慢性閉塞性呼吸器疾患に対して温泉療法は有効であるが, その有効性は疾患の病態によりかなりの差が見られる。本稿では, 慢性閉塞性呼吸器疾患の1つである気管支喘息を中心に, 温泉療法の作用機序について若干の検討を加えた。
気管支喘息に対して温泉療法は有効であるが, 患者年齢, 気道内炎症反応の程度および喘息の病態により, その有効率はかなり異なる。そして, 全般的には, 41歳以上の年齢, 明らかな気道炎症反応が見られる症例 (炎症細胞では, 気管支細胞洗浄 (BAL) 液中特に好中球や好酸球の増加が見られる症例), また気管支喘息の臨床分類では, 過分泌型 (Ib型: BAL液中好酸球増加が特徴) や細気管支閉塞型 (BAL液中好中球の増加が特微) などにおいて, 温泉療法の有効性が高い。これらの臨床的観察より, 温泉療法の作用機序としては, 以下のようなものがあげられる。
1. 温泉療法の直接作用
気道に対する温泉療法の直接作用として, 自覚症状の改善, 換気機能の改善, 過分泌の抑制, 気道過敏性の低下などが観察される。
2. 温泉療法の間接作用
気道以外の臓器に対する温泉療法の間接作用として, 血清IgGの低下, リンパ球サブセットへの影響 (CD4+リンパ球の増加, CD8+リンパ球の減少, CD4+/CD8+比の上昇, CD23+リンパ球の減少), 血中アドレナリン, ノルアドレナリンの減少, 低下した血清コーチゾール値の上昇, 全身状態の改善, などが観察される。
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