は術後6週間TRAM/APAPを内服した.TRAM群27例,コントロール群32例を対象に,VAS,疼痛閾値,可動域及びJOAスコアについて検討した.
     術後1ヶ月の安静時VASはTRAM群で有意に低く,疼痛閾値は術後1,3ヶ月においてTRAM群で有意に高値であった.可動域は術後6ヶ月までTRAM群で有意に改善していた.術後12ヶ月での可動域及びJOAスコアは両群間に有意差を認めなかった.弱オピオイドの服用により,術後早期から疼痛閾値が上昇し,疼痛の軽減及び良好な機能回復が得られることが示された.
  • 山上 直樹, 高橋 完靖, 守重 昌彦
    2017 年 41 巻 2 号 p. 500-503
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     断裂腱の修復デザインについての報告は少ない.今回大,広範囲断裂に対して棘上筋と棘下筋の線維方向に沿った修復デザインを用い鏡視下手術の術後成績を報告した.術後2年以上経過観察可能であった93肩(大断裂 77肩,広範囲断裂 16肩)を対象とした.修復デザインは,棘上筋をfootprint の内方化とsingle row法で,棘下筋を後方から前外側へ引き出すbridging suture法にて固定する方法とした.術後評価を,JOAスコア,cuff integrity(Sugaya分類),再断裂にて行った.JOAスコアは術前平均69.7±12.0点 術後平均92.2±6.80点と有意に改善していた.Cuff integrityは Sugaya分類type4が3肩,type 5が9肩で再断裂率は12.9%であった.今回の修復デザインは機能再建および再断裂の低下に有用であった.
  • 栫 博則, 藤井 康成, 泉 俊彦, 海江田 英泰, 海江田 光祥
    2017 年 41 巻 2 号 p. 504-506
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     関節鏡下腱板修復術(以下ARCR)の手術成績及び特に部分修復例,再断裂例の成績に影響を与える因子を検討した.腱板大断裂・広範囲断裂に対しARCRを行い,術後1年以上経過観察が可能であった70肩(大断裂51肩,広範囲断裂19肩)を対象とした.一次修復を行った62肩中再断裂を認めなかった47肩を修復群,再断裂をきたした15肩を再断裂群(再断裂率24.2%)とし,部分修復を行った8肩を部分修復群として臨床成績・画像所見を調査した.日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準は各群とも術後有意に改善し,術前後とも3群間に有意差を認めなかった.MRI上,再断裂群,部分修復群において斜位環状断では術前後に断裂サイズに有意差を認めなかったが,斜位矢状断では術後有意に縮小していた.部分修復例,再断裂例においても矢状面での断裂サイズの縮小が得られれば良好な臨床成績が期待できることが示唆された.
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦, 小林 博一
    2017 年 41 巻 2 号 p. 507-510
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     動的な超音波評価の有用性を明らかにする目的で,臨床評価と超音波検査を含めた画像評価との関係を調査した.腱板断裂手術例642肩の術後6ヵ月,1年,2年のUCLAスコア,MRI所見,超音波所見を調査した.MRI所見はT2強調像にて腱板付着部の性状を評価し,超音波所見は三角筋下面と腱板表面の境界エコーを動的に評価し,それぞれ3つのtypeに分類した.症例全体においては,すべての時期で超音波所見とUCLAスコアの間に有意な弱い負の相関を認めたが,MRI所見とUCLAスコアの間には相関を認めなかった.さらに症例を術後2年時のMRI所見を用いて修復群と再断裂群に分類討すると,修復群では超音波所見とUCLAスコアの間に有意な弱い負の相関を認めたが,再断裂群では相関を認めなかった.動的な超音波検査は腱板修復例において臨床評価と相関しており,腱板修復術後の臨床評価を裏付ける画像評価になりうると思われた.
  • 古川 龍平, 森原 徹, 木田 圭重, 祐成 毅, 藤原 浩芳, 黒川 正夫, 久保 俊一
    2017 年 41 巻 2 号 p. 511-514
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     一次修復困難な肩腱板広範囲断裂に対して,内視鏡下に棘上筋,棘下筋起始部の剥離を行う内視鏡支援Debeyre-Patte変法を施行したので報告する.2012年12月から2015年1月までに内視鏡支援Debeyre-Patte変法を施行した13例13肩で,男性9例,女性4例,手術時平均年齢は66.6(53-75)歳,平均経過観察期間は16ヵ月から38ヵ月(平均31.0ヵ月)であった.手術は肩甲骨内側縁に作成したポータルから内視鏡下に棘上筋,棘下筋起始部を剥離し,前進させた後,腱板修復術を施行した.術後成績について日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア)を用いて評価し,腱板修復状態についてSugayaらの分類に準じMR画像で評価した.JOAスコアは術前平均58.0±7.1(SD)点から術後平均91.5±6.1(SD)点に改善した.MR画像評価では,Sugaya分類type Iは7例,type IIは2例,type IIIは1例,type IVは1例,type Vは2例であった.内視鏡支援Debeyre-Patte変法は,僧帽筋付着部を温存でき,より低侵襲で正確な剥離操作が可能な手術手技である.
  • 太田 悟, 駒井 理
    2017 年 41 巻 2 号 p. 515-518
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     DM患者におけるARCRの術後成績およびリハビリ介入期間について,非DM患者と比較検討した.ARCRを施行した427人の患者を対象とした.平均年齢は63.2±15.3(SD)歳でその中,DM群は107人,非DM群は320人であった.検討項目として術前後のJOAスコア,術後3ヶ月とリハビリ終了時の屈曲角度,リハビリ期間の比較を行った.術後腱板修復状態にはMRI 5段階評価を用いた. JOAスコアは,術後1年で両群間で有意差を認めなかった.術後3ヵ月での屈曲角度はDM群119.0±21.1°(SD),非DM群132.8±16.0°(SD)で差を認めた.リハビリ終了までの期間は,非DM群5.4±1.5(SD)ヵ月,DM群7.3±3.2(SD)ヵ月要し,終了時の屈曲角度は両群とも約150°と同等であった.MRIによる腱板修復状態は,術後3ヵ月6ヵ月において非DM群が低い傾向にあった.両群間で術前,術後のJOAスコアに有意差は認めなかった.DM群は,非DM群より約2ヵ月リハビリ期間を要した.
  • 堀田 知伸, 木村 重治
    2017 年 41 巻 2 号 p. 519-522
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     我々は肩関節2015; 39で,footprint内側に縫着した腱板が大結節外側まで高率に充填されることを報告した.今回どのような症例が充填されやすいかを検討した.
     marrow vents併用のDAFF法にて断裂腱板をfootprint内側に縫着した91例を,MRIを用いて解析した.縫着部位から大結節外側までの距離をGapとし,Gapの大きさ,年齢,術前の断裂の大きさを充填群と非充填群で比較した.Gapに関しては充填可能な確率を計算した.
     充填群は小さなGap,年齢が低い,術前の断裂が小さいという特徴があった.充填可能なGapのカットオフ値は13mmであった.
     腱板断端をfootprint内側に縫着した多くの症例でGapは充填されたが,充填されない症例もあった.Gapの小さな症例,年齢が低い症例,術前断裂の小さな症例は充填される可能性が高かった.Gapが13mmより小さい場合には,footprint上の充填は十分期待できる.
  • 永田 義彦, 藤原 祐輔, 糸谷 友志, 岩崎 洋一, 望月 由
    2017 年 41 巻 2 号 p. 523-527
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板断裂に対する鏡視下transosseous with bone trough法では,大結節に骨溝を作成し経骨孔法で腱板を縫着する.本研究では,骨溝と骨孔の術後形態変化を経時的に評価することを目的とした.本術式後にCT検査を術後2週,5あるいは6週,3,6,12ヶ月で行い,再断裂を認めなかった22肩を対象とした.平均年齢は67.9歳,男性8肩,女性14肩であった.CT画像で骨溝の深さと幅,大結節側面の拡大した骨孔の深さを計測し,術後2週と術後12ヶ月で0.5mm以上変化したものを対象に経時的変化を統計学的に検討した.骨溝の深さは術後12ヶ月で平均1.33mm増大し,早期の変化が大きく,骨溝の幅は骨孔の拡大に起因し平均2.05mm外側へ拡大し,いずれも術後3ヶ月まで有意に増大した.大結節側面の骨孔の深さは平均1.50mm増大し,術後6ヶ月まで有意に変化した.骨溝の深さや幅は術後3ヶ月まで変化し,大結節側面の骨孔の深さは術後6ヶ月まで変化し,腱板にかかった縫合糸の動きや張力の影響が考えられた.
  • 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 平川 義弘, 松田 淑伸, 清水 勇人, 中村 博亮
    2017 年 41 巻 2 号 p. 528-531
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術においてスーチャーブリッジ(SB)法と骨孔(TO)法を比較検討した.対象は,37例.手術は同一術者が行い,SB法は16例でTO法は21例であった.手術時間,インプラント費用,術中合併症,術後12カ月の臨床成績及び腱板修復状態を両縫合法間で比較検討した.手術時間は,TO法ではSB法と比較して有意に短かった.インプラント費用は,TO法はSB法と比較して有意に低かった.術中合併症は,SB法3例でTO法1例であった.術前と比較して術後12カ月では,両縫合法で平均自動屈曲及び外転可動域とJOA scoreは有意に改善していたが,両縫合法間の臨床成績に有意な差は認めなかった.また,腱板修復状態も両縫合法間に有意な差は認めなかった.腱板断裂に対するSB法とTO法の治療成績及び腱板修復状態は同等であったが,手術時間はTO法の方が短く,インプラント費用もTO法の方が低かった.
  • 福島 秀晃, 森原 徹, 三浦 雄一郎, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 古川 龍平
    2017 年 41 巻 2 号 p. 532-537
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板広範囲断裂症例(Massive Rotator Cuff Tear: MRCT)では,肩甲胸郭関節が代償的に機能している.MRCTのリハビリテーションを実施する上で,肩甲帯周囲筋群の機能を理解することが重要である.本研究ではMRCTの僧帽筋各線維,前鋸筋,および三角筋各線維の筋活動性を筋電図学的に分析した.対象は,MRCT群18肩,健常群11肩の2群とし,肩関節0°30°60°90°屈曲位を保持し,屈曲0°-30°,30°-60°,60°-90°間の筋活動比率(R-muscle値)を算出した.屈曲0°-30°間で前鋸筋,30°-60°間で僧帽筋中部線維のR-muscle値がMRCT群で有意に高値を示した.MRCTでは屈曲初期に肩甲骨上方回旋が増大すると報告されている.MRCT群の前鋸筋と僧帽筋中部線維のR-muscle高値は,肩甲骨上方回旋とその肢位での保持に関与したと考えた.
神経疾患
  • 名越 充, 廣岡 孝彦, 石濱 琢央, 橋詰 博行
    2017 年 41 巻 2 号 p. 538-540
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     投球肩,肘障害で受診した選手における胸郭出口症候群(TOS)の潜在度,臨床的特徴を調査し,投球に対する影響について検討した.1年6ヶ月間に投球肩,肘障害で外来受診した420例(男387例,女23例,平均年齢17歳)を対象とした.小学生102,中学生141,高校生93,大学生63,社会人21例であった.鎖骨上窩または肋鎖間隙の圧痛を有しWrightおよびAllenテスト陽性をTOSとした.肩,肘障害のTOS合併率,TOS症例の年齢分布を算出,原テストのCombined abduction test,Humerus flexion test,肩挙上筋力低下,SulcusサインをTOS有無の2群間で比較した.TOSを48.1%に認めた.小学生18.8,中学生33.1,高校生27.2,大学生15.8,社会人10.4%であった.挙上筋力低下,SulcusサインをTOS有群で有意に認めた(χ2検定,p<0.05).TOSは投球障害に多く潜在し,投球障害への関与が危惧された.
  • 南 昌孝, 森原 徹, 大西 興洋, 加太 佑吉, 祐成 毅, 古川 龍平, 木田 圭重, 琴浦 義浩, 藤原 浩芳, 久保 俊一
    2017 年 41 巻 2 号 p. 541-544
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     胸郭出口症候群(TOS)は,上肢のしびれや放散痛が生じる疾患である.投球時に同様の症状を訴える野球選手をしばしば経験するが,その疫学や病態は明らかでない.高校野球検診でTOSと診断された選手の疫学と病態を検討した.検診に参加した選手のうち,投球時に上肢のしびれや放散痛を自覚しWright testが陽性の選手をTOSの疑いありとした.そのうち病院を受診した選手の病態を検討した.TOSを疑われた選手は305名中13名であり,5名が病院を受診した.5名の身体所見は,肩甲骨の運動不良3例,胸椎のアライメント不良3例であった.すべての選手に運動療法を行い,2ヵ月以内に症状は消失した.野球選手のTOSは,筋の過緊張やリリース時の牽引などが原因とされている.今回経験した5例では筋の過緊張や肩甲骨下方偏位に加え,胸椎のアライメント異常が影響していると考えた.それらを改善することで症状は消失した.
変性疾患
  • 松田 淑伸, 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 平川 義弘, 清水 勇人, 中村 博亮
    2017 年 41 巻 2 号 p. 545-548
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     変形性肩鎖関節症に対する鏡視下鎖骨遠位端切除術の術後5年での臨床成績と画像評価を行った.対象は有痛性変形性肩鎖関節症に対して鏡視下鎖骨遠位端切除術を施行した31例34肩,女性18例,男性13例,平均年齢は62歳であった.臨床成績は,肩関節の自動屈曲・外転可動域,肩鎖関節部の圧痛,肩関節水平内転ストレスでの肩鎖関節痛の誘発の4つの項目を,術前,術後1年,術後5年時に評価した.画像評価は単純X線の肩正面像で術後早期と5年時に肩峰と鎖骨遠位断端の距離を計測し,その変化値も評価した.自動屈曲・外転可動域は術前から術後5年にかけて有意に改善した.術後5年では肩鎖関節部の圧痛は軽度残存7肩20.6%に,水平内転ストレスでの肩鎖関節痛の誘発は残存1肩2.9%に改善した.鎖骨の切除量は平均13.6mmで,術直後から術後5年にかけて切除部間隙は17肩56.7%で狭小化し,11肩36.7%で開大,2肩6.7%で変化なしであった.異所性骨化のような陰影を2肩6.7%に認めた.
  • 宮本 崇, 二村 昭元, 望月 智之
    2017 年 41 巻 2 号 p. 549-551
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     今回我々は,非外傷性上腕骨頭壊死に対して関節鏡支援下にcore decompressionを行う機会を得たので,その治療結果を報告する.対象は3例4肩.全例女性,手術時平均年齢は32歳であった.病期はStage Iが2肩,Stage IIが1肩,Stage IIIが1肩であった.手術は関節鏡補助下にACLドリルガイド用いて上腕骨を穿孔した.術後平均観察期間は31か月であった.術後のX線評価では2例3肩で病期が進行した.JOAスコアは術前平均70.4点から術後84.5点と改善し,特に疼痛スコアが改善した.DASHも術後に全例で改善していた.これらの事から,上腕骨頭壊死に対するcore decompressionは疼痛を改善させるなど臨床症状に置いて一定の効果が認められるものの,骨頭壊死の病期の進行を止める効果があるとまでは言うことはできなかった.
腫瘍
  • 田鹿 佑太朗, 鈴木 昌, 松久 孝行, 小原 賢司, 筒井 廣明, 西中 直也
    2017 年 41 巻 2 号 p. 552-555
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
    【はじめに】5例の棘窩切痕部ガングリオンに対し鏡視下手術を行い,術後成績を報告する.
    【対象と方法】5例5肩(男性4例,女性1例,平均年齢47.5歳)を対象とした.再手術症例が1例あった.主訴は肩関節痛が3例,可動域制限が1例,脱力感が1例であった.MRIでガングリオンを認めた5例中,拘縮,肩鎖関節症をそれぞれ1例ずつ合併していた.手術は肩甲上腕関節内または肩峰下滑液包からガングリオンを除去し,合併病変に対しては,鏡視下に処置を追加した.術前および術後1年でJOA score,Constant Shoulder Scoreを検討した.
    【結果】JOA score,Constant Shoulder Scoreともに改善した.
    【考察】関節唇損傷を伴うガングリオンに対してはone-way valveの破壊のために肩甲上腕関節内からのアプローチは必須であり,さらにガングリオンを完全に取り除き,肩甲上神経を確認し剥離を施行するために肩峰下滑液包からのアプローチを追加することにより術後成績が安定すると考えられた.
その他
  • 土屋 篤志, 竹内 聡志, 鷹羽 慶之, 後藤 英之, 武長 徹也, 杉本 勝正
    2017 年 41 巻 2 号 p. 556-559
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル 認証あり
     右投げと左投げの野球選手の間で肩関節回旋可動域に違いがあるかについて上腕骨後捻角の影響も考慮し調査した報告はない.本研究の目的は右投げ(R群)と左投げ(L群)の野球選手の上腕骨後捻角の影響を除外した肩関節回旋可動域を比較することである.対象は2013年から2016年にメディカルチェックを行った社会人と大学野球選手88名,R群57名,L群31名.原テストのCombined abduction test(CAT),Horizontal flexion test(HFT),肩関節外転位内旋角度,外転位外旋角度と上腕骨後捻角の左右差を計測し,上腕骨後捻角の影響を除外した内外旋(IR,ER)を算出した.HFTはR群で有意に陽性率が高かった.IRはR群では投球側で有意に小さかったが,L群では投球側と非投球側で差がなかったことからR群はL群より後方タイトネスが生じやすい可能性が考えられた.
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