任意の渦度分布をもつ流れの場に音波が入射したときの散乱問題が考察され, 散乱波の振幅の一般公式が示される.渦度場の非定常性が弱いときには, 散乱振幅は, 入射波の方向
n0, 散乱波の方向
nおよび渦度場ω, の関数
f (
n,
n0, ω) として表現される.ωへの依存性は波数
k=
k0 (
n-
n0) をもつωのフーリエ成分のみに比例する形で表される (
k0は入射波の波数).散乱振幅は相反関係
f (
n,
n0, ω) =
f (-
n0, -
n, -ω) をみたす.この性質は, 散乱過程のエネルギー保存性と線形性および時間反転不変性とから一般的に導くことができる.具体例として, 細い渦核の渦輪およびHillの球形渦による散乱が解析され, 両者が比較される.また2次元の散乱問題も考察される.散乱振幅の一般公式が導かれ, いくつかの具体例 (渦糸, 渦対, 渦列等) に適用される.すでに知られているものについては結果が比較される.また他の分野の散乱問題との関連も述べられる.
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