日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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28 巻, 4 号
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巻頭言
Reviews
  • 石渡 隆寛, 滝沢 真理, 川村 陽一, 金井 貴志, 黒川 貴幸, 西山 光則, 浅野 優, 石田 英之, 野々山 恵章
    2012 年 28 巻 4 号 p. 195-202
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    成熟マウス心筋では, Ca2+ transientへの細胞膜Ca2+チャネルと筋小胞体(sarcoplasmic reticulum:SR)の関与は1:9であるのに対し, 未熟心筋では, ほとんどが細胞膜Ca2+チャネルからのCa2+流入に依存しているという報告が多い. これらの報告のほとんどは単離・培養心筋を用いているが, われわれは, より生理的な条件で未熟心筋のSR機能を評価する目的で, マウス胎仔, 新生仔からの摘出心臓をFluo-3で染色, Ca2+ transientを解析した. 筋小胞体Ca2+ATPase(SERCA)阻害剤(thapsigargin)により, 胎生初期からCa2+ transientのTime to 50% relaxation(T50)が有意に延長した. Ca2+放出チャネル(RyR)阻害剤(ryanodine)により, Ca2+ transientの振幅は73%の低下が認められたのに対し, 細胞膜チャネルであるL型Ca2+チャネル, T型Ca2+チャネル, reverse mode Na+-Ca2+ exchanger(NCX)の各阻害薬を添加した場合は, 各々, 34%, 27%, 17%の低下に留まった. また, Caffeine induced Ca2+ transientは胎生初期から計測され, 胎齢が進むに従い増加した. これらの結果から, 胎生期未熟心筋のCa2+ 代謝においても, SRが重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 古道 一樹, 山岸 敬幸
    2012 年 28 巻 4 号 p. 206-210
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    先天性心疾患は, ヒトにおいて最も発生頻度が高い先天異常の1つであり, 高い死亡率はいまだに世界的な問題である. 特に, 心臓流出路発生異常には重篤な疾患も多く, その病態につながる発生機序を考えることは重要である. 近年の分子発生学の進歩により, 心臓発生には複数の異なる起源の幹細胞が関与することが示唆されている. その中で, 二次心臓領域, 心臓神経堤細胞と呼ばれる2つの異なる系譜の心臓前駆細胞の相互作用が, 心臓流出路の発生に必須である. これら心臓前駆細胞の発生制御機構の理解は, 心臓流出路発生機序の解明に重要な意味を持つ. 心臓発生過程において, これらの心臓前駆細胞は数々の転写因子により制御される. 転写因子の遺伝子発現調節ネットワーク, および異なる系譜の心臓前駆細胞の発生を調節する相互作用の解明は, 複雑な心臓流出路の三次元構造の異常を示す先天性心疾患の病態を深く理解するために不可欠である.
症例報告
  • 厚美 直孝, 松原 宗明, 保土田 健太郎, 寺田 正次, 斎藤 美香, 玉目 琢也, 知念 詩乃, 松岡 恵, 横山 晶一郎, 大木 寛生 ...
    2012 年 28 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    症例は9カ月, 女児. 両大血管右室起始症(Fallot型)に対して根治術を施行し術直後の経過は良好であった. 術後6日に発熱し血液培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された. 抗菌薬により解熱したが, 術後15日に心エコーで心室中隔欠損(VSD)パッチに疣腫を認め感染性心内膜炎(infective endocarditis : IE)と診断した. VSDの遺残短絡を認めなかったため抗菌薬による治療を継続したが, 術後20日に右心不全と肝不全が急激に進行し心エコーで左室右房(LV-RA)シャントが確認された. 凝固系が破綻した状態での手術は出血のリスクが高いため, 持続的血液透析濾過と血漿交換を行い凝固能の改善後に再手術を施行した. 再手術はVSDパッチと右室流出路パッチを交換し三尖弁の形成を行った. 再手術後も感染の再燃がみられたが軽快し, 再手術後75日に退院した. 術後IEによって生じたLV-RAシャントが急性肝不全を来した症例の治験例として報告する.
  • 鈴木 章司, 小泉 敬一, 加賀 重亜喜, 星合 美奈子, 喜瀬 広亮, 長谷部 洋平, 吉田 幸代, 神谷 健太郎, 本橋 慎也, 榊原 ...
    2012 年 28 巻 4 号 p. 218-223
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    シェーグレン症候群の母体からの移行抗体に関連する孤立性先天性完全房室ブロックの低出生体重児のペースメーカ治療について, 後方視的に検討した. 【症例1】 女児. 胎児エコーによる心囊液貯留出現により緊急帝王切開. 在胎32週2日, 出生時体重1,628 g, 自己心拍60 bpmであった. 【症例2】 男児. 健常児とのDD双胎で, 在胎34週3日, 出生時体重1,902 g, 自己心拍42 bpmであった. 両症例ともに, 直ちに開胸的に心外膜リードを縫着して一時的体外ペーシングを開始した. 待機期間中に約1 kgの体重増加が得られ, 日齢49と59に恒久型ペースメーカ植え込み術を施行して, 良好に経過している. この治療戦略は確実性及び安全性において妥当であると考えられた.
  • 上野 健太郎, 中村 英明, 潟山 亮平, 柳 貞光, 上田 秀明, 康井 制洋
    2012 年 28 巻 4 号 p. 224-229
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    感染を契機に蛋白漏出性胃腸症(protein-losing enteropathy:PLE)を発症し, その主因が心原性と判断できない症例で, 病態と治療について, 血清サイトカイン測定, flow cytometry(FCM)を用いた免疫学的検査, および病変部周囲の組織生検を行い検討した. 症例は6歳男児で無脾症, 房室中隔欠損(左室低形成)の診断でフォンタン術が施行された. フォンタン術後2年でPLEを発症し, 血清アルブミン(Alb)値は2.0~2.5 g/dlで推移し, 各種の治療に抵抗性であった. FCMでリンパ球減少, CD4陽性T細胞の著明な減少(CD4/CD8比 0.14)を認めた. 治療経過中の病理組織像では慢性腸炎の組織像を呈しており, 炎症細胞の浸潤を認め, 軽度のリンパ管の増加, および拡張を確認できた. ステロイド, シクロスポリン併用療法が施行され, 浮腫は軽快し, 現在までAlb値は3.0 g/dl前後で安定し, 免疫機能も改善しつつある. 血行動態の破綻が主因であると判断できないフォンタン術後PLEでは, 免疫機能検査, 組織学検査は治療方針を決めるうえで重要であり, かつ免疫系の異常が考慮される症例では, 治療反応性を確認するうえでも有用であると考えられた.
  • 西口 俊裕
    2012 年 28 巻 4 号 p. 233-237
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    先天性心疾患(congential heart disease:CHD)に合併した蛋白漏出性腸症(protein-losing enteropathy:PLE)は予後不良な疾患で, 病態についても不明な点が多く, 治療法もいまだ確立されたものはない. 著者らは, 完全型房室中隔欠損症, 両大血管右室起始症, 肺動脈閉鎖症に対するRastelli術後PLEの再燃時にヘパリン療法を施行し, 奏効した症例を経験した. しかし, 一旦中止後3カ月目に再々燃し, ステロイド療法,(ヘパリン+ステロイド少量)併用療法, ヘパリン療法を施行したが, 効果は得られず死の転帰をとった. ヘパリン療法の問題点は, 完全寛解率は低く, 症状改善を維持するためには頻回投与が必要で, 皮下注投与量も多く, 患者負担が大きいことであった. CHD術後PLEに対するヘパリン療法には限界があった.
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