膵臓
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38 巻, 2 号
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特集 膵癌診療ガイドライン2022改訂のポイント
  • 奥坂 拓志, 北野 雅之
    2023 年 38 巻 2 号 p. 93
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり
  • 奥坂 拓志, 中村 雅史, 吉田 雅博, 北野 雅之, 伊藤 芳紀, 水野 伸匡, 花田 敬士, 尾阪 将人, 森實 千種, 竹山 宜典, ...
    2023 年 38 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    膵癌診療ガイドラインが3年ぶりとなる2022年7月に改訂・出版された.本ガイドラインの改訂にあたっては,多職種の専門家や患者・市民などの総勢140名体制で議論と修正を重ね,ガイドライン作成の指針となる「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に従って作業が行われた.本改訂ガイドラインでは前半部分に総論を設けて十分なコンセンサスが確立していると考えられる内容を紹介し,後半では議論の余地が残る重要臨床事項を厳選し,診断,治療,化学療法,プレシジョンメディスンの各アルゴリズムとともに,73のクリニカルクエスチョン(CQ)と112のステートメントを記載した.患者・市民委員4名と医療者4名からなる患者・市民グループがこれらの作成に多角的に参画した点は本改訂の特記事項の1つと考えられる.

  • 北野 雅之, 花田 敬士, 松林 宏行, 菅野 敦, 鎌田 研, 祖父尼 淳, 芹川 正浩, 高山 敬子, 井上 大, 川井 学
    2023 年 38 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    膵癌診療ガイドラインが2022年に改訂された.診断法では,2019年版と比較して,クリニカルクエスチョン(CQ)に挙げられていた3項目を総論で紹介し,プレシジョンメディスンを含む10項目のCQ,1項目のコラムが追加された.総論で述べられていたリスクファクターから糖尿病,慢性膵炎,膵管内乳頭粘液性腫瘍,遺伝性リスクに関する新規の4項目のCQを作成した.また,健診,検診,人間ドックの果たす役割に関するコラムを追加した.一方,膵癌の診断において造影CTの有用性や有害事象はすでに一般的に知られているため,総論で述べることとなった.診断アルゴリズムのなかで,腹部超音波はファーストステップとして行うこととし,膵全体の描出に限界があることを明記した.病理診断全体の有用性に関するCQは総論へ移行する一方で,腹部超音波ガイド下穿刺生検および遺伝子異常診断目的の針生検に関する2項目のCQを追加した.

  • 森實 千種, 松林 宏行, 金井 雅史
    2023 年 38 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    『膵癌診療ガイドライン2022年版』では,新たにプレシジョンメディスングループが設置され,診断(D4~D8),治療(LC4/MC4)についてCQやステートメントが作成された.家族性膵臓癌の概念から,がん素因遺伝子やサーベイランスに関する研究が進み,膵癌では生殖細胞系列の遺伝子検査が弱く推奨される(D6).治療に関しては,POLO試験において,生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異を有する患者に対するプラチナレジメン後の維持療法としてオラパリブによる無増悪生存期間延長効果が示された(D6,LC4/MC4).近年,がん遺伝子パネル検査が臨床導入され(D5,D5L),二次的所見としての生殖細胞系列病的バリアントの検出につながり(D7/D8),ゲノム診療のインフラの整備が重要である.現状では,エビデンスは不十分な領域でありいずれも弱い推奨にとどまるが,社会的ニーズが極めて高い.

  • 池永 直樹, 井岡 達也, 江口 英利, 大塚 隆生, 尾上 俊介, 川井 学, 庄 雅之, 杉浦 禎一, 仲田 興平, 中村 聡明, 藤井 ...
    2023 年 38 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    膵癌診療ガイドラインが2022年7月に改訂・出版された.外科的治療法グループ・補助療法グループは,3項目のCQ(RO8,LA1,MO2)を新設,2項目のCQ(RO5,RO6)を変更,2項目のCQを廃止し,計20項目のCQを設定した.ステートメントは5項目のCQ(RO2,RO5,RO6,RO9,LO1)で変更した.ロボット手術やconversion surgeryの意義を問うCQが設定されるなど,実臨床の変化に対応した内容となっている.本ガイドラインの普及により膵癌の治療成績が向上することを期待する.

  • 伊藤 芳紀, 中村 聡明, 大栗 隆行, 染谷 正則, 篠藤 誠
    2023 年 38 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    『膵癌診療ガイドライン2022年版』の放射線療法分野は局所進行切除不能膵癌に対する一次治療のCQを含めて9つのCQが設定された.局所進行切除不能膵癌に対する一次治療のCQでは2019年版と同様に化学放射線療法と化学療法単独が並列で提案された.化学放射線療法前の導入化学療法のCQについては,2019年版と異なり,ゲムシタビン塩酸塩による導入化学療法を行わないことが提案された.新たなCQとして,局所進行切除不能膵癌に対する高精度放射線治療(強度変調放射線治療,体幹部定位放射線治療,粒子線治療)とハイパーサーミアの2つの項目が設定され,高精度放射線治療を用いた線量増加を行うことが提案された.膵癌の遠隔転移・再発巣に関して,2019年版と同様に局所再発・所属リンパ節と肺転移に対して放射線療法を行うことが提案された.

  • 水野 伸匡, 井岡 達也, 上野 誠, 尾阪 将人, 染谷 正則, 奥坂 拓志
    2023 年 38 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    『膵癌診療ガイドライン2022年版』の化学療法においては,2019年版と同様に局所進行例に対する一次化学療法(LC1),局所進行および遠隔転移例に対する二次化学療法〔LC2(MC2)〕,遠隔転移例に対する一次化学療法(MC1)をCQとして設定した.従来CQとしていた切除不能膵癌に対する化学療法の期間を総論に移行し,新たに高齢者の切除不能膵癌例に対する一次化学療法としてCQ〔LC3(MC3)〕を設定した.切除可能境界膵癌に対する術前補助療法については新たなCQ(BA1)として設定した.各々のCQに対して改めてシステマティックレビューと必要に応じてメタアナリシスを実施し,推奨を決定した.

  • 花田 敬士, 糸井 隆夫, 加藤 博也, 伊佐山 浩通, 中井 陽介
    2023 年 38 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
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    前回の『膵癌診療ガイドライン2019年版』では,①切除不能膵癌に対する胆道ドレナージのアプローチルート,②閉塞性黄疸を伴う術前膵癌に対する胆道ドレナージ,③閉塞性黄疸に伴う切除不能膵癌に対する胆道ドレナージ,④消化管閉塞をきたした切除不能膵癌に対する治療法の選択が,Clinical Question(CQ)として取り上げられた.今回の改訂では,現在の臨床的課題を再検討し,⑤胆道ステント留置に伴う急性膵炎・胆嚢炎に対する対応,⑥自己拡張型メタリックステント(SEMS)が閉塞した際の対応,⑦消化管閉塞及び閉塞性黄疸をきたした膵癌に対する胆道ドレナージのアプローチ法,⑧閉塞性黄疸を合併した切除不能膵癌に対して化学療法,放射線療法を行う際のSEMSの適応が取り上げられた.慎重な検討・協議の結果,⑤~⑧のうち⑦⑧はCQを設定し,⑤⑥はコラムとした.2022年版は,6つのCQと2つのコラムで構成される.

  • 尾阪 将人, 上村 恵一, 田上 恵太, 辻 哲也, 森 雅紀, 横川 貴志, 親川 拓也, 光永 修一, 藤森 麻衣子, 坂本 はと恵, ...
    2023 年 38 巻 2 号 p. 138-146
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
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    膵癌は多くの症例が切除不能で発見され,診断時には多様な症状が出現しうることから,早期からの症状緩和やQOL向上を目指した介入が必要となる.『膵癌診療ガイドライン2022年版』では,膵癌診療における早期からの緩和治療に必要なアプローチに対する臨床課題〔膵癌患者・家族に対する精神・心理的ケアやアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP),コミュニケーション技術研修の有用性〕と,膵癌診療における症状緩和(疼痛管理,末梢神経障害対策,悪液質,血栓症,腹水管理)についての臨床課題(CQ)を設定した.いずれのCQも十分なエビデンスはないものの,膵癌診療において重要な臨床課題と考えられ,系統的なシステマティックレビューを行うことで推奨を示した.

原著
  • 佐藤 克彦, 重川 稔, 吉岡 鉄平, 山本 修平, 松前 高幸, 木積 一浩, 佐藤 悠, 岡部 純弥, 小玉 尚宏, 疋田 隼人, 巽 ...
    2023 年 38 巻 2 号 p. 147-157
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
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    腫瘤を伴わない膵管狭窄や限局性膵萎縮は早期の膵癌所見として注目されている.2010年1月~2020年12月に内視鏡的逆行性膵管造影検査で膵管精査及び病理検査を行った膵腫瘤を伴わない主膵管狭窄症例36症例37回を対象とし,病理診断成績及び悪性狭窄症例における患者背景・画像的特徴について検討を行った.男性/女性 18/19例,年齢中央値74歳,観察期間中央値952日,最終診断は悪性/良性 12/25例であった.膵液/擦過/経鼻膵管ドレナージ下連続膵液細胞診の感度はそれぞれ50%/57%/50%であり,すべての病理検査を合わせた全体の感度は67%であった.悪性群では急性膵炎歴が少なく,男性,狭窄長5mm未満,限局性膵萎縮が有意に多かった.診断に難渋した4例のうち2例は確定診断時に遠隔転移を認めていた.腫瘤形成を伴わない膵管狭窄の3割程度が悪性狭窄であり,積極的なERP精査が必要である.

症例報告
  • 古川 健太, 浅岡 忠史, 三賀森 学, 日向 聖, 大橋 朋史, 水島 恒和
    2023 年 38 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    門脈輪状膵(portal annular pancreas:PAP)は,膵鉤状突起が門脈あるいは上腸間膜静脈を全周性に取り囲んで膵体部の背側に癒合する膵の形態異常である.通常は無症状で臨床的意義に乏しいため見逃されることが多いが,膵切除の際には術後の膵液瘻のリスクとなるため注意が必要である.PAPを伴う膵SCNに対し腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した一例を経験したので報告する.

    症例は45歳,男性.健診で膵腫瘍を指摘され,近医で膵体部SCNと診断された.経過観察されていたが,嚢胞の増大および腫瘍マーカーの上昇傾向を認めたため,手術目的に当科を受診した.CTにて既知のSCNの他,脾静脈頭側でPAPを認めた.手術は腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.膵切離は門脈直上で腹側膵を,脾動静脈の結紮・切離後に背側膵もそれぞれ自動縫合器で切離した.軽微な膵液瘻を認めたが術後18日目に軽快退院した.

  • 山下 万平, 釘山 統太, 角田 順久, 田中 貴之, 山﨑 翔斗, 竹井 大貴, 原 勇紀, 福田 明子, 久永 真, 若田 幸樹, 荒木 ...
    2023 年 38 巻 2 号 p. 163-172
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    71歳男性.膵頭部腫瘤形成性膵炎加療中に腫瘍の急速増大と十二指腸浸潤を認めた.浸潤部生検でcarcinomaと診断し貧血を伴う膵癌(cStage IIA)に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行.病理組織学的に類円形細胞の充実性,胞巣状,索状増殖と腺房様構造の増殖,免疫組織学的にBCL-10陽性,INSM-1少数陽性でありacinar cell carcinoma(ACC)with neuroendocrine differentiationと診断.術後6ヶ月の造影CTで肝に乏血性腫瘤を認め,腫瘍針生検にて腫瘍細胞の充実性増殖と腺房様構造がみられ,免疫組織学的にBCL-10陽性,INSM-1少数陽性でありACCの再発と診断.原発切除標本による遺伝子パネル検査でBRCA2遺伝子変異を認めmFOLFIRINOX療法,オラパリブ維持療法を継続し,術後20ヶ月肝転移巣は縮小し生存中である.

  • 百武 佳晃, 賀川 真吾, 千葉 聡, 有光 秀仁, 柳橋 浩男, 石毛 文隆, 岩立 陽祐, 伊丹 真紀子, 竹田 直生, 加藤 厚
    2023 年 38 巻 2 号 p. 173-180
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル 認証あり

    症例は60歳男性.糖尿病の悪化を契機に膵尾部腫瘍を指摘され当科紹介となった.CTで膵尾部に35mm径の低吸収域が認められ,EUSで同部位に多血性の低エコー腫瘤を認めた.浸潤性膵管癌を疑い,膵体尾部切除術を施行した.手術所見では膵被膜に引き攣れを伴う腫瘤を認め,病理組織診では膵管内管状乳頭腺癌(intraductal tubulopapillary carcinoma:ITPC),invasiveの診断でリンパ節転移を認めた.術後は乳び漏を認めたが自然軽快し,術後26日目に退院した.術後補助化学療法を6ヶ月間施行し,無再発生存中である.膵管内管状乳頭腫瘍(ITPNs)は膵管内腫瘍に分類され,膵腫瘍の1%弱とされている.また,リンパ節転移を伴う症例はその中でも非常に稀であり,今回ITPNにリンパ節転移を伴った1切除例を経験したので報告する.

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