予め赤かび病のカビ毒(デオキシニバレノール:DON)汚染が確認されている4段階の赤かび病汚染コムギ粒を対象に,蛍光指紋計測を利用した複数のカビ毒(ニバレノール:NIV,ゼアラレノン:ZON)の非破壊同時検出・定量法について検討を行った.カビ毒濃度推定にはPLS回帰分析を用い,HPLC-UVとHPLC-FLによる化学分析値を目的変数,簡易粉砕したコムギの蛍光指紋計測値を説明変数として回帰式を求めた.化学分析よりNIVはすべて検出下限値以下(ND),ZON濃度はND~0.71 ppmであり,赤かび病発生程度と各カビ毒の挙動は異なった.ZON濃度の推定では,キャリブレーション群(R
2 = 0.993, SEC = 0.02 ppm)とバリデーション群(R
2 = 0.974, SEP = 0.04 ppm)となり,作成された推定式が堅牢であることが示された.得られたPLS回帰式の係数分布から,ZON濃度の回帰推定式が蛍光指紋に含まれるZON情報に基づき作成され,微小な蛍光情報を使って構築されることが示された.これにより,複数成分混在系において抽出などの処理を要さず簡易に汚染コムギ中のZONの濃度推定が可能であることが示唆された.
抄録全体を表示