膵臓
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20 巻, 6 号
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特集:IPMNの治療方針
  • 田中 雅夫
    2005 年 20 巻 6 号 p. 489-492
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    IPMNの国際診療ガイドラインがまとめられ, 現時点での一応の分類, 診断, 治療方針が示された. しかし, とくに治療方針については, まだ明確にしなければならない課題が残っている. 例えば, 混合型はどう扱うべきか, 腺腫は切除適応ではないのか, 悪性の確実な術前診断は本当に可能になるのか, あるいは主膵管型や混合型を手術する場合の切除線はどう決めればよいのか, またその際の切除断端の判定の仕方などについて, 本邦の研究者は綿密な症例集積を続けることによって, 率先して明らかにして行かなければならない.
  • 村上 義昭, 上村 健一郎, 林谷 康生, 首藤 毅, 橋本 泰司, 末田 泰二郎
    2005 年 20 巻 6 号 p. 493-500
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    主膵管型intraductal papillary-mucinous neoplasm (IPMN) の治療方針について, 自験例の検討と国際コンセンサスガイドラインの要旨をもとに概説した. 主膵管型IPMNでは, 分枝型IPMNに比べ腺癌症例が高率で, 術前診断では, 術前膵液細胞診陽性例は悪性, 術前閉塞性黄疸合併例は浸潤癌が高率であったが, 全体的には良悪性の鑑別, 非浸潤・浸潤癌の鑑別は困難であった. 腺癌症例が高率に見られること, 術前の良悪性の診断が困難なことより, 主膵管型IPMNは全例を手術適応とするべきである. 手術々式としては, 浸潤・非浸潤癌の術前診断が困難なこと, 浸潤癌には高率にリンパ節転移などの膵外進展が認められることより, 膵の部分切除などの縮小手術は施行すべきではなく, 2群リンパ節郭清を伴う膵切除術が施行されるべきである. 膵断端の術中迅速病理診断は必ず施行すべきで, 膵断端にcarcinoma in situ, 浸潤癌, PanIN 3などの病変が認められるときは追加切除を施行すべきである.
  • 有田 好之, 伊藤 鉄英
    2005 年 20 巻 6 号 p. 501-510
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN) は主膵管型と分枝膵管型に大別され, 悪性化の頻度の違いから治療方針が異なる. 分枝型IPMNの良悪性については, 膵嚢胞径, 壁在結節, 主膵管径, 膵液細胞診をもとに判断し, 手術適応が決定される. 分枝型IPMNの予後に関連する因子としては, IPMN自体の悪性度, 通常型膵癌の合併, 他臓器癌の合併, 残膵IPMNの再発, 糖尿病, 併存する基礎疾患が挙げられる.
    国際診療ガイドライン (Tanaka M, et al : Pancreatology 2006 ; 6 : 17-32.) が作成されたことにより, 今後IPMNの治療方針は標準化されてゆくものと思われるが, 高齢者に多い本疾患の治療方針の決定にあたっては, 膵局所の問題だけでなく, 患者の全身状態, 併存する基礎疾患の予後, 膵癌や他臓器癌などの悪性疾患の存在する可能性や膵内外分泌能についても考慮し, 決定されるべきである.
  • 当間 雄之, 趙 明浩, 岡住 慎一, 宮内 英聡, 松原 克彦, 中郡 聡夫, 浅野 武秀, 落合 武徳
    2005 年 20 巻 6 号 p. 511-516
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    膵管内乳頭状粘液腫瘍 (IPMN) は, 画像診断の進歩により遭遇する機会が多くなったが, 質的診断や治療方針に悩むことの多いのも事実である. その中で2004年の国際膵臓学会にてコンセンサス・ミーティングが開かれ, 国際的な共通認識が確立された. 腺癌からが手術適応となるが, 実際には術前における悪性度診断は容易ではない. 分枝型は特に悪性の頻度が低いため, 術前画像診断が非常に重要である. 嚢胞径30mm, 壁在結節の存在, 主膵管径10mmなどが悪性を示唆する所見とされるが, 十分満足できるものとは言えない. 一方, 治療においてはIPMNが通常型膵管癌に比べて浸潤性が乏しく予後が良好であることより, 機能温存・患者のQOL向上を目指した各種縮小手術が適応となりうる.
  • 平野 聡, 近藤 哲, 原 敬志, 竹内 幹也, 七戸 俊明, 齋藤 克憲, 仙丸 直人, 鈴木 温, 狭間 一明
    2005 年 20 巻 6 号 p. 517-521
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    IPMNが多中心性に発生することはすでに遺伝子学的に証明されているが, 現時点では病変それぞれの進展予測を行うことは不可能である.
    当科における単発IPMNの切除の対象は, Borderline (moderate dysplasia ; 境界病変) の段階で切除することである. 多発例の場合もこの規則にしたがい, 多発した病変の中でBorderline以上と判定できるものを切除の適応とし, それ以下の病変は切除せずに極力経過観察を行うべきであると考える.
    浸潤癌以外の多発病変では各種縮小手術が適応となりやすいが, 多発例でこれらを組み合わせて行う場合や切除範囲を通常より拡大して行う場合, 病変が遺残しないよう十分に注意すべきである. 膵全摘術ではインスリン注射の管理と術後のQOLが問題となるため適応は限られる.
    切除に際しては, 術前の詳細な情報と術中超音波検査所見を総合して病変の完全切除を達成すべきであり, 膵管再建においては再発時の精査を考慮して膵胃吻合を選択している.
  • ―その方法を中心として―
    真口 宏介, 小山内 学, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生
    2005 年 20 巻 6 号 p. 522-531
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    Intraductal papillary-mucinous neoplasm (IPMN) の分枝型は, 組織学的には腺癌, 腺腫のほか過形成病変が加わり, 臨床的には主膵管型に比べ浸潤癌の頻度が低く, 長期間進展しない例が多い. このため, 手術適応例と経過観察例が存在することになる.
    手術適応の判定因子としては, 画像診断による結節状隆起・壁在結節 (mural nodule) の評価, 主膵管径・拡張分枝径の測定がある. 国際的には, 拡張分枝径が重要視され, 次に隆起の存在, 主膵管の拡張が悪性を示唆する所見となっている. 一方, 本邦では隆起の高さを最も重要とし, 次に主膵管の拡張が重要との意見が多い. いずれにしても, 治療方針の決定ならびに経過観察には, 膵管の評価と拡張分枝内の隆起の評価の両者が求められ, 前者にはUS, CT, MRCPの組み合わせ, 後者にはEUSが必要である. また最近では, IPMNと通常型膵管癌の併存が注目されており, 経過観察に際し膵全体の評価を怠ってはならない. さらに, IPMN症例には他臓器癌の合併頻度が高く, 定期的な全身検索も重要である.
  • ―観察間隔を中心として―
    藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 伊藤 啓, 洞口 淳, 高澤 磨
    2005 年 20 巻 6 号 p. 532-537
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    膵管内乳頭粘液性腫瘍 (以下, IPMN) は発育が緩徐で, 腺腫, 腺癌に加え非腫瘍性の過形成も類似した臨床像を呈する. 高齢者に多い, 膵頭十二指腸切除や膵全摘が必要になることも多いなどがあり, 発見次第直ちに手術とすることがためらわれる場合も少なくない. 加齢による合併症の増加, 耐術能の低下などの問題もある. 本論文では分枝型IPMNを切除せずに経過観察を行う場合の指標, 経過観察のプログラムについて考察した. 分枝型IPMNでは平滑な壁からなり内部も疎な隔壁様構造しか持たないような病変では, 頻回の経過観察は不要と考えられる. また, 乳頭状隆起を有してもその高さが5mm未満, 一部10mmに満たない場合には, 経過観察も可能と推定される. IPMNでは通常型膵管癌の発生をみることも報告されており, 経過観察時には全膵を評価することが重要である. また他臓器癌の発生も高頻度で, これらも念頭において経過観察を企画する必要がある.
  • 羽鳥 隆, 福田 晃, 鬼澤 俊輔, 今泉 俊秀, 高崎 健
    2005 年 20 巻 6 号 p. 538-545
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    IPMN切除例217例を検討した. 浸潤癌症例では5年生存率39%で, 再発様式は肝転移, 腹膜播種 (局所再発含む) が多かった. 異時性多発に伴う再切除例は5例 (2.3%) で, 主膵管型が多かった. 32例 (15%) に同時性または異時性にIPMN以外の悪性腫瘍を認めた. 以上より, IPMN外科的切除術後の経過観察では, (1) 浸潤癌症例における癌再発予防対策と再発巣の検索, (2) IPMN術後異時性多発, (3) IPMN以外の悪性腫瘍 (膵および他臓器) の併存, に留意すべきである. (1) は補助化学療法などを行いながら, 毎月の腫瘍マーカーの検査, 3カ月毎のCTやMRIなどによる画像検査を行う, (2) は少なくとも年1回はUS, CT, MRI, MRCPなどを用いて残膵の検査を行い, 必要に応じてERPや膵液細胞診を積極的に行う, (3) は見逃しを含めた通常型膵管癌の検索だけでなく, 癌検診などを利用しながら他臓器悪性腫瘍, 特に消化器癌のスクリーニング検査を臓器の特性に応じて, 1~2年に1度は行う必要があると考えられた.
症例報告
  • 諏訪 裕文, 馬場 信雄, 畦地 英全, 雑賀 興慶, 崎久保 守人, 上村 良, 大江 秀明, 岩崎 稔, 吉川 明, 石上 俊一, 田村 ...
    2005 年 20 巻 6 号 p. 547-553
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性. 膵頭部癌にて膵頭十二指腸切除術を施行した13カ月後, 胸部CTにて多発肺転移を指摘された. 塩酸ゲムシタビン1,000mg/m2の点滴静注を週1回行い, 3週投薬後1週休薬のスケジュールを1クールとして化学療法を開始した. 消化器症状や血液毒性がほとんど認められず, 第2クールからは外来通院で行うこととした. 第2クール後のCTで抗腫瘍効果はNCであり, 第3クールからはQOLの維持と長期投与を目的として塩酸ゲムシタビンの1回投与量を700mg/m2に減量した. 以後, 副作用なく癌性胸水の出現まで長期間NCを維持し, 外来にて14カ月間の継続治療が可能であった. 膵癌術後の肺転移再発の予後は極めて不良であるが, 本症例のように, ゲムシタビン治療により, 外来でQOLを維持しながら長期生存が可能な場合もある.
  • 松田 正道, 渡邊 五朗, 橋本 雅司
    2005 年 20 巻 6 号 p. 554-559
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    本例は, 手術中に肝転移が判明した進行膵癌症例である. 肝転移巣をマイクロ波で可及的に焼灼した後, 原発巣に20Gyの術中照射を行い, 以後, 新規抗癌剤 (Gemcitabine, Oxaliplatin ; 以下GemOx) を中心とする外来化学療法を施行した. 計10回の投与で (OX総投与量1,000mg), 末梢神経障害の増悪により中止を余儀なくされたが, 重篤な骨髄抑制・肝腎障害・ADLの低下はなく, 外来で継続投与が可能であった. GemOxの効果と副作用を考える上で, 本例が参考になればと願い報告を行った.
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