センサノードや医療用デバイスに向けたLSI では,電源電圧をMOS トランジスタのしきい値電圧(Vt)以下またはVt 付近まで下げて動作させることにより,消費エネルギーの最小化を図っている.こういった超低電圧LSI の設計では,通常の電源電圧で動作するLSI の設計とは異なった課題が存在する.回路の安定動作そのものが困難になることに加え,遅延時間をはじめとする回路特性も,プロセスばらつきや温度変動の影響を大きく受けるためである.本稿では,超低電圧マイクロコントローラやSoC に搭載される論理回路及びメモリ回路に着目し,これまでに指摘されている主要な課題とそれを解決する設計技術をサーベイし,解説する.更に,超低電圧回路を実現するデバイスとして,従来のバルクよりも完全空乏型シリコンオンインシュレータ(Fully Depleted Silicon on Insulator,FD-SOI)の方が優れているという指摘が近年の学会で幾つもなされており,著者の研究室でのチップ試作と実測結果も交えつつ,議論を紹介する.また,一般に論理回路に比べメモリ回路は超低電圧化が困難とされており,これを解決するSRAM の回路方式を紹介するとともに,最近注目されているスタンダードセルメモリ(SCM)という,超低電圧向けメモリ設計技術についても触れる.
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