空力学の諸問題を扱った数値シミュレーションにおいては, 広大な現実の空間に比べ計算機の中で扱うことのできる領域は高々有限であるため, 計算対象となる空間の打ち切りが必要となる.このとき, 打ち切られた断面という人工的な境界が生じてしまうが, そのような人工的な境界上で特別な取り扱いをしなければ, 現実には存在しない反射波が生成されてしまい, 現実的な解を得ることはできない.そこで, 無反射境界条件, すなわち, 人工的な境界上で反射が起こらないようにするための境界条件の設定が重要となる.無反射境界条件は既にいくつか提案されているが, 特にPoinsot-Leleの境界条件は, その頑健性と実装の容易さから現在広く利用されている手法のひとつとなっている.しかし, Poinsot-Leleの手法の基礎となったThompsonの境界条件の有効性が理論的に保証されているのは波が境界に対して垂直に入射している場合のみである.この問題点は以前から指摘され, その改善が望まれていた.本論文ではこの要望に答える.すなわち, 数値計算時のデータを利用することによって, 流れの向きに対する仮定をおかないEuler方程式に対する無反射境界条件を提案し, そのNavier-Stokes方程式への拡張法について述べる.
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