膵臓
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38 巻, 5 号
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学会報告
総説
  • 芦澤 信雄
    2023 年 38 巻 5 号 p. 303-317
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    ラット膵組織連続切片を光学顕微鏡と透過電子顕微鏡で観察し,膵上皮細胞の配列について検討した.介在部導管細胞列に1個から数個の大型の腺房細胞が分泌細管とともに内腔に達するまで差し込まれていて,それに連結する腺房細胞群は介在部導管基底面に向かい基底膜を介さずに接着し,介在部導管腔へと繋がる分泌細管を接着面に形成しながら導管周囲をとり囲んでいた.ほとんどのランゲルハンス島(ラ氏島)周囲基底膜は複数箇所で欠損し,そこでは腺房細胞または介在部導管細胞がラ氏島外側面に接着して接着面に分泌細管または介在部導管腔を形成していた.以上から,発生の過程で未熟な膵導管末梢部に内分泌細胞,続いて腺房細胞が分化・出現し,それぞれ外側に向かって増生するが,隣接する内分泌細胞群同士は融合してラ氏島を形成し,その後に腺房細胞が導管とラ氏島の外側面に向かって分泌細管を形成しながら基底膜を介さずに接着して増生すると推察された.

原著
  • 川口 義明, 川嶌 洋平, 遠藤 格, 岡 正直, 岡沢 啓, 荻原 泰, 川名 一朗, 木村 貴純, 三道 由起子, 多羅尾 和郎, 永井 ...
    2023 年 38 巻 5 号 p. 318-327
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    【背景】1cm以下の早期膵癌を見つけるためには腹部超音波検査(AUS)における膵癌間接所見とリスクファクターから一般診療医が拾い上げることが重要である.

    【目的】膵癌に対する意識調査の結果を報告する.

    【方法】神奈川県内科医学会会員1,465人にアンケート調査を行った.

    【結果】回収126人(平均年齢61.6歳).91%の施設で超音波装置保有.膵癌のAUS間接所見やリスクファクターに関しての認知度は高く,適切な対応がなされていた.AUSによる主膵管正常径の認知度や主膵管描出能に関しては消化器専門医が非専門医と比べて有意に優れていた(P<0.05).リスクファクターである糖尿病に関して,増悪時には行われている画像検査が,初診時には行われていない傾向が有意に認められた(P<0.05).

    【結論】膵癌早期発見のために,糖尿病患者に対する初診時・増悪時の画像検査の積極的な介入が重要である.

症例報告
  • 太田 康晴, 秋山 優, 淀川 千佳, 中林 容子, 田口 昭彦, 新藤 芳太郎, 天野 彰吾, 末永 成之, 川谷 由紀, 小賀 厚徳, ...
    2023 年 38 巻 5 号 p. 328-336
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    35歳,女性.9歳時にプロラクチン産生下垂体腺腫の摘出術が施行された.成人成長ホルモン分泌不全症に対する補充療法開始4ヶ月後の腹部CTで,膵尾部に径50mm大の嚢胞性病変を偶発的に認めた.高ガストリン,高グルカゴン血症に加えてintact PTHも軽度高値であり,ソマトスタチン受容体シンチグラフィーでも同部位に集積が認められた.pNETが疑われるも,嚢胞性病変が主体であるためEUS-FNAによる確定診断が困難であり,超音波内視鏡でのcyst in cystの所見から,術前診断は粘液性嚢胞腫瘍とされ,腹腔鏡下膵体尾部腫瘍切除術が施行された.嚢胞の壁肥厚部や辺縁以外にもガストリン産生腫瘍が認められ,MEN1に伴うpNETと確定診断した.嚢胞を伴う膵腫瘍の鑑別診断は難しく,より多角的な視点からの検討が求められる.pNETの術後補助療法のエビデンスの構築のためにも症例の集積が望まれる.

  • 米山 翔一郎, 児玉 亮, 中嶋 太郎, 井田 真之, 横田 有紀子, 三枝 久能, 牛丸 博泰
    2023 年 38 巻 5 号 p. 337-347
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    症例は60代男性.14年前より腹部腫瘤を自覚していたが,症状がないため医療機関を受診しなかった.検診で腹部腫瘤を指摘され当院を受診した.画像検査で上腹部に26cm大の巨大な腫瘍を認めた.腫瘍は嚢胞成分と充実成分が混在しており,mixed typeの膵漿液性嚢胞腫瘍(SCN)が疑われた.総肝動脈が腫瘍内を走行していること,腫瘍周囲の静脈瘤が発達していることから手術適応外と判断し経過観察の方針となった.しかし6年後に胃静脈瘤からの出血を繰り返すようになり,内視鏡的止血術では効果不十分であった.経皮的腫瘍生検によりSCNと確定診断をした後,胃静脈瘤に対し血管内治療を行った.胃静脈瘤は豊富な腫瘍血流による求肝性であり,超音波ガイド下に左胃静脈を穿刺し胃静脈瘤へn-ブチルシアノアクリレートを注入し塞栓した.治療により胃静脈瘤は改善した.本症例は手術適応外の巨大なSCNに経皮的静脈瘤塞栓術を要した初の症例報告である.

  • 住谷 秀仁, 小岩井 明信, 廣田 衛久, 高須 充子, 佐藤 賢一
    2023 年 38 巻 5 号 p. 348-354
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    症例は69歳,男性.心窩部痛の精査目的で施行した造影CT検査で,背側膵に限局した膵炎,背側膵管の軽度拡張,膵鉤部の欠損,腸回転異常の所見を認めた.MRCPでは膵管癒合不全を認め,膵管癒合不全に伴う軽症の背側膵炎と診断した.超音波内視鏡検査により腹側・背側膵管の評価を行ったところ,腹側膵管が背側膵管よりも頭側に位置し,膵鉤部が欠損している所見を認め,腹側膵回転異常と診断した.これは,膵の発生過程において,腸管の回転異常によって腹側膵原基の回転に異常が生じ,膵頭上部の位置で背側膵原基に癒合したことに由来すると考えた.背側膵管の拡張は保存的加療で改善し,副乳頭経由の背側膵管に対するドレナージ術は要さずに膵炎は軽快した.腹側膵回転異常と膵管癒合不全の合併例の報告はなく,腹側膵管の評価を行うことで腹側膵の位置異常を示すことができた1例と考え報告する.

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