光重合型コンポジットレジンは,最も使用されている修復材料で,近年では,軟化象牙質の石灰化機能を有する光重合型フッ素徐放性コンポジットレジンが注目されている.本研究では,光重合型フッ素徐放性コンポジットレジ「Unifil^[○!R] F」ンと光重合型ボンディング材「UniFil^[○!R] Bond」を乳歯の修復に用い,3年6か月間臨床的観察を行った.乳前歯では3年6か月経過後に修復物が脱落した症例が1例,ギャップおよびステップを認めた症例は経年的に増加し6例であった.乳臼歯では,辺縁破折のみられる症例は1例であったが,探針による触診でステップを認めた症例が経年的に増加し4例であった.辺縁部に着色のみられた症例は,乳前歯で4例,乳臼歯では3例であった.乳前歯修復では,修復時を比較して形態的変化はみられず,良好な経過を示したが,乳臼歯では,修復直後の形態を比較し肉眼的に一部変化を認める症例が4例みられた.修復物の変色および着色,歯髄反応,二次齲蝕の発症はみられなかった.走査型電子顕微鏡による観察では,乳前歯修復物の表面性状は比較的滑らかであったが,辺縁部では歯質との不適合部分が認められた.乳臼歯修復では,経年的に表面が粗造になり,辺縁部ではわずかに破折している像が観察される症例も認められた.以上の結果,臨床的診査及び走査型電子顕微鏡的観察において概ね良好な経過を示しているが,経年的に歯質と修復材料の接合に不適合な部分の増加が認められた.
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