膵臓
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22 巻, 2 号
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総説
  • 廣岡 芳樹, 伊藤 彰浩, 川嶋 啓揮, 原 和生, 内田 博起, 野々垣 浩二, 春日井 俊史, 大野 栄三郎, 大宮 直木, 丹羽 康正 ...
    2007 年 22 巻 2 号 p. 95-109
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/23
    ジャーナル フリー
    膵疾患診断における超音波内視鏡(EUS)の有用性は既に確立されており,必須の検査法であるといえる.基本となるB-mode画像において,電子走査方式EUSはメカニカルラジアル走査方式に比して同等以上の画質が得られることが証明されたことで,EUSの主流がメカニカルラジアル走査方式から電子走査方式(電子ラジアル型,電子コンベックス型)に変化することは必然的なものとなる.電子走査方式になることで,ティッシュハーモニックイメージング法,カラードプラ断層法·パワードプラ断層法,造影ハーモニックイメージング法,三次元画像,real time tissue elastography®などすでに体外式超音波検査(US)では広く臨床応用されている技術がEUSで行えるようになった.このように多方面からのtissue characterizationが可能になったことは膵疾患診断に関する有用性がさらに向上したことを意味する.今後はさらに症例を蓄積し明確な臨床的有用性を証明してゆく必要がある.本稿では,電子走査型EUSで可能になった種々の画像診断法に関して概説する.
原著
  • 中島 高広, 上田 隆, 竹山 宜典, 安田 武生, 新関 亮, 沢 秀博, 松本 逸平, 藤田 恒憲, 味木 徹夫, 藤野 泰宏, 鈴木 ...
    2007 年 22 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/23
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎における血液凝固線溶系の異常をretrospectiveに検討した.自験例では入院時から凝固線溶系の異常が高率に認められた.特にThrombin-antithrombin III complex(TAT)とD-dimerの異常発現率は100%であった.厚生労働省重症度スコアとの相関関係はProthrombin time-international normalized ratio(PT-INR)とTATが正の相関関係を,血小板が負の相関関係を示した.また,入院時TATはStage 2よりもStage 3, 4において高値を示した.生存群に比して死亡群において,PT-INRは有意に延長し,TATは高値を示した.入院時PT-INRが1.15以上の症例や入院時TATが45ng/ml以上の症例では死亡率が有意に高かった.以上より,重症急性膵炎において入院時TATは重症度や予後予測のマーカーとして有用である可能性が示唆された.
  • 宮坂 京子, 金井 節子, 太田 稔, 船越 顕博
    2007 年 22 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/23
    ジャーナル フリー
    合成トリプシンインヒビター(TI)混餌飼料の7日間の投与によって肥大させたラット膵の外分泌機能を,in vivo-覚醒状態で検討した.ラット膵外分泌をもっとも強く刺激することができる胆汁·膵液除去に対して,膵タンパク分泌は,TI群でコントロール群より有意に高値であった.しかし,血中cholecystokinin(CCK),腸管内luminal CCK-releasing factor(LCRF)値は2時間値ではTI群とコントロール群の間に差はないが,4時間値ではむしろTI群の方が低値であった.この機序は,TI投与で十二指腸内トリプシン活性が減少することによりCCKが放出されCCK-A受容体に作用して腺房細胞を肥大させる.肥大した膵臓は,より少ないCCKによって十分量のタンパクを分泌することができるようになり,その結果,必要とするCCKがより少なくてすんでいる,という適応現象ではないかと思われる.LCRFも同様の機序で含有量が低値となり,CCK分泌を減少させていると考えられる.
症例報告
  • 加茂田 泰久, 藤野 泰宏, 上田 隆, 安田 武生, 松本 逸平, 外山 博近, 黒田 嘉和
    2007 年 22 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/23
    ジャーナル フリー
    術前診断しえた膵lymphoepithelial cyst(LEC)の1例を経験したので報告する.症例は69歳男性.腹部超音波検査·腹部CTにて膵腫瘍を指摘され精査目的にて入院となった.血液生化学検査では,CA19-9が727U/mlと上昇を認めた.MRIでは粘稠度の高い内容物を含むと考えられた.内視鏡的逆行性膵管造影では主膵管の拡張や透瞭像,腫瘤との交通も認めなかった.血管造影検査では,腫瘍壁の一部が濃染された.LECと考え開腹手術を施行した.摘出標本では5.0cm大の弾性軟な腫瘤で,内部は多嚢胞性で割面はチーズ状の白濁したfluidを認めた.膵LECは膵嚢胞性疾患でも比較的稀な疾患であり,中高年の男性に多い傾向を認め,他疾患の経過観察中に発見され,無症状のことが多い.膵嚢胞性疾患の診断には,形態のみならず,性別,内容物など多方面からみることが重要と考えられた.
  • 相浦 浩一, 高橋 伸, 上田 政和, 小島 正之, 半田 寛, 日比 泰造, 北島 政樹
    2007 年 22 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/23
    ジャーナル フリー
    1974年4月から2001年12月までに当教室で切除した浸潤性膵管癌199例のうち,24例が5年以上生存し,そのうち再発死亡した剖検4例について,初回手術時病理組織所見とあわせ術後再発形式について検討した.総合的進行度はStage IIIが2例,IVbが2例,根治度はR0が3例,R1が1例で,組織型は管状腺癌3例,粘液癌1例であった.粘液癌の1例は再発が疑われてから約3年間生存しており,粘液癌は浸潤性膵管癌のなかでも比較的ゆっくりと進行する可能性が示唆された.剖検所見から局所再発と肺転移は全例に認め,肝転移3例(75%),腹膜播種3例(75%),その他遠隔転移3例(75%)に認めた.再発時期に関わらず膵床部局所と肝は膵癌再発の好発部位と考えられたが,長期生存後の再発では肺転移の頻度も増える可能性が示された.膵癌の場合,術後5年以上経過しても再発してくる可能性は否定できず,胸部X線画像を含めた定期検査を継続することが重要と考えられた.
  • 鈴木 修司, 原田 信比古, 鈴木 衛, 羽生 富士夫
    2007 年 22 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/23
    ジャーナル フリー
    退形成性膵管癌は膵癌の中では非常にまれで,予後が不良とされている.今回多形細胞型退形成性膵管癌を経験したので報告する.症例は71歳,男性.尿黄染を主訴に当院受診し,閉塞性黄疸,肝障害を認め,精査を目的に入院となった.CT検査では膵鉤部に30mm大の不整形腫瘤を認め,動脈相,平衡相ともlow density areaとして描出された.MRI検査では膵鉤部腫瘤を認め,下部胆管の狭窄がみられた.黄疸の進行のためPTBDを施行した.膵癌の診断でPPPDを施行し,術中に肝転移を認めたが,合併切除した.切除標本では鉤部中心の柔らかい腫瘤で,割面は黄白色で,一部に壊死を認めた.病理組織所見では腫瘍細胞は結合性に乏しく,充実性に増殖し,多辺形細胞主体であるが,多核細胞などの多彩な細胞の混在が目立ち,多形細胞型退形成性膵管癌と診断された.術後合併症は認めなかったが,急速に肝障害,黄疸の進行を認め,術後約1ヵ月後肝不全で死亡した.
  • 花田 敬士, 飯星 知博, 天野 始, 日野 文明, 黒田 義則, 米原 修治
    2007 年 22 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/23
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.主訴は腹部腫瘤.現病歴は平成12年11月,左側腹部の腫瘤を触知し,腹部US上膵体部に約9cmの嚢胞性病変を認め,当科紹介入院.入院時現症は,身長168cm,体重54kg.左側腹部に軟で移動性のある腫瘤を触知.入院時検査所見では,軽度の炎症所見を認める以外,一般生化学検査は異常なし.CEA, CA19-9,血中膵酵素も正常.腹部US,ヘリカルCTでは,膵体部に充実性の成分を含む約9cmの嚢胞性病変を,また肝右葉にも腫瘍性病変を認めた.ERPでは主膵管は狭小化し,体尾部移行部で途絶していた.MRIでは,嚢胞成分はT2で高信号として認識された.腹部血管造影では体部に濃染像を認めた.以上から出血成分を伴う膵腫瘍と診断し,脾合併膵体尾部切除を施行した.病理組織像は,浸潤性膵管内腺癌であったが,粘液産生が少なく,膵癌取り扱い規約第5版でいう,膵管内管状腺癌と考えられた.本疾患は,現在まで海外を含めた報告例が十数例であり,極めて稀である.
Selected Expanded Abstracts
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