近年,コンピュータやセンサの性能の飛躍的な向上に伴い,様々な種類のデータを誰でも手軽に利用できるようになってきた.信号処理や機械学習の分野では,データのスパース性に着目したスパースモデリングにより,高次元のデータを効率的に処理する手法が注目されている.更に,空間的に点在する大量のデータをネットワークの構造を生かして分散的に処理する分散スパースモデリングの重要性も高まっている.本稿では,分散スパースモデリングの理論的基礎をマルチエージェントシステムの制御の観点から解説する.また,マルチエージェントネットワーク上のビッグデータ解析への応用例として,スマートセンサネットワークによる分散環境計測を紹介する.
位相限定相関(POC: Phase-Only Correlation)関数は,二つの信号の類似度を評価する関数として,信号マッチングをはじめとする様々な分野に幅広く応用されてきた.筆者らのグループは,信号の位相スペクトルを確率変数と仮定し,POC関数の統計的性質を明らかにする研究に取り組んできた.その中で,信号の位相を統計的に扱うために,方向統計学を用いた新しいアプローチを提案してきた.本稿では,筆者らのグループが方向統計学の観点から解明してきたPOC関数の統計的性質について解説する.
運転者支援機能を搭載した先進安全自動車,人と同じ空間で運転される生活支援ロボット,協働運転する産業用ロボットなどが普及し始め,身近な環境においても電子制御が安全を担うようになった.今後,安全に関連する電子制御に人工知能(AI)技術が適用されることも予想される.このようなシステムにおいては,安全関連制御システムを正常に機能させることで危害リスクを低減または軽減し安全な状態を維持する機能安全を適用することが必要である.本稿では,IEC 61508をはじめとする機能安全に関連する国際規格の概要,直面する課題,改訂動向について解説する.
本稿では,IEEE主導の802.11委員会によって策定されている無線LAN国際規格IEEE802.11の標準化作業の手順や最近の規格動向について概説する.同規格では,最新の11ac改訂でダウンリンクマルチユーザ技術が導入され,もうすぐ標準化作業が完了する11ax改訂でOFDMA技術によるアップリンクマルチユーザ高効率通信が可能となる.筆者らは,それらの規格改訂において計3件(11ac改訂で2件,11ax改訂で1件)の技術提案が採択された経験を有している.また,次世代測位規格11azや次世代超高速通信規格11beなどの最新の標準化動向についても紹介する.
Global Navigation Satellite System(GNSS全地球航法衛星システム)を代表とする各種のセンサ情報を活用することで車両の状態や交通状況を知ることができるいわゆるプローブカーが提案されて20年余り,この技術は既に実用期に入ったがETC2.0を代表とするいわゆるスパースなプローブ情報処理にはまだ幾つかの課題がある.その解決方法について解説する.一方,プローブ情報処理の応用分野の一つでもあるロジステックの分野では道路上の配送車両の管理にとどまらず,倉庫の中でAutomated Guided Vehicle(AGV)の登場で道路上での車両より一足先に自動運転が実現している.この場合はAGVの走行効率の向上と作業者とAGVの協調が重要な課題となる.ロジスティクスはITSが経済活動の促進に直接貢献するという意味で非常に重要な分野であるので本稿ではそのような観点での研究開発トピックを解説する.
近年,外界の情報を取得し,自身の制御を行う自動運転車などの開発・普及が進んでいる.このような機器においては,外界の情報を取得するセンサを用いる.その際,機器はセンサからの情報を信頼し動作するため,攻撃者によりセンサの情報が改ざんや妨害されるとその動作を不正に制御される可能性がある.このように外界の情報を取得し制御するような機器においてはセンサからのデータのセキュリティを考える必要がある.本稿ではセンサが外界から情報を取得する過程におけるセキュリティについて概観する.
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