データの視覚化はデータの関係性や隠れた情報を解釈するうえで重要なテクニックである.データの視覚化の方法としては主成分分析が広く知られているが,人工ニューラルネットワークの一つであるKohonenが提案した自己組織化マップ(SOM: Self-Organizing Map)もデータの視覚化ツールとして広く用いられている.SOMは多次元空間上のデータを二次元程度の低次元空間に位相を保存したまま写像することによりデータの視覚化が可能である.しかし課題によってはデータを生成するもとのモデルを対象とし,モデル間の類似性に基づいた分類やマップ生成をしたほうがよい場合もある.このような課題を解決する方法として,筆者はSOMを発展させたモジュラーネットワーク型自己組織化マップ(mnSOM: Modular Network SOM)を提案した.mnSOMは様々なモデルを対象としてマップを生成できるため一般化されたSOMとしての枠組みをもつものといえる.本稿ではSOMの解説も交えながらmnSOMの理論や学習アルゴリズムについて解説をする.
現在のCPUではクリティカルな処理を既存のOSから物理的に隔離して実行するためにTrusted ExecutionEnvironment (TEE)機能が提供されている.有名なところではIntelのSGXやAMDのSEV,ArmのTrustZoneであるが,オープンアーキテクチャであるRISC-VでもTEE開発が進められている.残念ながらこれらのTEEの機能はCPUによって大きく異なる.TEEの共通機能は隔離実行を提供するのみであり,その信頼性を支える技術は別に用意する必要がある.本論文では,各TEE実装詳細を解説するとともにTEEで使う機密情報を厳密に管理するための信頼の基点(Rootof Trust)やTEEを含むプラットフォーム及び実行するコードの真正性を確認するリモートアテステーションなど,TEEの信頼性を支える技術についても解説する.また,TEEの開発環境,脆弱性,規格活動も紹介する.
私たちの社会における価値観の形成に関して,「物語」が果たす役割は決して小さくない.物語は,この社会の価値観を形成し変化させうるものであると考える.本論文では,物語分析のうち,特に物語の訴求力を分析する方法としての「物語訴求構造分析」について論じる.まず,物語論及び物語分析の基礎となる理論を説明する.続いて,物語分析及び物語論の研究史を概観する.また,物語分析において用いられる主要な手法について概観し,その概要について述べ,物語の訴求構造分析手法の応用例を提示する.
ハイパースペクトル(HS)画像は紫外線領域から近赤外線域までの広い波長(スペクトル)帯の情報を細かく分光イメージングすることで取得される空間(二次元)―スペクトル(一次元)の3Dデータであり,人間の目や既存のRGBカメラでは捉えられなかった物理的性質や現象を可視化できる.しかし,空間―スペクトル情報を完全に取得することは計測環境/光学的設計の観点から困難なことが多く,計測の際に生じるノイズなどによる劣化も避けられない.本稿では,最適化を活用することで不完全かつ劣化を伴う計測データから所望のHS画像を推定する技術について解説する.
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