日本温泉気候物理医学会雑誌
Online ISSN : 1884-3697
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80 巻 , 2 号
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Editorial
総説
  • 尾山 純一, 野出 孝一
    2017 年 80 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    近年PM2.5による健康被害について注目が集まっている.黄砂だけでなく中国のめざましい産業発展に伴う工場や自動車などによる大気汚染は,中国の東に位置する日本に住んでいる我々にとって,他人事ではなく逃げられない脅威ですらある.最近ではTVの天気予報でもPM2.5濃度予想まで行われるようになっており,もはや総国民の関心事となっている.そこで,PM2.5など大気汚染物質の健康,特に心肺疾患への影響について現在までに明らかになっている知見をまとめてみたい.

原著
  • 森 康則, 犬飼 健自, 一色 博, 今井 奈妙
    2016 年 80 巻 2 号 p. 66-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/30
    [早期公開] 公開日: 2016/11/07
    ジャーナル フリー

    目的:ヒノキに代表される木質の建築資材は,利用者のリラックス感を促進すると考えられている.本研究では,三重県産ヒノキで作られた浴槽に入浴する者の自律神経機能と感情尺度の変化に着目して,その仮説の科学的な検証を試みた.

    方法:被験者には,健常成年16名を選定した.被験者1人につき,入浴介入を2回行った.1回の入浴は通常のユニットバスでの入浴とし(対照実験),もう1回の入浴はユニットバスと同一形状に設計されたヒノキで作られた浴槽での入浴とした.入浴介入前に唾液の採取と主観的感情尺度(MCL-S.2)の測定,入浴介入後にも唾液の採取と主観的感情尺度(MCL-S.2, VAS)の測定をそれぞれ行った.また実験を通じて,胸部に防水機構付きのホルター心電計を装着し,データを採取した.

    結果および考察:MCL-S.2による感情尺度評価の結果,ヒノキ製浴槽への入浴前後の「快感情」で,有意なスコア上昇が認められた.加えて,VASによる感情尺度評価の結果,ヒノキ製浴槽の入浴後の方が,対照実験後のそれに比べて,「疲労感」のスコアが有意に低い値が得られた.このことから,ヒノキ浴槽における入浴の「快感情」の促進効果と,「疲労感」の軽減効果が示唆された.また,唾液中コルチゾールの各入浴介入前後の比較の結果,いずれの入浴介入においても入浴後の有意な濃度低下が認められた.また,入浴直前と入浴後安静における副交感神経指標である√HFの比較を行ったところ,いずれの入浴介入においても,有意に高い値に推移していることが明らかになった.これらの結果から,いずれの浴槽材質の入浴であっても,本研究で設定した入浴条件(38~39℃15分間)であれば,入浴行為そのものによっても副交感神経が優位となる傾向が示された.

  • 笹﨑 静雄, 山田 英次, 倉林 均, 菱沼 亜紀子, 田村 遵一, 久保田 一雄
    2017 年 80 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    【背景】温泉吸入療法と蒸気浴療法は欧州で幅広く行われているが,日本の温泉療法では肩までの全身入浴が一般的である.私たちはアレルギー性鼻炎に対して岩盤蒸気浴と露天風呂の全身入浴を組み合わせた温泉療法を考案した.

    【方法】春季花粉飛散期の数日間に本温泉療法を行ったアレルギー性鼻炎19例に対して匿名のアンケート調査を行った.対象者は41℃のサイボク温泉(ナトリウム-塩化物泉)の露天風呂に10分間座位で肩まで入浴し,次に温泉蒸気の充満する部屋で,小石を敷き詰めた床の上に20分間仰臥位となり,その後再び露天風呂に10分間座位で肩まで入浴し,最後に休憩室の椅子に座って20分間過ごした.床にはトルマリン石と石灰岩を含む小石を敷き詰め,小さな穴のあいた金属管を埋め込み,その中を温泉水が循環している.温泉水から放出された蒸気は床を通って室内に充満する.岩盤蒸気浴室の温度は40℃で湿度は75%であった.

    【成績】臨床症状は19人中17人で改善した.鼻水・鼻詰まり,眼のかゆみ,くしゃみ,咽頭痛は,本温泉療法前と比較して,それぞれ100%,75%,40%,100%の対象者で軽快した.副作用はみられなかった.

    【考察】岩盤蒸気浴と露天風呂入浴を組み合わせた温泉療法はアレルギー性鼻炎の局所症状および全身症状を軽減するのに有用と思われる.

  • 矢野 忠, 廣 正基, 今西 二郎, 宮田 昌明, 前田 修作, 中西 修平, 米田 真康, 河野 修興
    2017 年 80 巻 2 号 p. 80-92
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    [早期公開] 公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】人の入浴習慣は,居住している国のそれに影響されると言われている.その一端を検証するために京都在住日本人とロサンゼルス在住日系米人の入浴習慣について調査した.

    【方法】対象は京都在住日本人488人とロサンゼルス在住日系米人539人とした.入浴習慣の調査項目は,(1)バスタブ入浴およびシャワー浴の頻度(週当たりの回数)・入浴時間帯(朝・昼・晩),(2)他の入浴方法,(3)入浴時間とした.集計は単純集計とクロス集計とし,単純集計には95%信頼区間を算出し,併せてカイ二乗検定を行った.調査は京都では2013年12月,ロサンゼルスでは2010年10月に実施した.

    【結果】(1)バスタブ入浴の割合:日本人は92.8%(453/488人)に対して日系米人は56.0%(302/539人)であり,日本人が36.8ポイント多かった.(2)シャワー浴の割合:日本人は71.7%(350/488人)に対して日系米人は82.6%(445/539人)であり,日系米人が10.9ポイント高かった.(3)バスタブ入浴の頻度別と時間帯別:頻度別では両群とも「ほぼ毎日」が最も多く,次いで「1日おき程度」であった.時間帯別は両者とも「晩」が最も多かったが,日系米人では「朝」も21.8%を占めた.(4)シャワー浴の頻度別と時間帯別:頻度別で最も多かったのは,日本人では「それ以下」で48.0%,日系米人では「ほぼ毎日」で78%を占めた.時間帯別では,日系米人が「朝」と「晩」に分かれたが,日本人では「晩」に集中した.(5)入浴時間:最も多かった入浴時間は,日本人では「26~30分以内」に対して日系米人では「6~10分以内」であった.

    【考察】日系米人はシャワー浴が主で朝や晩の短時間の入浴であったことから,身体の清潔保持が入浴の目的であると考えられた.一方,日本人はバスタブ入浴が主で晩にゆっくりと入浴することから,身体の清潔保持および癒しや疲労回復等の健康維持・増進が入浴の目的であると考えられた.この相違は同じ日本人であっても居住地の国の入浴習慣の影響によると考えられた.

    【結語】日本人と日系米人の入浴習慣は,入浴様式,入浴時間帯,入浴時間において異なっていた.

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