センキュウ乾燥エキス, トウキ乾燥エキスを用いた入浴の末梢循環動態に及ぼす影響について, ヒト前腕皮膚血流量, ウサギ皮下組織流量と組織ガス分圧, 並びにヒト全身浴後の温度について検討した。また, ウサギ皮下組織流量とヒト全身浴後の保温効果については生薬乾燥エキスと二酸化炭素浴剤の併用効果についても検討を加えた。
ヒト前腕皮膚血流量はレーザードップラー血流計を用いて測定した。センキュウ乾燥エキス浴, トウキ乾燥エキス浴ともに顕著なヒト前腕皮膚血流量の増加を示した。
ウサギ皮下組織流量と組織ガス分圧は, 医用質量分析装置を用いて測定した。組織流量は, 水道水浴では, 20.84±1.68ml/100g/min (平均±S.E., N=22), 生薬乾燥エキス浴では, 22.45±1.61ml/100g/min (平均±S.E., N=12), 人工二酸化炭素浴剤浴では, 23.36±1.40ml/100g/min (平均±S.E., N=16), 併用浴では, 24.69±1.59ml/100g/min (平均±S.E., N=13) と, 併用浴, 人工二酸化炭素浴剤浴, 生薬乾燥エキス浴, 水道水浴の順で組織流量が高かった。ウサギ腹部皮下組織ガス分圧 (pO
2, pCO
2) は, 人工二酸化炭素浴剤浴の場合においてはpCO
2ならびにpO
2の上昇が認められたが, 生薬乾燥エキス浴では, 組織ガス分圧に変化は認められなかった。
サーモグラフィーにより保温効果を検討した。健康な成人男性12人 (年齢21~32歳) を対象とし, 40℃の湯に入浴後の皮膚温を比較した。人工二酸化炭素浴剤浴に比べ, 生薬乾燥エキス浴では皮膚表面温が高く, 身体がよく温まっていた。
今回の結果は, 生薬の保温作用は二酸化炭素のように血流増加作用のみに起因したものではなく, 何らかの別の作用機序によるものであることを示唆している。
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