日本温泉気候物理医学会雑誌
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63 巻, 3 号
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  • 芦田 耕三, 光延 文裕, 御舩 尚志, 保崎 泰弘, 柘野 浩史, 岡本 誠, 原田 誠之, 高田 眞吾, 谷崎 勝朗, 越智 浩二
    2000 年 63 巻 3 号 p. 113-119
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    気腫化傾向の見られる気管支喘息17例 (喫煙例11例, 非喫煙例6例) に対する温泉療法の臨床効果について若干の検討を加えた。なお, 気腫化傾向の評価は high resolution computed tomography (HRCT) 上の-950HU 以下の low attenuation area (LAA) で行い, 今回は%LAAが20%以上を示す症例を気腫化傾向が見られる症例として選んだ。
    1. 拡散能 (DLco) は, 喫煙歴の有る症例で, 無い症例に比べて有意に低い値を示した。しかし, FVCやFEV1.0などの値は喫煙群, 非喫煙群の間に有意の差は見られなかった。
    2. 平均%LAAは, 喫煙群において, 非喫煙群に比べ高い傾向が見られたが, 両者間に有意の差は見られなかった。
    3. FVC値 (%predicted) は, 喫煙群において, 温泉療法により有意の改善が見られたが, 非喫煙群では有意の改善は見られなかった。FEV1.0値は, 喫煙群, 非喫煙群とも温泉療法により上昇する傾向が見られたが, 療法前と比べて有意の差はでなかった。
    4. 平均%LAAは, 非喫煙群において, 温泉療法により有意の低下傾向を示したが, 喫煙群では有意の低下は見られなかった。
    以上の結果より, 喫煙による%LAAの増加に対しては, 温泉療法は奏効しにくいことが示唆された。
  • 光延 文裕, 御舩 尚志, 保崎 泰弘, 芦田 耕三, 柘野 浩史, 岡本 誠, 原田 誠之, 高田 眞吾, 谷崎 勝朗, 越智 浩二
    2000 年 63 巻 3 号 p. 120-126
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    肺気腫に対する温泉療法の臨床効果を, IgE系反応の有無との関連のもとに検討を加えた。
    1. IgE系反応が関与していると判断される症例では, 白血球のロイコトリエンC4産生能は, 温泉療法の有効例で無効例に比べ有意に高い傾向が見られた。IgE系反応が関与しない症例では, 温泉療法の効果とは関係なく, 全般的にロイコトリエンC4産生能は低い傾向であった。ロイコトリエンB4産生と, IgE系反応の関与の有無との間には有意の相関は見られなかった。
    2. IgE系反応の関与が見られない症例では, 温泉療法有効例で無効例と比べDLco値が有意に高く, またRV値は有意に低いことが示された。
    3. 温泉療法が有効で, かつIgE系反応が関与する症例では, 温泉療法後に平均%LAAの有意の減少が見られた。IgE系反応の関与しない症例では, 温泉療法による%LAAの変動は見られなかった。
    以上の結果より, 肺気腫に対する温泉療法の臨床効果は, IgE系反応の関与の有無とある程度関連していることが示唆された。
  • 伊藤 不二夫
    2000 年 63 巻 3 号 p. 127-137
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Thirty-one outpatients with acute low back pain were all educated about activities of daily living. They also received spinal manipulation and SSP (TENS), and took NSAID for a certain period of time. Half of them were additionally exposed an electric field using HEAL THTRON, an electric field therapeutic decice, in order to analyze its efficacy.
    The patients were randomly divided (non-blind test) into two groups. Those who received ordinary treatment were called the Non-HEALTHTRON group (NH-group); those who received HEALTHTRON treatment in addition to ordinary treatment were called the HEALTHTRON Treatment group (H-group). During the 15-day study period, the patients were subjected to a total of four electric field exposures using HEALTHTRON. Efficacy of the treatment was measured as an objective evaluation by measuring range of motion (ROM) using an inclinometer, and Peak torque and Total work using a dynamometer. A subjective evaluation was performed using the Oswestry Low Back Pain Disability Questionnaire, ADL pain questionnaire, Visual analog scale for Patient global assessment, VAS (Patient) and Visual analog scale for Physician global assessment, VAS (Physician). After ordinary treatment, significant improvement was found in all 31 patients with acute low back pain. The VAS (Physician), ADL pain questionnaire and ROM were more significantly improved in the H-group than in the NH-group.
  • 堀切 豊, 下堂園 恵, 王 小軍, 田中 信行
    2000 年 63 巻 3 号 p. 138-142
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Treadmill exercise tolerance test(Modified Bruce Method) was performed with and without warm water bathing (WWB, 41°C, 10min) in 14 healthy aged men and women over 65y. o. (68.6±6.0y.o).
    Increase in HR, BP and PRP during exercise was reduced after WWB. Duration of exercise and ST depression and occurrence of arrythmia during treadmill exerecise were significantly improved after WWB. Fatigability of the legs and Borg's index were also decreased aftr WWB. These results indicated the improvement of exercise tolerance after WWB was probably due to the increase in cardiac functions and collagenous viscosity (extensivility) of the musculoskeletal system.
  • 前田 真治, 辻 隆子, 佐々木 麗, 頼住 孝二, 大渕 修一, 長澤 弘, 柴 喜崇, 外 須美夫
    2000 年 63 巻 3 号 p. 143-150
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    温熱療法による疼痛軽減効果の客観的報告は少なく, 温熱刺激が直接作用しているのか, 体循環などを介し間接的にも作用するのかも明らかでない。そこで間接的温熱刺激も疹痛緩和に効果があるのかを知る目的で, 健常者を対象に電流知覚閾値をAβ・Aδ・C線維に分けて検査できるCPT (Current Perception Threshold) 装置を用いて測定した。
    方法は左上肢を除いた全身温浴で, 直接加温は右第2指, 間接加温は左第2指を測定部位に, 施行前・直後・15分後に閾値を測定した。また, ホットパックを用いた局所直接加温も行い対照とした。
    結果, 直接全身加温および局所加温時, Aβ・Aδ・C線維すべて施行直後に閾値の上昇を認めた。間接加温では, 各繊維の閾値に変化はなかった。
    従って, 間接加温では効果がなく, 直接加温で知覚閾値が上昇し, その際, Aβ・Aδ・C線維すべての閾値上昇が関与していることが示唆された。
  • 対照実験を併設して
    北田 仁彦, 宛 文涵, 松井 恒二郎, 松井 健一郎, 清水 昌寿, 山口 宣夫, 大川 尚子
    2000 年 63 巻 3 号 p. 151-164
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    著者らは宿主の免疫能の後天的調整法として, 運動療法や温泉療法による調節の可能性を検討している。今回, 短期の温泉浴を実施し, 末梢白血球数及び白血球亜群それにCD陽性細胞の変動を量的・質的に検討した所, 短期温泉浴によって白血球亜群や免疫担当細胞亜群が量的及び質的に調節を受ける事が判明した。本報告ではボランティアにおける末梢白血球亜群の占有率により顆粒球70%以上を顆粒球型, そしてリンパ球40%以上をリンパ球型として分け, 調節方法を検討した所, 過剰な分布を占す亜群は減少的調節を又, 過少な亜群は増加する方法で各亜群の比率を適正化することが示されたので報告する。また, この様な短時間内調節の可能性を調べる為, 安静時における変化及び温泉浴に匹敵する歩行運動時の変化を陰性及び陽性対照実験として設定した。
    18~81歳までの健常ボランティア延べ126名について温泉浴の前日15時 (1997年12月28日, 1999年6月2日) と翌日15時に末梢より静脈血を採取した。
    CD陽性細胞と白血球亜型の検出: 白血球数及び亜型の分布率は常法に従い形態的手法を用いてヘモサイトメーターにより算出した。CD陽性細胞はCD2, CD4, CD8, CD16, CD19それにCD56モノクローナル抗体に螢光色素を結合させ, 反応後洗浄し, FACScanにて測定した。サーカディアンリズムによる白血球の日内変動が報告されているので, 温泉浴の前日と翌日において同一時間帯に採血して測定した。白血球総数, 顆粒球, リンパ球, 単球等の主要白血球亜群の増加あるいは減少に関して, 参加者間において多様な変動が示された。しかし年齢と増減に関する2要素間では有意な相関が認められた。即ち, 35歳を境界として若年層は減少的調整を又, 加齢層は増加的な調節を受けていた。この傾向は白血球亜群, 即ち顆粒球, リンパ球そして単球いずれにおいても観察された。次ぎにリンパ球をT細胞, B細胞, NK細胞に亘って精査するため, CD陽性細胞をCD2, CD4, CD8, CD16, CD19それにCD56別に網羅した結果, CD8を除くすべての陽性細胞は白血球及びその亜群同様, 年齢と細胞数増減率の間に正の相関を示した。
    次ぎに初日の細胞数と翌日の細胞数の変動を同様に白血球, その亜群, リンパ球及び亜群別に測定した。その結果, 初日細胞数の多い被検者は減少的な調節を受け, 細胞数の少ない被検者は増加的な変動を示した。この様な調節は短期の温泉浴時にみられる metabolic rate 値; 3~4 mets と同様の歩行運動負荷時にも認められた (4km, 1時間歩行)。しかし4kmを30分で踏破する7~8 mets の負荷では調節作用は減衰した。特にCD2, CD4及びCD8のT細胞系において相違が認められた。
    また測定初日において全白血球数の内, 顆粒球が70%以上の被検者を顆粒球型, 逆にリンパ球が40%以上を占める被検者をリンパ球型と分類し, 翌日のリンパ球亜群の変動を測定した。その結果, 顆粒球型は顆粒球の割合が著減し, リンパ球の割合が増加した。一方リンパ球型は逆にリンパ球と顆粒球が増加した。
    初日のサイトカイン保持細胞数と翌日の同細胞数の変動を測定したところ温泉浴前後における INF-γ, IL-4及びIL-1β保持細胞数はいずれも負の相関を示し, IL-4保持細胞のそれは統計的に有意であった。
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