膵臓
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35 巻, 1 号
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追悼企画
50周年特別企画 日本膵臓学会―昨日から明日へ―
学会報告
特集 膵癌診療ガイドライン2019改訂のポイント
  • 江口 英利, 北野 雅之
    2020 年35 巻1 号 p. 39
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー
  • 奥坂 拓志, 中村 雅史, 吉田 雅博, 北野 雅之, 上坂 克彦, 伊藤 芳紀, 古瀬 純司, 花田 敬士, 岡崎 和一, 膵癌診療ガイド ...
    2020 年35 巻1 号 p. 40-46
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    膵癌診療ガイドラインが3年ぶりとなる2019年7月に改訂・出版された.改訂作業はガイドライン作成の指針となる「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従って行われ,従来よりも多くの時間と労力が費やされた.本ガイドラインでは前半部分に新たに総論を設けて,前版までのガイドライン等を通じて十分なコンセンサスが確立していると考えられる内容についてはそのなかで紹介し,後半のクリニカルクエスチョン(CQ)では議論の余地が残る重要臨床事項を厳選して記述することとした.診断,外科的治療法,補助療法,放射線療法,化学療法,ステント療法,支持・緩和療法の各領域にわたり多くの改訂が行われたが,なかでも切除可能境界(borderline recectable:BR)膵癌について新たに章立てをして指針が提示されたことや,術前・術後補助療法について最近の研究報告に基づいて新しい推奨が示されたこと,などが特に大きな改訂点としてあげられる.

  • 北野 雅之, 糸井 隆夫, 高山 敬子, 鎌田 研, 菅野 敦, 高岡 亮, 芹川 正浩, 川井 学, 高折 恭一, 花田 敬士
    2020 年35 巻1 号 p. 47-51
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    膵癌診療ガイドラインが2019年7月に改訂された.疾患概念・診断法部門では,2016年版と比較して,一部を変更したうえで新設クリニカルクエスチョン(CQ)7項目,1コラムを追加し,合計14項目のCQおよび2つのコラムが作成された.「疾患概念」と,「診断法」の一部のCQは総論のなかで紹介することとなった.一方で,診断ストラテジーをより詳細に述べるために,「診断法」を「存在・確定診断」,「病期・切除可能性診断」に大別したうえで,ぞれぞれの画像検査に関するCQを作成し,特徴・位置付けを明瞭化した.特に,PET検査は,存在・確定診断には行わないことを提案するが,病期・切除可能性診断には行うことを提案することとなった.病理診断法についても,EUS-FNAおよびERCPに関するCQを追加し,それぞれの使い分けの指針を示すこととした.また,病診連携を生かした膵癌早期診断に関するコラムを記載した.

  • 仲田 興平, 尾上 俊介, 川井 学, 大塚 隆生, 松本 逸平, 元井 冬彦, 里井 壯平, 藤井 努, 花田 敬士, 遠藤 格, 中村 ...
    2020 年35 巻1 号 p. 52-57
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    膵癌診療ガイドラインが2019年7月に改訂され,『膵癌診療ガイドライン2019年版』1)として出版された.外科治療で14項目のクリニカルクエスチョン(CQ)を作成し,このうち新設されたCQ,ステートメントに変更のあったCQは12項目である.『膵癌診療ガイドライン2016年版』2)では切除可能膵癌の治療法に含まれていた切除可能境界膵癌は新たな大項目として新設され(B1,B2),切除不能膵癌(UR-LA,UR-M)に対する外科的治療法が新設された(LO1,MO1).また,術前栄養評価(DSg2),膵癌切除後の長期経過観察(RO7),高齢者膵癌に対する外科治療(RO9),膵全摘(RO10)に関するCQが新設された.このほか,門脈合併切除(RO3),予防的郭清(RO4),腹腔鏡手術(RO5,RO6),栄養療法(RO8)に関するCQは推奨度もしくはステートメントが変更された.一方,一定のコンセンサスが得られていると思われる項目に関しては総論での概説とした.

  • 上坂 克彦, 江口 英利, 菅野 敦, 中村 聡明, 中郡 聡夫
    2020 年35 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    『膵癌診療ガイドライン2019年版』では補助療法のCQが4つ設定された.「切除可能膵癌の治療法」内にRA1 術前補助療法,RA2 術後補助化学放射線療法,RA3 術後補助化学療法のCQが設定され,術中放射線療法のCQは総論に移った.また「切除可能境界膵癌の治療法」内にB3 術後補助化学療法のCQが新設された.RA1 術前補助療法については,冊子版では「行うべきか否かは明らかではない」とされたが,その後のエビデンスの追加により,「ゲムシタビン塩酸塩+S-1併用療法を行うことを提案する」と改訂された.RA2は2016年版と変更なく,RA3では新たなエビデンスに基づき「ゲムシタビン塩酸塩+カペシタビン併用療法およびmodified FOLFIRINOX療法を行うことを提案する」ことが追記された.B3には高いエビデンスはないが,改訂委員の賛成により「術後補助化学療法を行うことを提案する」旨記載された.

  • 伊藤 芳紀, 澁谷 景子, 中村 聡明, 大栗 隆行, 染谷 正則
    2020 年35 巻1 号 p. 63-68
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    膵癌診療ガイドライン2019年版では,局所進行切除不能膵癌に対する一次治療として2016年版と同様に化学放射線療法と化学療法単独が並列で提案(弱く推奨)された.放射線療法分野では,局所進行切除不能膵癌に関して,化学放射線療法の併用薬剤はフッ化ピリミジン系抗がん薬またはゲムシタビン塩酸塩が提案され,放射線療法の標的体積として,大動脈周囲リンパ節への予防照射は行わないことが提案された.化学放射線療法前の導入化学療法については,JCOG1106の結果を踏まえて,行わないことが提案された.膵癌の遠隔転移,再発巣に関して,2019年版で新しく設定された術後転移,再発巣に対する放射線療法のCQでは,局所再発・所属リンパ節転移と肺転移に対して放射線療法を行うことが提案されたが,肝転移に対しては行わないことが提案された.また今後期待されている高精度放射線治療やハイパーサーミアについてコラムで解説している.

  • 古瀬 純司, 井岡 達也, 福冨 晃, 水野 伸匡, 尾阪 将人, 奥坂 拓志
    2020 年35 巻1 号 p. 69-74
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    切除不能膵癌に対する化学療法は,局所進行と遠隔転移を分けた推奨と,化学療法の継続期間について検討した.遠隔転移例に対する1次化学療法では,ゲムシタビン(GEM)単独を対照としたFOLFIRINOX療法,あるいはGEM+ナブパクリタキセル併用療法による第III相試験により生存期間の延長が証明された.その結果,この2つが遠隔転移例に対する第一選択の治療として推奨されている.局所進行例ではこれらの治療法は十分なエビデンスがないものの,GEM単独あるいはS-1単独と同レベルで推奨されている.2次化学療法は延命効果が示されており,実施することが推奨され,1次化学療法に応じてフルオロウラシル関連あるいはGEM関連レジメンを用いる.高頻度マイクロサテライト不安定性であればペムブロリズマブの有効性が期待できる.化学療法は継続困難な有害事象の発現または病態の明らかな進行まで継続することが適当である.

  • 花田 敬士, 糸井 隆夫, 加藤 博也, 伊佐山 浩通, 中井 陽介, 坂本 康成
    2020 年35 巻1 号 p. 75-78
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    膵癌診療ガイドラインが2019年7月に改訂された1).ステント療法部門では合計5項目のクリニカルクエスチョン(CQ)および1つのコラムが作成され,今回,2016年版2)と比較して一部を新設および変更が加えられた.SSt1として切除不能膵癌に対する胆道ドレナージのアプローチルートに関するCQを作成した.従来の経皮的,内視鏡的経乳頭的なルートに加えて,超音波内視鏡を用いた内視鏡的経消化管的ルートの検討を行った.SSt2として閉塞性黄疸を伴う膵癌術前症例に対するステント療法のCQを作成した.SSt3として閉塞性黄疸を伴う切除不能膵癌に対する胆道ドレナージに関するステントの選択について2つのCQを作成した.SSt4として消化管閉塞をきたした切除不能膵癌に対する外科的胃空腸吻合術と消化管ステント挿入術に関するCQを作成した.また化学・放射線療法を意識したステント療法に関するコラムを記載した.

  • 奥坂 拓志, 小川 朝生, 余宮 きのみ, 辻 哲也, 森 雅紀, 鈴木 賢一, 丹藤 雄介, 藤森 麻衣子, 坂本 はと恵, 保田 知生, ...
    2020 年35 巻1 号 p. 79-82
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    癌患者に必要とされる支持・緩和療法は多岐にわたり,その一部については専門学会からのガイドラインも出版されているが,膵癌患者に特に重要と考えられる臨床的疑問については本ガイドラインにおいて指針を提示することが必要との議論がなされ,2016年版より精神心理的苦痛への対応方法,上腹部痛・背部痛に対する治療法,栄養療法,が取り上げられることとなった.2019年版ではさらに,膵癌術後患者に対する運動療法,アドバンス・ケア・プランニング,化学療法における末梢神経障害への対応方法,を新たなCQとして設定し,エビデンスの収集と推奨の提言を行った.また,悪液質を伴う膵癌患者における栄養支持療法,患者向け資材(パンフレット),コミュニケーション・スキル,心理的・社会的・経済的問題に対する支援,患者会,についてコラムで取り上げて情報提供を行うこととした.

原著
  • 南 理央, 佐藤 菜保子, 元井 冬彦, 佐藤 冨美子, 海野 倫明
    2020 年35 巻1 号 p. 83-90
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    【背景】膵切除は侵襲が大きく,広範囲な術式では特にQOLを低下させる.倦怠感はQOLに関連する症状であり,患者の多くが経験する半面,仕方のない症状と受け取られがちである.【目的】膵切除術後3ヶ月の患者の倦怠感の関連因子を検討する.【方法】膵切除術患者77名を対象に,倦怠感と肝胆膵領域に特異的な症状,生理的指標との関連を統計学的に検討した.【結果】術後3ヶ月における患者の倦怠感は,消化不良,容姿の変化,体に力が入らない,吐気などの自覚症状(r=0.236,P=0.039),体重や筋力の低下(r=-0.361,P=0.014),急激な栄養状態の悪化(r=0.290,P=0.010),および抑うつ(r=0.489,P<0.001)と関連していた.【結論】術後3ヶ月の倦怠感の軽減には,自覚症状に対するマネジメント,術後早期からのリハビリ,術前からの栄養管理,精神的ケアが有効である可能性がある.

症例報告
  • 中山 雄介, 豊田 英治, 松林 潤, 池野 嘉信, 北口 和彦, 伊藤 達雄, 大江 秀明, 奥野 知子, 廣瀬 哲朗, 土井 隆一郎
    2020 年35 巻1 号 p. 91-96
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    症例は47歳,女性.健診の腹部超音波検査で,膵尾部に嚢胞性病変を指摘され,当院へ紹介された.腹部造影CT検査では,膵尾部端に,内部隔壁を伴う最大径46mmのcyst in cyst様構造を呈する多房性嚢胞を認めた.MRI検査では,嚢胞内容液がT2強調画像でまだらに高信号を呈していた.EUS検査では,嚢胞内部にechogenicな構造物を認め,同部位は小嚢胞の集簇像を呈していた.以上より,膵粘液性嚢胞腫瘍と診断し,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.肉眼的には,脾辺縁から発生し,膵尾部方向に発育する脾嚢胞で,内部に黄色泥状物を含有していた.病理組織学的には,嚢胞は重層扁平上皮に覆われており,脾類表皮嚢胞と診断した.本症例のように,脾発生の類表皮嚢胞であっても,膵尾部方向に発育すると,膵嚢胞性疾患との鑑別が非常に困難になるので,治療前診断には注意を要する.

  • 小林 規俊, 嶌村 健, 竹田 雄馬, 大久保 直紀, 徳久 元彦, 廣島 幸彦, 後藤 歩, 高野 祥子, 遠藤 格, 市川 靖史
    2020 年35 巻1 号 p. 97-103
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    60代女性.2002年膵頭十二指腸切除術が施行され高分化神経内分泌癌と診断された.2003年に肝転移再発をきたし陽子線治療や化学療法が施行されたが肝転移の増悪を認めた.病理学的再評価で,膵神経内分泌腫瘍(NET Grade2 Ki67 6%),免疫染色でソマトスタチン受容体の強陽性が確認された.ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)の適応と考えられ,2011年バーゼル大学にて,177Lu-DOTATOCによるPRRTが施行されCTで肝転移の縮小が認められた.2013年再度肝転移が増大しPRRTが再度施行され,CTで腫瘍の再縮小が認められた.2016年に再増大をきたしPRRTによる再々治療が施行されたが肝転移は増大し2017年に肝不全にて死亡した.本症では膵神経内分泌腫瘍多発肝転移がPRRTのみで6年にわたり制御された.PRRTは,切除不能膵神経内分泌腫瘍に極めて有用な治療法である.

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