膵臓
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29 巻, 4 号
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原著
  • 豊田 英治, 土井 隆一郎, 財間 正純, 中川 淳, 矢澤 武史, 山本 道宏, 原田 英樹, 山本 秀和, 石上 俊一, 信藤 由成, ...
    2014 年 29 巻 4 号 p. 703-710
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    【目的】腹腔鏡補助下膵頭十二指腸切除術(以下Lap-PD)の短期手術成績について検討を行った.【方法】Lap-PDを施行した4例(以下Lap-PD群)に対して,開腹PD 9例(以下Open-PD群)を対象として,後ろ向きに比較検討した.【結果】両群間に患者背景の差は認めなかった.Lap-PD群では出血量がOpen-PD群より有意に少なく,輸血を要した症例は1例も認めなかった.手術時間は,Lap-PD群で有意に延長していた.両群間での術後合併症発生頻度,程度に有意差は認めなかった.術後経過では,Lap-PD群で,排ガスまでの期間が1日程度早く,術後在院日数もやや短い傾向を認めた.【結論】Lap-PDは,術後合併症に関して認容可能であり,開腹手術と比較して術中出血量が有意に少なく,低侵襲術式であると考えられた.
  • 三木 正美, 李 倫學, 五十嵐 久人, 新名 雄介, 肱岡 真之, 植田 圭二郎, 藤山 隆, 立花 雄一, 山口 裕也, 澄井 俊彦, ...
    2014 年 29 巻 4 号 p. 711-720
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    膵仮性嚢胞を合併した自己免疫性膵炎(AIP)12症例をもとに,膵仮性嚢胞の形成機序とステロイドの有効性について検討した.膵仮性嚢胞の発生部位は全例膵体尾部であり,10例の83%に膵管狭細化に伴う閉塞性膵炎を認めた.膵酵素上昇(75%)および腹痛(50%)も高率に認めた.ステロイド治療により膵仮性嚢胞は全例で消失し,膵管狭細像および閉塞性膵炎像も改善した.さらに,膵酵素上昇および腹痛も全例で改善した.以上より,AIPに合併する膵仮性嚢胞の形成機序は閉塞性膵炎に起因するものであり,AIPに合併する膵仮性嚢胞には閉塞性膵炎の解除を目的としたステロイド投与は有効であった.AIPの疾患概念が発信された当初は,閉塞性膵炎および膵仮性嚢胞の合併は稀と考えられていたが,今回の検討から膵仮性嚢胞の診療においてはAIPの可能性も念頭に置いた的確な診断と治療法の選択が重要と考えられた.
  • 浦部 和秀, 村上 義昭, 上村 健一郎, 首藤 毅, 橋本 泰司, 近藤 成, 中川 直哉, 佐々木 勇人, 大毛 宏喜, 有廣 光司, ...
    2014 年 29 巻 4 号 p. 721-728
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    膵粘液性嚢胞腫瘍は悪性化能を持つ稀な膵嚢胞性腫瘍で,疾患概念が卵巣様間質により統一されている.しかし,その実態はまだ不明な部分がある.今回,当科で経験した,病理組織学的に卵巣様間質を伴う膵粘液性嚢胞腫瘍11切除症例を対象とし,臨床病理組織学的因子を検討した.性別は全て女性で,平均年齢は52.5歳であった.妊娠期に診断された症例は2例で,1例は増大傾向を示し,1例は破裂による膵性腹水を呈した.腫瘍局在は体尾部10例,頭部1例であった.平均腫瘍径は72.1mmであった.病理組織診断は浸潤癌1例,腺腫10例(妊娠期症例2例を含む)であった.予後は全例で無再発生存し良好であった.今後悪性予測因子の検討を行うことで,症例によっては経過観察を選択できる可能性がある.また,妊娠期に急速増大する腹腔内嚢胞性腫瘍は膵粘液性嚢胞腫瘍を念頭に置き,破裂の危険性を認識する必要がある.
症例報告
  • 松田 正道, 渡邊 五朗, 橋本 雅司, 佐々木 一成, 田村 哲男, 今村 綱男, 竹内 和男
    2014 年 29 巻 4 号 p. 729-735
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.S状結腸癌の術前検査で膵体部腫瘍を指摘された.US上膵体部に2cm大の低エコー結節があり,これと連続する尾側膵全体が低エコーを示した.脾静脈から門脈本幹にかけて腫瘍栓があり,側副血行の発達を認めた.CTでは膵体尾部全体を占める増強効果の乏しい腫瘍として,MRIではT1wで低信号,T2wで高信号,DWIでも高信号を呈した.PET-CTで腫瘍に一致しSUV max 8.5の異常集積を認めた.膵管洗浄細胞診でclass IIIbが得られ,尾側膵切除・門脈合併切除(腫瘍栓除去)を行った.膵管内発育の著明な腫瘍で粘液産生に乏しく,組織学的に核異型が強く好酸性の細胞が癒合腺管状,乳頭状に増生していた.免疫組織化学的にはCK7(+),CK20(focalに+),MUC1(+),MUC2(-),MUC5AC(-),MUC6(focalに+)でIntraductal tubulopapillary neoplasm浸潤癌と判定した.
  • 佐藤 晃彦, 小泉 勝
    2014 年 29 巻 4 号 p. 736-741
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は99歳,女性.2010年11月中旬,心窩部痛,吐気・嘔吐のため当科を受診した.血清アミラーゼ1,553IU/lと高値.CT所見と併せ,急性膵炎と診断した.膵体尾部実質造影不良と腎下極以遠までの広範な炎症波及を認め,厚労省重症度判定基準 造影CT Grade 3の重症膵炎と判定した.日本酒2~3合,毎日,35年間の飲酒歴があり,成因はアルコール性と考えられた.心不全が増悪して一時重篤な状態に陥ったが,徐々に病態が改善し,最終的には,膵炎に伴う重篤な後遺症を残すことなく第137病日に退院した(退院時年齢100歳).我が国において飲酒習慣を有する高齢女性は少なく,高齢女性のアルコール性膵炎は稀である.本例は,超高齢女性に発症したアルコールが成因と考えられる重症急性膵炎であり,極めて稀な症例と考えられた.高齢者の急性膵炎では,重症化,既往合併症の増悪や廃用症候群の続発に特に留意が必要である.
  • 進藤 浩子, 深澤 光晴, 高野 伸一, 門倉 信, 高橋 英, 横田 雄大, 廣瀬 純穂, 佐藤 公, 川井田 博充, 板倉 淳, 藤井 ...
    2014 年 29 巻 4 号 p. 742-748
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.腹部超音波で膵頭部の嚢胞性病変と主膵管拡張を指摘され入院となった.MRCPでは膵頭部に30mmの嚢胞性病変あり,尾側の主膵管は6mmと拡張を認めた.EUSで嚢胞壁肥厚,壁在結節は認めなかった.主膵管は嚢胞より尾側の拡張を認めたが,主膵管狭窄をきたす腫瘍性病変は認めなかった.ERPでは膵頭部主膵管に限局性の狭窄を認め,擦過細胞診でClass Vと診断された.IPMNに併存した微小膵癌を疑い,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行.病理所見は膵頭部の主膵管に20mmにわたって上皮内癌を認め,嚢胞性病変はIPMC non-invasive(gastric type)の診断であった.IPMCと上皮内癌は近接しているが連続性は明らかでなかった.IPMN由来浸潤癌,併存膵癌の鑑別は近接病変では困難とされており,それぞれの前駆病変をとらえた貴重な症例と考えられた.
  • 三枝 久能, 中田 伸司, 渡辺 正秀
    2014 年 29 巻 4 号 p. 749-755
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代女性.心窩部痛を主訴に近医を受診し,腹部超音波検査で膵頭部腫瘤を指摘され,精査加療を目的に当院を紹介された.腹部CT・MRIでは,膵頭部に一部に充実成分を有する約4cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認めた.腫瘤内部は漸増性の造影効果を有していた.FDG-PETでは腫瘤に集積を認め,腫瘍性病変を疑われた.
    幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行ったところ,膵頭部に約5×4×5cmの充実性腫瘤を認め,病理学的には立方上皮細胞により覆われた大小の粘液結節が集簇した膵粘液癌と診断した.
    膵粘液癌は通常型膵癌の一型に分類されるが,その頻度はまれである.膵粘液癌の臨床的特徴,画像所見,発生について文献学的に考察し,併せて報告する.
  • 井上 匡央, 奥村 文浩, 水島 隆史, 西江 裕忠, 安部 快紀, 岩崎 弘靖, 加地 謙太, 福定 繁紀, 鈴木 雄太, 市川 紘, 梶 ...
    2014 年 29 巻 4 号 p. 756-762
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代,男性.検診採血検査にてCA19-9高値(216.8U/ml)を指摘され精査目的に受診した.腹部CTにて膵尾部に約47×31mm程の多房性嚢胞性腫瘤を認め,腹部MRIではT1強調像は等信号で脂肪抑制効果は乏しく,T2強調像,拡散強調像では高信号を呈し,超音波内視鏡検査では内部不均一な低エコー性腫瘤として描出された.診断には難渋したが,悪性疾患も否定できず脾合併膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的には嚢胞は皮脂腺を伴う重層扁平上皮に覆われ,内腔には角化壊死物質が貯留しておりdermoid cystと診断した.膵原発のdermoid cystはまれであり,画像診断も困難で,治療方針も明確ではない.今後症例の集積により臨床病理学的特徴が明らかになることが期待される.
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