九州歯科学会雑誌
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68 巻, 5-6 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • ─2週間経過観察後の疼痛および下顎運動の変化について─
    宮嶋 隆一郎
    2014 年 68 巻 5-6 号 p. 69-76
    発行日: 2014年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,咀嚼筋痛を有する顎関節症患者に対するスタビライゼーションスプリント療法により,疼痛,下顎運動および咬合状態がどのように変化するかについて検討した. 被験者は,本学附属病院顎関節症科を受診した患者のうち,顎関節症Ⅰ型と診断され,実験の主旨を理解し承諾を 得た8名とした.各被験者に対して上顎型スタビライゼーションスプリント(stabilization splint:SS)を製作し,SS装着前後における前方および側方限界運動距離,咬合状態,visual analogue scale(VAS)による主観的症状消退度,咬筋・側頭筋における圧痛閾値(PPT)を検討項目とした.データ採取は,SS装着直前およびSS装着2週間後に行い,計測結果についてはpaired t-testおよびWilcoxonの符号順位検定を用いて比較検討した. SS装着前後において,前方運動および疼痛側における側方限界運動距離は統計学的に有意に増加した.咬合力, 咬合接触点数,咬合接触面積は,いずれも装着後に減少傾向を示したが,有意差は認められなかった.VAS値は,4 項目のうち,3項目に装着後,有意な減少が認められ,PPTは,装着後に有意な上昇が認められた. 今回の結果より,咀嚼筋痛障害を有する患者に対しSS療法を行うことにより,筋痛が緩和され,下顎運動距離が 増大することがわかった.この変化に伴い,咬合状態も変化することが示唆された.
  • 鯨 吉夫
    2014 年 68 巻 5-6 号 p. 77-83
    発行日: 2014年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル フリー
    顎口腔領域の外傷や脳震盪の予防と軽減のために,マウスガードの装着は有効な手段である.今回の研究は,172 名のスポーツ学部運動部員に対して,所属する競技種目を,マウスガード一部義務化群,マウスガード推奨群,マウ スガード義務化なし群に分類して比較検討した結果,以下のことが明らかになった. 1.マウスガードの使用経験,顎口腔領域の外傷経験,マウスガードの有効性の評価については,3群間において有 意な差が見られた(p<0.05).これらの3項目のスコアは,一部義務化群が最も高く,次いで推奨群,義務化なし群の順であった. 2.競技種目によってマウスガードの認知度や使用経験に差があることが示唆された.顎口腔領域の外傷予防策とし てマウスガードの啓発活動が必要である. 3.マウスガードの装着によって,会話がしにくい・呼吸がしにくいなどの問題点が示された.各競技種目の特性に 合った新しいマウスガードの開発が急務である. 4.バスケットボールとラグビーにおいて,顎口腔領域の外傷経験が多いことが示唆された.練習や試合時にマウス ガードの装着をさらに推奨すべきである.
  • 岩鍋 光希子
    2014 年 68 巻 5-6 号 p. 84-91
    発行日: 2014年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル フリー
    鼻呼吸は本来人間の生理的な呼吸様式であるが,鼻炎等により鼻閉が生じると正常な鼻呼吸が障害され,頭痛,疲労感,睡眠障害,日中の眠気,注意力の低下等によりQOL(生活の質)が低下すると報告されている.本研究では常時鼻呼吸者の鼻孔を鼻栓で閉塞することで実験的口呼吸を作り出し,鼻呼吸および口呼吸における課題の作業能率について比較検討することにより,口呼吸が集中力あるいは注意力の低下にどの程度関与しているかについて検討した. 通常の呼吸様式が鼻呼吸と判定された27名の成人を対象にストループカラーワードテストを,34名に内田クレペリンテストを実施した.鼻栓をした実験的口呼吸時を実験群とし,何も行わない鼻呼吸時を対照群として,この2群間で比較検討した.評価項目はストループカラーワードテストが反応時間と誤答数,内田クレペリンテストは全平均作業量,前半平均作業量,後半平均作業量,後半開始5行平均作業量および特定行誤答数とした. 1.ストループカラーワードテストでは,対照群に比べ,実験群の方が誤答数の増加傾向,反応時間が延長することが分かった.2.内田クレペリンテストにおいては全平均作業量,前半平均作業量,後半平均作業量,後半開始5行平均作業量が,対照群に比べ実験群の方が有意に減少した.これにより,通常の呼吸様式が鼻呼吸の者が,一時的に口呼吸になることで作業能率が低下することがわかった. 今回の研究から実験的口呼吸は,集中力および注意力の低下に影響し,作業能率の低下につながる可能性が示唆されたが,今回の結果は,一時的な口呼吸になった場合であり,常在的口呼吸者に当てはまるかどうかについては,今後研究を続けていかねばならない.
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