この研究は, 温水浴が人の静脈血中のα-Atrial Natriuretic Peptide (ANP), cyclic GMP, Arginine Vasopressin (AVP), plasma Renin Activity (PRA) および Aldosterone におよぼす急性効果について検討した。10名の健常な男性 (平均年齢: 20.5歳) で40℃の入浴を, 安静座位で10分間行った。ANPは前値の19pg/mlから, 温浴10分目に最高値34pg/mlへと有意に上昇した (p<0.001)。これは, その後の20分のあいだ有意に増加していたが, 次第に減少して, 50分目には入浴前のレベルに回復した。C-GMPはANPとよく似た時間経過の反応を示した。また, 両者には有意の正相関がみられた (p<0.001)。AVPは水浴の直後には変化はなかったが, 20分後に上昇する傾向がみられた。PRAと Aldosterone は前値からの変化率で, ANPより少し遅れて15から30分後に上昇したが, その変化度の有意性はANPより低かった(p<0.05)。これらの結果から, 水浴によるANPの分泌は, 中心静脈血量の増加の持続時間が短くても, 温熱刺激によって増強されると思われた。水浴によるAVPやレニン-アルドステロン系への抑制効果はわずかであったが, 逆に, 温浴ではそれらの反跳的な上昇をもたらした。C-GMPはANPの変化と密接に関連する指標の一つであると考えられる。
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