著者らは過去に有限深さ流路内の2次元丘陵地形を過ぎる安定成層流 (0<
K≦3) に関して, 差分法に基づいた直接数値シミュレーション (DNS) とラージ・エディ・シミュレーション (LES) を行い, 地形周辺流れを詳細に検討してきた.ここで,
Kは無次元成層パラメータで
K=
NH/π
U, Nはブラントバイサラ振動数,
Hは流路深さ,
Uは地形への一様近寄り流速,
hは地形高さである.これらのシミュレーションでは丘陵地形の表面にのみ粘着条件を課し, 地形を除く上流と下流の地面上と流路の上部境界上には滑り条件を課した.これは地形以外の境界上に発達する境界層や地形背後に形成される剥離泡 (再循環領域) からの大規模渦放出の影響を避け, より単純化した状況にあるcolumnar disturbanceや風下波の挙動について調べるためである.これにより丘陵地形周辺に出現する非定常流れのメカニズムを解明した.
本研究では地面粘着条件を考慮してReynolds数
Re=2000でDNSを行った.速度場, 一様流速
Uからのずれを表す速度場, 渦度場に対する可視化を行い, 地形の抗力係数の時系列などを示した.これらの計算結果を用い, 特に弱安定成層流れ (0≦
K≦1) において, 地形背後の非定常な剥離・再付着現象に対する安定成層の効果を解明した.また強安定成層流れ (1<
K≦2) においては, 地形上流と下流地面上に滑り条件を課した過去の研究と同様, 丘陵地形周辺に出現する非定常流れとcolumnar disturbanceの挙動との関係を明らかにした.
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