土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
65 巻, 1 号
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地震工学論文集第30巻
  • 佐々木 智大, 陳 紹帥, 川島 一彦
    2009 年 65 巻 1 号 p. 442-449
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    震動台加振実験から橋脚基部に作用する曲げモーメントを算出する方法には,1)ロードセルを用いて橋脚に作用する水平力や鉛直力を直接計測し,これから橋脚基部に作用する曲げモーメントを算出する方法と2)橋脚に生じた絶対加速度を測定し,これに質量を乗じて橋脚に作用する慣性力を求め,これからこれから橋脚基部に作用する曲げモーメントを算出する方法の2種類がある.本検討では,E-ディフェンス震動実験の結果からこれら2つの手法に基づいて橋脚基部に作用する曲げモーメントを算出し,その精度について検討した.その結果,摩擦やP-Δ効果の影響を正しく見込むと両手法による曲げモーメントは位相,振幅ともによく一致することが明らかになった.
  • 五十嵐 晃, 井上 和真, 夛屋 文子, 家村 浩和, 吉田 雅彦, 姫野 岳彦, 長澤 光弥
    2009 年 65 巻 1 号 p. 450-455
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    既設の長大鋼斜張橋の耐震補強のために採用が検討されている積層ゴムダンパーの検証のため,4ヶの積層ゴムを対称配置した積層ゴムダンパーの構造を可能な限り模した積層ゴムダンパー試験体を対象とした正負交番載荷試験を行い,ダンパーとしての基本性能を調査した.また,縮小モデルに準静的載荷試験を行い,制震ダンパーとしての性能評価を行った.積層ゴムダンパーの等価剛性および等価減衰定数は,積層ゴムの面圧依存性が小さいことが見出された.また,ダンパーを構成する積層ゴム体各々の単体試験で算出されるエネルギー吸収能に比べて,その後に積層ゴムダンパーの載荷を行った場合では,エネルギー吸収能が低下する結果が得られた.せん断ひずみ300%以上の変形を与えるせん断変形性能試験においても積層ゴムは破断に至らず,十分なエネルギー吸収能力を保持することを確認した.
  • 塩崎 禎郎, 菅野 高弘
    2009 年 65 巻 1 号 p. 456-467
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    ジャケット式岸壁は,ジャケット本体に背面の土圧を受け持たせる構造と,別途,L型ブロックなどの土留め構造を設置するタイプに分けられる.前者の場合,土留め構造として鋼矢板セル工法のアーク部分と同じ構造(アーク矢板)を適用すると工事費の縮減につながることが試設計で明らかになった.そこで,本工法の実用化に向けて,従来工法である鋼管矢板土留めと比較して耐震性能に違いが生じるのか,1/20縮尺の模型振動実験で検証した.その結果,設計震度相当の地震に対して土留め構造の違いの影響は無いことが明らかになった.また,ジャケットや土留め構造を適切にモデル化することで模型振動実験を数値解析で再現できることがわかった.
  • 中田 宙志, 松崎 裕, 川島 一彦
    2009 年 65 巻 1 号 p. 468-477
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    我が国では,耐震基準が順次,改定されてきたが,これにより橋脚の保有する耐震性能がどの程度向上してきたのかは十分に定量化されていない.また,RC橋脚の構造性能や地震応答の評価には,降伏剛性や曲げ耐力等の基本的な特性が重要であるが,これらは鉄筋やコンクリートの材料特性のばらつきの影響を受ける.そこで,本研究では,1964年と現在の耐震基準に従って設計されたRC橋脚を対象として,材料特性のばらつきがRC橋脚の地震応答に及ぼす影響を明らかにするとともに,地盤種別とマグニチュード,震央距離で区分された地震動群が作用した場合の応答塑性率の超過確率を算定し,それに基づいてRC橋脚の耐震性の向上度を定量的に評価した.
  • 伊奈 義直, 中谷 泰子, 長嶋 文雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 478-487
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    高減衰ゴム支承(免震支承)を用いたPC 2径間連結連続道路橋を対象に,橋梁全体系の地震時挙動の検証を目的とした観測を実施した.地震データの内,加速度波形を2回積分した変位波形,および軌跡に基づいた挙動を照査し免震効果を確認した.また,大地震時における挙動を想定するため,免震支承の数値モデル化による構造同定解析を実施した.このことより,斜橋の影響や各支点反力の分担率の相違を確認した.
  • 佐藤 雄亮, 豊田 幸宏, 松浦 真一, 酒井 理哉
    2009 年 65 巻 1 号 p. 488-498
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論文は,原子力発電所における埋設消火配管の継手性能について,4点曲げ載荷実験と有限要素解析,弾性床上のはり理論に基づき検討したものである.対象とした継手は,溶接継手,フランジ継手,ねじ継手,カップリング継手である.4点曲げ載荷実験の結果,溶接継手やフランジ継手は機械式継手の一つであるカップリング継手に比べて5倍の最大曲げ耐力を有していることが示された.また,4点曲げ載荷実験と溶接継手を対象とした有限要素解析から,送水機能喪失の目安となる各継手の内圧の保持限界状態を明らかにした.さらに,弾性床上のはり理論を用いて各継手が内圧保持限界にいたる地盤変位を算出し,その結果,溶接継手はカップリング継手やねじ継手に比べて5倍程度の地盤変位吸収能力を有していることを明らかにした.
  • 松崎 裕, 川島 一彦
    2009 年 65 巻 1 号 p. 499-506
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    近年の強震観測網の充実により,震源近傍では著しく短周期成分が卓越した上下方向地震動が生起し得ることが観測事実として明らかとなってきている.本論文は,こうした短周期成分が著しく卓越した上下方向地震動が一般的な桁橋の地震応答に及ぼす影響について,2008年岩手·宮城内陸地震の際にKiK-net一関西観測点で観測された強震記録を用いて,ファイバー解析に基づいて検討した結果を報告するものである.本検討は限られた解析条件ではあるが,短周期成分が卓越した上下方向地震動により,橋梁の鉛直方向の振動特性を支配する固有振動モードが励起されるため,自重による圧縮軸力の大きさに匹敵する程の引張軸力が橋脚基部に作用し得ることが明らかとなった.
  • 岩下 友也, 藤塚 佳晃, 佐々木 晋, 山口 嘉一
    2009 年 65 巻 1 号 p. 507-520
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    レベル2地震動に対する重力式コンクリートダムの耐震性能の照査において,堤体に生じた引張亀裂が上下流面に貫通した場合には,堤体の上部分断ブロックの安定性の詳細な検討·評価が必要とされている.そのため,コンクリートダムの亀裂分断後における堤体上部ブロックの地震時挙動を詳細に把握する必要がある.そこで本研究では,亀裂分断させたダム形状の模型試験体に対して,堤体模型上流側に貯水した状態で振動実験を実施した.上部ブロックの動的挙動を把握するとともに,上部ブロックに作用する動的荷重(慣性力,上流面に作用する動水圧,分断面に作用する揚圧力)について分析を行った.分断面に作用する揚圧力については,作用の有無の荷重条件での比較振動実験を実施し,上部ブロックの挙動に及ぼす揚圧力の影響を分析した.
  • 樋口 匡輝, 五十嵐 晃
    2009 年 65 巻 1 号 p. 521-531
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    構造物の動的応答のアクティブ·セミアクティブ制御の問題において,絶対応答の低減を目標とする制御則として負剛性制御が提案されている.負剛性制御のパラメータ設定法については,スカイフック制御則に基づいた最適パラメータ設定法が提案されている.しかしこの設定法においては,セミアクティブデバイスにおける制約が考慮されていないため,負剛性制御をセミアクティブデバイスに適用する,いわゆる擬似負剛性セミアクティブ制御におけるパラメータの設定法としては不都合があった.本研究では,擬似負剛性セミアクティブ制御のベースシア履歴曲線に着目し,ベースシアすなわち絶対加速度を増加させる事なく減衰を最大限導入するという考え方に基づいて,擬似負剛性制御の最適なパラメータバランスを提案した.また,実地震波を用いた解析の結果,提案したパラメータバランスとダンパー荷重の制約とを組み合わせて得られた結果が,応答低減にも有利なものとなった.
  • 李 相勲, 遠藤 孝夫
    2009 年 65 巻 1 号 p. 532-535
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    新幹線や連続高架橋などのような半無限高架橋構造物を動的解析する際,解析対象部の両端の境界の処理としてはエネルギー伝達境界などが提案されている.しかし,そのエネルギー伝達境界の定式化には減衰項が含まれていないという指摘があった.本研究では,無限遠方へのエネルギー逸散というところに着目し,マス-バネ系モデルを用いたパラメトリック解析を行い,無限領域の減衰項が解析領域の動的応答に及ぼす影響について検討した.
  • 鍬田 泰子, 安井 裕一
    2009 年 65 巻 1 号 p. 536-543
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    近年,地震が多発する中,公共性の高い水道事業体においては事業規模を問わず地震後に安定した水供給を継続することが期待されている.そのためにも,地震後の迅速な職員参集と最適な人員配置が重要となる.本研究では,大都市水道事業体の地震時の事業継続のための職員参集モデルを提案している.大阪市水道局を対象に通勤状況に関するアンケート調査を実施し,その結果から,職員が参集できる可能性と職場までの参集時間の算出式を評価し,モデルに組み込んだ.とくに,交通機関の一部機能停止による遅延率を導入しており,大都市特有の参集モデルとして有効である.また,現在の職員についても本モデルを適用して参集シミュレーションを行い,事業所ごとに参集率を評価できることを示した.
  • 古川 愛子, 大塚 久哲, 三輪 滋, 小野 達也
    2009 年 65 巻 1 号 p. 544-553
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,3次元個別要素解析によって地震時における墓石の転倒基準を作成した.転倒基準は,最大加速度と振動数が与えられたときに,転倒に至る墓石の高さ幅比の最小値を表したものである.まず,正弦波を入力した解析によって,無補強墓石の転倒基準を作成した.転倒基準を実地震動に適用するには,正弦波に等価な振動数を決定する必要がある.そこで,地震動と正弦波を与えた解析結果の比較によって,地震動の等価振動数を決定する方法を提案した.さらに,心棒で石材間を連結する補強墓石の転倒基準も作成した.提案した無補強·補強墓石の転倒基準の有用性は,実寸大模型を用いた振動台実験結果と比較することにより検証した.最後に,転倒基準から転倒率曲線を算出する方法について述べ,過去の被害調査で得られた転倒率と比較することにより,信頼性を検証した.
  • 鈴木 猛康
    2009 年 65 巻 1 号 p. 554-564
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    地震や豪雨等により災害が発生した際,災害対応の最前線となる市町村の庁内情報共有を支援するため,各種防災情報システムが導入されている.災害対応という危機的状況下で使われるツールであることから,防災情報システムのアプリケーションには高いユーザビリティが要求される.本論文では,筆者らが開発し,試験的に運用中である災害対応管理システム(庁内情報共有システム)について,ワークショップを通して収集したユーザーの意見を反映させ,また実際に情報入力を繰り返しながら,ユーザビリティに関する大幅な改善を行い,システムの更新を行っている.また更新システムを用いて地方自治体職員による入力評価実験を実施し,システムのユーザビリティ向上を確認するとともに,ユーザビリティ向上に対する各改善項目の相対比較について,AHP手法を適用した分析を試みている.
  • 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 565-574
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    日本水道協会により提案されている配水管の標準被害率曲線は,1995年兵庫県南部地震における強震観測点から周辺2km四方の配水管被害率によって構築されている.国や自治体が行う地震被害想定調査では,標準被害率曲線が対象地域における配水管被害率,断水率などの推定に用いられている.しかし,日本水道協会が提案する標準被害率曲線に加えて,その変形式が使用される場合もあるなど,地震被害想定調査の実施主体によって様々である.これには,一地震の被害データのみから標準被害率曲線が構築されており,ときに過大な被害率が見込まれてしまうということも多分に影響していると考えられる.そこで,本研究では近年の地震被害データも考慮に入れた新たな標準被害率曲線を提案する.
  • 酒井 久和, 山地 智仁, 小川 悟史
    2009 年 65 巻 1 号 p. 575-580
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    生活に隣接した石積み擁壁の崩壊は,居住や通行中の人命に対する安全面だけでなく,前面の道路における交通機能を阻害する要因となる可能性が高い.本研究では,近年,落石や岩盤崩壊などのシミュレーションで使用実績が多い不連続変形法(DDA)を採用し,DDAが石積み擁壁の耐震性評価手法だけでなく,積み石の崩壊域の評価手法としての妥当性を有するかを検証するため,2001年芸予地震における石積み擁壁の崩壊シミュレーションを行った.また,DDAでは要素数が多くなると解が不安定になる問題が生じたため,解析モデルの簡略化の影響についても検討を行った.
  • 川西 智浩, 室野 剛隆, 宮本 岳史, 曽我部 正道
    2009 年 65 巻 1 号 p. 581-586
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    鉄道構造物の耐震設計においては,構造物上の列車の走行安全性を確保する必要がある.列車の走行安全性を調べるためには,入力地震動の特性を考慮することが重要であるが,不整形地盤においては,基盤傾斜部で波が発生して水平方向に伝播するため,鉄道車両の挙動もこの波動伝播特性に影響を受けると考えられる.そこで本研究では,まず不整形地盤の2次元動的FEM解析のパラメータスタディを実施し,得られた地震波を用いて車両の挙動解析を実施することにより,不整形地盤の波動伝播特性が構造物上の車両の挙動に及ぼす影響について検討を行った.
  • 小西 康彦, 庄野 貴英, 伊豆田 久雄, 谷 浩明, 高橋 和雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 587-595
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    既設小規模地下構造物の老朽化対策や地震対策に伴い,地下水位以下を部分的に開口する必要が生じる場合,これまでは地盤改良により地盤の崩壊を防止して対応する場合が多かった.しかしながら,地盤改良は地下水の汚染など環境に悪影響を与える場合があることなどの問題があった.
    そこで筆者らは,地震時の液状化に伴うマンホールの浮上を抑制する装置を開発する過程で,元の地盤にもどる環境にやさしい工法として「簡易な凍結工法」を開発し,実証実験を行いその効果を検証したので報告する.
  • 石田 栄介, 末冨 岩雄, 安田 進, 細川 直行
    2009 年 65 巻 1 号 p. 596-605
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論では,地震観測情報から補間推定された面的な地震動分布を利用し,地震時,即座に液状化危険度分布を推定する手法を開発する.液状化危険度指標は,地震被害想定等に用いられるPL値とする.PL値は,土質情報から深さ毎に液状化判定を行った結果(FL値)を深さ20mまで総合評価した地点指標である.本論では,地盤データベースを活用し,地盤調査地点毎のPL値を計算し,補間により面的なPL値分布を作成する.この時,PL値計算及び空間補間は,計算時間を要する上,計算結果の妥当性確認が必要な処理である.そこで,地盤データベースに基づき事前に計算できる部分を液状化テーブルとして整備し,地震時には,地震動情報を用いて液状化テーブルから適切な数値を検索すれば良い仕組みとしている.
  • 星 幸江, 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 606-613
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    地震動指標は地震の規模や被害を知る上で重要な役割を果たしており,実際の地震被害との相関が高いことが求められる.しかし近年の地震において,地震動指標値のみで建物被害を説明しきれないケースがあり,新しい指標が提案されるなど多くの研究がなされている.これを受け本研究では,計測震度,地動最大加速度(PGA),地動最大速度(PGV),SI値に関して,木造建物を対象とした地震応答解析を行い応答塑性率との相関性を検討した.解析結果からSI値に着目し,現行の減衰定数と積分周期帯について変更した修正SI値を提案した.この修正SI値と応答塑性率や実地震時の建物被害率との相関性を検討し,修正SI値の評価を行った.
  • 君島 康太, 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 614-621
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,首都直下地震を対象としたライフライン施設の復旧シミュレーションや,各種提案されている埋設管被害予測式の高度化のための基礎資料の構築を目的とし,2007年新潟県中越沖地震におけるライフライン被害がどのような条件下で発生しているかを整理し,ライフライン被害の空間相関性を把握した.具体的には,地震被害,管路,地形の各種データを収集し,地理情報システム(GIS)で統合を行い,微地形,標高,地盤切盛り高さの各条件ごとにライフラインの被害率の算出を行った.また,被害箇所の空間的相互位置関係を明らかにするために,各種地震被害間の最近接距離の分析を行った.
  • 池野 勝哉, 吉田 誠, 安楽 宗一郎, 風間 基樹, 渦岡 良介, 仙頭 紀明
    2009 年 65 巻 1 号 p. 622-628
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    近年,既設構造物直下の有効な液状化対策として,曲がり削孔を併用した溶液型薬液注入工法が注目されている.これにより従来,河川堤防で行われてきた法尻地盤の固化あるいは締固め,矢板打設などの液状化対策に代わり,堤体直下地盤を直接改良する効果的な対策が可能になる.そこで,筆者らは,盛土直下を直接改良した液状化対策効果を確認するため,1G場の模型振動実験を実施し,2つの動的な有効応力解析コードから盛土挙動の再現を試みた.実験の結果,顕著な残留変形の抑制効果が確認できたほか,無対策ケースを有効応力解析で概ね再現できる一方で,改良層のパラメータ設定に課題があることを示した.
  • 副島 紀代, 目黒 公郎
    2009 年 65 巻 1 号 p. 629-636
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    事業継続マネジメント(BCM)において,実際の事業継続性を適切に評価するために,プロジェクト管理手法であるPERT/CPMを用いて,復旧時間を定量化する手法を提案した.本研究では対象ハザードを地震とし,既往の被害予測手法に基づく個々の被害状況に応じた復旧所要時間の推定から,ハザードの特性や規模に応じた全体の復旧所要時間の定量的な予測が可能となることを示した.さらにこの手法では,全体の復旧所要時間に最も影響のある復旧箇所をクリティカル·パスとして特定することができる.そこで,復旧所要時間を指標とした事業継続性の評価に基づいて対策の優先順位を合理的に判断し,効果的な地震対策を選定する手法を提案した.
  • 奥村 与志弘, 原田 賢治, Gica Edison, 高橋 智幸, 越村 俊一, 鈴木 進吾, 河田 惠昭
    2009 年 65 巻 1 号 p. 637-644
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,被災後の居住規制により移住を余儀なくされた被災者の生活再建や地域社会の復興状況、および、それらを支援する中央・地方政府などの活動の長期的効果の把握を目的として実施した1994年フィリピン・ミンドロ地震津波災害による被害を受けた集落への現地調査の結果をまとめたものである.その結果,「Food-for-Work」と呼ばれる住宅再建手法などが効果的に作用し,政府による移住地開発は一定の成功を収めていることが分かった.ただし,さらに今後の動向には,土地所有者証明書の早期の発行や家庭をも巻き込んだ防災教育の継続が重要であることも分かった.
  • 野澤 亮太, 尾崎 潤, 長嶋 文雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 645-654
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    兵庫県南部地震(1995)での文化財被害の教訓から,博物館などの展示物の転倒安全性を高めるために二次元免震装置が急速に普及した.しかし,新潟県中越地震(2004)では,この免震台上に置かれていた国宝の火焔土器が転倒·破損する被害を受けた.以後,免震台と他の転倒防止具との併用をするなど転倒に対する対策がとられているが,複雑な形状をしている文化財の転倒防止対策を施す必要の有無の判断や, どのような対策をどの程度とるべきかなどの検討は地震工学の専門家にとっても難しい問題である.本研究は, 文化財の地震時転倒安全性評価を支援するシステムの開発を目的としており,専門知識を持たない学芸員や一般の人を対象にし,できるだけ操作が簡易なシステムを目指したものである.
  • 野村 浩司, 大原 美保, 目黒 公郎
    2009 年 65 巻 1 号 p. 655-660
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    南海トラフ沿いの東海,東南海,南海地震をはじめとして,現在わが国では巨大地震の発生が危惧されている.特に首都直下地震など,大都市とその近傍で発生する地震が日本経済へ及ぼす影響は大きい.本研究では,兵庫県南部地震を対象として,地震前後での土地価格の変動率関数を作成し,地震が土地の価格に及ぼす影響を分析した.その結果,地震から1年後の1996年は建物被害が甚大な地域ほど土地の価格が下落したが,2年目の1997年には全壊·全焼率が高い地域では土地価格の下落が止まる一方で,半壊率が高い地域では下落し続けた.その後,土地価格は全壊·全焼率の高い地域から回復し始め,半壊率の高い地域では回復が遅れた.
  • 三上 卓, 君島 康太, 時沢 英明, 笹田 修司
    2009 年 65 巻 1 号 p. 661-668
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    平成16年に発生した新潟県中越地震では,約1万7千世帯の家屋が全半壊し,ピーク時には約10万人が避難所を利用していた1).一方で,避難所での生活を避け,自家用車内で生活し,エコノミー症候群によって亡くなる人が出るという事態が生じた.その理由の一つとして,避難所の設備等に不十分な点が挙げられる.本研究では,避難所設備の重要度をアンケート調査から設定し,重要度に応じて避難所設備の現状を評価した.さらに,その結果に基づき避難所設備の効率的な改善方法を検討した.
  • 蛭間 芳樹, 大原 美保, 近藤 伸也, 目黒 公郎
    2009 年 65 巻 1 号 p. 669-679
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本稿では,災害時の広域医療搬送を対象として,業務を遂行する組織群の関連性や情報共有および応援体制の観点から現状分析を行った.まず,広域医療搬送を各フェーズに分け,防災関連機関の業務プロセスを洗い出し,それら組織間を流通する情報を整理することで広域医療搬送の全体像を把握した.これにより,組織横断型プロジェクトである広域医療搬送の業務や情報の流れとボトルネックが明らかになった.次に,防災情報共有プラットフォーム導入の効果について,主にボトルネックの解消に着目して分析を行ない,それが広域医療搬送の運用面の課題解決に貢献することを定量的に示すとともに,災害医療の分野における最重要課題の一つである“避けられた死”の軽減に繋がる可能性を考察した.
  • 本多 弘明, 堀 宗朗
    2009 年 65 巻 1 号 p. 680-687
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    構造物の地震損傷度診断を目的として,加速度データのみから構造物の復元力特性を計測する方法を提案した.この方法は,時刻同期をとった加速度計の時刻歴データから計算される変位を使うものである.実構造物に計測システムを設置し約3年の観測を行ったところ,計測された加速度から復元力特性が計測できることが確認された.多質点系モデルを使った数値実験により,提案した復元力特性の計測方法によって,非線形の復元力特性が計測可能であることを示し,さらに損傷判定に必要な加速度計の設置条件を検討した.多質点系モデルの各質点に加速度計を設置せずとも,1質点おきに設置することで,非線形の復元力特性が計測できることが示唆された.
  • 有賀 義明
    2009 年 65 巻 1 号 p. 688-696
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    近い将来,東海地震,東南海·南海地震,首都圏直下地震等の発生が想定されている.これらの地震が想定されている本州太平洋側には,東京,横浜,名古屋,大阪などの大都市が分布しており,地下街,地下鉄等の利用が行われている.地下空間の基本特性は隔離性であり,この基本的特性から様々なメリットとデメリットが派生すると考えられる.人間の活動空間として地下を利用する場合,平時には問題が表面化することはないが,災害時には,空気,光,水,火,煙,有毒ガス等,人間の生命を脅かす危険要因が顕在化することが想定される.このような点を踏まえ,本研究では,人間の活動空間として地下空間を利用する場合を前提として,大都市の地下空間に要求される耐震性能を提案するとともに地震防災対策について考察した.
  • 辻原 治
    2009 年 65 巻 1 号 p. 697-704
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    緊急時の避難行動をシミュレートする研究が近年行われるようになった.実用化の過程において,実際の大規模な避難行動とシミュレーションを比較検討し,シミュレーションの適用性について検証することが重要である.本研究では,セルオートマトン(CA)に基づく避難行動シミュレーションシステムを構築し,学生寮で実施された500人規模の避難訓練への適用性について検討した.混雑時の歩行速度低下をシミュレーションに取り入れることで,避難行動をより精度よく再現できることを示した.
  • 小野 祐輔, 清野 純史, 小林 望, 新垣 芳一, 高橋 天平
    2009 年 65 巻 1 号 p. 705-709
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    一般的な構造物の被害の即時的な把握法では,ネットワーク化された高精度の地震計で観測された地震動波形に基づき,対象とする構造物地点での地震動強度を推定し,被害程度を評価する.本研究では,通常の地震計に比べると精度は劣るが安価な小型センサーを構造物に設置し,センサー単体で構造物で実際に観測された地震動を利用して被害推定を行う手法を提案する.提案する手法で用いる小型センサーには対象の構造物のモデル特性を組み込んでおき,センサー内でほぼリアルタイムに応答解析を行った結果に基づいて被害程度を表示する.このようなセンサーは,用途が単純で対象とする地震動レベルも制限できるため,きわめて安価で容易に製作することができる.
  • 近藤 伸也, 蛭間 芳樹, 目黒 公郎, 河田 惠昭
    2009 年 65 巻 1 号 p. 710-716
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,地方自治体の災害対応時における組織的な対応のあり方について検討した.今回は特に本部長より組織としての目標が与えられている状況下における災害対策本部での各部局および事務局の対応を対象にした.具体的には,情報収集から対策の実施·住民への広報までに関する組織的な対応を業務プロセス,組織デザイン,情報マネージメントの視点から設計し,地方自治体職員の地震災害を対象とした図上訓練での対応を記録してから,同じ視点から対応を評価した.その結果,地方自治体職員が組織的な対応を実施する際に考慮すべき項目が業務プロセス,組織デザイン,情報マネージメントの視点から明らかになった.
  • 谷口 靖博, 宮島 昌克, 源田 裕希
    2009 年 65 巻 1 号 p. 717-726
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    近年の水道事業体における財政事情の悪化や施設の経年化を背景に,膨大な投資が必要な水道施設の耐震化やその他の震災対策が十分に進捗していない事業体が多い.震災対策を推進していくにあたっては,料金負担者である住民の理解が必要である.本研究では,水道の震災対策事業に関する住民意識を把握するため,大阪市民を対象に,震災によるリスクを提示したアンケート調査を行った.その結果,震災時の断水受忍限度が一番短い使用用途はトイレであり,また,震災対策に対するWTP(支払意志額)は現状の震災対策費用より高く,住民は水道事業体にさらなる震災対策の推進を望んでいる傾向が明らかとなった.なお,支払意志額と情報提供の有無等アンケートの質問項目との有意差が認められなかったため,震災対策推進のためのリスクコミュニケーションの手法等について検討する必要がある.
  • 田中 宏司, 鈴木 崇伸, 山崎 泰司
    2009 年 65 巻 1 号 p. 727-736
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    通信土木設備は,地下に布設するケーブルを効率的に運用·保守するだけでなく,地震時にはケーブルに作用する外力を低減する性能が求められる.管路設備の耐震性能を効率よく向上させるには,通信用地下ケーブルの耐震性能の把握が不可欠であり,収容物であるケーブルの限界状態に応じた性能設計が必要とされる.本研究は,管路設備が地震外力により破損した状態を想定して,収容した地下通信ケーブルに外力を与え,ケーブルの変形と通信サービスへの影響を計測して,ケーブルの限界状態を明確にした.限界状態把握実験の結果,管路設備が被災した際にケーブル障害が生じる張力と屈曲角の関係が明確になり,通信サービスの途絶を防止する対策検討への活用が期待できる.
  • 田中 宏司, 鈴木 崇伸, 岩田 克司, 山崎 泰司
    2009 年 65 巻 1 号 p. 737-747
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    通信管路は河川横断区間では多くの場合,道路橋の上部工内部に架構と管を設置して橋梁添架設備と呼ばれる形態をとる.近年,橋梁の耐震対策として橋梁の免震化が進められているが,橋梁添架設備は移動支承部の変位を見込んで伸縮構造を採用しているものの,免震支承の変形までは見込んでおらず,添架方法の見直しが必要とされる.本研究では,シミュレーションにより免震橋梁の運動を分析して,最大変位と運動の方向から,橋梁添架設備に必要とされる変形性能を明確にする.また,実験的に免震橋に添架した既設設備の挙動を確認し,対策が必要な添架条件を明確にする.最後に通信サービスの途絶からケーブルを保護する合理的な添架方法について提案を行っている.
  • 三輪 滋, アイダン オメル, 鈴木 崇伸, 遠藤 一郎, 鈴木 智治, 砂田 尚彦, 清野 純史
    2009 年 65 巻 1 号 p. 748-756
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2004年12月の巨大地震から引き続き多くの地震災害に見舞われたインドネシアに対し,NPO国境なき技師団などが災害復興支援活動を実施している.現地では復興計画を策定するために不可欠な被災地域の地盤データがほとんどなかったことから,スウェーデン式貫入試験による地盤調査法や結果を液状化判定や防災計画へ反映する方法を現地技術者に指導する活動をスマトラ島の各地で継続的に実施してきた.また,インドネシアでは強震記録もほとんどないことから新たにパダン市で強震観測を開始し,地震観測と地盤調査を組合わせ地震防災への取組みをより活性化させる活動に支援を拡大した.本文ではこの技術移転普及支援活動について報告するとともに,このような活動を継続的に進めていく上での課題について考察した.
  • 源 貴志, 成行 義文, 藤原 康寛, 三神 厚
    2009 年 65 巻 1 号 p. 757-767
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    次回の南海地震が今後30年以内に50∼60%の確率で発生すると予測されている.また,南海地震は歴史的に地震動による被害とともに四国・近畿地方の太平洋沿岸部に津波被害をもたらしている.津波による人的被害を防ぐためには,全住民参加の避難訓練を定期的に行い,避難時における問題点の事前抽出を行うとともに,各住民の避難意識向上を図るべきである.しかし,全住民参加の避難訓練の実施は容易ではない.このことから,著者らはペトリネットを用いた精度の高い津波避難シミュレーション手法を開発し,それを用いて対象地区の問題点を抽出するとともに,対策効果の評価を行うため,シミュレーションより得られる避難完了率曲線に基づいた地区の津波避難安全性指標を考案し,その有用性を検討した.
  • 川井 修, 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 768-775
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論文では液状化発生地点の早期把握のために,液状化地点,液状化が疑わしい地点,非液状化地点の計112地点を選出し,加速度記録から算出するゼロクロス周期を用いた液状化判定手法を提案する.液状化地点の加速度記録において,水平方向の卓越周期は長周期化する傾向がある一方で,主要動時の上下方向の卓越周期はあまり変化しない傾向がある.この振動数特性を捉えるために,簡易で即時性が高いゼロクロス周期を利用して,周期の時刻歴変化を把握する.得られたゼロクロス周期の水平·上下方向に閾値を設定し液状化を判定するとともに,既往の手法と比較することで本手法の有効性を確認した.
  • 能島 暢呂
    2009 年 65 巻 1 号 p. 776-788
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    最大フローを指標としたライフラインの地震時ネットワーク機能評価において,要素破壊の相関性が及ぼす影響について考察した.まず相関を有する複数事象の結合事象の生起確率の数値積分法と効率的シミュレーション法について概説し,3種類の代表的ネットワークの最大フローの確率分布や各種評価指標に及ぼす相関の影響について考察した.さらに仮想ネットワークを対象として,想定地震のもとで,地震荷重および要素の耐力の相関評価からネットワーク機能評価に至る一連の流れを示し,シミュレーション法と数値積分法による評価結果に基づいて考察した.最大フローの確率分布は相関係数の増大とともに広がる傾向にあり,無相関とした場合にはシステム信頼度を過大·過小に評価する可能性があることを示した.
  • 青戸 拡起, 吉川 弘道
    2009 年 65 巻 1 号 p. 789-795
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    地震による構造物の被害予測には,表層地盤に関する地盤増幅率の評価が重要となる.本論は,この地盤増幅率について,土木·建築分野における主要な評価手法を調査し,算定根拠を整理するとともに,このうち主要5手法については,地盤の1次周期,構造物の固有周期,地盤の材料非線形性による効果に関して,数値シミュレーションを実施し,地盤増幅率を定量的に考察した.その内の4手法は,地盤の1次周期と構造物周期の相対関係,および,地盤の材料非線形性の効果をともに反映しているが,後者の効果を,任意の強さの地震動に対して利用できるものは限られていた.また,微弱な地震時の地盤増幅率について非常に大きな値を示すものがあり,上限値に対する配慮の必要性をあわせて指摘した.
  • 陳 光斉, 善 功企, 鄭 路
    2009 年 65 巻 1 号 p. 796-803
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2008年四川省〓川県で発生した大地震(Ms8.0)は観測史上例のない大規模な土砂災害を引き起した。災害の特徴の一つは、大量の崩壊土石が1000m以上の遠距離を移動したために村落の全滅など甚大な被害をもたらした点があげられる。そこで、本研究では、地震による崩壊土石の遠距離運動現象を解明するために、先ず「多重加速モデル」を提案し、遠距離移動のメカニズムに関する理論的根拠を考察した。そして、斜面からの飛び出し岩塊の大きな初期速度の付加メカニズムについて提案モデルにより検討した。また、振動台による模型実験と個別要素法(DEM)による数値シミュレーションを行い、地震動による移動距離への影響や崩壊土石の形状による地震動の影響度合いについて検討し、「多重加速モデル」の妥当性について検証を試みた。
  • 宮島 昌克, 島崎 剛
    2009 年 65 巻 1 号 p. 804-810
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論文は地震時に救命救急活動の拠点となる医療施設を取り上げ,地震時の被害状況を調査,分析し,今後の耐震対策への教訓を読み取ろうとしたものである.そこで,2007年に発生した能登半島地震と新潟県中越沖地震を対象に,被災地の医療機関に対してアンケート調査を行い,回収したアンケート結果を整理し,医療施設の被害分析を行うとともに,今後の医療施設に対する地震対策について考察した.その結果,診察や手術などの医療行為は震度5強以下ではほぼ通常通り行えており,患者の搬送を工夫することで被災地における医療活動の効率化を図ることができると考えられること,地域の規模にもよるが,能登半島においては,給水車による給水活動の強化により,透析治療以外の治療行為に必要な水は補えることなどが明らかとなった.
  • 常田 賢一
    2009 年 65 巻 1 号 p. 811-820
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2008年岩手・宮城内陸地震では,地震時の地すべりや斜面崩壊を誘因とする天然ダムおよび土石流が地震災害の主要な特徴として着目された.いずれの現象も地震時の災害形態として認識されているが,既往地震での事例が少ないことから,当該地震の事例は貴重であり,それらの特性を吟味する意義は高い.本研究は,2008年岩手・宮城地震および既往地震における天然ダムおよび土石流の事例に基づいて,それぞれの形成特性および発生特性の検討を行った.そして,2008年岩手・宮城内陸地震(14事例)と既往地震(11事例)の天然ダムおよび土石流(2事例)の要因分析および要因間の関係の考察から,地震に起因する天然ダムの形成特性および土石流の発生特性に関する幾つかの知見を得た.
  • 中澤 博志, 菅野 高弘, 高橋 清
    2009 年 65 巻 1 号 p. 821-826
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    空港は地震災害時には緊急物資輸送の拠点等としての役割を果たし,非常に重要な社会基盤施設の一つである.大規模地震の襲来時,供用の可否判定をするにあたり,被災程度に応じ対応が異なってくることから,実際にどの様な被害が起こり得るかの把握が必要となる.
    本研究では,臨海部の軟弱地盤上に施工された滑走路を想定し,実大滑走路試験体を現場に施工し,制御発破により地盤の液状化を発生させ,実際の被災程度の把握を試みた.水準測量より液状化に伴うアスファルト舗装の変状を把握するとともに,地表面では確認できない液状化によるアスファルト舗装下の空洞化や地盤の緩みを調べるため地中レ-ダ-探査を実施し,被害傾向についてまとめた.
  • 橋本 隆雄, 宮島 昌克
    2009 年 65 巻 1 号 p. 827-836
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2007年3月25日に発生した能登半島地震(MJMA=6.9)は,能登半島の先端に位置する輪島市をはじめとして多くの家屋に被害を与えた.石川県によれば,建物被害は全壊682棟,半壊1,719棟,一部損壊26, 907棟,非住家被害4,439棟,合計33,747棟となり,震度6強を記録した震源に近い輪島市門前町の全壊率が高い.現地調査によれば,門前町の宅地では液状化による噴砂も見られることから,大きな地震動だけではなく,液状化による地盤変状も建物被害に影響を及ぼしているのではないかと考えられた.そこで,井戸による地下水位調査,ボーリング調査,スウェーデン式サウンディングなどを行い,宅地地盤特性を調査し,地盤特性と建物被害との関係を考察した.その結果,液状化等の宅地地盤の変状が全体的な基礎の被害を生じ,この基礎の被害が上部構造物に影響を及ぼしたことが明らかとなった.
  • 橋本 隆雄, 宮島 昌克
    2009 年 65 巻 1 号 p. 837-849
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2007年新潟県中越沖地震では柏崎市,刈羽村,出雲崎市,上越市の4市町村の宅地が大規模な被害を受けた.そこで,宅地所有者に被災宅地の危険度を把握・周知して二次災害を軽減するために,248人の被災宅地危険度判定士によって2,082件の大規模な調査が2007年7月17日~25日に渡って行われた.
    この論文では,被災宅地危険度判定士による宅地擁壁,宅地地盤,のり面・自然斜面等の被害状況の判定の際に用いた調査票を同一の指標になるように精査した後にその結果を分析し,さらにこれまでの1995年兵庫県南部地震および2004年新潟県中越地震との比較を行い,被害の特徴を明らかにし,今後の宅地防災対策のあり方について検証する.
  • 橋本 隆雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 850-863
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2007年3月25日にマグニチュードMJMA 6.9の能登半島地震が輪島市門前町劔地の琴ヶ浜付近を震央として発生し,各地で土砂崩壊や液状化が生じた.特に能登有料道路では,13箇所の大規模な高盛土が斜面崩壊し,最大200mも土砂が流出した.これらについて,筆者は,これまでに土木学会・地盤工学会の合同調査団における幹事長の立場で,石川県および道路公社から貴重な資料を基にして報告書1)作成に携わってきた.そこで本論文では,この地震による道路盛土被害が顕著だった能登有料道路の被害の特徴を分析するとともに,斜面崩壊が発生した13箇所の全てについて被害形態の分類および複合すべり計算を行い,崩壊原因を分析し,今後の建設,復旧のあり方について教訓を得ることを目的としている.
  • 橋本 隆雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 864-874
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    1995年兵庫県南部地震,2004 年新潟県中越地震では,大規模盛土造成地の宅地地盤が液状化等による流動化現象で多くの建物に甚大な被害を生じた.その後,2006 年9 月から改正宅地造成等規制法が施行1)され,宅地耐震化促進事業2)を活用して,全国の地方公共団体で取組みが行われている.国土交通省では,大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドライン3)を策定し,緩勾配の谷埋め型大規模盛土造成地について第一次スクリーニング段階での簡易変動予測評価手法を参考として記載している.しかし,腹付け型大規模盛土造成地の同様の簡易変動予測評価手法の記載がなく,早急な評価手法の確立が望まれている.
    本論文では,腹付け型大規模盛土造成地の過去の災害事例についての土質状況を含んだデータが少ないために,3タイプの安定解析を行い,1995年兵庫県南部地震の災害事例と合わせた最適な変動予測評価手法を提案する.
  • 藤岡 一頼, 安田 進, 白鳥 翔太郎
    2009 年 65 巻 1 号 p. 875-880
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2004年10月23日にの新潟県中越地震(マグニチュード6.8)が発生し,関越自動車道の堀之内IC付近から小千谷ICの付近まで盛土が大きく沈下·変形する被害が生じた.地震後に土質調査を実施したところ盛土内の水位が存在し,盛土下部は飽和していることが判明した.そこで,いつくかの盛土材料を用いて繰返し非排水せん断強度および繰返しによるせん断剛性の低下を繰返しねじり試験により調べた.その結果,繰返しせん断強度比は,不飽和土が飽和土より大きいことや,その値は塑性指数と相関があること,高い繰返しせん断応力比が作用した場合には,不飽和条件においても材料の軟化が生じることなどが判明した.
  • 塩崎 禎郎, 長尾 毅, 小堤 治, 宮下 健一郎
    2009 年 65 巻 1 号 p. 881-891
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    直杭式横桟橋の被災事例の再現計算では,二次元有効応力解析コードFLIPが適用されるケースが多い.1995年兵庫県南部地震におけるT桟橋の被災事例の再現計算では,これまでの検討で,桟橋の残留水平変位は再現できていたが,鋼管杭の座屈位置が再現できない課題が残されていた.そこで,本論文では,この課題を解決するため,次に示す3点について修正を行った.1)杭が横切る地盤では地盤のせん断強度を適切に表現できるモデル化を行う.2)土留め護岸直下の砂層で発生していたせん断変形のロック現象を解消するためにsteady state現象を表現可能な構成則を用いる.3)鋼材の降伏強度は規格値ではなく実際の値を用いる.その結果,桟橋の残留水平変位とともに,鋼管杭の座屈位置を再現することができた.
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