膵臓
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33 巻, 6 号
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ガイドライン
特集 膵腫瘍におけるゲノム解析―病態解明と臨床的意義
  • 古川 徹, 清水 京子
    2018 年 33 巻 6 号 p. 914
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー
  • 林 秀幸
    2018 年 33 巻 6 号 p. 915-922
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー

    近年,本邦においても臓器横断的ながんゲノム医療の臨床実装が進み,クリニカルシークエンスによるがんプレシジョンメディシンががんに対する新たな治療戦略として注目されている.膵がんに対するプレシジョンメディシンは未だ開発途上にあり,その臨床における有用性は未知であるが,今後の膵がん治療開発において重要な位置を担うことが予測される.

    現時点では膵がんクリニカルシークエンスで得られる治療関連情報は限られているが,DNA修復関連遺伝子異常,がん免疫療法関連バイオマーカー,KRAS野生型膵がん,主要4遺伝子(KRASTP53CDKN2ASMAD4)における変異遺伝子数など,今後の臨床応用が十分期待できるゲノム情報が得られる場合もある.実地医療における膵がんクリニカルシークエンスは疾患特有の様々な難しさを有するが,十分実行可能であり,今後の更なる発展が期待される.

  • 須藤 研太郎, 横井 左奈
    2018 年 33 巻 6 号 p. 923-929
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー

    次世代シーケンシング技術の登場により,膵癌を含むさまざまな悪性疾患においてゲノム構造異常および遺伝子発現プロファイルが明らかになっている.さらに,本邦においてもクリニカルシーケンスの実用化が目前に迫っており,がんゲノムプロファイリングに基づいた薬剤選択を目指した動きが加速している.一方,膵癌組織は豊富な間質成分を有し,特に生検検体を用いたゲノム解析の報告はわずかである.膵癌の多数例は切除不能な高度進行癌として診断されるため,EUS-FNAなどの生検組織を用いた解析法の確立が急務である.本稿では膵癌におけるゲノム異常について概説し,EUS-FNA検体を用いた解析の現状と課題について考察する.

  • 高野 伸一, 深澤 光晴, 進藤 浩子, 高橋 英, 深澤 佳満, 川上 智, 早川 宏, 廣瀬 純穂, 門倉 信, 前川 伸哉, 佐藤 公 ...
    2018 年 33 巻 6 号 p. 930-936
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー

    膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)のサーベイランスは嚢胞径により層別化された種々の画像診断により行われている.これらは主にIPMN由来浸潤癌を念頭に作成されたが,IPMNに発生するもう一つの悪性腫瘍―併存膵癌―の診断には十分とは言えない.併存膵癌の診断には超音波内視鏡検査(EUS)によるサーベイランスが有用との報告もあるが,長期にわたる可能性もあるサーベイランスには苦痛の少ない検査法も組み合わせる必要があると考えられる.その一つの可能性は,近年発達目覚ましい遺伝子解析を体液などの臨床検体を用いて行うことである.我々は切除組織の解析からTP53変異をIPMN由来浸潤癌および併存膵癌,KRAS複数変異をIPMN併存膵癌の候補マーカーとして同定するに至った.そして,理想的には血液や尿などによる解析であるが,その前段階として膵液を用いてこれらのマーカーを検出することに成功した.

  • 大川 和良, 高田 良司, 片山 和宏, 久木田 洋児, 加藤 菊也
    2018 年 33 巻 6 号 p. 937-943
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー

    最近,血中循環腫瘍DNAの検出が可能となり,新しい癌のバイオマーカーとして注目されている.我々は次世代シーケンサーを用いた膵癌における血中循環腫瘍DNA検出系の構築を試みた.膵癌において高頻度に変異が認められるKRASTP53SMAD4CDKN2Aを含む計8遺伝子を対象として,PCR増幅の後にシーケンシングを行った.この際にバーコードタグを用いて効率よく読み取りエラーを除去する非重複統合リード塩基配列決定システムと,癌細胞由来でない変異DNAを除外するCV78フィルター法を併用することで,より精度の高い膵癌特異的変異DNAの検出が可能であった.この系を用いて膵癌症例の約35%から膵癌特異的変異DNAが検出され,変異DNAが検出された症例ではされなかった症例よりも疾患がより進行している傾向が認められた.今後,我々の膵癌特異的変異DNAの検出系の膵癌診療へのより効果的な応用を検討したい.

  • 古川 徹
    2018 年 33 巻 6 号 p. 944-948
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー

    BRCA1BRCA2PALB2はBRCA経路遺伝子と呼ばれ,その産物はDNA二重鎖切断の相同組換え修復に関与する.BRCA経路遺伝子の生殖系列変異は膵癌発症のリスクを高め,また,BRCA経路遺伝子異常を持つ癌腫は白金系薬剤やPARP阻害剤に特異的に感受性が高く,臨床的に劇的な効果を見ることがある.我々は孤発性膵管癌,家族性膵癌,膵腺房細胞癌においてBRCA経路遺伝子変異を検索し,それぞれ2.4%,9.3%,43%に明らかな病原性変異を認めた.孤発性膵管癌例においては病原性あるいは効果不明のBRCA経路遺伝子変異を持つ患者群が有意に予後良好であった.また,BRCA経路遺伝子変異を持つ膵腺房細胞癌の多発肝転移がcisplatin投与で完全寛解した例を経験した.BRCA経路遺伝子変異を持つ膵腫瘍を見出すことは今後展開されるゲノム医療上極めて意義深いと考えられる.

症例報告
  • 佐々木 善浩, 木谷 幸博, 上條 孟, 島田 祐輔, 石坂 俊二, 大野 志乃, 今津 博雄, 槇島 誠
    2018 年 33 巻 6 号 p. 949-956
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー

    膵仮性嚢胞の既往がある72歳の男性.下行結腸ポリープに対してEMRを施行し,その後から発熱・倦怠感を認め,CT検査で膵嚢胞の増大を認めた.下部内視鏡で下行結腸のEMR後部位に,膵嚢胞との交通がある5mmの瘻孔を認め,膵仮性嚢胞―消化管瘻と診断し,嚢胞内部を洗浄後にクリップにて縫縮した.

    膵仮性嚢胞の合併症として消化管に穿通する報告はあるが,内視鏡の治療処置が起因したと考えられる膵仮性嚢胞―消化管瘻は極めて稀であり,報告する.

  • 東原 琢, 羽鳥 隆, 首村 智久, 加藤 厚, 池田 佳史, 似鳥 修弘, 加藤 亜裕, 宮崎 勝, 大塚 将之
    2018 年 33 巻 6 号 p. 957-962
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/21
    ジャーナル フリー

    70歳代男性.背部痛,発熱を主訴に前医を受診し,脾動脈の仮性動脈瘤を有する急性膵炎の診断となった.経過中にCTで膵腫瘤を指摘されて当科紹介となった.当院受診時には膵尾部に20mm大の乏血性の腫瘤,再増大する脾動脈仮性動脈瘤,被包化壊死を認めた.仮性動脈瘤に対して先行して脾動脈コイル塞栓術を施行した.主腫瘤は前医受診時と比べ増大し,PET-CTでFDG異常集積を伴うことから膵尾部癌を疑い膵体尾部切除術を行った.術後経過良好で第14病日に退院となった.病理組織診断ではStage IIAの中分化型腺癌でR0切除を行うことができた.

    しかし,その後術後2か月で局所再発,肝転移を認め,化学療法を施行するも効果に乏しく,術後7か月に原病死という急速な経過をたどった.

    急性膵炎を合併した膵癌の報告は少ないが,自験例のように予後不良症例も存在するため,膵炎診断時には積極的な腫瘍性病変の検索,早期治療開始が望ましい.

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