目的:ラドン(
222Rn)は希ガスであり、温泉成分のひとつである。温泉法および鉱泉分析法指針(改訂)では、74 Bq/kg以上のラドンを含むものを「温泉」、111Bq/kg以上のラドンを含むものを「療養泉」「放射能泉」と規定されている。県内でも有数の温泉保養地を擁する菰野町には、数多くの放射能泉が湧出している。今後、温泉による地域活性化のためには、これらの放射能泉の利用による安全性と効果を確認しておく必要がある。放射能泉の利用による実効線量を評価するためには、空気中、特に浴室のような高湿度の空気中ラドンの存在実態を把握する必要がある。
方法:乾燥剤(Drierite 8メッシュの硫酸カルシウム W.A. Hammond Drierite Company製)を付属した活性炭型検出器(PICO-RAD AccuStar製)および液体シンチレーションカウンタ(LSC LB-5 日立アロカメディカル製)を使って空気中ラドンを測定した。DPO+POPOPトルエン溶液(和光純薬製)はシンチレータとして使用した。活性炭検出器は、放射能泉利用施設内および施設周辺に設置した。
結果および考察:放射能泉利用施設内の空気中ラドン、浴室内および脱衣所内が約50 Bq/m
3と高く、全ての階の廊下や客室、入口では10〜30 Bq/m
3であった。温泉水中のラドンが施設内全体に移動し、充満したものと考えられる。施設の屋外では、温泉の湧出口付近のキャンプ場で12.5 Bq/m
3であった。
本研究により得られたデータを用いて、実効線量は1泊2日でその間に数時間の入浴を行う利用客を想定して計算した。これらの結果から、放射能泉の利用に伴う実効線量は、日常的な一般環境からの被ばくや医療被ばくに比べて充分に低いことが示された。これらの結果からこの温泉利用施設のラドンの安全性および活用可能性が示唆された。
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